第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 わが国経済の今後の見通しにつきましては、過年度から続く業績悪化を踏まえ、当連結会計年度より、中期経営計画『ATSUGI VISION 2024』を改訂し、「顧客視点に立脚した価値創りへのシフト」、「ブランド力強化による市場ポジションの明確化」、「企業風土改革による強い組織力の実現」、「従前発想から脱却したビジネスモデルの実現」の4つの課題を掲げました。それらの課題に対する戦略である「付加価値の最大化」、「コスト構造改革」、「資本の効率化」、「組織改革(人的資本への投資)」に取り組むことにより黒字転換を図り、さらには将来の持続的成長のための安定した財務基盤の確立を目指しております。また、お客様の価値観・ライフスタイルが大きく変容していく中で、より良い商品やサービスをお届けするべく、企業の存在意義と目指すべき姿を見直す目的でリブランディングを実施しました。パーパスを「肌と心がよろこぶ、今と未来へ。」、ビジョンを「肌心地から、感動を生み出す フィールウェアのアツギへ。」に制定し、企業価値向上に向けて取り組んでおります。

 当連結会計年度においては、生産拠点の海外集約や商品の価格見直しなどによる収益構造の改善が進み、損失幅は大きく縮小したものの、営業利益の黒字化には至りませんでした。今後は黒字化達成に向けて、生産工場における自動化を積極的に進め、さらなる生産効率アップと製造原価の低減を図るとともに、パーパス、ビジョンを実現するべく付加価値の高い商品創りとブランド力強化に取り組んでまいります。また、中期経営計画の重点取組項目として位置付けているD2C事業の確立については、運営体制の強化を図り、売上拡大を目指します。さらに、資本の効率化を進めるため、政策保有株式の縮減、CCCの短縮などに注力してまいります。組織改革(人的資本への投資)に関しては、従業員の士気を高め一人ひとりが活き活きと活躍することができる環境の整備を目的として人事制度改革を進めております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1)ガバナンス

 当社では、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題への対応は、主に2023年5月に設置されたサステナビリティ委員会が担います。サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長として原則として四半期に1回開催し、気候変動に関連する課題の特定及び対応策についての議論を行います。また、審議内容を原則年2回取締役会に答申します。取締役会では対応方針が決議され、サステナビリティ委員会を通じて進捗管理や社内啓蒙が実施されます。

 

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 2023年度は4回のサステナビリティ委員会を開催し、主に気候変動と人権に関する内容について審議を行いました。さらに、取締役会に対し取り組みの報告を1回実施し、サステナビリティ委員会での取り組みを共有するとともに、人権方針は取締役会決議の上策定しています。

 

<当社グループのサステナビリティに関する主な議論>

サステナビリティ委員会

2023年9月 繊維産業における責任ある企業行動宣言について

 

2023年9月 サステナビリティに関する開示内容の確認と更新について

 

2023年10月 繊維産業における責任ある企業行動宣言の実施決議

 

2023年12月 アツギグループ 人権方針(案)について

取締役会

2023年12月 サステナビリティの取組報告

 

2024年1月 アツギグループ 人権方針決議

 

 

(2)戦略

 当社グループは、日本政府が掲げている温室効果ガス削減目標に沿ったサステナビリティの実現を目指しています。そのため、政府が達成年度に設定している2030年と2050年を基準としてリスク・機会の特定を行いました。リスク・機会の特定にあたっては、TCFD提言に基づき、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオという複数のシナリオを用いました。複数シナリオの利用により、各戦略の将来にわたる柔軟性を確保しております。

 

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 当社グループはまず、1.5/2℃シナリオにおいて影響が大きい移行リスクについて特定しました。移行リスクでは、主に、炭素税導入をはじめとする政策・規制によるもの、原材料高騰等に関するものが特定されました。これらのリスクに対し、当社グループは、本社でのLED照明導入や、中国の新工場における再エネ電力導入の検討等、使用エネルギーの見直しを行っています。また、中国の新工場では節水型の設備を導入し、2025年度までに水使用量を13,870t(2022年度対比5.9%)削減する予定であり、使用する原料についても水質汚染の少ないものを導入することを検討しています。さらに、2023年度には輸送時の積載効率改善によって輸送コスト及び使用する燃料の削減を行いました。

 また、4℃シナリオにおいて影響が大きい物理リスクでは、異常気象の激甚化や干ばつ、平均気温上昇を背景として、生産拠点の操業停止、綿花の生育不良、季節性製品需要の変化が特定されました。これらのリスクに対し、当社グループは、現状中国への一極集中が見られる生産拠点を国内外の協力工場に分散させるといったBCP対応を進めております。更に今後は調達ソースの多様化や、サプライヤー選定基準に環境への取組みを加えることにより、事業継続力を高めていくことを検討しております。さらに、気候変動のみでなく、人権分野での取り組みも強化し、事業活動に関係する人権への負の影響を特定、予防、軽減するためにデューデリジェンスを継続的に実施し、適切な情報発信に努めます。

 当社グループは、リスク特定で用いた枠組みのもと、機会の特定も行いました。脱炭素社会への移行に伴う機会としては、環境配慮型製品の需要増加やESG投資による資金調達コストの削減等が特定されました。当社グループは現在、FSC認証紙の使用、商品パッケージやショッピングバッグの脱プラスチック推進、再生素材の導入、リサイクル活動の実施、EC販売における包装の簡素化等、調達から製品の販売に至るまで、様々な環境対策を行っています。これらの取組みを継続、拡大していくことと並行して積極的な情報開示を行うことで、消費者、投資家のニーズをとらえた製品・サービスの提供が可能となると考えております。

 気候変動の物理的な影響が顕在化することに伴い生じる機会は、EC販売の需要増加や涼感機能性商品の需要増加が特定されました。EC販売の需要増加については、当社グループは2017年に自社ECサイトをリニューアルオープンしました。さらに、中期経営計画『ATSUGI VISION 2024』の初年度である2022年度にはEC強化プロジェクトを発足し、2023年の『ATSUGI VISION 2024 改訂』においても自社ECの強化を打ち出しております。また、涼感機能性商品の需要増加については、当社グループは、暑さに対応した商品の販売を拡大しています。冷感効果を持つ糸や汗のべたつきを軽減する素材を使用した商品、蒸れを軽減する仕様の商品、紫外線対策ができるUVカット機能を搭載した商品等、気温上昇による猛暑・酷暑で需要拡大が見込めるインナーウェア・レッグウェアを製造販売しています。

 特定したリスク・機会に対応するため、全社で情報を共有し、環境経営に関する円滑な意思決定及びサステナビリティ推進活動の強化を図ってまいります。

 

■リスク機会一覧表

 

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※補足

1.事業インパクトの項目のうち、時間軸は以下のように設定しています。

短期:0~3年 中期:4~10年(2030年) 長期:11~30年(2050年)

2.事業インパクトの項目のうち、影響度は以下のように設定しています。

大:事業及び財務への影響が大きくなることが想定される

中:事業及び財務への影響がやや大きくなることが想定される

小:事業及び財務への影響が軽微であることが想定される

 

 また、当社グループは、従業員のチャレンジ性と自律した行動を促し、新たな価値創出やビジネスモデル実現に資する企業風土改革を進めています。

 特に、人材の育成と活躍推進を企図した人事制度改革と、パーパスの浸透と多様性享受を企図した社内風土改革を具現化できる環境整備に注力しています。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題への対応は重要な経営課題の一つであると考え、全社的なリスク管理体制を構築しています。リスクの特定はサステナビリティ委員会が担います。サステナビリティ委員会は代表取締役社長、管理本部長、レッグ事業本部長、インナー事業本部長、開発本部長、生産本部長、経営企画部長、総務部長、生産統括部長、生販計画部長、経理部長で構成されており、各部門の報告に基づいた審議を行っています。また、気候変動関連リスク以外のリスクを踏まえた相対的な評価(優先度の判定)はリスクマネジメント委員会が行います。なお、サステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会はともに社長が管轄しています。

 

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(4)指標及び目標

 当社グループは2022年度の有価証券報告書における開示まで、環境問題への取組みの重要性を認識しながらも、製品・サービスの環境配慮性能の向上やESG全般への取組みの強化に注力していたことから、温室効果ガス削減の定量的な目標設定及び実績値の算定は行ってきませんでした。しかしながら、現在、脱炭素への国際的な合意が強化され、社会的要請が高まっています。当社グループも、事業を通じて社会的な責任を果たすため、また、気候変動関連リスク・機会の精度の高い分析を行うため、今後は自社の活動範囲での排出であるScope1、2の算定のみでなく、将来的にはサプライチェーン全体が対象であるScope3の算定も行ってまいります。

 今後、日本政府が掲げている温室効果ガス削減目標に沿い、2030年度や2050年度等、具体的な年度設定を行ったうえで中長期的なロードマップを検討してまいります。

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※補足

1.アツギ東北株式会社での生産業務を2022年5月末に終了し、当社グループの中国生産子会社である煙台厚木針織有限公司及び厚木靴下(煙台)有限公司に生産業務を移管しております。

2.2022年度は中国国内において断続的な電力供給制限が行われたことや、上海市ロックダウン等の影響を受けて工場の稼働率が低下したことにより、一時的にScope2排出量が減少いたしました。

 

 また、当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

①多様性と包括性の推進

a.女性活躍と次世代育成に資する環境整備

厚生労働省が進める「女性活躍推進法」や「次世代育成支援対策推進法」による「行動計画」のうち、主たる宣言の2024年3月末現在の進捗は次の[ ]内記載のとおりです。

・部長職以上に女性が占める割合を20%以上                [2024年3月末現在14.5%]

・男性の育児のための休業・休暇・短時間勤務制度利用率を50%以上         [2023年度実績25%]

・フレックスタイム制度の導入                      [2024年度中に導入予定]

※補足

 主要な事業を営む会社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行なわれているものの、連結グループに属する全ての会社では行われておらず、連結グループにおける記載が困難であるため、提出会社単体の指標を開示しております。

 

b.フェムテックへの取組み

フェムテックにまつわる企業活動を「フェムサポ®」と称して、社内プロジェクトチーム「フェムサポ®チーム」を発足し、フェムテック推進のための様々な活動と提案を社内外へ発信しています。

 

c.その他D&Iに向けた取組み

・神奈川県全体で推進する「D&Iかながわメンバーズ」への参画

・D&I全般に関する取り組み(シニア活用、育児・介護、LGBTQ、障がい者等)

 

②パーパス浸透とブランド力向上

従業員一人ひとりにパーパス(存在意義)、アンビション(目指すべき姿)を浸透させ、これを実現するためのアツギウェイ(行動指針)を明確に示し、新たな価値創出とブランド力向上を図ることができる企業風土の醸成に取り組んでいます。

行動指針であるアツギズム(「あらゆることを楽しむ。」「常にお客さまを想う。」「ギアを入れて、自分から。」「ずっと挑戦し続ける。」「向き合う、まっすぐ誠実に。」)の推進に向けては、提案制度「ATG賞(明るく・楽しく・元気にチャレンジしま賞)」を設け、具現化を推進しています。

 

③働き方改革に資する諸制度の整備

a.人事制度改定

新たな人事制度では「賃金制度」「職能資格制度」「評価制度」を刷新し、本格的な運用を開始しています。従業員のキャリア自律とチャレンジ志向を促すとともに、一部、業績連動型の報酬体系を導入しながら、個人目標だけでなく全社計画達成への業績志向を推進します。

 

b.従業員の働きやすい環境整備

2024年度には、65歳へ定年延長するとともに、ワークライフバランスを考慮したコース選択を整備します。また、フレックスタイム制度を導入し、テレワークの利用とあわせた従業員が働きやすい環境づくりを推進していきます。

 

c.人材力強化への取組み

従業員のエンゲージメント強化やメンタルヘルスを進めながら、離職率・傷病休職低減につなげていきます。また、多様な人材確保を目的に採用力を強化するとともに、効果的な人材育成が図れるよう教育体系の再構築を進めていきます。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に最大限の努力をする所存であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)為替レートの変動リスク

 当社グループは、生産拠点を海外シフトしており、外国通貨建ての取引があります。従って、当社グループの取引及び投資活動等に係る損益は、外国為替の変動により影響を受ける可能性があります。

 また、当社グループは、ヘッジ取引により、為替変動によるリスクを低減しておりますが、予測を超えた為替変動が業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(2)海外事業

 当社グループは、主に生産拠点を中国へ移管しておりますが、中国政府による規制、人材確保の困難さ、通貨切上げ等のリスクが存在します。

 このようなリスクが顕在化することにより、中国での事業活動に支障を生じ、業績及び将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(3)原油価格の変動リスク

 原油価格の乱高下に伴い、当社グループの主力商品である靴下の主要な原材料であるナイロン糸及び電力・重油等の購入価格の上昇により、業績及び将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(4)市況による影響

 当社グループの中核である繊維事業は、市況により業績に大きな影響を受ける業種であります。市況リスクとしては、ファッション・トレンドの変化による需要の減少、天候不順による季節商品の売上減少、デフレによる低価格商品の増加、海外からの低価格商品の輸入増等により、業績及び将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(5)貸倒リスク

 当社グループは、販売先の状況及び過去の貸倒実績発生率による見積りに基づいて貸倒引当金を計上しておりますが、販売先の財政状態の悪化、その他予期せざる理由により、貸倒引当金の積み増しを行う可能性があります。

 

(6)製造物責任・知的財産

 当社グループの製品の欠陥に起因して、大規模な製品回収や損害賠償が発生し、保険による補填ができない事態が生じた場合や、知的財産に係わる紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされた場合、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(7)災害や停電、感染症等による影響

 当社グループの本社及び生産・物流拠点において災害、停電又はその他の操業を中断する事象が発生した場合、当社グループの事業及び経営成績に著しい影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の影響が長期化した場合、減産や操業停止など、当社グループ全体の事業運営及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(8)固定資産の減損について

 当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化により事業の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合などには、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴う行動制限の解除により社会・経済活動の正常化が進み、緩やかな回復傾向が見られました。その一方で、不安定な国際情勢や、外国為替相場の円安基調等による資源・エネルギー価格の高騰、これらを背景とした物価上昇等、依然として先行き不透明な状況で推移しました。

 繊維業界においては、社会・経済活動の正常化に伴い外出機会が増加したことや、入国制限緩和によりインバウンド需要が回復基調で推移したこと等により、市況の好転が見られるものの、物価上昇の長期化による消費者の生活防衛意識や節約志向は根強く、予断を許さない状況が続いております。

 このような状況の中、当社グループは、2023年3月期から2025年3月期までを実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2024』を改訂いたしました。改訂後の計画では、「顧客視点に立脚した価値創りへのシフト」、「ブランド力強化による市場ポジションの明確化」、「企業風土改革による強い組織力の実現」、「従前発想から脱却したビジネスモデルの実現」の4つの新たな課題を掲げて、それぞれの課題に対する戦略を推進しております。あわせて、企業ブランド強化策の一環として、「肌と心がよろこぶ、今と未来へ。」をパーパスに、「肌心地から、感動を生み出す フィールウェアのアツギへ。」をビジョンに制定し、グループ一丸となってこれらを実現するための取り組みを進めております。

 当連結会計年度は、人流の回復による経済活動の正常化が進んだことにより、売上高は前連結会計年度を上回る水準で推移いたしました。利益面においては、商品価格の一部見直しを実施したことや、生産機能を中国工場へ集約し生産体制の最適化を図ったことによる製造原価の低減効果により改善傾向にありますが、円安の進行、原燃料価格や物流費の高止まりなどの要因により、営業利益の黒字回復には至りませんでした。また、改訂後の『ATSUGI VISION 2024』において掲げた政策保有株式の縮減方針に則り、政策保有株式の売却を進めたことによる投資有価証券売却益643百万円、中国の連結子会社における固定資産の譲渡等による固定資産売却益1,329百万円を特別利益に計上いたしました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は21,209百万円(前年同期比3.4%増)、営業損失は425百万円(前年同期は2,131百万円の損失)、経常損失は51百万円(前年同期は1,583百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,331百万円(前年同期は1,215百万円の損失)となりました。

 

 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

[繊維事業]

 レッグウェア分野は、行動制限の緩和による人流の回復や、商品価格を適切な価格に見直したことが寄与し、同分野の売上高は11,365百万円(前年同期比3.2%増)となりました。

 インナーウェア分野は、消費者の生活防衛意識の高まりなどから全般的に厳しかったものの、紳士インナーウェアが堅調に推移したことにより、同分野の売上高は8,638百万円(前年同期比4.8%増)となりました。

 これらの結果、当事業の売上高は20,004百万円(前年同期比3.9%増)、営業損失は821百万円(前年同期は2,474百万円の損失)となりました。

 

[不動産事業]

 保有資産の有効活用を進めており、当事業の売上高は580百万円(前年同期比6.6%増)、営業利益は422百万円(前年同期比8.8%増)となりました。

 

[その他]

 その他の事業につきましては、太陽光発電による売電は太陽光発電所のケーブル盗難被害により発電量が減少しましたが、現在は盗難被害から復旧しております。また、介護用品の販売も苦戦しました。これらの結果、当事業の売上高は624百万円(前年同期比10.6%減)、営業利益は60百万円(前年同期比3.5%増)となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は42,014百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,325百万円増加いたしました。これは主に、棚卸資産の増加891百万円、有形固定資産の増加794百万円、流動資産のその他の増加506百万円、無形固定資産の増加331百万円、現金及び預金の減少917百万円及び投資その他の資産の減少222百万円等によるものであります。

 負債の部は8,572百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,183百万円減少いたしました。これは主に、流動負債のその他の減少661百万円、支払手形及び買掛金の減少523百万円、長期借入金の減少470百万円及び繰延税金負債の増加525百万円等によるものであります。

 純資産の部は33,441百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,508百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益1,331百万円の計上による利益剰余金の増加及びその他の包括利益累計額の増加1,168百万円等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

対前年同期比(%)

繊維事業

8,036

117.2

合計

8,036

117.2

(注)1.セグメント間取引については、内部振替前の数値によっております。

2.金額は、製造原価によっております。

 

b.受注状況

 当社グループ(当社及び連結子会社)は見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

対前年同期比(%)

繊維事業

20,004

103.9

不動産事業

580

106.6

その他

624

89.4

合計

21,209

103.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱しまむら

5,509

26.9

5,941

28.0

 

 

④キャッシュ・フローの状況

科目

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

△1,356

△1,344

12

投資活動によるキャッシュ・フロー

760

456

△303

財務活動によるキャッシュ・フロー

△471

△472

△0

現金及び現金同等物に係る換算差額

316

460

144

現金及び現金同等物の増減額

△751

△899

△147

現金及び現金同等物の期末残高

4,749

3,850

△899

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,909百万円等による増加、有形固定資産売却損益939百万円、棚卸資産の増加765百万円、投資有価証券売却益643百万円、仕入債務の減少609百万円等による減少及び法人税等の支払額427百万円等により、1,344百万円の支出となりました。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入1,760百万円、有形固定資産の売却による収入586百万円、無形固定資産の売却による収入276百万円、有形固定資産の取得による支出1,280百万円、無形固定資産の取得による支出873百万円等により、456百万円の収入となりました。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出470百万円等により472百万円の支出となりました。

 

 この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ899百万円減少し、3,850百万円となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 当社グループの経営に影響を与える大きな要因の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、3 事業等のリスク」をご参照ください。

 当社グループにおける資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。これらの資金需要につきましては、自己資金を基本としており、必要に応じて、金融機関からの借り入れによる調達を行っております。また、当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、資金調達に関し、低コストかつ安定的な資金の確保を基本に、財務状況や金融環境に応じ、最適と思われる調達手段を選択しております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2023年3月期から2025年3月期までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2024』を策定し、「顧客視点に立脚した価値創りへのシフト」、「ブランド力強化による市場ポジションの明確化」、「企業風土改革による強い組織力の実現」、「従前発想から脱却したビジネスモデルの実現」の4つの新たな課題を掲げて、それぞれの課題に対する戦略を推進しております。

 しかしながら、付加価値の最大化を目的に取り組んでいるD2C事業確立・強化、中国市場販売の拡大、ヘルスケア商品の強化等において『ATSUGI VISION 2024』の最終年度である2025年3月期での計画数値の達成は困難と判断し、修正することといたしました。目標とする財務指標は以下のとおりです。

 

 

2024年度

当初目標

修正目標

連結売上高

255億円

240億円

連結営業利益

12億円

5億円

連結営業利益率

4.5%

2.1%

当期利益

13億円

16億円

ROE

4%

5%

ROIC

3%

1%

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、「肌と心がよろこぶ、今と未来へ。」というパーパスのもと、世の中の価値観・ライフスタイルが大きく変化していることを踏まえ、すべての人に寄り添い、従来のレッグウェア・インナーウェアというカテゴリーを超えた、フィールウェア(肌に心地よい・心に響く衣服)をお届けすることを目指しています。お客様に気づきと感動をもたらすフィールウェアを提供するため、当社最大の強みである技術力及び商品開発力に磨きをかけ、研究開発を積極的に行っております。

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は327百万円であり、繊維事業に係るものであります。

 

 セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

[繊維事業]

(1)レッグウェア分野

 ストッキング・ソックスの開発

 2024年春夏シーズンよりプレーンストッキングの主力ブランド「ASTIGU/アスティーグ」から、新アイテムとして「肌 25デニールシアータイツ」を発売いたしました。独自技術で毛穴や肌のくすみをカバーしながら程よい透明感を持たせ、自然な素肌感を演出します。ストッキングより少し厚い生地は、はきムラや横ジマが出にくいだけでなく、丈夫で置き寸が比較的大きく出る編み方を採用しました。

 スクール向けソックス「School Time/スクールタイム」を全面リニューアルしました。お子様と保護者の方によるアンケートをもとに、洗濯後も落ちない泥汚れが見えにくくなる新商品「足底グレーソックス」を開発しました。また、ロングセラーソックス10型については丈夫さを30%アップ(当社従来品比較)しました。

 

(2)インナーウェア分野

 インナーウェアの開発

 2024年春夏シーズンより新ブランド「みんなの、みんなの。」を発売いたしました。脱ぎ着がしやすく、肌に優しく、扱いやすく、環境にもやさしいアイテムを幅広いサイズを揃え展開しています。

 たとえば前後裏表のないインナーは、丸編みの生地を使うことで脇の縫い目をなくし、前後の襟ぐりのカットを同じにすることで前後裏表の見た目の違いをなくしました。タグはデザイン化しているため、前後裏表どのように着ても違和感がありません。「みんなの「楽ちん」は、みんなのハッピーなのだ。」を合言葉に、インナーウェアを中心に様々なアイテムを開発いたしました。