文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社は、「私たちは常に進化する強い意志を持ち、心一つにして一流に向かい羽ばたき続けます。」を企業スローガンとして掲げ、ガス・電気・水といった人々の暮らしや産業に欠かすことのできないライフラインを支えることによって、社会に安心と心地よさを提供し、豊かな未来のために貢献することを社会的使命としております。
その社会的使命を果たすために、協力会社も含めた企業集団として、確かな技術ときめ細かな感性でお客様の信頼にお応えし、お客様から選ばれ続けていただくこと、当社の社員が安心して働ける職場環境を提供し、「感じ・考え・自ら行動する」企業風土を醸成していくことを経営の基本方針としており、健全な経営を継続的に行ない、その利益を適正に還元することが社会的責任を果たすことであると考えております。
当社は、企業の総合的な収益力を示す指標として、売上高経常利益率を重視しており、2022年度を初年度とする3か年の中期経営計画「STEP 2024」の最終年度となる2024年度には、売上高経常利益率4.0%の達成を目指しております。
目標達成に向けては、対処すべき課題に対し、中長期的な経営戦略のもと、諸施策を確実に実践するべく取り組んでまいります。
2024年度は、分譲マンションに持ち直しの動きが見られるものの、資材価格の高止まりや労務単価の上昇などによる建設コストの増加が重しとなり、住宅着工戸数は2023年度と同水準に留まることが予想されております。一方で、近年の気候変動の影響による気象災害の激甚化・頻発化、南海トラフ地震・首都直下地震の発生可能性の切迫を受け、2021年度より始まった「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」による防災・減災対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策が着実に推進されていくことが見込まれております。また、住宅分野における政府の省エネキャンペーンによる補助金政策等が寄与していることに加え、事務所などにおける省エネ対策や働きやすいオフィス環境等への関心の高まりなどにより、既築建物の維持管理・更新市場も堅調に推移することが見込まれております。加えて、主要取引先の設備投資計画についてもほぼ横ばいで推移することが予測されており、当社を取り巻く事業環境は大きく変化することはないと予想されます。
しかしながら、2025年度以降当社の売上・利益の大きな柱であるガス導管事業においては、新たな経年管取替工事が主流となるため、売上・利益面において今までと異なった局面を迎えるものと想定されます。また、建設業界における就労者の高齢化と担い手不足、2024年4月1日より適用となった時間外労働上限規制を含む働き方改革への対応など、様々な課題が顕在化してきております。
2024年度は、3ヶ年の中期経営計画「STEP 2024」(Sustainable Evolution Plan)の最終年度となります。社会課題解決へ向けて企業への期待が高まる中、前述の事業環境の変化に対応し、社会との共生を図るとともに、100年企業として成長し続けるため、「サステナビリティ経営」を基本方針として次期中期経営計画の方向性を意識しつつ、「事業戦略」、「CSRの推進」、「株主還元の強化」、「筋肉質な企業体質作り」、「経営基盤強化」の5つの重要施策を引き続き推進してまいります。
「STEP 2024」では、前中期経営計画に引き続き「変わる・変える・創る」をスローガンに、本中期経営計画期間において、将来を見据えた事業ポートフォリオの構築を図り、同時にかねてからの課題である一社依存度の低減を図ることとしております。
持続的に発展、成長するために、既存の事業領域に加えて、建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業の一つに育てあげることを「事業戦略」の最重要施策に掲げております。長年、都市ガス供給網の整備などを主力事業としてきた当社は、「ガス工事に強い会社」というイメージが先行しておりますが、これまで培ってきた、エネルギー会社・ゼネコンから地域の工務店などといった幅広いお客様との信頼関係を生かしながら、給排水衛生設備や空調設備、給湯暖房、電気などを一括受注・施工できる体制を整備し、「ガス工事だけでなく、建物内の工事は全て任せられる総合設備工事会社」としての認知度を高め、幅広い顧客ニーズに対応しつつ、ライフラインを支えるという社会的使命を果たしてまいります。
一方で、2022年4月の東証市場再編を契機に、2023年1月には上場維持基準に関する経過措置の終了期間が明確に定められたことに加え、3月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」「建設的な対話に資する「エクスプレイン」のポイント・事例」が公表され、高度なガバナンス体制作りと資本問題への取り組みも従来にも増して重要な経営課題と認識しております。次期中期経営計画において、資本コスト・収益力・資本効率等を踏まえた経営指標の設定と達成に向けた具体的な施策を示せるよう検討するとともに、コーポレートガバナンス・コード各原則における当社の取り組みについて継続的に点検を行ってまいります。
このほか、環境への対応や多様な働き方の実現、事業運営の基盤となるコンプライアンスも推進してまいります。さらに、構築中の基幹システムについては2025年度からの運用開始を目指し、業務プロセスを見直し、内部統制の文書化の再整備を行うとともに、デジタル技術の活用推進等で全社的な業務の効率化を図ってまいります。加えて、2023年度に実施したエンゲージメントサーベイの結果に基づき、働き甲斐のある職場環境の整備を推進するとともに、建設業にとって欠かすことのできない安全衛生や品質、さらには人権といったサステナビリティリスクを含むリスク管理についても、社長を委員長とする経営品質委員会を中心に、実効性の向上に注力してまいります。
当社は、
(経営品質委員会におけるリスク管理プロセス)
①リスクの特定・棚卸し
②固有リスク評価(リスクをミニマイズするための統制活動を実施する前のリスク評価)
③統制活動の現状把握(特定されたリスクに対し、会社が実施している統制活動の内容)
④統制活動の有効性評価(統制活動の客観的な評価)
⑤残余リスク評価(統制活動を実施しても残る想定リスクの評価・課題の抽出)
⑥対応の優先度評価
⑦優先度の高いリスク項目に対する新たな統制策の立案と実施
⑧取締役会の承認
サステナビリティを巡る課題への対応は、当社にとってリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であり、財務的な活動以外の分野においても、それが企業の持続的な発展のためには欠かせないものと認識しており、2022年度から2024年度の中期経営計画「STEP 2024」を策定するにあたり、サステナビリティ基本方針を掲げました。(2022年3月策定、5月公表)
このサステナビリティ基本方針に基づき、中期経営計画「STEP 2024」においてCSRの推進を重要施策の一つと位置づけております。経営品質委員会では、リスク管理プロセスの残余リスク評価において抽出された課題も含めて、ESGの観点から課題と取組を整理し、当社の事業運営における優先度と、社会や環境への影響度の観点からこれらの取組に関する重要度を審議し、この審議結果を踏まえ、ESGに関するマテリアリティを設定しております。
(経営品質委員会におけるESGに関するマテリアリティ設定プロセス)
①ESGの観点から課題と取組を整理
②重要度の審議
③ESGに関するマテリアリティの設定
④取締役会の承認
(ESGに関するマテリアリティの取組と指標および目標)
※CO2排出量実績は、車両からの排出量と電気使用量からの排出量を算出し合算しております。直近の実績として2022年度実績を記載しており、2023年度実績を開示しておりません。これは、電気料金からの排出量の算出に際して、経済産業省および環境省が公表するCO2排出係数を用いており、現時点では2023年度のCO2排出計数が公表されていないためです。
サステナビリティ基本方針のもと、「事業戦略」、「CSRの推進」、「株主還元の強化」、「筋肉質な企業体質作り」、「経営基盤強化」の5つを重要施策とし、これらの実現のための人的資本に関する戦略として、事業戦略に合致する人材、経営基盤強化のための人材、経営幹部候補人材の確保に加え、人材の多様性の確保を設定しています。
また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、多様な働き方を実現(働きがいのある職場環境)するとともに、従業員の階層に応じて様々な研修を実施してまいります。
指標及び目標
■「多様な働き方を実現」に関する指標及び目標(2022年度~2024年度)
●男性主体業務への女性配員数の拡大
- 目標:2021/3 比40%増
- 実績:83.3%増(達成率:183.3%)
●階層別研修開催回数(2022年度~2024年度)
- 目標:40回(3ヶ年累計)
- 実績:28回(達成率:70%)
当社は、社長を委員長とし、取締役・監査役(社外含む)、執行役員で構成される経営品質委員会を設置しております。経営品質委員会はコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方を実現し、企業の社会的責任を果たし「経営品質」を向上することを目的として設置されており、委員会の下に各種会議体を設け、品質管理、内部統制、コンプライアンス、CSR調達、ガバナンスなどについて包括的に検討しております。
経営品質委員会(年2回開催)では、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクの棚卸およびそのリスクのモニタリングならびに統制活動等の審議を行っております。このうち、統制活動が不十分と判断されたものに対しては、執行部門に是正を求めております。
経営品質委員会における審議により、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、将来に関する事項の記載が含まれておりますが、当事業年度末現在において判断したものであり、将来を含めた当社のリスク全般を網羅するものではありません。
① 受注環境の変化リスク
当社は東京ガス株式会社等ガス事業者を主要顧客とするガス工事事業を中核事業とし、建築設備事業、電設・土木事業も展開しており、様々な取引先から工事を受注しておりますが、中でも、主要顧客である東京ガスグループの売上割合は約6割を占めております。当社は2022年度よりスタートした中期経営計画で「新築建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業とすべく、一括受注・施工体制の更なる整備を行う」ことにより、将来を見据えた事業ポートフォリオの構築と売上高の集中リスクの低減を図っております。また、四半期に一度、業務執行取締役、常勤監査役、執行役員、部長が出席する計画進捗会議において、業績進捗とともに、取引先の動向やエネルギー・原材料価格の高騰の影響など市場環境の変化を含め、確認しております。しかしながら、主要取引先の事業戦略の大幅な変更、少子高齢化による着工数減少による価格競争の激化、パンデミックや地政学的リスクの顕在化による供給網の混乱が想定を超えた場合には受注量の減少や資機材の供給不足、原材料価格の高騰が発生し、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 戦略的投資の未回収リスク
当社は2022年度よりスタートした中期経営計画において「新築建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業とすべく、一括受注・施工体制の更なる整備を行う」こととしており、そのためにはM&Aの実施も選択肢の一つとしております。また、営業上の戦略や、老朽化等による職場環境の改善を目的とした土地建物の取得・事業所の移転、DXの推進に伴うシステム投資など、大規模な投資を行う場合があります。このような大規模な投資を実行する場合には、職務権限規程において職務権限決裁基準を定め、経営会議における審議と取締役会決議により、適切に判断・実行しておりますが、想定したシナジー効果や期待通りの成果をもたらさなかった場合には、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
① 法的規制リスク
当社では、事業活動にあたり会社法、金融商品取引法、建設業法、民法、労働基準法などさまざまな法令の規制を受けております。法改正およびそれに伴う作業内容の改定に関しては、都度社員・協力会社への周知・教育を行っており、管理者の現場巡視において遵守状況を確認しております。また、法令、規則等の遵守状況については、会社法に則った業務・コンプライアンス監査や金融商品取引法に係る内部統制監査を毎年実施し、その結果について取締役会に報告する仕組みとなっております。しかしながら、社会情勢の厳格化による法的規制の急激な強化、法規制に関する認識不足に起因する法律違反が顕在化した場合、それに対応するための追加費用の増加や社会的信用の失墜などにより、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 不採算工事の発生リスク
当社では、工事見積時および受注時に職務権限決裁基準で定めた金額に応じた決裁者による決裁を受けております。不採算となる可能性のある工事の受注については、より上位者による決裁基準を設定しているほか、毎月経理部において、一定のルールに従って抽出した不採算物件について調査し、役員に回覧するなど、不採算工事の早期把握と抑制に努めております。また、システム導入による営業部門と施工部門における情報共有および連携強化を図り、営業担当者と管理者による協議を経て適正価格での入札を推進しております。加えて、近年の原材料価格等の高騰に際しては、定期的な単価改定や、個別の件名に関しての発注者との協議の実施等により、不採算工事の発生抑制に努めております。しかしながら、受注環境の悪化に伴う競合他社との価格競争の激化や当初想定していた見積りからの乖離、工事の施工段階における想定外の原価等の発生や工期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により不採算工事が発生した場合は、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
① 自然災害リスク
地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象やパンデミックが発生した場合、社員や所有建物・設備など事業継続のリソースに対する被害が発生し、事業活動が停止することなどにより、当社または取引先が被害を受ける可能性があります。当社は自然災害などの重大災害に備え、BCP(事業継続計画)を策定し、全役職員に周知するとともに、BCPに基づいた防災訓練の実施や必要物資の備蓄、拠点や関係会社との連携・情報共有などの対策を講じております。また、ライフラインを支える設備工事会社として、災害が発生した場合、二次災害の防止とライフラインの復旧のために社員・協力会社の職員が一定期間活動を行うために十分な現預金を確保するとともに、社員の安否を確認する安否確認システムの導入や建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)を実施するなど各種災害に備えております。加えて、災害に対する都市の強靭性向上に寄与すべく、当社の事業であるライフラインのメンテナンスや耐震化工事を推進しております。
しかしながら、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、これに伴う役職員の被災、営業拠点の修復または代替のための費用発生等により、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 組織力の低下リスク
当社は、中長期の事業展開を見据え、「求められる人材像」を定め、新卒だけではなく中途採用を強化するとともに、これまで男性主体であった職種、業務への女性の配置拡大など、多様性の確保も意識し、各部において育成計画や各種研修、資格取得支援等の充実化を図り、将来を担う優秀な人材の採用・育成に努めております。本人の希望と適性を踏まえたキャリアパスの選択や成果に応じたメリハリのある処遇の設定、適材適所な人材配置の実施、本人の希望と能力に応じた定年後再雇用制度の運用により、多機能人材の育成や働きがいのある職場作りに取り組んでおります。加えて、2023年9月にはエンゲージメントサーベイを導入し、業務に影響を与える指標の分析を行っております。また、管理職を対象とした弁護士によるハラスメント研修や、メンタルヘルス不調発生防止を目的に全従業員を対象とした体験カウンセリング(日本産業カウンセラー協会のカウンセラーによる職場の悩み等に関する相談体験)など、心の健康を含む健康経営施策を実施しております。さらに、従業員ならびに就職希望者にとってより魅力的な企業となるよう、従業員の労働環境の改善を図るために、働き方改革推進委員会において、長時間労働抑制に向けた施策の立案、実施に加えて、管理者が労務管理を正確に行うツールとして、勤怠システムを改善するなどのITを活用した環境整備を実施しております。また、2022年9月、基幹システム刷新委員会を設置し、業務管理の見直し・高度化・効率化を目的とした新しい基幹システムの整備に着手いたしました。しかしながら、少子化の影響や景気拡大に伴う大手企業の採用数増加などにより、必要な人材を継続的に確保できなかった場合、ならびに人材の多機能化および働き方改革への対応が遅延した場合、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
③ 施工力の確保リスク
当社では、受注した工事等を協力会社に発注しております。少子高齢化による人手不足、後継者難は建設業界に共通する難しい問題ですが、2022年度より協力会社を含めたCSR調達方針・ガイドラインおよび推進の枠組みを定め、アンケートやヒアリング等を行っており、2023年度の実施結果では、大きな問題は確認されませんでしたが、寄せられた要望や意見に基づき、協力会社への経営指導や働き方改革を推進することで協力会社従業員の労働環境の改善を行い、魅力ある仕事となるよう可能な限りの支援策を講じてまいります。しかしながら、後継者難、経営状態の悪化、若年層の採用難や若年層の退職増加等により、主要な協力会社に不測の事態が発生した場合、施工能力が低下するなど、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
④ 不良工事の発生リスク
ISO9001:2015規格で培ったノウハウを進化させ、当社独自に策定した品質管理システム(QP(Quality Plus)マネジメントシステム)に基づいて各部・拠点の事業所監査を行い、クレーム処理、是正処置、予防処置を実施するとともに、代表取締役を委員長とした品質マネジメント会議を設置し、品質の向上に取り組んでおります。また安全品質環境室を事務局としたリスクマネジメント会議や再発防止検討会において、予防策、事故の傾向分析、原因究明、再発防止策を検討しております。また、安全品質環境室における安全パトロールにおいて、この再発防止策が実施されているかを確認し、必要に応じて指導を行っております。加えて、業務・コンプライアンス監査を定期的に実施し、各部・各拠点において法令、規則等を遵守した業務遂行が行われているかチェックしております。しかしながら、工事施工上の問題、各種法令やルールの理解あるいは確認不足等に起因する品質の不備もしくは事故等が発生した場合、発注元や監督官庁からの工事施工資格や入札参加資格の停止、受注済み件名の発注取り消しといった処分を受けることにより、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
⑤ 交通事故・労働災害の発生リスク
当社は、安全運転管理規程および安全衛生管理規程を定め、定例勉強会や再発防止策の教育を実施するとともに、本社においては、年4回、安全衛生中央委員会、拠点においては毎月安全衛生委員会を開催し、事故・災害事例の共有と再発防止策の共有に努めています。また、安全品質環境室を事務局としたリスクマネジメント会議や再発防止検討会において、予防策、事故の傾向分析、原因究明、再発防止策を検討しております。加えて、2023年12月に交通安全強調月間を開催し、安全運転意識を高めるとともに、事故惹起者への運転訓練や2カメラドライブレコーダーの設置による運転状況の把握に努めているほか、年に1度、社員、協力会社を集めた安全大会を開催するなど安全管理活動の推進に努めております。しかしながら、予期せぬ事由による事故・災害の発生や基本作業の逸脱による重大事故等の発生による人的被害・物的被害・社会的信用の失墜などにより当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
⑥ コンプライアンスリスク
当社では、コンプライアンス規程を定め、各部門の長を委員としたコンプライアンス推進会議において定めた年度実施計画の基本方針に基づき、各部門で強化策を展開するとともに、2か月に1度、役員からのコンプライアンスメッセージの配信やコンプライアンスに関する研修等を実施することによって「協和日成グループ行動基準」の浸透とコンプライアンスマインドの継続的な高揚を図っております。特に、反社会的な勢力・団体との関係の遮断を「協和日成グループ行動基準」で明文化するとともに、本社地区特殊暴力防止対策協議会への加盟、本社・各拠点に不当要求防止責任者を選任し、反社会的な勢力・団体に関する情報の収集・管理や対応マニュアルの整備等、体制構築に向けての検討を行い、積極的に全社展開を推進しております。また、業務・コンプライアンス監査により、コンプライアンスを逸脱した業務遂行が行われていないかを確認しております。しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、法令・規則・関係マニュアル・企業倫理に反する行為等が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生する可能性があります。
⑦ 情報セキュリティスリスク
当社では、情報管理規程、情報システム利用規程、個人情報管理規程、特定個人情報取扱規程といった各種規程を整備しており、セキュリティソフトの配備、PCデータ・記録媒体・メールの添付ファイル等の暗号化を行い、モバイル機器ユーザーを対象とした情報セキュリティ教育を実施するとともに、各組織における情報管理責任者のもとで情報システム運用を補佐するITリーダーを設置し、ITリーダーを通じた各種情報共有や各組織の要望に合わせたIT教育を行っております。また、日常的なサーバー監視や、内部統制のひとつであるIT統制監査、個人情報の保有状況・保管状況チェック等を通じて、情報セキュリティリスクの低減を図っております。しかしながら、このような施策を講じても情報セキュリティリスクは完全に回避できない可能性があり、情報漏洩や情報システムの稼働停止が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生する可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当事業年度末における総資産は、前事業年度末の26,390百万円に比べて2,255百万円増加し、28,645百万円となりました。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末の16,945百万円に比べて1,251百万円増加し、18,197百万円となりました。これは、現金及び預金が299百万円、電子記録債権が398百万円、未成工事支出金が410百万円増加したことが、主な要因であります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末の9,444百万円に比べて1,004百万円増加し、10,448百万円となりました。
当事業年度末における固定資産のうち有形固定資産は、前事業年度末の5,787百万円に比べて449百万円増加 し、6,237百万円となりました。これは、新事業場の竣工に伴い建設仮勘定を振替えた結果、建物及び構築物が723百万円増加したことが、主な要因であります。
無形固定資産は、前事業年度末の63百万円に比べて170百万円増加し、234百万円となりました。主な要因は、ソフトウェア関連の支出による増加です。
投資その他の資産は、前事業年度末の3,592百万円に比べて384百万円増加し、3,977百万円となりました。これは、繰延税金資産が153百万円減少しましたが、株式を一部売却したものの、保有する株式の時価が上昇したことにより投資有価証券が500百万円増加したことが、主な要因であります。
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末の8,750百万円に比べて1,098百万円増加し、9,848百万円となりました。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末の8,278百万円に比べて1,116百万円増加し、9,395百万円となりました。これは、工事未払金が297百万円、未払費用が162百万円、未払法人税等が197百万円、未成工事受入金が301百万円、賞与引当金が142百万円増加したことが、主な要因であります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末の471百万円に比べて18百万円減少し、453百万円となりました。主な要因は、退職給付引当金の減少によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末の17,639百万円に比べて1,157百万円増加し、18,797百万円となりました。これは、配当金に係る利益剰余金が345百万円減少しましたが、当期純利益を1,062百万円計上したことに加え、その他有価証券評価差額金が440百万円増加したことが、主な要因であります。
当事業年度におけるわが国の経済を概観しますと、5月に感染症法上の位置づけが5類に移行された新型コロナウイルス感染症のマイナスの影響が薄らぎ、経済活動は緩やかに回復の動きが続きました。好調な企業収益を背景に旺盛な設備投資意欲は維持され、建設コストの増加や人手不足による供給制約がある中でも、設備投資が底堅く推移いたしました。また、インバウンド需要の増加も景気回復に寄与いたしました。
一方で、個人消費は外食や宿泊サービスなどの対面型サービスへの支出が堅調に増加したものの、需要回復が一巡したことに加え、物価高に賃上げが追いつかず実質賃金の低迷が続いたこともあって、2024年に入ってからは持ち直しに足踏みが見られます。また、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻が長期化していることに加え、2023年10月にはハマスとイスラエルとの軍事衝突も発生するなど、世界情勢が不安定化する中で、世界経済は後退リスクを抱えて推移いたしました。国内においても、物価上昇による消費者マインドの悪化や、資機材価格の高騰などによる企業収益の悪化が設備投資の抑制に繋がるなどの懸念が常につきまとい、景気の先行きは引き続き不透明な状況が続いております。
このような状況のなか、不動産・建設業界におきましては、近年の気候変動の影響による気象災害の激甚化・頻発化、南海トラフ地震・首都直下地震の発生可能性の切迫を受け、2021年度より始まった「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」による防災・減災対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策は、堅調に推移いたしました。しかしながら、2023年の新設住宅着工戸数は、建設コストの高止まりなどが住宅需要を抑制し、前年を39,906戸下回る819,623戸と、3年ぶりの減少となりました。また、需要に対する慢性的な技術者不足は改善されておらず、建設資材の価格高騰に伴う建設コストの上昇も相まって工期の長期化やコスト増などが続いており、採算悪化や住宅取得マインドの悪化が懸念される状況が続いていることに加え、2024年4月1日より建設業・運輸業においても適用となった時間外労働の上限規制に伴い、労務単価や物流コストの上昇が懸念されるなど、先行きを見通した柔軟な対応が一層重要となっております。
エネルギー業界におきましては、小売全面自由化以来、エネルギー事業者間の競争激化に伴い、電力・ガスともにコスト削減の動きが継続いたしました。当社が受注する主要取引先の政策転換や、当社も含めた工事会社に対する取引方針の見直しなども引き続き懸念されております。また、ロシア・ウクライナ情勢など、世界情勢がますます緊迫化する中で、エネルギーの安定供給や産業競争力の強化、脱炭素化の実現などに向けて、グリーントランスフォーメーションが推進されております。これに伴って、再生エネルギーの活用や脱炭素化への投資が引き続き旺盛に推移しております。
このような経済環境のもと当社におきましては、集合住宅の給湯・暖房工事や東京電力パワーグリッド株式会社の設備投資計画に伴う管路埋設工事において受注は堅調であったものの、建築工事の遅れ等によりその多くが来期以降の完成予定となりました。しかしながら、ガス事業者からの受注が好調に推移し、ガス設備工事においては首都圏周辺エリアでの受注も増加したことに加え、リノベーション工事(排水管ライニング工事を含めた改修工事)やイリゲーション工事(ゴルフ場の緑化散水設備およびクラブハウス等の設備工事)も好調に推移いたしました。この結果、売上高は35,889百万円(前年同期比4.1%増)となりました。
利益面では、ガス導管事業と電設・土木事業において利益率の高い物件の完成が多かったことにより、営業利益1,247百万円(同9.3%増)、経常利益1,461百万円(同9.2%増)となりました。また、投資有価証券売却益63百万円を特別利益に計上したことにより、当期純利益1,062百万円(同13.8%増)となりました。
コロナ禍では敬遠されていた対面での工事を伴うリノベーション工事は、受注が好調であったため大規模物件への応援体制を構築して施工にあたり、工場関連施設の営繕工事においては、主要取引先の計画工事の受注が堅調に推移いたしました。しかしながら、集合住宅の給湯・暖房工事の受注は堅調に推移したものの、建築工事遅延により当事業年度における完成が減少したことに加え、GHP工事において大規模物件が減少したことに伴い、売上高は5,631百万円(前年同期比1.2%減)となりました。利益面につきましては、売上高は減少したものの、リノベーション工事や営繕工事において利益率の高い大規模物件が完成したこと、および、GHPメンテナンス事業の利益率が改善したため、経常損失311百万円(前事業年度は436百万円の経常損失)となりました。
なお、2024年度の期初手持工事高は、集合住宅の給湯・暖房工事の増加により、前年同期に比べ11.8%増の5,825百万円となりました。主力事業である集合住宅等に関連した給排水衛生設備工事において、主要顧客からの受注が引き続き堅調に推移するものと見込んでおります。また、集合住宅の給湯・暖房工事においても受注が引き続き堅調に推移するほか、前期から繰り越してきた物件の完成を見込んでおります。加えて、耐震性・機能性・防犯性の向上や新しい生活様式に合わせた空間利用のニーズによる既築建物のリフォーム・リノベーション市場も堅調に推移することが見込まれており、リノベーション工事(排水管ライニング工事を含めた改修工事)、および、GHPメンテナンス事業の売上拡大にも注力してまいります。資材価格の高止まりや労務単価の上昇などが建設コストに与える影響については、2024年4月に新設した建築設備購買課において、引き続き適正な原価の把握に努めるとともに収支管理を徹底することなどにより、生産性の向上に努めてまいります。
木造集合住宅や首都圏周辺エリアでの大規模物件の受注が増加したことで、主力のガス設備工事は好調に推移いたしました。また、施工管理体制を強化したLCS(戸建住宅における給排水設備)工事が好調に推移したほか、戸建住宅の電気工事においても新規取引先を獲得するなど堅調に推移した結果、売上高は10,525百万円(前年同期比6.1%増)となりました。一方、利益面につきましては、主にガス設備工事において原価率の高い物件が多く完成したことにより、経常利益は508百万円(同21.8%減)となりました。
なお、2024年度の期初手持工事高は3,232百万円(同1.1%増)となりました。建設コストの高止まりが持家を中心に住宅取得マインドを抑制する要因となる一方で、大都市圏を中心に分譲マンションの需要が続くことが下支えとなり、住宅着工戸数は横ばいで推移すると予想されております。ガス設備工事では、戸建住宅の着工減に対し、新規顧客獲得および首都圏周辺のガス事業者からの受注の拡大を目指すことに加え、札幌エリアにおける大規模なガス設備工事の需要には、首都圏から応援体制を構築して対応してまいります。加えて、体制整備が順調に進んでいるLCS(戸建住宅における給排水設備工事)工事や戸建住宅における電気工事も受注拡大を見込んでおります。旺盛な工事量に対し引き続き効率的な施工体制を構築し、品質向上に努めてまいります。
供給エリア内での建設ラッシュが続く北海道ガス株式会社をはじめ、東京ガスネットワーク株式会社や静岡ガス株式会社といった主要取引先における設備投資計画に基づく工事の受注が好調に推移したことに加え、部門間連携を密にして機動的な施工管理体制を強化したことにより、売上高は17,690百万円(前年同期比4.3%増)となりました。利益面につきましては、売上高の増加に伴う利益の増加に加え、一部の工種において利益率の高い大規模物件が完成したことにより、経常利益1,156百万円(同8.9%増)となりました。
なお、2024年度の期初手持工事高は9,126百万円(同5.8%増)となりました。2021年度より始まった「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」によるインフラ整備事業に伴う需要が引き続き堅調に推移するものと予想しており、供給エリア内での建設ラッシュが続く北海道ガス株式会社をはじめ、各ガス事業者の設備投資計画が引き続き堅調に推移することが見込まれております。一方で、エネルギー業界における事業者間の競争が一層激しさを増してきたことで、引き続き設備投資計画に伴う工事についても競争激化が懸念されますが、各工事における適正利益を確保するべく予算管理を徹底するとともに、引き続き部門間連携を強化し、機動的な施工管理体制を整備することにより、品質向上に努めてまいります。
東京電力パワーグリッド株式会社の設備投資計画に伴う管路埋設工事において受注は堅調に推移したものの、その多くが来期以降の完成予定となりました。しかしながら、東京都水道局関連工事や、大規模物件を多く受注したイリゲーション工事が好調に推移した結果、売上高は1,971百万円(前年同期比8.6%増)となりました。利益面につきましては、管路埋設工事において利益率の高い大規模物件が完成したことにより、経常利益107百万円(同72.6%増)となりました。
なお、2024年度の期初手持工事高は管路埋設工事の増加により、前年同期に比べ62.0%増の855百万円となりました。東京電力パワーグリッド株式会社の設備投資計画に伴う管路埋設工事において前期から繰り越してきた物件の完成が見込まれており、都内を中心とした再開発事業の継続、バリアフリー化や無電柱化等の需要も想定されます。加えて、イリゲーション工事(ゴルフ場の緑化散水設備およびクラブハウス等の設備工事)では、猛暑への対応として散水設備改修等を計画するコースも多く、引き続き設備投資が期待され、受注は堅調に推移するものと見込んでおります。管路埋設工事やケーブル保守に伴う工事は、発注者側の徹底したコスト管理施策が続くことが予想されますが、一層の収益確保に向け、綿密な工事計画と適切な要員配置の実施によるローコストオペレーションの徹底に努めてまいります。
(現金及び現金同等物)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、7,925百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末の営業活動による資金は1,371百万円の収入(前年同期は1,107百万円の収入)となりました。主なプラス要因は税引前当期純利益1,522百万円に加え、未成工事受入金の増加301百万円などであり、主なマイナス要因は売上債権の増加475百万円、未成工事支出金の増加410百万円、法人税の支払額309百万円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末の投資活動による資金は713百万円の支出(前年同期は575百万円の支出)となりました。主なプラス要因は投資有価証券の売却による収入740百万円であり、主なマイナス要因は有形固定資産の取得による支出718百万円、投資有価証券の取得による支出609百万円などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末の財務活動による資金は359百万円の支出(前年同期は966百万円の支出)となりました。これは、配当金の支払額344百万円などが主な要因であります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
資本の財源については、収益力及び資産効率の向上によることを基本としており、健全な財務基盤、営業活動で生み出されるキャッシュ・フローにより、通常に必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。資金の流動性については、活動に伴う資金の需要に応じた現金及び現金同等物の適正額を維持することとしております。また、突発的な資金需要に対しては、主要取引銀行と締結しているコミットメントライン契約を活用することで手許流動性を確保しております。なお、当事業年度末の借入実行残高はありません。
当社のキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注)1 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
3 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。この財務諸表の作成にあたり、決算日における資産、負債の報告数値及び報告期間における収入、費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。
経営陣は、貸倒債権、棚卸資産、投資、引当金、退職給付債務、繰延税金資産、資産除去債務、法人税等及び財務活動等に関する見積り及び判断に対して継続して評価を行っております。また、過去の実績や状況に応じて合理的だと考えられる見積りおよび判断を行いますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
重要な会計上の見積りについては、第5 [経理の状況]1 [財務諸表等](1)[注記事項](重要な会計方針)」に記載しております。
建設業を営んでいる当社は、生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
受注高、売上高、繰越高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で契約の更改により請負額に変更のあるものについては、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期売上高にも当該増減額が含まれています。
2 次期繰越高の施工高は手持工事高における支出金により推定したものです。
3 セグメント間取引については、相殺消去しております。
4 その他の売上は、工材販売手数料等であります。
5 主な相手先別の売上実績及び割合
6 上記のほか売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
該当事項はありません。
該当事項はありません。