第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、資源事業を社業の柱とし、社会のニーズに応じた良質な資源の安定供給を図ることにより、発展・拡大してまいりました。今後とも、資源の開発・安定供給に努めてまいります。

機械・環境事業につきましては、社会のニーズに応じた良質な商品を提供するとともに、事業フィールドの拡大を図ってまいります。さらに、不動産事業や再生可能エネルギー事業につきましても、総合資源会社としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現することにより、株主、取引先及び地域社会に貢献してまいります。

 

(2) 第2次中期経営計画の総括

当社グループは、2021年度から2023年度の3ヵ年を対象とした第2次中期経営計画を策定し、実行してまいりました。

当該計画期間においては、『大型投資を着実に実行し、持続的成長へ向けた資源の獲得を目指す』と『国内外の需要動向に対応した経営資源の配分を行う』の2つの基本方針のもと、鳥形山鉱業所第3立坑建設工事や八戸鉱山新鉱区開発、開発準備段階にあったアルケロス鉱山の開発に向けた手続きなど、これら大型投資の実現に向けて取り組んでまいりました。

自然災害に起因した工事遅延や、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、当初の計画から遅れが生じたものもありますが、大型投資の実現に向けた取り組みを着実に進展してまいりました。

鳥形山鉱業所第3立坑建設工事は、当初計画から約1年工期を延期したものの、2024年6月からの本格運用開始を予定しております。八戸鉱山新鉱区開発は、開発工事は順調に進んでおり、2021年度より一部出鉱を開始しておりますが、工事が全て完了し本格操業となるのは2026年度を予定しております。アルケロス鉱山は、2023年4月に開催した取締役会にて経済合理性を確認し開発移行を決定し、工事に着手しております。

当該計画期間の業績は、石灰石の価値向上や生産の効率化に加え、円安の進行と銅価の上昇といった外部要因や、鳥形山の第3立坑建設工事の遅れによる減価償却費の繰り延べなどにより、資源事業を中心に各セグメントの業績が堅調に推移したことから、計画を上回る業績となりました。

また、2022年度には政策保有株式の縮減方針を策定しており、当該計画期間には19銘柄29億円を売却したことに加えて、株主還元方針を拡充する方向で見直し、資本効率性の改善にも努めたことから、当該計画の経営目標であるROAや自己資本比率なども計画を上回りました。


 


 

(3) 第3次中期経営計画の概要と実現に向けた取り組み

当社グループは、2024年度から2026年度の3ヵ年を対象とする第3次中期経営計画を策定し、2024年5月に公表しております。当該計画の概要は、以下のとおりです。

 

① 長期ビジョン(2033年度のありたい姿)

資源の開発・安定供給を通じて社会に貢献するとともに、「総合資源会社」としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現する。

≪2033年度の経営管理目標≫

 ROIC(投下資本利益率) 7%以上

 

当該計画期間では、第1次中期経営計画より掲げてきた長期ビジョン『資源の開発・安定供給を通じて社会に貢献するとともに、「総合資源会社」としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現する。』を2033年度のありたい姿として明示し、2033年度の経営管理目標をROIC7%以上に設定しております。

ありたい姿とは、当社事業の基軸である資源事業では、資源の安定供給に努めるとともに、長年培った技術力を最大限に活かして、新規資源の確保・開発並びに鉱物資源の価値向上を図っていくこと、さらに地質コンサルティングなど鉱山周辺技術の開発に取り組み、「総合資源会社」としての事業基盤の更なる強化を目指しつつ、機械・環境事業、不動産事業、再生可能エネルギー事業など当社グループの総合力を発揮して、企業の持続的成長を実現するというものです。

その実現に向けた定量目標として、今回新たに定めたものがROIC7%以上の達成であり、これは当社が想定する資本コストであるWACC6%を上回る水準となります。

当該計画期間においては、2033年度のありたい姿からバックキャストすることで策定した成長戦略のもと、具体的な取り組みを実行してまいります。

 

② 基本方針

  ・ROIC経営を導入し管理にあたるとともに、全社から各セグメント、各セグメントから各事業所単位への浸透・定着と資本効率の向上を図る

  ・アルケロス鉱山の開発を着実に進め、操業開始を実現する

  ・鳥形山を中心とする石灰石供給体制の最適化に取り組む

  ・新市場開拓(石灰石・ポリテツ)に向けた取り組みを推進する

  ・権益(Major/Minor)やアプローチ(Green Field/Brown Field)にこだわらず、新規資源の確保と開発に取り組む

 

③ 各セグメントの戦略

イ.資源事業(鉱石部門)の取り組み

鉱物資源の価値向上に継続して取り組むだけでなく、高品位の石灰石を生産し、かつ生産量は国内最大規模を誇る鳥形山鉱山の強みをさらに活用し、国内石灰石鉱山の生産・販売体制の最適化に取り組み、鳥形山における生産量及び販売量13,500千トン/年の確保、生産効率の向上、さらにはBCPの強化を図ってまいります。

また、太平洋に面し、6万トンクラスの大型船舶への対応が可能な船積施設を有している鳥形山の強みを活かし、石灰石の海外市場開拓にも注力するなど、国内の供給体制はより堅固にしつつ、海外向け販売の拡大と新市場の開拓に柔軟に対応してまいります。

ロ.資源事業(金属部門)の取り組み

引き続きアタカマ鉱山周辺地域の探鉱を進めることで新規鉱量の獲得と収益向上を図るとともに、アルケロス鉱山の開発を着実に進め、当該計画期間の最終年度となる2026年度の操業開始と収益貢献の実現を目指してまいります。

また、今後は従来のGreen Field案件だけでなく、有望な案件にマイナーで参入することで初期段階の探鉱リスクを軽減し、かつ開発までのリードタイムが比較的短いBrown Field案件もターゲットに加え、銅をはじめとする新規鉱物資源の確保と開発に取り組んでまいります。

ハ.機械・環境事業の取り組み

環境部門の主力製品であるポリテツは、新規顧客の獲得に加え、原料の多様化に注力し、安定供給体制の構築を図ってまいります。また、台湾及びベトナムをターゲットにして現地に工場を建設し、東アジア、東南アジアから海外市場の開拓を図ってまいります。

機械部門においては、シンターラメラーフィルタの競争力強化による国内バグフィルタ市場への参入及び輸出拡大、プラズマ脱臭機の販路拡大、一人用BOX型喫煙ブース「COCOPA」の拡販に注力してまいります。

 

④ 財務指標と中長期経営目標

当該計画期間では営業利益の水準が低下する一方で、投下資本となる有利子負債と自己資本が増加する計画であることから、ROICは3~4%とWACCを下回る計画となっております。2026年度は、アルケロス鉱山の操業開始に伴う収益貢献によりROICに改善が見られ、第4次中期経営計画にはなりますが、操業2年目以降は更なる改善が図られる計画となります。

当該計画においては、長期ビジョンである2033年度ROIC7%以上の達成に向けて、現状と目標とのギャップを解消するための各施策の着実な実行と達成を目標としております。

 

 

⑤ 利益計画


 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは、「日鉄鉱業グループは、豊かな未来社会づくりに貢献するとともに、社員一人一人が生き生きと誇りを持って働ける企業を目指します」を経営理念としております。この理念のもと、社会課題や気候変動に対する取り組みをさらに強化し、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上を図るため、社長を委員長、社内取締役と執行役員を委員とするサステナビリティ委員会を設置し、同委員会が中心となってサステナビリティ推進に取り組んでおります。

サステナビリティ委員会では、特定したマテリアリティ(重要課題)を中心とするサステナビリティ課題に関する方針や目標及び実行計画の策定、リスク及び機会の識別、対応施策の審議を行っており、定期的(年2回以上)に目標に対する進捗や施策の対応状況の評価と再検討を行っております。サステナビリティ委員会での審議事項は都度、取締役会に報告しており、取締役会がそれらの状況等を的確に捉え、各取締役の専門的知識に基づいた指示・助言を各施策に反映するなど、適切に監督できる体制を整備しております。


 

(2) 重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された、当社グループにおける重要なサステナビリティ項目に関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

① 気候変動に関する取り組み

イ.戦略

当社グループでは、気候変動への対応は重要な経営課題の一つであるとの認識のもと、脱炭素社会の実現へ向けた取り組みを推進し、持続的な事業活動と中長期的な企業価値の向上を目指しております。気候変動が当社グループの各事業に与える影響について、2℃以下及び4℃シナリオを想定し、網羅的にリスク及び機会を抽出しております。今後も継続的にシナリオ分析を深化させ、リスク低減や機会獲得に向けた取り組みを進めてまいります。

 

<抽出したリスク及び機会と関連した取り組み>


 

ロ.指標と目標

当社グループは、気候変動に対する取り組みとして、日本国内におけるグループ会社の直接排出量(Scope1)と他社から購入する電気等のエネルギー使用に伴う間接排出量(Scope2)を合わせた国内CO総排出量のうち、化石燃料や電気の消費に伴うエネルギー起源のCO排出量について、2030年度までに日本政府のCO排出区分別の目標※1である2013年度比38%以上の削減※2を目指してまいります。なお、生石灰製造に伴い発生する非エネルギー起源COについては、社有林のCO吸収によるカーボンオフセットの取り組みを進めることや、CCUやCCS等の新技術が社会実装可能となった際に導入を推進することで、より一層のCO排出削減に取り組んでまいります。

また、長期目標として2050年度における当社グループの非エネルギー起源COも含めた直接、間接排出量(Scope1+Scope2)について、新技術の導入やカーボンオフセット等の対策も取り入れ、カーボンニュートラルの実現を目指してまいります。

上記の目標に対し、エネルギー使用量の削減や非化石証書による購入電力の実質再エネ化などの取り組みにより、2023年度の国内エネルギー起源CO排出量実績は149千t-CO(2013年度比約20%削減)でありました。

目標達成に向けた取り組みを一層推進するため、当社グループの設備投資を対象に、社内炭素価格を20,000円/t-CO※3とするインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)制度を導入しております。この制度の適用により、自家消費用の再生可能エネルギー発電設備や省エネ設備などの導入を積極的に実行し、CO排出量削減に取り組んでまいります。

 

 

当社国内グループにおけるCO排出量削減目標と実績※4


 

※1 2030年度までの日本政府のCO排出区分別の目標

地球温暖化対策計画における「地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画」(20211022日閣議決定)において示されたCO排出区分ごとの削減率

※2 2013年度比38%以上の削減

※1の排出区分のうち「産業部門」である工場、事業所で消費する燃料や電力由来のCOの削減率

※3 2022年11月の制度導入時に7,000円/t-COとしていたものを、2024年6月より20,000円/t-COに改定

※4 算定内容の見直しに伴い、CO排出量の実績を過年度に遡って修正しております。

 

2023年度の当社グループにおけるCO排出量(単位:千t-CO

 

Scope1

Scope2

合計

日本国内

190

57

247

海外

7

16

23

合計

197

73

270

 

 

② 人的資本・多様性に関する取り組み

イ.戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

<日鉄鉱業グループ人材育成方針>

日鉄鉱業グループは、総合資源会社として持続的成長を実現していくために、人材育成制度に基づく専門人材の開発と、個々の能力を発揮できる職場環境づくりを通じて、社員一人一人が自ら考え主体的に行動する人材の育成に取り組みます。

1.自主的な学びを通して、社員一人一人の成長を促します。

2.学びの多様化を実現し、意欲ある社員が学びたいときに学べる環境をつくります。

3.世界で活躍できるグローバルな人材を育成します。

 

当社グループは持続的成長を実現していくために、上記方針に基づき人材育成に取り組んでおります。社員個々の成長の要素として「日常業務を通した経験とそこからの学び」、「上司・同僚の指導、協働」、「自己啓発・自己学習」、「階層別研修などの会社主催研修」などの育成体系を整備し、これらをシンクロさせることにより、社員個々の能力を発揮できる職場環境づくりに取り組んでまいります。

多様性確保のための社内環境整備に関する施策としては、働き方の多様性に関して、テレワーク勤務制度の制定や時差出勤制度、フレックスタイム制度などの柔軟な働き方を実現する各種制度の導入、退職した社員の再雇用のためのジョブリターン制度、配偶者の転勤に伴う休職制度など、社員一人一人が仕事と生活の調和のとれた働き方ができる環境整備に取り組んでおります。

人材の多様性に関しては、女性活躍推進について従来から課題意識を持ち、2014年より女性総合職を積極的に採用し始め、総合職社員の採用者数に占める女性比率を30%以上とする目標を掲げ採用活動を継続しているものの、総合職における女性の各種指標は男性に比べて低い状況となっております。今後も女性社員の採用を強化した上で、特に女性社員の定着を促進するための育成や長期的に働ける環境の整備推進、管理職への登用にも積極的に取り組んでまいります。

その他、外国人やキャリア採用者の採用にも積極的に取り組んでおります。採用の強化のみならず、採用されたこれら社員が、入社後に持てる能力をいかんなく発揮できるように研修や交流会を実施するなどの施策も講じております。

また、豊かな未来社会づくりへの貢献として、障がい者雇用推進にも取り組んでおります。障がいによるハンディキャップを個性と捉えて多様な才能を開花させ、長期的に就業できる環境を整備し、高い定着率を実現できる組織づくりを推進してまいります。

 

ロ.指標と目標

当社グループでは、上記「イ.戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性比率

2030年度まで5以上

0.9

管理職に占める外国人比率

2030年度まで5以上

0.0

管理職に占めるキャリア採用者比率

2030年度まで15以上

8.4

総合職社員の採用者数に占める女性比率

30以上

20.0

平均勤続年数の男女差

2以内

4.3

障がい者雇用率

2.8以上

2.19

 

(注) 当社グループでは、グループ各社の事業特性を踏まえた各々の取り組みを実施しており、当社グループとしての目標設定を実施していないことから、上記指標における目標及び実績は、提出会社単体の記載としております。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因については以下のものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 災害等に関するリスク

① 台風等の風水害に関するリスク

当社グループの売上高の18.8%(当連結会計年度実績)を占める石灰石の約半量は、鳥形山鉱業所(高知県)で生産されております。同鉱業所からの出荷の大部分は海上輸送によっているため、台風の襲来等に伴う荷役作業の滞留により生産・販売に支障を来すことがあります。また、鳥形山に位置する同鉱業所の鉱山は、直近10年間の年間平均降水量が4,000mmを超える降水量の多い地域であるため、集中豪雨による生産設備への浸水等により生産・販売に支障を来すことがあり、これらの気象条件が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

また、同鉱業所の位置する地域は、南海トラフ巨大地震が発生した場合、大きな揺れや津波の影響により、甚大な被害が生じることが予測されており、その被害の規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。これらのリスクが顕在化することにより、当社グループの経営方針に掲げる「社会のニーズに応じた良質な資源の安定供給を図る」ことが困難になるため、最も重大なリスクの一つであると認識しております。

このようなリスクに対し、当社グループでは当社BCM推進室主導のもと、年間複数回、関係部署を交えた定期的な会議を実施、主要設備の見直しを含むリスク対策に係る意見交換を行い、情報の共有化を図るとともに、適宜BCP(事業継続計画)を改正するなどの対策を講じております。

 

② 休廃止鉱山の管理に関するリスク

当社グループは、長年の事業活動の結果、全国各地に多数の休廃止鉱山を所有しております。集中豪雨や地震等の自然災害の影響等により、当社グループの休廃止鉱山において鉱害が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは鉱山保安法に基づく定期的な巡視や点検を実施し、また、堆積場の保全や坑廃水による水質汚濁を防止するため、必要に応じて鉱山施設の維持保全工事を実施しております。

 

③ 労働災害・事故に関するリスク

当社グループにおいて重篤な労働災害、火災事故や設備トラブルなどの不測の事態が発生し、生産活動が停止した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

特に、鳥形山鉱業所の鉱山で採掘した石灰石を海岸選鉱場へ輸送する長距離ベルトコンベア(全長23.3㎞)などの主要設備において火災が発生した場合、被害規模によっては長期間にわたり石灰石の生産・輸送・出荷が停止することから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは当社保安環境室による当社及び関係会社の事業所や工場施設等の保安巡視に加え、全国各地で保安研修会を開催するなど、全社的な労働安全衛生管理活動の展開により、労働災害・事故の発生防止に努めるなどの対策を講じております。また、当社生産技術部による設備点検や監視体制の強化などのインシデント対策を図るとともに、火災被害を軽減するための延焼防止対策などを進めております。さらに、石灰石出荷基地である袖ヶ浦物流センター(千葉県)をはじめ、各事業拠点からの応援出荷などの安定供給体制の強化・見直しに努めております。

 

(2) 銅価・為替・金利水準等の変動に関するリスク

① 銅価の変動に関するリスク

当社グループでは、国内において電気銅を生産しているほか、チリ共和国のアタカマ銅鉱山において銅精鉱を生産しており、銅の国際市況により業績が大きく変動します。今後の銅価の状況によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

銅価の変動が当社グループの経営成績に与える影響額は、翌連結会計年度において1ポンド当たりの価格が10セント変動(上昇)すると、連結売上高で年間20億円、連結営業利益で年間4億円の変動(増加)をもたらすと試算しております。

当社金属部門の事業に係る銅価等の価格変動リスクに対しては、商品先渡取引によるリスクヘッジを実施するなどの対策を講じております。

 

② 為替の変動に関するリスク

当社グループは、電気銅の生産にあたり外貨建の銅鉱石の仕入取引があるほか、連結財務諸表を作成するにあたり海外連結子会社の財務諸表を円換算していることなどから、為替相場の変動により業績が大きく変動します。今後の為替相場の推移によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

為替の変動が当社グループの経営成績に与える影響額は、翌連結会計年度において1米ドル当たりの価格が5円変動(円安方向へ推移)すると、連結売上高で年間27億円、連結営業利益で年間1億円の変動(増加)をもたらすと試算しております。

当社金属部門の事業に係る為替変動リスクに対しては、通貨オプション取引によるリスクヘッジを実施するなどの対策を講じております。

 

③ 金利水準等の変動に関するリスク

当社グループの当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は221億円であり、今後の市中金利の動向次第では収益を圧迫する可能性があります。また、チリ共和国でのアルケロス鉱山開発のための資金調達により、翌連結会計年度以降の開発期間においては有利子負債残高が大幅に増加する見込みであることから、金利水準の変動によるリスクは従来以上に大きくなります。

このようなリスクに対し、当社グループでは金利動向を注視し、柔軟に資金調達手段を検討するとともに、長期借入金において、固定金利又は金利スワップ契約の締結により金利変動リスクを回避するなどの対策を講じております。

 

(3) 経営環境に関するリスク

 ① 鉄鋼・セメント需要への依存に関するリスク

当社グループの主力生産品である石灰石は、主に国内の鉄鋼メーカーやセメントメーカーに向けて販売しており、今後、公共投資や民間設備投資の減少、自動車などの工業製品の減産、得意先の生産設備におけるトラブル、製鉄所の組織再編や製造方法における技術革新により、主要取引先の鉄鋼・セメント等の生産量が減少した場合や製鉄の原材料が変更された場合などは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは随時業界全体や個別の取引先などの動向について情報収集に努めるとともに、国内外において新規顧客の開拓を検討するなどの対策を講じております。

 

 ② 資源開発に関するリスク

当社グループが取り組んでいる銅や錫などの非鉄金属の探鉱や鉱山開発には、多額の探鉱費や開発費(坑道掘削、生産設備建設等)を要します。鉱物の価格水準や可採鉱量が想定を下回った場合をはじめ、現地政府からの許認可取得や金融機関からの資金調達などが難航した場合における計画の大幅な見直しにより、投資回収が困難となったときには、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは定期的に鉱物の価格水準や可採鉱量を確認のうえ適宜計画を見直し、現地政府と適切な関係を構築し許認可取得手続を円滑に進めるほか、政府系金融機関及び主要な借入先であるメガバンクへの緊密な情報提供を通じてコミュニケーションを強化し、柔軟な資金調達を図るなどの対策を講じております。

 

 

 ③ 事業の国際展開に関するリスク

当社グループは、チリ共和国で銅鉱山を運営しているほか、東アジアにおいても事業を展開しており、現地において、テロや紛争などの政情悪化、感染症の流行、災害やストライキなどの事象が発生し、事業活動に波及した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

また、チリ共和国において銅のロイヤルティ課税を引き上げる新鉱業ロイヤルティ法は2023年8月に施行され、2024年1月から適用が開始されておりますが、当社グループの稼働中の銅鉱山並びに開発中の銅鉱山は同法による主な増税対象から外れていることから、現時点ではその影響は軽微であります。しかしながら、同法の改正によっては、同国での銅鉱山の操業・開発計画等に変更が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは事業活動を行っている国・地域について最新情報を把握するよう努めるとともに、同業社団体を通じて本邦の関係省庁と緊密に連携し対応を協議することや緊急連絡体制を構築するなどの対策を講じております。

なお、ウクライナ情勢につきましては、経済制裁、各国規制等の影響や物流の混乱及びエネルギー価格の高騰等に伴い、世界経済が不安定となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 ④ 環境規制に関するリスク

今後の関連法令の改正によっては、当社グループにおいて新たな環境対策費用や設備投資等の負担が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、国内外における環境規制の強化やSDGsなどの社会的要請の高まりにより、当社グループの本業である鉱山業の稼行や鉱山開発が制限された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは環境に関わる規制や社会の動向を注視するとともに、国際環境管理規格ISO14001の認証取得、社有林の森林認証取得、鉱山跡地や堆積場の緑化等を行い、国内外の各拠点で環境保全に努めております。

他方、環境規制の強化等は、当社グループの機械・環境事業における主力商品である集じん機や水処理剤の需要拡大に繋がる機会であり、規制強化が見込まれる国・地域や産業において、新規顧客の開拓に注力してまいります。

なお、当社は2022年6月にTCFDの提言への賛同を表明し、気候変動の影響評価及びその情報開示に取り組んでおります。TCFDの提言を踏まえた取り組みにつきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。

 

(4) 企業統治に関するリスク

 ① コンプライアンス・内部統制に関するリスク

役員又は従業員が、事業に関連する法令や規制、様々な利害関係者との関係において、社会的な要請や期待に応えられなかった場合、事業活動の制限や信用の低下などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは業務執行部門から独立した当社内部監査部が中心となり、国内の当社本社・事業所・支店及び関係会社並びに海外の関係会社の内部監査を実施しております。また、継続的に開催している階層別コンプライアンス研修の実施、財務報告に係る内部統制の整備・運用などにより、コンプライアンス・内部統制の強化・拡充に努めております。

 

 ② 品質保証・管理に関するリスク

契約不適合や欠陥等のある製商品・サービスを顧客に提供した結果、顧客の生命や身体に危害を与えることやクレーム等が発生することにより、製商品の回収費用をはじめ、顧客に対する補償や訴訟関連費用等が発生した場合、また、当社グループに対する信用が低下した場合において、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは契約不適合や欠陥等のある製商品・サービスを顧客に提供することのないよう品質保証・管理に努めております。

当社では、品質保証委員会を定期的に開催し、当社グループにおいて顧客へ提供する製商品・サービスの品質に関するリスクを把握・評価し、当該リスクに対応した取り組みの検討を行っております。

当連結会計年度における具体的な取り組みとして、品質保証委員会を2回開催し、各事業所における品質管理状況の調査報告及び品質リスク管理小委員会の活動報告などを行っております。

 

 ③ 情報セキュリティに関するリスク

インターネットを利用する業務などの情報セキュリティには、悪質なメールの受信や不正なアクセス、また、パソコンや電子記憶媒体の盗難等により、重要な企業情報が漏洩、改ざんされることやパソコン等を踏み台にマルウェアを拡散される脅威が存在します。

当社グループは、基幹システムの運用や電子データの管理・伝達において、IT機器やそれらを含む社内外のネットワークを利用して業務を行っているため、前述の脅威によりセキュリティリスクが顕在化する可能性があります。また、テレワーク勤務制度の導入に伴い、マルウェアの感染リスクや端末の紛失・盗難リスク等の情報セキュリティに関するリスクが増大しております。

仮に重大インシデントが発生した場合に当社グループだけでなく、ネットワークやシステム等で通信・接続されるサプライチェーンを含むステークホルダーの業務に支障が生じ、復旧費用の発生や当社グループの信用低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社経理部情報システム課が中心となり、当社グループで利用しているソフトウエア等の更新管理やマルウェア対策ソフトウエアの導入、ネットワーク内の多層防御の構築、社外で使用するパソコンに保存するデータや通信データの暗号化設定に加え、内部監査において監査対象部署に対し、情報セキュリティの重要性やIT管理に関する規程の周知徹底を行うなどの対策を講じております。

 

(5) 感染症に関するリスク

新型コロナウイルスや新型インフルエンザなどの未知なる病原体による感染症の拡大は、国内外の経済や企業活動に広範な影響を与える事象であり、感染の広がり方や収束時期を予想することは困難であります。当社グループは、全国各地に鉱山をはじめとする事業拠点や関係会社を有しており、海外には営業拠点を置くほか、チリ共和国においては銅鉱山を操業・開発しております。これら国内外の各拠点において集団感染が発生した場合、営業活動や操業の中断による生産・販売、製商品サービスの提供に支障を来すことになります。また、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行時のように、緊急事態宣言の発出や各国政府による都市封鎖や国境封鎖、外出禁止令等の措置がなされた場合には、各拠点の活動そのものが制限され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループではテレワーク勤務や時差出勤等の柔軟な勤務体制の導入や各拠点最良と思われる防疫環境を整備しながら、国・地域の感染状況や防疫措置等の最新情報を把握するなど、事業活動への影響を最小限に留める感染症対策に努めてまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、社会経済活動の正常化が進み個人消費の回復やインバウンド需要の増加等による持ち直しが見られたものの、資源・エネルギー価格をはじめとする物価の上昇や世界的な金融引き締めの長期化、国際情勢の緊迫化による海外景気の後退懸念に下押しされ、景気は力強さに欠ける状況で推移いたしました。

このような経済情勢のもと、当社グループにおきましては、資源事業及び機械・環境事業等における増収により、売上高は1,668億8千4百万円(前連結会計年度比1.7%増)と前連結会計年度なみでありました。

損益につきましては、金属部門等における減益により、営業利益は111億7千7百万円(前連結会計年度比18.0%減)、経常利益は120億5千6百万円(前連結会計年度比8.7%減)とそれぞれ前連結会計年度に比べ減少いたしました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、保有株式の売却益の減少に加え、税金費用が増加しましたことから、66億2百万円(前連結会計年度比32.5%減)と前連結会計年度に比べ大幅に減少いたしました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

[資源事業]

(鉱石部門)

主力生産品である石灰石の販売価格上昇等により、売上高は606億9千万円と前連結会計年度に比べ12億5千4百万円(2.1%)増加し、営業利益は59億7千4百万円と前連結会計年度に比べ4百万円(0.1%)増加いたしました。

 

(金属部門)

電気銅の国内販売価格が高水準で推移しましたことに加え、販売数量も増加しましたことから、売上高は883億1千8百万円と前連結会計年度に比べ13億6千9百万円(1.6%)増加しましたものの、アタカマ銅鉱山における生産コストの増加等により、営業利益は29億9千1百万円と前連結会計年度に比べ36億2千1百万円(54.8%)減少いたしました。

 

[機械・環境事業]

環境部門の主力商品である水処理剤の増収により、売上高は132億2千3百万円と前連結会計年度に比べ2億2千万円(1.7%)増加いたしました。営業利益は水処理剤の原材料価格高騰により環境部門は減益となりましたものの、機械部門の増益により、14億9千3百万円と前連結会計年度に比べ2億3千5百万円(18.7%)増加いたしました。

 

[不動産事業]

賃貸物件の稼働状況が概ね順調に推移しましたことから、売上高は28億8千2百万円と前連結会計年度なみでありましたものの、修繕費の増加により、営業利益は16億7千2百万円と前連結会計年度に比べ3千4百万円(2.0%)減少いたしました。

 

[再生可能エネルギー事業]

太陽光発電部門は軟調に推移しましたものの、地熱部門における増収により、売上高は17億7千万円と前連結会計年度に比べ1千9百万円(1.1%)増加いたしました。営業利益は地熱部門の修繕費が増加しましたものの、太陽光発電部門の減価償却費が減少しましたことから5億5千3百万円と前連結会計年度に比べ6百万円(1.2%)増加いたしました。

 

② 財政状態の状況

[資産の部]

当連結会計年度末における資産の部の合計は、前連結会計年度末に比べ212億4千2百万円(10.2%)増加し、2,295億7千7百万円となりました。

流動資産につきましては、現金及び預金が減少しましたものの、売掛金及び仕掛品の増加等により、前連結会計年度末に比べ109億1千2百万円(11.6%)増加し、1,050億9千万円となりました。

固定資産につきましては、保有株式の時価上昇に伴う投資有価証券の増加及び設備投資による有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ103億3千万円(9.0%)増加し、1,244億8千7百万円となりました。

 

[負債の部]

当連結会計年度末における負債の部の合計は、前連結会計年度末に比べ99億3千万円(14.4%)増加し、788億5千5百万円となりました。

流動負債につきましては、短期借入金が減少しましたものの、買掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べ59億7千2百万円(12.4%)増加し、542億3千万円となりました。

固定負債につきましては、繰延税金負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ39億5千8百万円(19.2%)増加し、246億2千4百万円となりました。

 

[純資産の部]

当連結会計年度末における純資産の部の合計は、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末に比べ113億1千1百万円(8.1%)増加し、1,507億2千2百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ26億7千3百万円(6.7%)減少し、370億5千6百万円となりました。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益114億8百万円、減価償却費60億1千3百万円の計上に加えて、仕入債務の増加等により、89億5千1百万円の収入(前連結会計年度に比べ68億6千6百万円(43.4%)の収入減少)となりました。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

当連結会計年度においては、有形固定資産の取得による支出等により、63億2千6百万円の支出(前連結会計年度に比べ8億1千8百万円(14.9%)の支出増加)となりました。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

当連結会計年度においては、長期借入金の返済及び配当金の支払による支出等により、58億4千万円の支出(前連結会計年度に比べ9億2千万円(18.7%)の支出増加)となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

イ.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前連結会計年度比(%)

資源事業

 

 

 (鉱石部門)

26,002

+3.1

 (金属部門)

80,516

+10.7

機械・環境事業

3,380

△15.0

不動産事業

再生可能エネルギー事業

1,039

+1.9

合計

110,938

+7.8

 

(注) 1 金額は、製造原価によっております。

2 上記の金額は、生産品銘柄(委託分を含む)に限定し、役務工事等の金額は除いております。

 

ロ.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前連結会計
年度比(%)

受注残高
(百万円)

前連結会計
年度比(%)

資源事業

 

 

 

 

 (鉱石部門)

4,216

+5.6

1,629

+148.9

 (金属部門)

機械・環境事業

4,298

△0.5

1,499

+1.8

不動産事業

再生可能エネルギー事業

合計

8,515

+2.4

3,128

+47.1

 

(注) 1 セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。

2 上記の金額以外の生産は、見込生産を行っております。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前連結会計年度比(%)

資源事業

 

 

 (鉱石部門)

60,690

+2.1

 (金属部門)

88,318

+1.6

機械・環境事業

13,223

+1.7

不動産事業

2,882

+0.0

再生可能エネルギー事業

1,770

+1.1

合計

166,884

+1.7

 

(注) 1 セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、その割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.当連結会計年度の経営成績等の分析

当連結会計年度の経営成績等の分析については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 第2次中期経営計画の総括」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

ロ.当連結会計年度の経営成績等に重要な影響を与える要因

当連結会計年度の経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

ハ.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要の主なものは、生産事業所等における操業費、仕入商品の購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、法人税等の支払いによるものであります。また、設備資金需要の主なものは、資源事業を中心とした老朽設備の更新工事に加え、鳥形山鉱業所の第3立坑建設工事などの安定供給体制の確立のための設備投資等を目的としたものであります。

当社グループの運転資金及び設備資金については、主に自己資金及び借入金により調達しております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は221億円であります。

今後、アルケロス鉱山開発工事等の設備投資の実施により、設備資金の需要が増加してまいりますが、投資内容を精査し、投資額を抑制することに加え、運転資金の必要額を見直すことで、借入額の圧縮に努めてまいります。

また、手許資金については、各部署からの報告に基づき当社経理部が随時、資金繰計画を作成・更新しております。その上で、複数の金融機関における短期借入金(当座貸越)の信用枠の設定やコミットメントライン契約の維持により借入余力を確保するとともに、公募普通社債の発行登録を維持し、臨機応変な資金調達に対応できる準備を行っております。それらの施策により大型投資を着実に実行しつつ、万が一営業キャッシュ・フローが悪化した場合にも対応できる十分な流動性を確保しております。

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、開発テーマを選別することにより、これまで以上に独自技術の優位な分野に資源を集中して研究・商品開発を行い、市場ニーズに合致した商品の早期市場投入を推進してまいりました。また、新テーマの発掘及び戦略的特許管理も重点課題と位置付けており、当社研究開発部を中心に資源事業関連商品、新規素材商品の開発、各種機械装置及び水処理剤の改良や開発に加え、SDGs関係としてカーボンニュートラル技術の研究を行っております。

これらの業務に携わる人員は74名であります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、929百万円であります。

(1) 資源事業

資源事業関連商品、新規素材商品の開発を行っており、特に粉体への薄膜被覆技術の研究や、その技術を応用した商品の開発を行っており、粉体への機能性付与をキーワードとした研究開発を進めてまいりました。また、当社が関連する金属鉱山における浮遊選鉱などの選鉱プロセスの研究開発を進めてまいりました。

加えて、カーボンニュートラルに関する技術開発を行っております。石灰質材料への炭酸ガス固定化の研究として、石灰炉等から発生する炭酸ガスの回収及び固定化技術の開発を行っております。また、カーボンニュートラルのためのストラティファイド光触媒の応用研究も行っており、ストラティファイド光触媒にて下水処理場等から排出される硫化水素を分解し、水素を回収するシステムの開発を進めており、併せてGHG削減全般に寄与してまいります。

当該研究開発の費用は、450百万円であります。

 

(2) 機械・環境事業

当社研究開発部機械・環境開発課は、水処理剤や各種機械装置に関する研究開発を行っております。ポリテツについては、原料の多様化、製法の効率化を目的としたプロセス開発や、競合他社製品と性能面で差別化をするための高機能化の研究を行いました。シンターラメラーフィルタは、高性能なフィルターエレメントの開発や現行装置の更なる高性能化に取り組みました。タバコ分煙機は、需要の掘り起こしのため、一人用喫煙ブースを新たに開発しました。機械・環境関連の開発は、営業部門とベクトルを合わせ、市場のニーズに応えた研究開発を進めてまいりました。

当事業に係る研究開発費は、454百万円であります。

 

(3) その他

当社研究開発部開発管理課は、当社研究開発部各課の運営、管理、方針の総括及び産業財産権の管理等を行っております。

開発管理課の費用は、25百万円であります。

 

(注) 「資源事業」につきましては、研究開発の内容及び費用を「鉱石部門」と「金属部門」の各セグメントに区分することができないため、事業全体として記載しております。