(1) 経営の基本方針
当社は、グループ社員全員が共有し、すべての活動の基本となる理念体系として「KPPグループウェイ」を定めています。「KPPグループウェイ」は「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3層から形成されています。

理念体系のうち、ビジョンである「GIFT」に基づき、当社100周年である2024年に向けて策定された長期経営ビジョンが「GIFT+1 2024」です。このビジョンの下、当社ではグループ全体で環境関連商品の開発・流通、さらには循環型ビジネスの構築・提案など様々な取り組みを推進し、株主や顧客、取引先などの様々なステークホルダーへ貢献するとともに、経営情報の適時・適切な開示を進め、社会に開かれた企業としてグローバルに成長していきます。
紙パルプ産業の国内市場においては、情報媒体のデジタル化が加速しており、紙(いわゆるグラフィック用紙)の需要の減少が続いております。一方、堅調と見られていたパッケージング用紙についても物価の高騰による商品全般の買い控えが起こる中、人流の回復がインバウンド需要に結びついていない事に加え、巣籠需要(通販・宅配)も一服感がある事から需要は伸び悩んでいます。海外市場では、数次にわたる価格改定もあり需要の減少が進み、グラフィック用紙離れが見られてきています。一方で、海洋プラスチック汚染が世界規模の問題となり、石油由来のプラスチック製品に厳しい目が向けられるようになっているため、代替素材として紙の需要が高まっています。バイオマス素材由来の紙資源や、石油由来のプラスチック使用量を削減した製品へのシフトが見られるようになってきております。
このような状況下、当社グループは、「グローバル市場の対応」「DXとGXの推進」「資本コスト経営」「従業員エンゲージメントの向上」「気候変動対応」「ガバナンスの強化」を課題として取り組んでおります。
① グローバル市場の対応
情報メディア産業は先進国を中心に、紙媒体から電子媒体への移行が進み、特に新聞、雑誌、カタログ、帳票類などの需要減は業界の構造改革を促していると認識しています。一方で、世界の紙パルプ市場は2040年にかけて成長が見込まれ、その市場を牽引するのは段ボール原紙、紙器用板紙などパッケージ系の紙と衛生用紙であり、地域的には中国、インド、アセアンを含むアジア市場及びアフリカ諸国になると考えております。当社グループはこのような紙パルプ産業の転換期に、地域戦略とポートフォリオ戦略を着実に進めるとともに、環境商品を軸にした新事業を推進し、次の100年を目指します。
② DXとGXの推進
サステナビリティ経営の柱としてIT技術を活用した基幹系システム、CRMなどの業務変革に加え、消費電力の削減やバイオマス発電によるクリーンエネルギー事業の開発にも積極的に取り組んでいきます。
③ 資本コスト経営
当社では、収益の拡大のみならず資本コストを意識した効率的な経営を行うことが重要であり、株価純資産倍率(PBR)の改善につながるものと考えております。資本コスト(WACC、株主資本コスト)を上回る資本利益率(ROIC、ROE)を継続的に達成し、エクイティスプレッド及びEVAスプレッドの拡大を実現するため、利益率の高い事業の拡大、資本コストを上回る事業や将来を見据えた成長事業への投資を推進していきます。また、株主資本と有利子負債の最適資本構成の構築による資本コストの低減を目指すとともに、資本コスト経営の情報開示の充実を今後も図ってまいります。
当社グループは世界45か国からなる多国籍企業となり、従業員エンゲージメントの向上がグローバル経営の原点と考えています。人的資本経営による能力開発とDE&I(ダイバ シティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、従業員の活躍の場を広げていきます。
当社は2022年6月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明しました。併せて、同提言に基づき、気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会の双方に関して、戦略・リスク管理・ガバナンス・指標と目標の4項目について情報開示しています。これに加えて、2023年1月には経済産業省の主導するGXリーグにも加盟し、2030年及び2050年に向けたGHG削減目標を公開しています。今後はグループ全体を含め、より精緻に、広範囲にGHG排出量を測定し、具体的な削減施策を各拠点で進めていくことを目指します。
当社の連結子会社である国際紙パルプ商事株式会社は、独立行政法人国立印刷局が発注する再生巻取用紙の入札に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、2023年4月11日に公正取引委員会による立入検査を受け、以降、同委員会の調査に全面的に協力してまいりましたが、2024年3月14日に同委員会から、当社は独占禁止法に基づく課徴金納付命令を、国際紙パルプ商事株式会社は排除措置命令を受けました。当社グループとしては、この度の命令を厳粛かつ真摯に受け止め、再びこのような事態を招くことのないよう、コンプライアンス委員会を中心に、コンプライアンス体制の一層の強化と再発防止策の徹底を図り、信頼の回復に努めてまいります。
当社グループは、長期経営計画である「長期経営ビジョンGIFT+1 2024」の最終期における中期的な経営戦略として、第3次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)を策定しております。
「第3次中期経営計画の基本方針」
(テーマ)
長期経営ビジョン「GIFT+1 2024」の達成と創立 100 周年に向けて
(メッセージ)
循環型ビジネスによる持続可能な社会への貢献と事業ポートフォリオ改革による企業価値向上
(基本戦略)
「収益基盤の確立・深化」
・各事業会社の利益最大化
・戦略的アライアンス、M&Aの推進
・グローバルシナジーの追求
・DXの推進
「グローバルグループ経営の強化」
・ESG経営の実現
・グローバルオペレーション体制構築
・グループコミュニケーション強化
・経営資源の適正配分
目標とする経営指標と数値は、以下のとおりです。
※D/Eレシオ=有利子負債残高÷純資産
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
気候変動や海洋プラスチック汚染などに代表される環境問題は、持続可能な社会の実現に向けた世界共通の課題であり、環境問題が世界経済に与える中長期的な影響を低減していくには企業活動のレベルから改善を図っていく必要があります。また、当社は「サステナビリティ経営」を「環境・社会・経済の持続可能性へ配慮することによって、中長期で利益を出し続け、事業の持続可能性を向上させる経営」と定義し、「紙でつなぐ、未来をつくる」をコーポレートメッセージとして掲げ、その実現のために2022年にグループの理念体系であるKPPグループウェイを刷新しました。
当社では、KPPグループウェイを起点に、特定したマテリアリティを長期経営ビジョンのインプットとすることで社会と事業のサステナビリティを同期させていき、企業価値向上につなげています。経営とサステナビリティマネジメントが分離されていては意味がありません。よって、KPPグループウェイ、マテリアリティ、長期経営ビジョン、サステナビリティ戦略、サステナビリティ課題をつなげ、企業価値向上のためのサステナビリティマネジメントを実現することが決定的に重要であると考えています。

当社は、KPPグループウェイのもとに、環境だけでなく、社会やガバナンスにも配慮した「KPPグループサステナビリティ基本方針」を策定し、サステナブルな社会づくりに貢献することで企業価値の向上を図っています。
<KPPグループサステナビリティ基本方針>
私たちKPPグループは「KPPグループウェイ」の基本理念に基づき、総合循環型経営の展開を通して、持続可能な社会の実現に貢献します。また、私たちは環境や社会、そしてガバナンスを経営の重要事項として捉え、事業活動に関わるマテリアリティを特定し、課題の解決に取り組みます。
当社は、上述のとおりKPPグループウェイのもとに、KPPグループサステナビリティ基本方針を策定し、サステナブルな社会づくりに貢献することで企業価値の向上を図っています。サステナビリティマネジメントについては、会長兼CEOを委員長とするサステナビリティ委員会が管掌し、サステナビリティ課題の進捗を取締役会に報告しています(2023年度実績:2回)。取締役会は、当社のマテリアリティ((2)具体的な取り組み ②戦略の欄に記載)の解決に向けた取組みの、適切なモニタリングが可能なスキルを備えた人材で構成されており、監督の責務を担っています。サステナビリティ委員会の下部委員会として、コンプライアンス委員会、リスク管理委員会、環境管理委員会、労働安全委員会、情報セキュリティ委員会を設置し、各委員会において課題、アクションプラン、KPIを設定し、海外グループ企業を含めてグローバルに継続的な改善を図っています。なお、2024年4月よりサステナビリティ委員会はESG委員会へと改組し、新たな体制でグループのサステナビリティマネジメントを進めています。

当社はサステナビリティ経営を推進するにあたって、まずは、持続的に新たな価値を生み出すために指標とするべきマテリアリティを特定しました。特定したマテリアリティは経営ビジョン「GIFT」(



<リスク管理体制と管理プロセス>
当社は、激しく変化する外部環境の中で適切に事業活動を推進していくために、グループ全体でリスクマネジメントを展開しています。当社のサステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会下部組織である5つの委員会が当該リスクについて検証し、重大なリスクについてはサステナビリティ委員会にて報告、討議の上、必要に応じてグローバルにリスク対応を進めます。
また、当社のリスク管理体制の維持、向上を図るため、リスク管理委員会を設置し、リスク管理委員会規則に従い、サステナビリティ委員会委員長がリスク管理委員会委員長および副委員長を任命しています。リスク管理委員会は、中核事業会社におけるリスク分析の結果を受け、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価を行い、重点対応策を決定し、重点対応策の実行状況のモニタリングを定期的に行い、その結果についてサステナビリティ委員会へ報告を行っています。
■ 当社のリスク管理体制

当社におけるサステナビリティ関連のリスク(および機会)を含む各種リスクの識別・評価・管理体制については、
■ 当社のリスク管理プロセス

当社は、気候変動による事業への影響を重要な問題と認識し、リスク・機会について、評価・分析を行い、経営戦略に反映しました。また、2022年6月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同しました。今後も、継続的に気候変動課題への対応を推進し、自然環境との共生、調和を図り、社会・経済の持続可能な発展の実現に取り組みます。これに加えて、経産省が主導する「GXリーグ」にも参画し、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みを進めています。KPPグループは紙パルプ産業における主力プレイヤーであることを自覚し、「紙」という環境に優しい素材を軸に、これからもグループ全体で、GHG(温室効果ガス)排出量の削減等、環境負荷低減に貢献していきます。
温室効果ガス濃度上昇にともなう気候変動により、平均気温や海水面の上昇、そしてこれによる自然環境への影響まで様々な変化が生じています。市場においてもプラスチック・フリーの潮流が世界中に広がっており、環境負荷低減の動きが加速しています。今後、気候変動が与える事業へのリスク・機会を反映した経営戦略を推進することで、自然環境との共生、調和を図り、社会・経済の持続可能な発展の実現に取り組んでいきます。
当社グループの取締役会は、気候関連課題に対する最終責任を負っており、気候変動対応を含むサステナビリティに関する事項について、サステナビリティ委員会より年2回の報告を受けています。2023年度にも気候変動に関わる事項について報告を受け、それらの進捗状況を監督しています。サステナビリティ委員会の委員長には、代表取締役会長兼CEOが担当し、サステナビリティ委員会は、環境管理委員会より年2回、気候関連課題に関する報告を受け、GHG排出量削減などの課題への取り組みについて、助言・指導しています。
当社では、事業影響、財務影響を与える気候関連リスク・機会の特定にあたり、IEA(※)の気候変動シナリオを参考に、脱炭素社会に向けた2℃シナリオと化石燃料に依存した4℃シナリオの状況を考慮し、当社に影響を与える可能性のある様々なリスクと機会の要因を抽出・整理しました。主なものは、以下のとおりです。
(※)IEA: International Energy Agency(国際エネルギー機関)
「想定シナリオと事業に影響を与える可能性のある主な気候関連リスク・機会の要因」
抽出・整理した要因について、「事業・財務への影響度」、「リスク発現・機会実現までの期間」、「発現・実現の可能性」の観点で評価を行い、当社として重要なリスク・機会、およびそれらに対する今後の対応策・機会獲得のための施策を整理しました。
「移行リスク/物理的リスク」
「機会」
シナリオ分析を行った結果、移行リスクでは仕入先のパルプメーカーや製紙会社の炭素税、GHG削減対応の負担は小さくなく、仕入価格への転嫁も想定されることから、調達コスト増の可能性があると考えています。そのため、今後当社としても、当該影響の小さい環境負荷低減製品の選定を積極的に検討することが必要であると考えています。中長期的なサプライチェーンからのGHG排出量削減のため、足元では排出量の算定に取り組んでいます。今後、算定の精緻化ならびに具体的な目標設定、削減対策の立案・推進に、サプライチェーン全体で取り組んでいきます。
また、物理的リスクでは、台風・豪雨といった激甚災害が増加すると、自社の施設のみならず、サプライチェーンである取引先の被災や操業停止が考えられ、商品供給に支障が生じる場合、事業・財務に大きな影響を及ぼす可能性があり、幅広い仕入ソースを引き続き確保していきます。
機会としては、エコ包装の普及により包装材としての紙素材の需要が増加しています。当社ではパッケージング事業をはじめ、事業領域の拡大を図っており、2022年にも紙の緩衝材ソリューションを提供するオランダのランパック社と販売代理店契約を締結し、環境負荷低減型包装資材の拡販に取り組んでいます。
また、非化石エネルギー利用拡大や循環型社会の形成を見越し、バイオマス発電所運転支援システム「BMecomo」の開発や提供、古紙回収ソリューション「ecomo」の展開、大手企業に向けたクローズドリサイクルサービスの提供を通じた循環型事業モデルの構築を目指す等、ビジネス機会の獲得にむけた対策を積極的に進めます。
気候関連リスク・機会を評価するプロセスとして、事業への影響度や発生可能性、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、重要度を評価しています。気候関連リスクの管理プロセスについては、環境管理委員会によって評価された重要度の高いリスクはリスク管理委員会に報告され、全社的なリスク管理体制として、「リスク管理規程」に基づき、経営に対して特に重大な影響を及ぼすと判断されたリスクについて、対策委員会の設置等の対応をすることで管理していきます。

「温室効果ガス(GHG)排出量に関する目標」
当社は持続可能な社会の実現に向けて、総合循環型ビジネスモデルを展開しています。気候変動の緩和に向けて、2050年までに自社の事業活動による温室効果ガス(以下、GHG)排出量を実質ゼロにすることを目指します。まずは、国内の自社事業活動からのGHG排出(Scope1,2)について、省エネの徹底や再生可能エネルギーの導入により、2031年3月期のGHG排出量を2021年3月期基準で33%削減することを目指します。将来的には、バリューチェーン(Scope3)及び海外拠点も含めたグローバルのGHG排出削減目標を設定し、バリューチェーン全体でのGHG排出量削減に取り組みます。なお、2023年度のデータにつきましては2024年度上半期中に開示する準備を進めています。
国内事業拠点からのGHG排出量(2018年度~2022年度)
集計範囲:KPPグループホールディングス、国際紙パルプ商事(国内本支店が管轄する営業部門および管理部門)、
KPPロジスティクス及び保有不動産。
算定方法:2018年度については、省エネ法特定事業者報告の数値。2019年度以降は、GHGプロトコルに基づく。Scope2の排出係数については、マーケットベースで算定。
海外事業拠点からのGHG排出量(2021年度~2022年度)
集計範囲:Antalisグループのすべての連結子会社
算定方法:GHGプロトコルに基づく。
算定方法:Scope2の排出係数については、ロケーションベースで算定。
(※)Antalisグループ以外の海外拠点については、GHG排出量測定の準備状況に応じて計画的に測定範囲に含めていくことを検討しております。
「気候変動の緩和に貢献する製品・サービスの売上高に関する指標」
当社グループは、サステナビリティ戦略の達成に向けた進捗の管理指標として、気候変動の緩和に貢献する製品である森林認証紙や森林認証パルプの売上高や販売量も採用しています。また、当社が定義する「グリーンプロダクト」や「グリーンソリューション」も気候変動の緩和に貢献する製品・サービスとして、売上高や販売量を指標としています。
環境対応紙及び森林認証パルプの販売(2018年度~2022年度)
集計範囲:国際紙パルプ商事㈱
海洋プラスチック汚染問題の解決に向けて、社内横断的にGreen Biz Projectを 立 ち 上 げ、「Reduce, Reuse, Recycle」の3Rと「Renewable」をコンセプトとした新商品「グリーンプロダクト」の開発と流通に取り組んでいます。また、環境負荷低減に資する新たなソリューションを「グリーンソリューション」として、これまで「BMecomo」開発等に取り組んできました。Green Biz Projectとして社内で認定された環境配慮商品の売上高の目標は第3次中期経営計画の最終年度である2024年度に60億円を目指します。実績は以下の通りです。
Green Biz Projectの売上高(2022年度~2023年度)
集計範囲:国際紙パルプ商事㈱
KPPグループは、「KPPグループ憲章」を定め、全ての人々の人権を尊重し、人種、性別、宗教、信条などによるいかなる差別も行わないことを掲げています。同憲章に基づき、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠し、人権に関してさらに具体的な内容を盛り込んだ方針を「KPPグループ人権方針」として、本年3月に策定しました。
<KPPグループ人権方針の項目>
1. 人権に対する基本的な考え方
2. 適用範囲
3. 適用法令
4. 人権尊重の責任
5. 人権デュー・ディリジェンス
6. 対話・協議
7. 教育・研修
8. 救済
9. 責任者
10.情報開示
これに先立ち昨年12月には国際的なNPO法人「コー円卓会議」より専門家を招き、国際紙パルプ商事全社員を対象に「ビジネスと人権」セミナーを開催しました。さらに、人権デュー・ディリジェンスの一環として、人権リスクを洗い出した後、国際紙パルプ商事グループ会社で現地ヒアリングを実施し、人権リスクの洗い出しリスクと評価を行った結果、顕在化した人権リスクがないことを確認しました。今後取り組みを段階的にグループ内やサプライチェーンに広げ、人権課題が顕在化する前に予防措置を講じることができるマネジメント体制の確立を目指します。
<「経営戦略と人材戦略の連動」の考え方 KPPグループの人的資本経営>
当社は「KPPグループウェイ」の基本理念に基づき、総合循環型ビジネスモデルを通して、持続可能な社会の実現に貢献します。当社は商社として最大の資産である人材が意欲的に活躍できる環境こそが持続的な成長の基本であり、総合循環型経営を進める上での要であると考えます。
<当社の総合循環型ビジネスモデル>

総合循環型ビジネスモデルは、製紙原料や紙・板紙などの販売から、古紙などの再生資源を供給するマテリアルリサイクルと、バイオマス発電所運転支援等による再生可能エネルギー供給等によるGHG排出量削減に貢献するビジネスの2つから構成されます。当社は持続的な成長のため、事業ポートフォリオの転換、強化を経営戦略として掲げておりますが、マテリアルリサイクルはその主軸であり、この推進にあたって必要とする人材やその育成についての知見の蓄積があります。GHG排出量削減に貢献するビジネスでは、約100年に渡り紙パルプを中心に関連する業界において培ってきた知見や幅広いネットワークを基盤に、新たに求められる要件を加え、ビジネスの成長に資する人材の育成へとつなげています。
これらビジネスに必要とする人材を人的資本として、トップマネジメントで構成される人事委員会を中心に、グループの組織人事や人的資本に関する調査や分析、人的資本に関する方針や戦略の検討と意思決定を行い、人材育成やエンゲージメント向上につながる施策を策定し、社員一人ひとりの活躍が最終的にグループ全体の成果へとつながる人材戦略へと進めています。また、労働安全委員会を設置し、KPPグループ憲章に基づいて、誰もが安全・安心に働ける職場環境の充実を継続して図っています。
① 人材の育成について
当社創立以来、100年近く関わってきた紙販売、その後の古紙回収を加えたマテリアルリサイクルビジネスの継承のために、紙と周辺素材に関する理解から販売のソリューションまでを有する人材を育成しています。また、GHG排出量削減ビジネスの開拓など、将来に向け事業ポートフォリオ改革も進めており、新規領域の開拓や成長に貢献できる専門性を有する人材の確保と育成も求められています。
加えて2019年にSpicers、2020年にAntalisが連結子会社となり、第3次中期経営計画に掲げるグローバル経営と総合循環型企業の確立へとつながる人材の確保と育成も求められています。
2022年10月の持株会社移行に伴い、ガバナンス体制の整備、グループ内の様々なシナジー形成を進めておりますが組織や人材強化が必要であり、専門性と経験を有するキャリア人材の採用も進めています。また既存ビジネスの成長、新規ビジネスの展開、グローバル展開の次の100周年に向けて、当社の事業ノウハウを次の世代へ継承し続けるため、日本国内では新卒を10名から15名を継続的に採用していきます。
採用人材については、新入社員からグレード(等級)毎、また昇格時の研修など、執行役員まで、各階層別研修を実施しています。今後はグローバル人材や次世代基幹人材、管理職のマネジメント力強化を主眼とした研修に加え、スキル向上ではソリューション営業スキル研修も加え、人材育成を様々に強化していきます。
研修を通じた人材育成の他、事業年度の始まる4月に、事業戦略と人材の適材適所配置の観点から人事異動を行っています。決定に際して、ジョブローテーションを通じた人材育成なども考慮し、自己申告制度を通じて上司部下で話し合われている将来キャリアの情報も勘案しています。また、グループ子会社において2024年2月設立の新たな事業ポートフォリオの会社は若手人材の事業発案に基づくものであり、スタートアップ支援を通じた人材育成も行っております。
社員の能力発揮を支援するために、当社では、成果、アクティビティ、バリューの三つに分けた評価システムを運用しています。具体的には、社員を複数の職群に設定された基準に基づき職務・役割・能力レベルに応じたグレード(等級)に区分し、評価は、成し遂げた成果・結果を成果評価で評価し、目標を達成するためのプロセスはアクティビティ評価・バリュー評価で評価します。この結果を賞与、昇降給、昇降格へ反映して、社員一人ひとりが次なる目標へとチャレンジを促す制度となっています。また、社員の成果評価制度とは別に、業務上の顕著な功績や功労があった従業員あるいは組織に対して、従業員表彰制度による表彰を行い、自律的な人材の更なる活躍と組織による会社への更なる貢献を推進しています。
② 社内環境の整備について
2022年10月、事業運営の効率化や中核事業会社の経営責任を明確にすることを目的として持株会社体制に移行し、理念体系を刷新しました。社員への浸透を加速させるべく、トップメッセージや理念体系ポスターの社内掲示などに加えてブランドブックを多言語で作成し、KPPグループ全社員へ配布しました。共通の価値観を持って働くことのリファレンスとしての活用を促進しています。
社員のエンゲージメントについては、経営理念、職場環境、ハラスメント、ダイバーシティ、コミュニケーション、評価/報酬、福利厚生、業務量、テレワーク、教育/研修、エンゲージメントなどの設問に基づく独自の社員満足度調査を実施していましたが、2023年度からエンゲージメントサーベイのSaaSを導入しました。SaaSならでは強みを活かすべく現在、様々に活用検討しており、また人材戦略へも反映させていきます。
働き方において、新型コロナウィルス感染症拡大時の経験より非常時の事業継続想定を見直し、また社員の多様な働き方への対応も併せ、「テレワーク勤務実施細則」を定めて全ての社員が職場や業務状況に合わせてテレワーク勤務も可能となる就労環境を整えています。また2023年度には時間単位の有給休暇取得制度を導入し、更に月間フレキシブルタイム制の2024年度導入の準備も進めており、多様な働き方やワークライフバランスに関わる環境の整備を継続的に進めております
社員の健康管理においては、心身ともに健康な状態で働き続けることができるように、全社員に年1回の定期健康診断を実施し、30歳以上の社員については生活習慣病検診を行い、検査結果に応じた健康アドバイス等を行っています。また2023年は更なる推進策として特定保健指導に注視し、受診率向上に努めました。
健康へ影響する長時間労働の対応では、管理職も含めパソコンの稼働状況に基づく勤務実態を把握、時間管理の適正化へ向けて様々な勤怠実績を職場案内と注意喚起し、改善指導も適宜行っております。また健康障害発症リスク回避のため産業医による面談も行っておりまが、2023年には面談のオンライン受診できる環境整備を行いました。
ダイバーシティについて当社では3つの観点からなる「ダイバーシティ推進方針」を掲げ、社員の仕事と私生活の両立・性別・年齢・国籍・人種・民族・宗教・社会的身分などの違いを尊重し、社員一人ひとりが意欲的に活躍できる体制を整えています。
③ ダイバーシティの推進について
1.ワークライフバランスの向上
社員が仕事と育児・介護などの私生活を両立して就業継続しながら、よりレベルの高い仕事にチャレンジできるよう、環境を整備していきます。
2.ダイバーシティの推進
性別・年齢・職掌・障がいの有無・国籍などの区分なく、主体的なチャレンジを促進する能力開発の機会を提供し、全ての社員が最大限の活躍ができる環境を整備していきます。
3.採用の多様化
新卒人材の他、様々な領域の即戦力人材のキャリア採用も行い、グローバル経営の確立とグローバル企業としての価値向上を継続的に努めております。
障がい者の雇用については雇用環境や職域の整備を継続的に行い、現在も法定雇用率の2.5%を上回っています。今後も障がい者の雇用推進や更なる雇用環境の整備につき努力していきます。
4.新入社員向けOn the Job Training(OJT)指導員制度の導入
今後の当社の事業を支える新入社員に対しては、OJT指導員制度を導入しています。学生から社会人への第一歩を踏み出し、社会、会社、生活の変化への戸惑いを覚える社員に対し、OJT指導員との対話を通じて社会人としての考え方や理解整理を支援しながら人材の定着へと導いています。また配属先上司、OJT指導員、新入社員本人、人事部が連携の下、「1年後になっていてほしい姿」を具体化し新入社員育成計画書にまとめ、計画的かつ効果的な育成と支援体制の仕組みを構築しています。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事業等のリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、当社グループのリスク管理体制の維持、向上を図るため、リスク管理委員会を設置し、リスク管理委員会規則に従い、サステナビリティ委員会委員長がリスク管理委員会委員長および副委員長を任命しております。
リスク管理委員会は、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価を行い、重点対応策を決定し、重点対応策の実行状況のモニタリングを定期的に行い、その結果についてサステナビリティ委員会へ報告を行うこととしています。
※「当社のリスク管理体制」、および「当社のリスク管理プロセス」は2024年3月31日時点のものです。2024年4月22日付で、グローバルガバナンスの強化に向けて、ESGへの取り組みをより明確にするため、サステナビリティ委員会をESG委員会に改称しました。下部組織であったリスク管理委員会は個別の委員会組織として独立、継続しています。
■ 当社のリスク管理体制(2024年3月31日現在)

■ 当社のリスク管理プロセス

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事業等のリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する記載は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
最初に、各リスク項目を影響度と発生頻度で評価したリスクマップを掲載いたします。

上記リスクのうち重要と認識しているリスクは以下の通りです。ただし、これらは、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。また、リスクを低減するための対応を記載しておりますが、リスクを完全に回避することは困難です。
当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高6,444億35百万円(前年同期比2.3%減)、営業利益は158億19百万円(前年同期比22.5%減)、経常利益は124億75百万円(前年同期比32.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、106億13百万円(前年同期比32.5%減)となりました。
当連結会計年度の業績については、以下のとおりです。
報告セグメントごとの業績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの名称を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
<北東アジア>
国内のグラフィック用紙の構造的な需要減少に歯止めがかからず、販売数量は前年を下回りましたが、売上高・利益は価格修正後の市況が維持されており、増収増益となりました。
板紙分野では、飲料用段ボール原紙は堅調に推移しましたが、インフレによる消費者の買い控えやコスト削減を目的とした包装資材の変更、軽量化によって、段ボール原紙の販売数量は前年を下回り、減収となりました。紙器用板紙は、訪日外国人の急増等により人流が回復したもののインバウンド需要への影響は限定的でした。
一方、トレーディングカードなどの高級板紙は堅調に推移し、販売数量・売上高ともに前年を上回り、増収となりました。
製紙原料分野では、国内において、紙・板紙の需要減少に伴い、古紙の発生量の落ち込みに加え、価格も低迷し、販売数量・売上高・利益ともに前年を下回りました。市販パルプも円安による輸入パルプのコスト上昇により減益となりました。
中国では、不動産不況に伴う景気後退により、紙・板紙の需要が伸び悩み、更に、相次ぐ新規大型マシンの増設によって、市況が下落し、売上高・利益ともに低調に推移しました。
この結果、北東アジア事業の売上高は3,045億94百万円(前年同期比0.3%減)、セグメント利益は34億21百万円(前年同期比0.3%減)となりました。
<欧州/米州>
ペーパー事業では、前年度のインフレを背景とした製品値上げから一転し、市況は軟化しました。また、アジアの安価品が流入し、価格下落が続きました。サプライチェーン上の各段階では過剰在庫を削減する動きが年後半まで見られ、販売数量・売上高・利益ともに前年比で減少しました。
パッケージング事業では、インフレと高金利による消費低迷で減収になりましたが、利益は改善傾向にありました。また、米州では、カナダのLovepac社の買収によって、米国市場進出の橋頭堡となりました。
ビジュアルコミュニケーション事業では、M&Aにより新たに当社グループに加わった東欧のIntegart社が売上高・利益ともに貢献し、前年を上回りました。
この結果、欧州/米州事業の売上高は2,857億26百万円(前年同期比5.9%減)、セグメント利益は104億74百万円(前年同期比36.3%減)となりました。
<アジアパシフィック>
オセアニアでは、商業印刷事業において、特に豪州を中心にオフィス用紙のマーケットシェアを拡大し、売上高・利益ともに業績が伸長しました。パッケージ事業では、売上高は減少しましたが、利益は前年を上回りました。ビジュアルコミュニケーション事業は低調に推移しました。
東南アジア・南アジア地域では、インドの紙市場におけるインデントビジネスが好調に推移し、輸出販売が拡大しましたが、ストックビジネスはアセアン域内経済の停滞に伴う需要減少及び価格競争の影響で業績は軟調に推移しました。
この結果、アジアパシフィック事業の売上高は525億93百万円(前年同期比6.7%増)、セグメント利益は21億51百万円(前年同期比1.6%減)となりました。
<不動産賃貸事業>
全国主要都市のオフィスビル市場は、日本経済が回復基調にあることや平均募集賃料の下落が一因となり需要は増加傾向にあります。
しかしながら、オフィスビルの新規供給や既存契約更新の動向などには不透明感があり、今後も空室や賃料相場の動向には注視が必要な状況にあります。
かかる状況下、当セグメントにおきましては、KPP八重洲ビルに空室発生したものの、2023年2月に竣工したKPP明石町ビルが通年で寄与したことにより、前年比で増収増益となりました。
この結果、不動産賃貸事業の売上高は15億21百万円(前年同期比25.1%増)、セグメント利益は5億79百万円(前年同期比401.3%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、主に税金等調整前当期純利益及び社債の発行で獲得した資金を、短期借入金及び長期借入金の返済に充当したことにより、前連結会計年度末比44億55百万円減少し、262億44百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は198億17百万円(前期は103億8百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上及び棚卸資産の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は55億8百万円(前期は85億30百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得及び子会社株式の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は223億75百万円(前期は42億5百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金及び長期借入金の返済によるものであります。
③ 仕入及び販売の実績
当社グループは卸売事業が主な事業のため、生産実績の重要性が乏しいことから仕入実績を記載し、受注実績については受注から納品まで短期であるため、受注残高は僅少であり、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(参考情報)
当社グループの品種別販売実績は以下のとおりであります。
(注) 1.「その他」の数量は各単位が相違するのでその記載を省略し、「合計」の数量からも除いております。
2.賃貸収入は「その他」に含まれております。
(2) 経営者の視点による認識及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの経営成績につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
当社グループは長期経営ビジョン『GIFT+1 2024』に則り、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営の基本方針」に記載のとおり、対処すべき課題に対応してまいります。
(b) 北東アジアセグメントについて
当連結会計年度における、北東アジアセグメントの業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
<日本>
2024年3月期の日本市場については、紙・板紙分野では、数量は前年を下回りましたが、価格修正後の市況維持により、増収増益となりました。製紙原料分野では、古紙は発生量の減少に加え価格も低迷、また、市販パルプは輸入パルプのコスト上昇もあり、減益となりました。中国では、不動産不況に伴う景気後退により、売上高・利益共に低調に推移しました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、日本での事業拡大を目指す所存です。
[国内基本戦略]
マーケティングチームとの協働により販売体制を作り上げるとともに、KPPグループとして売る仕組みを確立・強化し、競合他社との差別化を図る。
紙化、減プラなどの環境対応商品の販売やクローズドリサイクルによる顧客開発等環境ビジネス・パッケージ事業を推進する。
DXの推進や部門の集約、受発注業務等により業務を効率化する。
<中国>
2024年3月期の中国市場については、ゼロコロナ政策の後遺症により経済が停滞し、紙の市況は年初から断続的に下落しました。年後半に市況は底入れしたものの、本格的な需要回復には至らず、また、紙の需給バランスにも大きな改善はみられず、販売数量・売上高・利益ともに前年を下回りました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、中国での事業拡大を目指す所存です。
[中国基本戦略]
1.メーカーとの戦略的提携の強化による差別化戦略を展開し、シェア拡大。
2.経営合理化による競争力強化、及び利益率の向上。
(c) 欧州/米州セグメントについて
当連結会計年度における、欧州/米州セグメントの業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
2024年3月期の欧州/米州市場については、ペーパー事業では、前年度とは異なり市況は軟化、また、価格の下落が継続しました。サプライチェーン上の各段階では過剰在庫を削減する動きが見られ、販売数量・売上高・利益共に前年比で減少しました。パッケージング事業では、消費低迷で減収になりましたが、利益は改善傾向にありました。米州では、カナダのLovepac社の買収によって米国市場進出の橋頭堡となりました。ビジュアルコミュニケーション事業はM&Aで加わったIntegart社が売上高・利益共に貢献し、前年を上回りました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、欧州/米州での事業拡大を目指す所存です。
[欧州/米州基本戦略]
1.更なる事業拡大戦略の推進
ペーパー&ボード事業は域内No.1トップの地位を堅持すると共に、更なる市場シェアの拡大を図り、増収増益を確保する。パッケージング及びビジュアルコミュニケーションについては、M&Aを推進し、事業規模の拡大を図ると同時に、北米市場など新たな地域への事業展開を加速させる。また、M&Aによりグループに加わった新商品を、既存・新規の顧客に提案し、販売拡大に努める。
2.急速に変化する外部環境への対応
グループ内の人材の流動性を促進し、成長が著しい地域や業種への人材シフトを加速させる。また、各地域や製品ごとの市場動向を精緻に分析し、適切なインフレ対策型の価格修正を実施する。
3.DXの推進
Eビジネスを推進し、利益率の更なる向上と業務効率の改善を図ると同時に、統一されたITインフラの導入により、グループ全体の意思決定プロセスを高度化・迅速化させる。これに加えて、ソーシャルメディア有効活用により、新たな販路を開拓し、市場拡大を促進する戦略を展開する。
(d) アジアパシフィックセグメントについて
当連結会計年度における、アジアパシフィックセグメントの業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
2024年3月期のアジアパシフィック市場については、オセアニアの商業印刷事業では、豪州を中心にオフィス用紙のマーケットシェアが拡大し、売上高・利益共に業績が伸長しました。パッケージ事業では、売上高は減少しましたが、増益となりました。ビジュアルコミュニケーション事業は低調に推移しました。東南アジア・南アジア地域では、インドの紙市場におけるインデントビジネスが好調に推移し、輸出販売が拡大しましたが、ストックビジネスはアセアン域内の需要減少及び価格競争の影響で軟調に推移しました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、アジアパシフィックでの事業拡大を目指す所存です。
[アジアパシフィック基本戦略]
1.ペーパー&ボード事業の強化
ペーパー&ボード事業においては、域内シェアの維持と細やかな利益管理を通じた利益拡大を目指す。収益性の低い事業については、コスト構造を再検討し、抜本的な解決策を講じる。
(e) 不動産賃貸事業について
当連結会計年度における、不動産賃貸事業の業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
当該事業セグメントにつきましては、所有不動産の有効活用による安定的な収益獲得を基本方針としております。引き続き、物件ごとの将来性を勘案した上で再開発や修繕等の投資判断を行い、安定的な収益獲得に努めてまいります。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、3,445億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ139億円増加しました。これは主に、売上債権、固定資産等の増加によるものであります。
負債は、2,626億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億91百万円減少しました。これは主に、借入金、未払法人税等の減少によるものであります。
純資産は、819億円となり、前連結会計年度末に比べ140億91百万円増加し、自己資本比率は23.7%となり、前連結会計年度末に比べ3.2ポイント増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益、為替換算調整勘定の増加によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。また、株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。
当社グループは、長期経営ビジョン『GIFT+1 2024』に基づく第3次中期経営計画(2022年度~2024年度)を推進中ですが、事業で創出される営業キャッシュ・フローにつきましては、成長投資と株主還元に、適正に配分していく所存です。
成長投資への支出につきましては、海外事業の拡大と事業ポートフォリオの多角化を目的としております。今後も海外投資を中心に、投資先の事業内容、投資時点の当社グループの財政状態及び資金需要を勘案し、適切に判断してまいります。
株主還元への支出につきましては、株主への利益還元を経営の重要課題の一つと認識し、安定的かつ継続的に配当を行うとともに、内部留保の拡充と有効活用によって企業競争力と株主価値を向上させることを基本方針としております。
なお、現在当社グループにおいて重要な資金繰りの懸念はございません。当連結会計年度末現在の現金及び現金同等物の残高は、国内で94億84百万円、海外で167億60百万円となっており、当社が考える適正な残高水準を上回る資金を確保しております。また、予定されている資金支出につきましても、資金調達の目途は立っております。
④ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、重要な会計上の見積り」に記載しているとおりです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。