第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
 

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇の影響で一部の個人消費に足踏みが見られたものの、設備投資には持ち直しが見られました。しかしながら、世界的な金融引き締めや中国の不動産市場の停滞、中東地域の不安定な情勢により、未だ世界経済の先行きは不透明なままであり、不安定な状態が続いております。

当社グループの主力事業をおく電力業界におきましては、脱炭素投資により競争力強化と経済成長を目指すGX推進法と脱炭素電源の利用促進と安定供給の確保に向けたGX脱炭素電源法が成立しました。世界規模でのエネルギー資源の争奪戦に伴う燃料価格の高騰とエネルギーセキュリティの重要性を背景に、脱炭素効果の高い電源として原子力エネルギーの利用方針が明確化され、原子力発電所の再稼働、再処理設備の竣工に向けた取り組み、最終処分については政府の責任のもとで進めていくことが示されました。

今後の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善のもと、国内経済は緩やかな回復を見せることが期待されるものの、世界的な金融引き締めの長期化や中国経済の先行き懸念など国内景気に下押しリスクを与える要因も存在します。一方、当社グループの主力事業をおく電力業界は、「新しいステージに向けて歩みを進める年」と位置づけ、S+3E(安全性+安定供給、経済性、環境)の実現に向けた重要な選択肢の一つである原子力を最大限に活用するため、稼働中の原子力発電所の安全・安定運転の継続、BWR(沸騰水型軽水炉)プラントを中心とした再稼働、再処理事業の推進などを行い、エネルギー基本計画の検討や電力システム改革の検証の議論も進められていくものと思われます。

次期連結会計年度においては、当社グループは、原子力エリアの拡大、エンジニアリング力と動員力を高めるためのM&A、時間外労働の上限規制に対応するための施工管理のIT化、海外事業への投資、さらに自社の発電所を中心に林業・農業を1つにパッケージ化した『グリーンプロジェクト』等の実現等により、中期経営計画(2023年度~2025年度)の目標である売上高1,500億円、ROE9%以上の達成に向け努力してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、「社会課題の解決」と「中長期的な企業価値の向上」を目的として、代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ推進委員会」を2024年7月1日に設置いたします。当社グループは「安全」、「人」および「コンプライアンス」をサステナビリティの最重要課題と位置づけ、これら個別の課題を解決するために現在は「安全衛生委員会」、「品質保証委員会」、「法令遵守委員会」、「教育育成委員会」などの各種委員会でサステナビリティに関する施策、展開、目標管理を行っております。今後は「サステナビリティ推進委員会」を年2回開催し、サステナビリティに関するリスクおよび機会への対応方針や取組計画について委員長が取締役会へ報告を行うことで、取締役会がサステナビリティに関する施策について決議し監督する体制を整えてまいります。

 


※2024年7月1日に設置いたします。

 

(2) 戦略

当社グループはサステナビリティを巡る課題として「安全」、「人」および「コンプライアンス」を最重要課題に掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、取り組みを強化します。

最重要課題

リスク

機会

戦略

安全

施工中に当社グループの責任により、重大な労働災害(死亡災害・重篤な災害)が発生する可能性がある。

災害を未然に防ぐことで、顧客からの信頼向上につながり、新たな工事受注が増加。

・重大な労働災害を未然に防止するため、「本質安全化」を主眼に置いた物的対策を全施工箇所で徹底。

・当社グループ全員に安全衛生教育を定期的に実施。
・当社ならびにビジネスパートナー(協力会社)による現地支援安全衛生パトロールの実施。
・発生経緯や原因・対策を当社グループ全体に共有し類似災害の発生を防止。
・「法令・安全・品質強化プロジェクト」による滞在型パトロールの実施。

当社グループの施工不良による製品損傷、または納入製品が性能基準に達していないことによる、重大な品質不適合が発生する可能性がある。

計画どおりの施工を行うことで、顧客からの信頼向上につながり、新たな工事受注が増加。

・詳細な施工要領書を作成し、箇所関係者全員で作業前検討会の実施。
・過去の不適合事例を当社グループ全体に共有し、作業前検討会等で不適合検討の実施。
・顧客の製品仕様を事前に確認し、性能基準を満たした製品の購入・手配ができるシステムの構築。
・「自主検査推進プロジェクト」により、当社グループ全員に一仕事一確認の意識を浸透。

自然災害等によりプラント設備が被害を受けたり、従業員が被災したりする可能性がある。また、当社の情報資産、機器・ネットワーク等も損壊する可能性がある。

自然災害が発生すると、インフラ(電気)の復旧が急がれる。いち早い復旧を行うことで、顧客からの信頼を得ることができる。

・人命第一と安全確保を最優先に考え、有事の際には顧客等関係先との協議を含め迅速な初動対応を実施できるよう危機管理マニュアルの策定。
・BCP(事業継続計画)を推進し、災害発生時にもスムーズに初動対応・優先業務が行えるよう、平時から対応訓練を実施。
・データセンター等の強固なシステム運用基盤の整備とバックアップ体制の強化。

当社グループは少子化等の要因による採用活動の難航や、社員の離職が続くことで、人材不足に陥る可能性がある。

高齢者や障がい者など、多様なバックグラウンドを持つ人々を積極的に雇用することで、労働力が確保され生産性が向上する。

・多様な人材を採用するために採用活動を強化。
・働き方改革や育児支援の実施。

当社グループは社員へ成長の機会が与えられないことによるモチベーションの低下や、業務遂行に必要な能力・スキルが獲得出来ないことが離職に繋がり、生産性が低下する可能性がある。

業務遂行に必要なスキルや能力を身につけるための研修プログラムを充実させることで、社員のスキルアップ促進となり、生産性が向上する。

・社員研修を階層別で実施。
・資格取得報奨金制度で資格取得を支援。

コンプライアンス

当社グループの事業活動に関連する法令(建設業法、労働安全衛生法、労働基準法等)に違反した場合、行政処分により営業停止や各種許可の取消し、社会的信用を失墜する可能性がある。

法令遵守のための社内教育や研修を定期的に実施し、全社員のコンプライアンス意識を高めることで、リスクを回避し、企業の信頼性が向上する。

・法令遵守委員会を毎月開催し、同業他社の行政処分事例を題材にし、類似事例が発生しないよう関係者への教育・啓発活動の実施。

当社グループは労働災害の発生等の労働安全衛生に係る問題、または当社のサプライチェーン内における児童労働、強制労働や外国人労働者への差別等の人権に係る問題等が生じた場合、当社の社会的な信用が低下し、顧客からの取引停止、または一部事業からの撤退等により、業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。

労働安全衛生や人権問題に積極的に取り組むことで、企業の社会的責任(CSR)の評価が高まり、企業の社会的信用が向上し、ステークホルダーからの信頼を獲得できる。

・サプライチェーンへの各種調査や監査の実施。
・CSR活動として、小規模グループ単位での勉強会の実施。

 

 

 

また、当社グループは企業行動憲章のなかで、個人の人権と個性を尊重し、働きやすい職場環境をつくることを明文化しております。また、事業の拡大に伴い人員増加を図る必要があるため、積極的な採用活動を行い、多岐にわたるスキルを持った人材を採用・育成することに力を入れて取り組んでおります。

 

1 人材育成

「責任者になれる人材の育成」を目標に掲げ、人材育成のための教育・研修に力を入れております。新卒入社後、職種毎の業務に合わせた研修を行い、一人前の太平社員を育成することを目的としたOJT教育や、等級に応じた指導職研修や管理職研修などを実施しております。また、業務に必要な資格取得に対する報奨金制度を設け、社員のスキルアップを図っております。


 

2 多様な人材の活躍

1) 女性の活躍

女性活躍推進法における一般事業主行動計画では、「採用者に占める女性の割合」や「管理職に占める女性の割合」、「女性社員の平均勤続年数」に対する目標を掲げており、女性総合職座談会などを通して、すべての女性社員が職場で活躍できる社内環境整備を実現してまいります。

2) 障がい者の雇用

2023年度には障がい者スポーツで活躍しているアスリートを3名雇用し、今後も継続的に障がい者雇用を実施します。

 

3 働き方改革

「従業員の心身の健康と仕事と生活の調和が第一」を基本方針とした全社統一運動「JITAN45」を推進しております。時間外労働時間削減、実労働時間の適正管理ならびに計画的な有給休暇取得の推進に努め、社員の多様なワークライフバランスの実現に取り組みます。

 

4 育児支援

「育児と仕事の両立支援」を実現するため、育児支援プロジェクトを設置し、出産・育児といったライフイベントによる退職を防止しております。育児休業、育児休業給付、産前産後休業などの諸制度について社内公開サイトを活用し、制度に対する社員の理解を促しております。

また、代替人員を確保することなどで男女ともに復職率はほぼ100%を維持しております。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、定期的に開催する「安全衛生委員会」、「品質保証委員会」、「法令遵守委員会」、「教育育成委員会」などの各種委員会で最重要課題のリスクと機会について状況を確認し、戦略の立案・見直しを行っております。

なお、気候関連のリスクおよび機会については、当社は売上高当たりCO2排出量が低く(0.07t/百万円)、企業活動においてその影響は軽微であると考えていることから、開示を省略しております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した内容に関する指標および目標について、当社においては指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、連結子会社では行われていないため、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

重要課題

指標

目標

実績(2023年度)

安全

労働災害の発生頻度
(度数率)

0.15以下

0.59

労働災害の重さ
(強度率)

0.01以下

0.02

内部監査での是正処置件数

20以上

15

中堅層を対象とした
指導職教育受講率

100

96.7
(2回開催)

管理職候補者を対象とした
管理職研修受講率

100

100
(1回開催)

役職者研修受講率

100

95.9
(5回開催)

女性採用比率
(中途採用含む)

15以上

21.7

女性管理職比率

1以上

1.8

女性社員の
平均勤続年数

10.7年以上

10.3

障がい者雇用率

2.5以上

2.5

ひと月当たりの
平均残業時間

30時間以下

28.9時間

有給休暇取得率

70以上

63.2

男性の育児休暇取得率

30以上

31.7

復職率

100

100

コンプライアンス

法令遵守パトロール件数

120以上

143

法令遵守関連講習会
受講率

100

100
(14回実施)

重大な情報セキュリティ
事故発生件数

0

0

 

 

3 【事業等のリスク】

当有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 特定の業種項目への依存

当社グループの売上高は発電設備事業への依存度が高くなっており、電力業界の動向および重大な事故・災害の発生や、電力需要の伸び悩みおよび電力自由化による電気事業者のコスト削減要因などにより、多数の発電所の建設中止や停止という事態となった場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、特定の電力会社に依存することのないよう、全国に9つの支店を置き、各地方で受注活動を行っております。また、製鉄関係、清掃工場などの環境保全、化学プラント等の業界へ積極的な受注活動を行うことで、リスクの回避・最小化に努めております。

 

(2) 原子力事業の工事延伸による影響

  原子力事業を取り巻く状況の変化、自然災害の発生、原子力規制委員会の審査状況、新規制基準への追加対応等により、予定していた工事が延伸する可能性があります。

当社グループでは、全国展開を行っている原子力事業所間にて人員の調整を行うことにより、対応可能な人員配置を行っております。

 

(3) 重大な労働災害発生のリスク

  施工中に当社グループの責任により、重大な労働災害(死亡災害・重篤な災害)が発生する可能性があります。

当社グループでは、重大な労働災害を未然に防止するため、「本質安全化」を主眼に置いた物的対策を全施工箇所で徹底しております。具体的施策として当社グループ全員に安全衛生教育を定期的に実施、当社ならびにビジネスパートナー(協力会社)経営層あるいは管理者による現地支援安全衛生パトロールの実施、災害が起きた際は例え軽微な事象であっても、発生経緯や原因・対策を当社グループ全体に共有し、類似災害の発生を防止するとともに、「法令・安全・品質強化プロジェクト」による滞在型パトロールを実施しております。

 

(4) 重大な不適合発生のリスク

  当社グループの施工不良による製品損傷、または納入製品が性能基準に達していないことによる、重大な品質不適合が発生する可能性があります。

  当社グループでは、詳細な施工要領書を作成し、箇所関係者全員で作業前検討会を行うことにより、品質の維持・向上を図っております。また、過去の不適合事例を当社グループ全体に共有し、作業前検討会等で不適合検討を行うことや、顧客の製品仕様を事前に十分確認し、性能基準を満たした製品の購入・手配ができるシステムの構築、「自主検査推進プロジェクト」により、当社グループ全員に一仕事一確認の意識を浸透させ、確認不足による不適合発生を未然に防止しております。

 

(5) 工事原価変動のリスク

  工事施工中に材料費や労務費の高騰による大幅なコスト上昇により、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

  当社グループでは、工法改善、将来の工事需要の予測に基づき、必要な供給量を把握し、また工事業者、機器資材供給業者と情報共有し連携を図ることにより、リスクの回避・最小化に努めております。

 

 

(6) 調達品の価格上昇のリスク

  働き方改革を掲げた労働基準法改正によるトラックドライバーの残業規制により、運送費が高騰し調達品の価格上昇が経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

  当社グループでは、納入期日の調整を関係部署と綿密に行い、機器資材供給業者と情報共有し、価格上昇した調達品の適正価格を見極め、受注金額への反映に努めております。

 

(7) 海外事業に関するリスク

  当社グループは香港、フィリピンなどの国・地域において事業展開を行っております。これらの地域での事業活動には、予期しえない法律・規則・不利な影響を及ぼす租税制度の変更や、社会的共通資本(インフラ)が未整備であることによる当社グループの活動への悪影響、不利な政治的要因の発生、テロ・戦争・自然災害などによる社会的混乱、予期しえない労働環境の急激な変化、政情および経済状況不安定による悪影響や急激な為替変動により収益が減少する可能性があります。

  当社グループでは、有事の際には、現地、工事部門、営業部門による情報収集を行い、また監査法人や顧問弁護士等専門家への相談を行い、情報収集、分析を行っております。契約については現地通貨と円貨の二本立てで締結することにより為替リスクの回避を検討しております。

 

(8) 自然災害等による影響

当社グループの拠点は、顧客のプラント設備の敷地内に存在し各地に点在しております。自然災害等によりプラント設備が被害を受けたり、従業員が被災したりする可能性があります。また、当社の情報資産、機器・ネットワーク等も損壊する可能性があります。

当社グループでは、人命第一と安全確保を最優先に考え、有事の際には顧客等関係先との協議を含め迅速な初動対応を実施できるよう危機管理マニュアルを策定し、これらの危機事象発生に伴う影響の最小化に努めております。さらに大規模地震等の災害が発生した場合に備え、BCP(事業継続計画)を推進し、災害発生時にもスムーズに初動対応・優先業務が行えるよう、平時から対応訓練実施等による事業継続力の向上に取り組んでおります。また、データセンター等の強固なシステム運用基盤の整備とバックアップ体制の強化に取り組んでおります。

 

(9) サイバー攻撃による情報漏洩のリスク

コンピュータウイルスやマルウエアによる攻撃を受け、情報資産が外部に漏洩する可能性があります。

当社グループでは、ソフトウエアの最新化と多層防御による技術的対策と従業員への情報教育を実施しております。

 

(10) 内部不正による情報漏洩のリスク

当社グループの従業員による情報資産の不正利用リスクや、不適切な管理により情報資産が外部に漏洩する可能性があります。

当社グループでは、内部不正に備えて従業員への情報教育と適切なアクセス権限の設定、また情報漏洩に対しては情報資産管理の徹底(装置・アクセス権棚卸し等)と従業員への情報教育を実施しております。

 

(11) 法令に違反するリスク

当社グループの事業活動に関連する法令(建設業法、労働安全衛生法、労働基準法等)に違反した場合、行政処分により営業停止や各種許可の取消し、社会的信用を失墜する可能性があります。

当社グループでは、法令遵守委員会を毎月開催し、同業他社の行政処分事例を題材にし、類似事例が発生しないよう関係者への教育・啓発活動を実施しております。

 

 

(12) 訴訟のリスク

当社グループは国内外に拠点を持ち、質の高いサービスの提供に努めておりますが、業務遂行の過程で、損害賠償請求訴訟等を提起され、損害に対する補償が必要となる可能性があります。

当社グループでは、訴訟が提起された場合においては、弁護士の助言等に基づき、事態の調査を行い、適切な対応方針を策定の上、法定代理人を選任し、適切に訴訟対応手続を遂行する体制を整えております。また、経営に重大な影響を与えると認められる訴訟等については、監査役会および取締役会に報告しております。

 

(13) コンプライアンスに関するリスク

当社グループを構成する役員や従業員の各種規制への抵触や不正行為は、完全には回避できない可能性があり、このような事象が発生した場合、当社の社会的な信用が低下し、顧客から取引を停止され、または多額の課徴金や損害賠償が請求されるなど、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、教本を用いた教育啓蒙を実施することにより、世界共通の規範に基づきコンプライアンスに則した行動をするための体制や仕組みの構築を推進するとともに、倫理行動規準を定め、誠実で公正、透明な企業風土を醸成するよう努めております。また、社内にて内部通報制度を整備し、迅速な情報収集にも努めております。

 

(14) 企業の社会的責任に関するリスク

当社グループは労働災害の発生等の労働安全衛生に係る問題、または当社のサプライチェーン内における児童労働、強制労働や外国人労働者への差別等の人権に係る問題等が生じた場合、当社の社会的な信用が低下し、顧客からの取引停止、または一部事業からの撤退等により、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、サプライチェーン上の各種調査や監査、ステークホルダーとコミュニケーションを取る過程で、倫理行動規準からの逸脱行為があると判断した場合には、是正に必要な措置を講じます。

 

(15) 人材不足に関するリスク

当社グループは少子化等の要因による採用活動の難航や、社員の離職が続くことで、人材不足に陥る可能性があります。

当社グループでは、多様な人材を採用するために採用活動の強化に努め、働き方改革や育児支援を実施することで、リスクの回避・影響の最小化を図っております。

 

(16) 人材育成に関するリスク

当社グループは社員へ成長の機会が与えられないことによるモチベーションの低下や、業務遂行に必要な能力・スキルが獲得出来ないことが離職に繋がり、生産性が低下する可能性があります。

当社グループでは、研修や資格取得の機会を提供し、社員のモチベーションや生産性の向上に繋げ、リスクの回避・影響の最小化を図っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当社グループは事業を取り巻く経営環境の変化に対応し、企業の持続的成長の実現を図るべく、「社会構造の変化に即応できる守りの経営」「社会の発展に寄与する攻めの経営」「新しい企業価値をもたらす共創経営」を骨子とする「中期経営計画(2023年度~2025年度)」をスタートし、原子力発電所の再稼働関連工事の受注によるエリア拡大や、建設工事後の補修工事への参入、データセンター・半導体施設への新規分野開拓等を積極的に進めました。また、1月1日に発生した令和6年能登半島地震に際しては、被災地への義援金と支援物資の提供を行い、七尾大田火力発電所の復旧工事に従事することで、震災復興を支援いたしました。さらに、社員の安全・品質意識の向上のため、千葉県木更津市に過去の現場における災害・品質不適合の風化防止を目的とした教育施設「教訓会得館」を設立いたしました。

その結果、当連結会計年度の業績につきましては、受注高135,985百万円(前年同期比1.2%減)、売上高129,363百万円(前年同期比2.9%増)、うち海外工事は8,677百万円(前年同期比32.2%減)となりました。

利益面につきましては、営業利益10,049百万円(前年同期比29.9%減)、経常利益11,512百万円(前年同期比23.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,395百万円(前年同期比20.9%減)となりました。

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(建設工事部門)

受注高は、自家用火力発電設備工事が増加したものの、事業用火力発電設備工事および環境保全設備工事が減少したことにより、部門全体として減少し、42,303百万円(前年同期比27.3%減、構成比31.1%)となりました。

売上高は、自家用火力発電設備工事が減少したものの、環境保全設備工事が増加したことにより、部門全体として増加し、46,954百万円(前年同期比6.2%増、構成比36.3%)となりました。

セグメント利益は事業用火力発電設備工事の利益率の低下により、1,608百万円(前年同期比66.2%減)となりました。

 

(補修工事部門)

受注高は、製鉄関連設備工事が減少したものの、事業用火力発電設備工事および原子力発電設備工事が増加したことにより、部門全体として増加し、93,681百万円(前年同期比18.0%増、構成比68.9%)となりました。

売上高は、製鉄関連設備工事が減少したものの、自家用火力発電設備工事および事業用火力発電設備工事が増加したことにより、部門全体として増加し、82,408百万円(前年同期比1.0%増、構成比63.7%)となりました。

セグメント利益は原子力発電設備工事の落ち込みにより、12,245百万円(前年同期比10.9%減)となりました。

 

 

(2) 財政状態

流動資産は、現金預金が6,770百万円減少したものの、受取手形・完成工事未収入金及び契約資産が5,844百万円および電子記録債権が1,732百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて2,516百万円増加し106,832百万円となりました。

固定資産は、繰延税金資産が1,255百万円減少したものの、投資有価証券が5,176百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて3,467百万円増加し46,190百万円となりました。

流動負債は、流動負債その他が3,602百万円減少したものの、1年内償還予定の社債が5,000百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて365百万円増加し39,116百万円となりました。

固定負債は、社債が5,000百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて5,440百万円減少し13,314百万円となりました。

純資産は、利益剰余金が6,104百万円およびその他有価証券評価差額金が3,370百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて11,059百万円増加し100,592百万円となりました。

なお、セグメント資産については、事業セグメントに配分された資産がないため、記載を省略しております。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は41,919百万円となり、前連結会計年度末より6,770百万円減少しました。なお、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(イ) 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは4,639百万円の支出(前連結会計年度は32,501百万円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益12,031百万円があったものの、営業債権、契約資産及び契約負債の増加10,527百万円および法人税等の支払額5,094百万円などがあったことによるものであります。

 

(ロ) 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは895百万円の支出(前連結会計年度は1,445百万円の支出)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出829百万円があったことによるものであります。

 

(ハ) 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは1,676百万円の支出(前連結会計年度は1,766百万円の支出)となりました。これは、主に配当金の支払額2,291百万円があったことによるものであります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

当社グループの資金の配分方針については、安定的な経営に必要となる適正な手許現金および現金同等物を確保し、それを超える部分については、成長投資、株主還元等への原資としており、企業価値向上に資する資金の配分に努めております。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事施工のための外注費用および人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。運転資金に対しては原則、自己資金により賄っており、不足が生じた際はコミットメントライン契約に基づく借入、社債、および長期借入金により調達することとしております。

また、西風新都バイオマス発電所の建設費用等、設備投資資金需要に対しては自己資金、長期借入金および新株予約権により調達することとしております。なお、西風新都バイオマス発電所建設費用の資金調達においては、取引銀行2行とコミット型シンジケートローン契約を締結し、融資限度額である50億円の借入を実行し、現在返済中であります。

また、当社グループでは、資金の短期流動性を確保するため、シンジケート銀行団と150億円のコミットメントライン契約を締結し流動性リスクに備えております。

成長投資については、2023年度の設備投資額は856百万円となりました。設備投資の詳細につきましては、第3「設備の状況」をご参照ください。2024年度につきましては、中期経営計画で示した方針に則り情勢を鑑みながら適切な投資を実行してまいります。

株主還元につきましては、第4「提出会社の状況」3「配当政策」をご参照ください。

 

(4)生産、受注及び販売の実績

当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では生産実績を定義することが困難であり、建設事業においては請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐわないので、受注高および売上高で表示しております。

 

(a) 受注実績

受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

受注高
(百万円)

受注残高
(百万円)

受注高
(百万円)

受注残高
(百万円)

建設工事部門

58,200

55,319

42,303

50,668

補修工事部門

79,400

35,734

93,681

47,006

合計

137,601

91,053

135,985

97,675

 

 

(b) 売上実績

売上実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(百万円)

建設工事部門

44,207

46,954

補修工事部門

81,566

82,408

合計

125,774

129,363

 

(注) 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高およびその割合は次のとおりであります。

期別

相手先

売上高
(百万円)

割合
(%)

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

三菱重工業株式会社

32,544

25.9

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

三菱重工業株式会社

35,012

27.1

 

なお、提出会社にかかる施工高、受注高および売上高の状況が当社グループの施工高、受注高および売上高の大半を占めていますので、参考のために提出会社個別の事業の状況を示せば次のとおりであります。

① 受注工事高、売上高、繰越工事高および施工高

 

期別

工事別

前期繰越
工事高
(百万円)

当期受注
工事高
(百万円)


(百万円)

当期売上高
(百万円)

次期繰越工事高

当期
施工高
(百万円)

手持工事高
(百万円)

うち施工高

比率
(%)

金額
(百万円)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建設工事部門

40,523

52,334

92,858

40,053

52,804

2.1

1,124

39,813

補修工事部門

37,704

75,331

113,035

78,001

35,034

21.0

7,357

78,121

うち海外工事

78,228

7,779

127,666

3,845

205,894

11,625

118,055

8,590

87,839

3,034

9.7

11.0

8,481

333

117,935

8,594

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建設工事部門

52,804

39,452

92,257

43,390

48,867

2.9

1,404

43,669

補修工事部門

35,034

89,936

124,971

78,854

46,117

14.7

6,762

78,259

うち海外工事

87,839

3,034

129,389

2,734

217,228

5,769

122,244

5,262

94,984

506

8.6

45.4

8,166

229

121,929

5,158

 

(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に増減のあったものについては当期受注工事高にその増減が含まれております。したがって当期売上高にもかかる増減が含まれます。

2 次期繰越工事高の施工高は支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。

4 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、前事業年度3.0%、当事業年度2.1%であります。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

 

期別

区分

特命
(%)

競争
(%)


(%)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建設工事部門

49.5

50.5

100.0

補修工事部門

88.2

11.8

100.0

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建設工事部門

49.9

50.1

100.0

補修工事部門

84.4

15.6

100.0

 

(注) 百分比は請負金額比であります。

 

③ 売上高

 

期別

区分

国内

海外

官公庁
(百万円)

民間
(百万円)

(A)
(百万円)

(A)/(B)
(%)

(B)
(百万円)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建設工事部門

-

31,462

8,590

21.4

40,053

補修工事部門

30

77,971

-

-

78,001

30

109,433

8,590

7.3

118,055

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建設工事部門

-

38,127

5,262

12.1

43,390

補修工事部門

104

78,750

-

-

78,854

104

116,877

5,262

4.3

122,244

 

(注) 1 海外工事の地域別売上高割合は、次のとおりであります。

 

地域

前事業年度
(%)

当事業年度
(%)

アジア

100.0

100.0

100.0

100.0

 

 

2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

  前事業年度 請負金額10億円以上の主なもの

受注先

施主・工事件名

三菱重工業株式会社

 

 

三菱重工業株式会社

 

 

香港電燈有限公司

 

 

中国電力株式会社

三隅発電所2号機ボイラ据付工事

 

JERAパワー武豊合同会社

武豊火力発電所5号機ボイラ・脱硝設備据付工事

 

香港電燈有限公司

ランマ火力発電所11号機建設工事

 

 

 

  当事業年度 請負金額10億円以上の主なもの

受注先

施主・工事件名

三菱重工業株式会社

 

 

香港電燈有限公司

 

 

日鉄エンジニアリング株式会社

 

JERAパワー横須賀合同会社

横須賀火力発電所ボイラ及びBOP設備据付工事

 

香港電燈有限公司

ランマ火力発電所12号機建設工事

 

広畑バイオマス発電株式会社

広畑バイオマス発電所建設工事

 

 

 

3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高およびその割合は次のとおりであります。

期別

相手先

売上高
(百万円)

割合
(%)

前事業年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

三菱重工業株式会社

30,607

25.9

当事業年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

三菱重工業株式会社

34,096

27.9

 

 

④ 手持工事高

   2024年3月31日現在

区分

国内

海外

官公庁
(百万円)

民間
(百万円)

(A)
(百万円)

(A)/(B)
(%)

 (B)
(百万円)

建設工事部門

-

48,361

506

1.0

48,867

補修工事部門

-

46,117

-

-

46,117

-

94,478

506

0.5

94,984

 

(注) 手持工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。

受注先

施主・工事件名

完成予定年月

三菱重工業株式会社

日本原燃株式会社

六ヶ所再処理工場PA建屋配管据付工事

 

 

2024年9月完成予定

原電エンジニアリング
株式会社
 

日本原子力発電株式会社

東海第二発電所安全対策工事(火災防護対策工事)

 

 

2026年3月完成予定

三菱重工業株式会社

姫路天然ガス株式会社

姫路天然ガス発電所建設工事

 

 

2026年4月完成予定

三菱重工業株式会社

日本原燃株式会社

六ヶ所再処理工場電気・計装機器据付工事

 

 

2025年3月完成予定

 

 

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、連結財務諸表作成に際しては経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告に影響を与える見積りが必要でありますが、この判断および見積りは、過去の実績を勘案するなど、可能な限り合理的な根拠を有した仮定や基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点の見積りと異なる場合も考えられます。

当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」(1)「連 結財務諸表」の「注記事項」(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しておりますが、以下に掲げる項目は、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えておりますので、特に記述いたします。

 

(一定の期間にわたり充足される履行義務による完成工事高及び工事損失引当金の計上方法)

当社グループは、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、見積工事原価総額に対する発生原価の割合(インプット法)によっております。工事進捗度を算出するにあたり採用した見積工事原価総額は、工事の進捗等により変更が必要となることがあるため、見積りの適時見直しを行っております。また将来の発生が見込まれる、一定の要件を満たす特定の費用または損失については工事損失引当金を計上しております。

なお、当該見積りは当連結会計年度末時点において合理的に認識できる施工仕様等を加味した最善の見積りであるものの、将来の施工環境の変化や契約リスクの顕在化などにより、当社の主要な原価要素を構成する外注工数および発注単価等に大幅な変更が必要となった場合、翌年度の業績および財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、工事施工の能率および安全性の向上を目的とした機械・工具等の開発・改良と、受注領域拡大のための新分野技術の研究・習得を主体として行っております。開発品および開発工法を通じ、社員指導教育も併せて実施することで社員の専門知識の向上、技術レベルの向上を目指し活動を行っております。

当連結会計年度における各種プラント設備の建設、補修、維持関連の研究開発費はグループ全体で181百万円であり、その主なものは次のとおりであります。なお、当社グループの研究開発活動においては、各セグメントに関連したものが非常に多いため、セグメント別の記載はしておりません。

 

(1) 電線管曲げ作業の業務改善に向けた取り組み

原子力発電設備の早期再稼働に必要な安全対策工事案件の増加に伴い、当社は顧客より協力を期待されております。そのなかで、電線管工事において、電線管の曲げ加工をする熟練作業員(電気工事士)が不足しているため、顧客の期待に応えられない懸念があります。

そこで、人員不足の課題を解消し顧客の期待に応えるために、電線管曲げ加工作業の標準化に向けた開発を進めております。

通常、熟練作業員の経験値等が必要であった電線管曲げ加工作業を、電気工事士以外の作業員でも簡単に施工できる環境整備を目指し、当連結会計年度は、曲げ加工機(付属部品)および支援アプリケーションの開発、曲げ加工作業の標準化の実証試験、改良等を進め確立いたしました。

次年度は実際の運用に向け、現場へ展開し、今後の工事案件に導入することで人員不足解消に取り組んでまいります。

 

(2) 林業における新工法(集材システム)の開発

当社は、バイオマス発電所を中心に林業・農業の活性化、さらには、新たな産業と雇用を創出する地域循環型社会の実現を目指し「グリーンプロジェクト」を進めております。そのうち林業については、増加するバイオマス発電に使用する燃料チップの不足や、放置された森林における老木の倒木等が災害を助長させているという課題があります。その解決のために、現在利用されていない奥地の劣化林の伐採・集材による森林整備が必要であると考えます。

奥地の森林を整備できない理由は、林業作業に必要な作業道が開設できない(採算が合わない)ことにあります。そこで、奥地林や急傾斜地での集材が可能な架線集材に着目しました。

架線集材作業においては、当社開発品のセーフティーステージを改良した支柱を用いた集材システム(太平式架線集材システム)を導入することで、架線設置・撤去等の準備作業を簡略化し、一度の架設で広範囲の集材を行える新工法の開発を進めております。当連結会計年度は、実際に集材作業をしている現場に持ち込み太平式架線集材システムを実施し、支柱の健全性と架線の運用に問題が無いことを確認しました。 

次年度は妥当性の確認として、実機による集材を実施し、生産量の確認を行います。

 

(3) CO2利活用・基礎試験(生育環境が作物へ与える影響について)

国際連合が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の一つである「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の達成に貢献するため、上記(2)「林業における新工法(集材システム)の開発」に記載のとおり、当社ではバイオマス発電所を中心に地域循環型社会の実現に向けた活動を進めております。

バイオマス発電とは、植物(木材)などを燃焼して、その熱を利用する発電のことを指します。植物を燃焼した際、CO2が排出されますが、成長過程では光合成によりCO2を吸収するため、これによりCO2の排出と吸収がプラスマイナスゼロになり、カーボンニュートラルを実現できます。当社では、さらに発展させ、バイオマス発電所から排出されたCO2を農業ハウスへ送り、農作物へ与える活動を行っております。この活動により、大気中にCO2を還さずに利活用して、カーボンネガティブを実現します。

この活動の基礎となるデータ収集のため、2022年度から広島大学と共同で研究を行っております。今年度は、以下の項目について研究を行いました。

 

 

1.広島大学内でのトマトの栽培試験

 広島大学内にチャンバ(小型の実験ハウス)を2つ設け、CO2濃度をそれぞれ変えたチャンバ内でトマトを栽培し、CO2の吸収量とその成長具合について比較試験を行いました。その結果、CO2濃度が高い環境の方が、トマトの収穫量が増えることが分かりました。

 

2.西風新都バイオマス発電所の農業ハウスを使用した多品種栽培試験

 当社所有の「西風新都バイオマス発電所」から排出される排ガスから純度の高いクリーンなCO2を回収しております。そのCO2を敷地内にある農業ハウスに送り、実際の栽培環境で様々な品種の農作物のCO2吸収量を測定する比較試験を行っております。CO2を与えられた農作物は、収量増加および風味向上が期待できます。

本研究の成果を先に述べた「グリーンプロジェクト」に展開できるよう、今後も基礎試験を進めてまいります。