文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社が判断したものであります。
当社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」を経営理念とし、お客様の満足と信頼を一番に考え、健康生活に貢献できるよう、企業ビジョンである「健全で、強い、良い会社」を目指してまいります。また、「すこやかでより良い時間を願う人々を応援する」という事業ビジョンの下、「養命酒」をはじめとする商品及び「くらすわ」ブランドを通して、高い安心と社会に求められる有用な商品やサービスの提供に努めてまいります。
中長期的な環境認識として、国内の少子高齢化の進行と人口減少、エネルギーや原材料価格の高騰、世界的な不確実性の高まり等により、これまでと異なる様々な社会的課題の解決が企業に求められています。
このような経営環境において当社は、中期経営計画(2022年4月~2027年3月)を策定し、2023年に会社創立100周年を迎えるにあたり基本戦略を「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」と定めました。「養命酒」及び酒類・食品の卸売販売を中心とする既存事業の収益力強化(深化)と、これまで取り組んできた「くらすわ」ブランドを中心とした新たな事業基盤の構築(探索)を同時に行う「両利きの経営」を推進し、収益性を確保しつつ成長投資を行い、新たな企業価値の創造に取り組んでまいります。成長投資としては主にダイレクトチャネル事業構築に向けた体験型施設の建設に加え、企業買収、業務提携等総額60~70億円程度を計画しております。また、財源につきましては、営業キャッシュ・フローといわゆる政策保有株式の一部売却等、自己資金の範囲内で行う計画です。中期経営計画最終年度において売上高200億円以上、営業利益率10%、ROE(自己資本利益率)4%を目指してまいります。
当社は、中期経営計画の基本戦略である「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」を達成するため、引き続き以下の4つの戦略課題に取り組んでまいります。
①効率を重視した既存事業の収益力強化
「養命酒」及び酒類・食品の卸売販売を中心とする既存事業においては、開発、製造、流通、プロモーションの一貫したマーケティング戦略立案部署を設置し、生活者視点に基づくマーケティング戦略の展開強化を図ります。また、デジタル技術を活用した事業展開と生産性の向上を推進してまいります。
②「くらすわ」ブランドを軸としたダイレクトチャネル事業の構築
これまで商業施設を中心に展開してきた「くらすわ」について、「広げる、すこやかなくらしの輪(おいしい体験、たのしい体験、すこやかな体験)」をコンセプトとしたブランド化に重点を置き、実店舗でのお客様とのコミュニケーションを通じて商品の機能や世界観、歴史、ライフスタイルに共感いただくことで通信販売やギフト向け販売と一体となった事業化を図ってまいります。その取り組みとして、駒ヶ根工場敷地内にブランドシンボルとして新たに体験型施設「くらすわの森」の建設を行っているほか、ブランド強化とビジネスモデルの構築を目的に企業買収、業務提携も視野に入れてまいります。
③サステナビリティ経営の推進
当社の長期的な企業価値向上にとって持続可能な社会の実現は、重要な経営課題と認識しております。当社はサステナビリティに関する基本方針を定め、「養命酒」を中心とした当社商品・サービスを通じた社会的な健康の増進、駒ヶ根工場を中心とした環境負荷の低減、ゆかりある長野県を中心とした地域との共生と自然環境保全活動として、駒ヶ根工場敷地内の体験型施設「くらすわの森」を通じた地域社会への貢献等を推進してまいります。
④事業領域の拡大に向けた多様な人材活用と人的資本・知的財産等の無形資産への投資
既存事業を深化させ、新たな事業領域への探索に進むには、人的資本が最も重要な経営資本と認識しており、事業戦略に基づく人材開発と多様な人材の積極的起用による活力ある企業文化の醸成を進めてまいります。また、長い歴史の中で蓄積してきたブランド、ノウハウ、顧客基盤を含めた知的財産は、当社の企業価値を支える重要なものと認識し、より一層の価値向上と活用の強化に努めてまいります。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において合理的であると当社が判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ基本方針
当社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」という経営理念の下、すこやかでより良い時間を願う全ての人々のため、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティをめぐる課題に積極的・能動的に取り組み、事業活動を通じて、平和、持続可能な生活、自然との共存、子供たちの未来や地域社会への貢献を目指し、多様性豊かな世界を応援する視点をもって、企業価値の向上に努めます。
「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(ガバナンス)」に関する課題に適切に対応することで、事業リスクの低減と事業機会の拡大による、持続的な企業価値の向上を図り、SDGsの目指す持続可能な社会の実現に貢献します。
サステナビリティに関する基本方針や重要事項等は、経営企画会議直轄の「サステナビリティ委員会」(年2回開催、委員長は代表取締役社長COO)で審議されます。委員会においては、経営戦略との連動を踏まえて審議のうえ、経営企画会議に答申しております。取締役会は、特に重要なリスクについて報告を受けるとともに、当該報告内容に関する監督を行っております。
(3)サステナビリティに関するリスク管理
経営企画会議直轄の「サステナビリティ委員会」において、サステナビリティ経営に関するリスク・機会の抽出、評価並びに対応方針の決定を行っております。そこで特定されたリスクは、全社のリスクを取り扱う「コンプライアンス委員会」(経営企画会議直轄)にて、全社リスクに統合しております。これらの内容は経営企画会議に答申され、経営企画会議内にて審議されております。また、特に重要なリスクは取締役会に報告されております。

(4)サステナビリティに関する戦略
当社のサステナビリティに関する重要課題として、「健康」、「環境」、「地域社会」、「人権・ダイバーシティ」、「ガバナンス」の5つを特定しています。各重要課題の基本方針、取組内容は、以下の通りです。
健康:心身の健康の増進
環境:環境負荷の低減
地域社会:地域社会への貢献
人権・ダイバーシティ:多様な人材の活用
ガバナンス:ガバナンスの強化
① 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
a. 基本方針
当社は、経営理念「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」の下、すこやかでより良い時間を願う全ての人々のため、事業活動を通じて、平和、持続可能な生活、自然との共存、子供たちの未来や地域社会への貢献を目指し、多様性豊かな世界を応援する視点をもって、企業価値の向上に努めております。
2022年からは中期経営計画(2022年4月~2027年3月)の下、既存事業の深化と新規事業の探索を同時に行う「両利きの経営」を推進し、全社一丸となった顧客創造と顧客満足の徹底的な追求、従業員、地域、株主をはじめとした全てのステークホルダーに対する社会的使命の実践に取り組んでおります。
これらの取組みを達成し、中長期的な企業価値を向上させるため、当社は多様な人材の積極的起用による活力ある企業文化を醸成するとともに、人権、ダイバーシティを尊重した組織風土づくりを行うことで、従業員がいきいきと活躍する会社組織を構築してまいります。
b. 人材育成方針
当社は、「既成の概念に捉われない創造性ある人材、自律し自己研鑽を惜しまない人材、職務に真摯な姿勢で取り組む人材」を目指すべき社員像と定義し、以下の取組みにより、人材育成に取り組んでまいります。
・社外人材の活用と社内人材リスキルの実施による、組織的なリスキル
・事業における職責・スキルを再定義し、事業戦略の遂行に必要な人材の質と量を確保
・変化に積極的に対応し自身のキャリアを主体的に開発する「キャリア自律」の意識の醸成
・次の100年を支える後継者の育成
c. 社内環境整備方針
当社は、多様な人材がいきいきと活躍できる会社組織の構築のため、以下の取組みにより、人権・ダイバーシティを尊重した組織風土づくりに取り組んでまいります。
・事業戦略の推進と従業員エンゲージメントを両立した組織風土の改革と環境整備
・労働の本質を「時間の提供」ではなく「企業価値の創造」と捉え、各職種に適した就労環境を整備
・基本的人権の尊重とハラスメントの無い組織風土の維持
・管理職のコミュニケーションスキルの向上
・心理的安全性が担保された双方向のコミュニケーションによる共感と信頼感の深化
i)健康経営の推進
健康経営宣言
当社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」という経営理念の実現を目指し、日々の活動に取り組んでいます。
その実現のためには、まず何よりも社員の健康があってこそ、という考えのもと、社員がいきいきと健康で働けるような職場環境を作っていきたいという想いがあります。
心身の健康は、仕事の充実だけでなく、趣味や家族との時間、夢の実現といった人生の充実の礎となるものです。
当社は、社員の健康の維持・増進に向けた取組みを推進してまいります。
重点取組事項と目標
健康診断
・健康診断受診率100%
・再検査受診の推奨
・特定保健指導受診の推奨
メンタルヘルスケア
・ストレスチェック実施
・有休取得推進
・残業の削減
生活習慣支援
・禁煙支援
・食事支援
・運動支援
体制図
取得資格
d. 中核人材の活用方針
i)キャリア(中途採用)社員についての考え方
事業の拡大、専門スキルを有する人材が必要となった場合等を中心に、即戦力人材として積極的な採用を行ってまいります。目標は特に設定しませんが、キャリア社員の活用は、多様性の確保の観点でも重要と考えており、生産性の向上、企業価値の向上につながるものと考えております。
ⅱ)女性社員についての考え方
消費行動の80%に関与すると言われる女性マーケティングの視点は非常に重要であると考えております。従業員の採用においては、ジェンダー平等に留意した人材の採用を積極的に進めており、女性社員の比率、女性幹部職の人数が徐々に高まっています。
仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇休業、職場復帰および時短勤務等の諸制度を充実させる等、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、人事総務部門と労働組合が中心となり、すべての従業員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めています。
また、当社はワークライフバランスの推進に向け、就業時間管理の徹底、会議の時間短縮・効率化の推進等を通じた長時間労働の削減にも努めております。従業員の健康を守り、育児、介護等を行いやすい環境を実現することは、生産性の向上、企業価値の向上につながるものと考えております。
e. 外国人社員についての考え方
これまで海外事業および原料生薬の輸入業務の分野において、外国語の能力をはじめ専門スキルを有する人材を活用してまいりました。今後もこの考え方は変わりませんが、多様性の確保の観点でさらに活躍の場を広げ、生産性の向上、企業価値の向上につなげていきたいと考えております。
②気候変動に関する戦略
当社は、TCFDの提言に沿い、2022年にシナリオ分析を実施しました。当社で最も大きい売上の割合を占める、「養命酒」のバリューチェーンについて分析を行い、2030年における2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、インパクトの規模と対応策を検討しました。その結果、4℃上昇時の物理的リスクが事業に大きく影響を及ぼすことがわかりました。今後は対象商品の範囲を拡大し、分析を進める予定です。
(5)サステナビリティに関する指標及び目標
①人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
a. ダイバーシティ
b. 育成
c. 健康・安全
②気候変動に関する指標及び目標
当社は、2022年度から、Scope1,2のCO2排出量について、「全社で2030年度に2013年度比50%削減」とする目標を設定しております。また、水資源については当社工場において、2030年度に森林涵養率100%以上とする目標を設定しております。
※2013年度のCO2排出量には、社有車のCO2排出量は含まれておりません
なお、その他の重要課題に係る指標及び目標の開示については、今後検討を進めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社が判断したものであります。
当社は、主力商品「養命酒」をはじめ、国内販売が中心となっております。アジア主要国における市場の拡大に取組んでおりますが、今後の国内景気の動向、日本国内での人口減少によって想定以上に消費量が減少した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
主力商品である「養命酒」は第2類医薬品であり、原料から製品に至るまで、工程毎の厳重な品質管理の下、医薬品等の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMPに基づいて製造を行っております。また、その他の製品についても、「養命酒」に準じて、徹底した品質管理・安全管理に取り組んでおります。
しかしながら、取り組みの範囲を超えて、予期し得ない品質問題等が発生した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社の事業内容は「養命酒」の製造、販売を中心としており、売上高に占める割合は8割程度となっております。
「養命酒」については、特約店・小売店との取組強化、新たな販路の開拓、新規顧客の獲得と既存顧客の維持に取り組んでおりますが、サプリメントや健康食品、エナジードリンク等との競争が激化しており、更なる競争の激化や薬用酒に対する消費者の認識・嗜好の変化、また、最需要期である冬季における暖冬等の気候変動等、「養命酒」の販売に悪影響を及ぼす事象が発生した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」という経営理念に基づき、新商品の開発に取り組んでおります。中期経営計画(2022年4月~2027年3月)におきましても、戦略課題である「効率を重視した既存事業の収益力強化」、「「くらすわ」ブランドを軸としたダイレクトチャネル事業の構築」に基づき、収益力強化とブランド価値向上を目指して取り組んでおります。
しかしながら、商品開発には様々な要因による不確実性が伴うため、新商品が消費者に受け入れられない場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
主力商品である「養命酒」の原料生薬は、その成分の特有性に応じて中国等海外及び国内から調達をしております。調達に際しては、現地の情報を収集し、厳格な品質検査や安全性を確認のうえ、中長期の計画的な原料確保に努めるとともに、更には将来にわたる安定的な調達のために、調達先や契約栽培の拡大等に取り組んでおります。
しかしながら、予期せぬ現地の天候不順や災害、規制等により原料生薬の量的確保ができない状況が続いた場合又は価格が大幅に高騰した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は事業運営上、長野県駒ヶ根市に所在する製造工場をはじめ、本店、販売拠点、商品開発拠点等を国内に保有しております。当社では、大規模地震等の自然災害、新型コロナウイルス等の新興感染症の流行等に伴う事業活動の停止に備え、工場設備の耐震補強や適切な市場在庫の確保、早期復旧体制の整備を進めておりますが、想定を超えた災害・新興感染症の流行等が発生した場合、直接又は間接的に当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
気候変動は世界規模で影響を与える問題であり、当社にとって重要な課題と認識しております。当社では経営企画会議直轄の「サステナビリティ委員会」にて、気候変動リスク・機会の抽出、評価並びに対応方針の決定を行っております。そこで特定された気候変動リスクは、全社のリスクを取り扱う「コンプライアンス委員会」にて、全社リスクに統合しております。この一連のプロセスにより、気候変動リスクへの対応を進めております。しかしながら、取り組みの範囲を超えた事象が起こった場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 情報システム
当社は、生産、販売、管理等の情報や、お問い合わせ、キャンペーン、通信販売等により取得したお客様の個人情報を情報システム上で管理しています。適切なセキュリティ対策を実施しておりますが、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等想定を超えた出来事により、システム障害や外部への漏えい等が発生した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
一般用医薬品卸の寡占化により、当社の販売に占める、特定の取引先への割合が高くなっております。当社は日頃より、慎重な取引先の選定を心掛けるとともに販売管理規程に基づいた適正な条件による取引を行っております。
また、売上債権については与信管理のルールに基づき、取引先の経営状況に応じた与信枠の設定、取引保証金の受け入れにより、貸倒損失の発生防止に努めておりますが、取引先の経営状況の悪化や信用不安が生じた場合等には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は主として取引先との関係強化等を総合的に勘案し、時価のある有価証券を保有しております。保有にあたりましては、経済情勢や発行会社の財政状態を考慮し、保有の適否を検証しております。
しかしながら、今後の経済情勢や発行会社の業績等の動向により時価が著しく下落し、回復の見込みのない場合には、減損損失を計上することとなり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は事業運営上の生産設備、店舗をはじめとする様々な資産を保有しております。設備投資の際は、その事業環境や収益性に鑑み、慎重な設備投資を行っておりますが、設備投資後の収益性の悪化や価値の低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合には、当該資産に減損が発生し、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社の事業は、医薬品医療機器等法、食品衛生法、酒税法、不当景品類及び不当表示防止法、下請法等、様々な法的規制を受けております。当社では、これらの法的規制を遵守すべく体制強化に取り組んでおりますが、法令の改正や法令違反等があった場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社が判断したものであります。
(1)経営成績
当事業年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動規制の緩和と社会経済活動の正常化が進んだこと等により、景気は緩やかに回復しているものの、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク、エネルギー・原材料価格等の高騰や物価の上昇等懸念材料は多く、依然として先行き不透明な状況で推移いたしました。
このような状況の中で、当社は2023年6月20日に会社創立100周年を迎え、経営理念「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」の下、事業ビジョン「すこやかでより良い時間を願う人々を応援する」に基づき、中期経営計画(2022年4月~2027年3月)において、「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」を基本戦略と定め、「養命酒」及び酒類・食品の卸売販売を中心とする既存事業の収益力強化(深化)と、これまで取り組んできた「くらすわ」ブランドを中心とした新たな事業基盤の構築(探索)を同時に行う「両利きの経営」を推進し、収益性を確保しつつ成長投資を行い、新たな企業価値の創造に取り組んでまいりました。
当事業年度の売上高は、前年同期比3.8%減の10,242百万円となりました。養命酒関連事業の売上高は9,121百万円(前年同期比5.9%減)となりました。くらすわ関連事業の売上高は1,120百万円(前年同期比17.4%増)となりました。
売上原価は、前年同期比1.3%増の4,102百万円となりました。これは主に原材料価格の高騰によるコスト負担の増加による影響を受けたものであります。
販売費及び一般管理費は、前年同期比2.7%増の5,666百万円となりました。これは主にくらすわ関連事業に係る先行投資、養命酒ビル更新工事等によるものであります。
以上の結果、営業利益は前年同期比56.0%減の473百万円となりました。
営業外損益は、主に受取配当金が増加したことにより前年同期比17.9%増の475百万円となりました。
以上の結果、経常利益は前年同期比35.9%減の949百万円となりました。
特別利益として、関係会社株式売却益を450百万円計上しました。
特別損失として、主に固定資産除却損を16百万円計上しました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、前年同期比5.8%減の426百万円となりました。
以上の結果、当期純利益は前年同期比6.6%減の952百万円となりました。
セグメント別には以下のとおりです。
① 養命酒関連事業
国内「養命酒」については、テレビCMや新聞等の広告を実施したほか、卸店やドラッグストア等主要販売チャネルである小売店と協働して陳列強化等を行い売り場づくりに取り組んだものの、物価上昇や健康意識の変化による消費行動への影響等の要因により、売上高は7,458百万円(前年同期比6.6%減)となりました。酒類・食品については、「フルーツとハーブのお酒」の売上が前年を下回ったこと等により、853百万円(前年同期比4.5%減)となりました。海外(海外「養命酒」を含む国外販売)については、431百万円(前年同期比3.3%減)となり、不動産賃貸・太陽光発電については、378百万円(前年同期比3.0%増)となりました。
以上により、養命酒関連事業の売上高は9,121百万円(前年同期比5.9%減)となりました。
② くらすわ関連事業
店舗は、来客数が回復していることにより堅調に推移しました。通信販売は、「幸健生彩DX」、「五養粥」が売上に寄与しました。外販(他社チャネル販売)は、郵便局等でのギフト販売が好調に推移しました。また、漢方製剤、健康サポートフーズ・グッズ等を展開する通信販売専用ブランド「まいにち養生365(まいにちようじょうさんろくご)」及び産直・お取り寄せECサービス「くらすわマルシェ」を開始しました。
以上により、くらすわ関連事業の売上高は1,120百万円(前年同期比17.4%増)となりました。
駒ヶ根工場敷地内の体験型施設「くらすわの森」は、2024年秋のグランドオープンに向け、順調に建設を進めております。
当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
b. 商品等仕入実績
当事業年度における商品等の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は仕入価格によっております。
当社は、原則として見込み生産方式を採っているため、記載を省略しております。
d. 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2)財政状態の状況
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べ4,855百万円増加し、54,417百万円となりました。これは主に関係会社株式が売却により1,584百万円減少した一方で、有形固定資産が体験型施設「くらすわの森」の建設工事に係る設備投資等により1,768百万円、投資有価証券が保有株式の時価評価等により4,194百万円それぞれ増加したことによるものであります。
負債は、前事業年度末に比べ1,002百万円増加し、7,774百万円となりました。これは主に未払金が236百万円、未払法人税等が152百万円それぞれ減少した一方で、繰延税金負債が保有株式の時価評価等により1,576百万円増加したことによるものであります。
純資産は、前事業年度末に比べ3,852百万円増加し、46,642百万円となりました。これは主に利益剰余金が当期純利益952百万円の計上及び配当金762百万円の支払いにより190百万円、その他有価証券評価差額金が3,621百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ2,220百万円増加し、4,394百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、667百万円(前年同期比61.8%減)となりました。これは主に税引前当期純利益1,379百万円、減価償却費558百万円の増加要因と、関係会社株式売却益450百万円、法人税等の支払額542百万円、棚卸資産の増加額165百万円、未払費用の減少額109百万円の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果増加した資金は、2,313百万円(前年同期は1,451百万円の支出)となりました。これは主に定期預金の純減による収入2,400百万円、関係会社株式の売却による収入2,474百万円、有形固定資産の取得による支出2,491百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は、760百万円(前年同期比37.0%増)となりました。これは主に配当金の支払いによるものであります。
当社の主な資金需要は、原材料の購入や商品仕入、主に人件費、広告宣伝費をはじめとした販売費及び一般管理費等の営業費用に係る運転資金と設備の更新・拡充等の設備資金であり、概ね営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする自己資金で賄っております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような見積りや予測を必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
① 棚卸資産の評価
当社は、棚卸資産を総平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)により評価しております。期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、一定期間を超えて滞留した棚卸資産については、将来の販売見込み等を反映して正味売却価額を見積っております。
当事業年度における棚卸資産評価損の計上金額は、一部食品での消費拡大を見越した生産を行ったものの、予測を下回る受注に留まったことから前事業年度に比べて増加する結果となりました。
当社は、中期経営計画(2022年4月~2027年3月)において、「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」を基本戦略と定め、「養命酒」及び酒類・食品の卸売販売を中心とする既存事業の収益力強化(深化)と、これまで取り組んできた「くらすわ」ブランドを中心とした新たな事業基盤の構築(探索)を同時に行う「両利きの経営」を推進し、収益性を確保しつつ成長投資を行い、新たな企業価値の創造に取り組んでおります。この点、当社は既存事業の収益性を確保すべく、過去に有効期限内での販売が見込めない酒類・食品を対象に棚卸資産評価損を計上した実績を踏まえ、特に委託製造を行っている食品については、有効期限に照らし一定期間を超えて滞留する棚卸資産が生じることがないよう在庫水準適正化への取り組みを継続しております。
見積りにあたっては、過去の実績に加えその時点で入手可能な将来の需要動向や市場動向等、合理的と考えられる様々な要因を考慮したうえで判断しておりますが、見積金額が実際の結果と異なる可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
③ 退職給付費用及び債務
従業員の退職給付費用及び債務の計算は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率に加え、従業員の年齢構成等の変動により影響を受ける昇給率、退職率、平均残存勤務期間等の要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」を経営理念に事業を展開しており、生活者の健康に対する多様なニーズに応えるため、様々なカテゴリーの商品開発を進めてきました。また国内のみならず、海外市場向けの商品開発も進めており、これら開発を行うにあたっては、お客様の価値を起点としたマーケティング思考を最重視しています。また、大正製薬株式会社をはじめとした企業や外部機関との連携を活かし、商品価値の向上や深化を進めると共に、原料生薬の安定確保に繋がる活動も行っております。
当事業年度の研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(1)養命酒関連事業
当事業年度は、クラフトジン「香の雫(かのしずく)」が、ジンの本場イギリスで開催された世界最大級のジン品評会「World Gin Awards 2024(ワールドジンアワーズ)」の「コンテンポラリースタイルジン部門」で金賞を獲得しました。ジン部門は毎年エントリーが多く激戦で、今年度も世界47カ国から900を超えるエントリーがあり、バーテンダーやバイヤー、評論家など、お酒業界に携わる多数の著名人による審査を受けました。その中で、日本産ジンの中の国別最高賞であるCountry Winner を受賞し、日本一に選ばれました。
以上の結果、養命酒関連事業の研究開発費は
(2)くらすわ関連事業
「広げる、すこやかなくらしの輪」のブランドコンセプトに基づき、「おいしい体験、たのしい体験、すこやかな体験」の3点を意識しながら、食品を中心に新商品の開発や既存品のリニューアルを行っております。また、素材の良さを活かした製法にこだわり、おいしさや安心・安全への意識が高いお客様へ向けた商品展開を関連部門や製造委託先企業と連携を密にしながら商品開発を進めております。
当事業年度は、産直・お取り寄せECサービス「くらすわマルシェ」が立ち上がり、マルシェ用の新商品開発や直営の商業施設においても活用可能な業務用原料の開発を行い、くらすわブランドの強化に取り組みました。その他商品としては「ドリップコーヒー」、「レモングラスティー」、「ごはんにお供するシリーズ」、「サステナブルタンブラー」、「五島列島安納芋バター」などを開発し、品揃えの幅を広げております。
また、通信販売専用商品の開発も進めており、2023年5月より「幸健生彩DX(販売名:幸健生彩R)」をリニューアル発売いたしました。さらに2023年9月より漢方製剤“養命酒製造の漢方”「当帰芍薬散(販売名:養命酒製造 当帰芍薬散料エキス錠)」を新発売いたしました。
これまでに培った経験を活かし、お客様の「すこやかなくらし」につながる商品開発に取り組んでまいります。
以上の結果、くらすわ関連事業の研究開発費は