当社グループを取り巻くビジネス環境は大きな変革期を迎えております。生活者があらゆるものの中心となる、「生活者主導社会TM」が本格的に到来したことに加え、生活者や企業の行動においてサステナビリティが重要なファクターとなりつつあります。また、AIなど先端テクノロジーやデジタルインフラの充実により産業構造が変化すると同時に、テクノロジーによる人の能力や可能性の拡張が進行しています。このような中、広告・マーケティングのみならず、ビジネスモデルの変革や顧客接点の質的向上に対する企業のニーズが高まっています。
当社グループは、このような大きな変化の中で、広告会社をオリジンとしつつも、その枠を超えた価値を提供するグループとして事業構造を変革し、ビジネスを拡大することを目指しています。不確実かつ変化の激しい環境下で、グループ全体での変革を進めるためには、その判断軸・動機づけの根幹となる当社グループの存在意義やそこで働く事の意味合いを明確に示すことが重要であると考え、グローバル市場・グローバル社会の視座に立った当社グループ共通の価値観として、グローバルパーパス「生活者、企業、社会。それぞれの内なる想いを解き放ち、時代をひらく力にする Aspirations Unleashed」を策定しました。
このグローバルパーパスを全ての企業活動の起点に据え、当社グループのクリエイティビティをエッジに、生活者・企業・社会をつなぎ、新たな関係価値を生み出すことで、広告会社グループから「クリエイティビティ・プラットフォーム」となることを目指します。
当社グループが新たな関係価値を生み出す事業領域として、「マーケティング」「コンサルティング」「テクノロジー」「コンテンツ」「インキュベーション」「グローバル」の6つの事業領域を設定しました。これら6つの事業領域は、それぞれが異なるビジネスモデルによって収益拡大を図ると同時に、相互に連携し更なる収益拡大と事業の安定性向上を目指します。現中期経営計画期間(2025年3月期~2027年3月期)を収益性の改善と成長オプションを創造する期間と位置づけ、マーケティングビジネスの構造改革と新たな成長機会の開発に注力します。そして、2032年3月期をターゲットに、6つのビジネス領域を確立し相互連携を行うとともに、利益構造を大きく変革することを目指します。
この基本戦略に基づき、以下に掲げる3つの取り組みを進めます。
・マーケティングビジネスの構造変革
統合マーケティングに対するニーズが拡大する中、事業会社間の連携強化と収益モデルの多様化を進め、グループとして最適なサービス設計・提供体制を構築します。
当社グループがこれまで培ってきたノウハウ、テクノロジー、集積してきた生活者データを結集することで、自社開発マーケティングシステムである「統合マーケティングプラットフォーム」の開発と実装を推進し、“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティングの高度化、効率化を実現します。
また、成長を続けるデジタルマーケティング領域、コマースビジネス領域を強化することで、規模の拡大を実現します。特に、デジタルマーケティング領域では、グループのリソースとノウハウを集約した新会社“Hakuhodo DY ONE”を2024年4月に設立し、フロントラインの最適化、QCD(クオリティ・コスト・デリバリー)の改善、プラットフォーマー対応機能強化を通じて、競争力の強化と生産性・収益性の向上を目指します。
・新たな成長オプションの創造
当中期経営計画の3ヵ年の間、「コンサルティング」「テクノロジー」「コンテンツ」「インキュベーション」の各領域に対し積極的な投資を行い、事業基盤を構築することで、グループの収益の柱として育成します。
・グローバルビジネスのリモデル
海外に拠点を置くグループ各社が、それぞれ個別戦略の推進とサービス提供エリアの拡張を遂行すると同時に、グループ内連携を強化します。戦略事業組織kyuの持つ専門性・先進性と、博報堂の生活者発想をかけあわせることで、ユニークな“モダンネットワーク”を形成し、デジタルマーケティング領域を中心に収益力を強化します。加えて、M&Aによる非連続な成長機会の探索を継続します。
(3) グループ経営基盤の強化
前中期経営計画期間に設立した、株式会社博報堂テクノロジーズ、株式会社博報堂DYコーポレートイニシアティブの2社をはじめとしたグループ共通基盤の強化を継続することで、グループとしての競争力を高めます。
(4) サステナビリティ経営の推進
当社グループは、人を中心としたサステナブルな経営により社会への価値創出を目指します。社員、株主、取引先、メディア、コンテンツホルダー、各種団体をはじめとするマルチステークホルダーとの適切な協働に取り組み、生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現を目指しています。
サステナビリティ経営の進捗に関しては、環境及びジェンダー平等に対する目標値を設定し各種取組を進めております。環境課題については、2050年度のカーボンニュートラルを目標としており、中間指標として2030年度のスコープ1+2の排出量を2019年度(2020年3月期)比で50%削減する目標を設定しております。また、ジェンダー平等については、2030年度までに管理職の女性比率30%の達成を目指しています。
今後は、ESG各領域でサステナビリティ経営を推進すると同時に、社会課題に対応する人材の育成を行い、生活者の想いがあふれ、いきいきと活躍できる社会の実現を目指します。
当社グループは、2025年3月期から2027年3月期までの3カ年を収益性の改善と成長オプションを創造する期間と位置付けており、「成長性の維持・向上」「収益力の強化」を踏まえた計画値としました。新たな中期経営目標は、以下のとおりです。
上記に掲げた中期経営目標の達成に向け、掲げた中期基本戦略に則り、グループの変革を着実に進め、中長期での大きな成長と、企業価値の向上を目指してまいります。
なお、連結子会社である株式会社博報堂におきまして、取引先様に対し過大請求が行われていたことが判明しております。同社は2023年10月に外部の弁護士を委員とする調査委員会を設置し、引き続き徹底的な調査を行っております。
また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関して実施された各テストイベント計画立案等業務委託契約等(本業務)に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、連結子会社である株式会社博報堂と本業務に従事していた株式会社博報堂DYメディアパートナーズの社員1名が2023年2月に東京地方検察庁より起訴されました件につきましては、現在裁判中ですが、両社においては特別検証委員会からの提言も踏まえ再発防止策の実施を徹底しております。
加えて、連結子会社である日本トータルテレマーケティング株式会社において、取引先様に対し過大請求が行われていたことが判明しております。同社は2024年3月に外部の弁護士を委員とする調査委員会からの最終報告を受け、経営体制の変更を行い、社内の意識改革及び過去の不正の清算に取り組んでおります。
上記各事案の発生により、株主をはじめとするステークホルダーの皆様に多大なご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。当社といたしましては、取引先様や各ステークホルダーとの信頼関係を揺るがす重大な事案であると考えており、再発防止策の策定と実行を進めております。
当社グループでは、当社代表取締役社長CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を委員長とし、各グループ会社の代表取締役社長CCOを委員とする「グループコンプライアンス委員会」により、グループ全体のコンプライアンス活動を推進する体制としております。加えて、2024年4月に、「グループコンプライアンス室」を新設し、当社と各グループ会社のコンプライアンス関連部門の連携を強化することとしました。また、株式会社博報堂及び株式会社博報堂DYメディアパートナーズにおいて発生した事案の再発防止の徹底を企図し、株式会社博報堂の代表取締役社長を委員長とする「ビジネス意識・行動改革委員会」を設置し、コンプライアンス推進のPDCAサイクル強化を図るとともに、その内容についても、当社「グループコンプライアンス室」がグループ全体に共有し、各社における実践を推進する体制としております。
引き続き、法令遵守の徹底と再発防止及びコンプライアンス意識のさらなる向上により信頼の回復に努めてまいりますので、株主の皆様におかれましては、何卒変わらずご支援を賜りますようお願い申し上げます。
当社グループは、サステナブルな経営環境の整備を重要なテーマのひとつとして位置付けており、中期経営計画における第四の柱として「サステナブルな経営基盤の強化」を掲げ、サステナビリティゴール「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」を目指しています。
当社グループでは、社会の大きな変化に対する迅速な対応を強化するとともに、事業機会の拡大を目指し、ESGガバナンスを構築しています。具体的には、2022年4月より博報堂DYグループサステナビリティ委員会を設置し、グループESG全体の業務の執行を行っております。博報堂DYグループサステナビリティ委員会は、当社代表取締役社長を委員長、取締役を構成員として、環境及び人権、DE&I、サプライチェーンなどのサステナビリティに関する基本方針、テーマ及び施策案の検討・策定を行います。また、当該委員会より取締役会に対して活動状況を報告するとともに、サステナビリティに関連した重要なテーマに関しては取締役会での決議を図っています。
また、グループの事業会社各社とともに、より実効力を持ったサステナビリティ活動を推進すべく、2024年3月期よりサステナビリティ推進本部を設立しました。E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の部会ごとに、各テーマの方針・目標・活動について議論を行っています。

当社グループではサステナビリティゴールの実現に向けて社会と当社グループが持続的に成長を遂げるための重要課題として、顧客やパートナーに対する「提供価値」及び「経営基盤」の観点から、以下の3つのマテリアリティを設置しました。
ⅰ. マーケティングの進化とイノベーションの創出による新しい価値の創造
ⅱ. 高度なクリエイティビティを発揮できる人材マネジメント(投資・育成・環境整備)
ⅲ. 生活者や社会との共生を目指すコーポレートガバナンスの強化
上記マテリアリティに取り組むことで、「未来をつくるクリエイティビティの向上」を目指していきます。また、現代の深刻な社会課題に対応し、生活者にとって価値ある市場を創出することで、サステナビリティゴール「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」を目指していきます。
当社グループでは、サステナビリティに関するリスクと機会を評価し、対応すべき課題を特定しています。博報堂DYグループサステナビリティ委員会にて、経営レベルで監督及び進捗管理や見直しを行っております。必要に応じてグループコンプライアンス委員会へ上申するなどの適切なリスク管理体制を構築しています。
当社グループでは、以下の3つのマテリアリティに対し指標及び目標数値を設定しております。博報堂DYグループサステナビリティ委員会によって各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果にもとづき取り組みに反映しております。なお、サステナビリティに関する各種取り組みに関しては当社グループサステナビリティサイトに掲載しているほか、2024年3月期実績に関しては、
(注)1 2021年3月期を基準とした2024年3月期までの年平均成長率
2 実績管理
3 環境・気候変動対応項目の目標数値はいずれも2019年度より算定
当社グループでは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しています。気候変動が及ぼす重要リスク・機会の洗い出しと、定量的な財務面の評価を2022年度より開始し、気候変動への積極的な対応は、将来の財務効果を生み出す可能性があることが確認できました。
気候変動に関するガバナンスは、ESG戦略のガバナンスに組み込まれています。
毎年博報堂DYグループサステナビリティ委員会において経営レベルで監督及び、進捗管理や見直しを行っており、必要に応じてグループコンプライアンス委員会へ上申する、適切なリスク管理体制を構築しています。 詳細は「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティ戦略 ①ガバナンス」に記載しております。
気候変動により平均気温が4℃上昇することは、社会に非常に大きな影響を及ぼすことから、世界全体が気温上昇を1.5℃に抑えることを目指していることに貢献することが重要であると認識しています。当社グループでは、シナリオ分析の範囲として、当社グループの主要事業地域である日本国内を中心に、研究開発・調達・生産・サービス供給までのバリューチェーン全体について、平均気温の増加幅別に2つのシナリオを想定し、2030年以降の長期想定で考察しました。
ⅰ. 1.5℃シナリオ:今世紀末の地球の平均気温が産業革命前と比較して1.5℃上昇以内に抑えられるシナリオ(一部2℃シナリオも併用)
ⅱ. 4℃シナリオ:今世紀末の地球の平均気温が産業革命前と比較して4℃前後上昇するシナリオ
1.5℃シナリオでは、炭素税導入や電力等のエネルギー価格上昇に伴うコスト増のリスクがある一方、一般消費者の嗜好変化による低炭素排出製品・サービスを取り扱う顧客からの売り上げ増や、脱炭素に貢献するサービスの提供により、当社の企業価値向上の機会があることを確認しています。一方で、このことは、脱炭素への取り組みが遅れることが事業リスクにもなり得ることも意味しています。
4℃シナリオでは、台風・洪水等の激甚的な風水害増加が、当社の事業を支えるオフィスビルの操業停止などのリスクになり得ますが、テレワークの推進等の非常時でも滞りなく事業が継続できるように対応策を進めています。
これらの分析・対応策の検討は、当時の環境マネジメント分科会より報告を受けた博報堂DYグループサステナビリティ委員会委員長、および環境管理責任者にて承認・実施されたものです。現在は、サステナビリティ推進本部E(環境)部会より、博報堂DYグループサステナビリティ委員会へ活動及び進捗を報告しています。
今後も継続的にシナリオ分析を実施することで質と量の充実を図り、経営戦略への統合をさらに推し進め、不確実な将来に対応できるレジリエンス(強靭さ)を高めていきます。
当社グループでは、2050年度のカーボンニュートラルを達成するために、中間目標として、2030年度のスコープ1+2の排出量を2019年度(2020年3月期)比で50%削減、2030年度のスコープ3の排出量を2019年度(2020年3月期)比で30%削減を設定しました。その実現のために、再生可能エネルギー由来電力の比率を2030年度時点で全体の60%、50年時点で100%の導入を目指します。従来の省エネルギー活動についても2019年度比30%減を目指すことに加え、廃棄物を2019年度比50%削減維持、リサイクル率を2019年度85%とすることを目標として掲げました。
現在、パリ協定に基づく温室効果ガスの排出削減目標である SBTの認定機関である.SBTi (Science Based Targets initiative)に対してコミットメントレターを提出し、CO2のさらなる排出削減を進めています。
なお、当社グループでは、環境情報開示に関する国際的な非営利団体CDPによる2023年度調査において、「気候変動」カテゴリでの最高評価「Aリスト」に選定されました。 今後も、TCFD提言に則り、情報開示の質と量のさらなる充実に注力するとともに、算定範囲及び目標設定範囲の拡大や各種イニシアティブ参加についても検討をしていきます。
<目標と実績>
2021年度、2022年度のCO2排出量スコープ1、2、3の一部に関しては、ウェブサイトで開示している「CO2排出量 算定報告書」において、デロイト トーマツ サステナビリティ㈱より独立した第三者保証を受けています。なお、2024年3月期実績に関しては、2024年度統合報告書にて開示予定としております。
(注)1 博報堂DYグループ国内全拠点合算
2 博報堂、大広、読売広告社、博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂プロダクツの合算
3 博報堂東京本社分
当社グループは、最大の資産であるクリエイティビティを発揮する人財を通じて、サステナビリティゴールである「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」を目指しています。人権の尊重はグループの存立基盤であり、倫理的かつ持続可能なビジネスの根幹をなすものとして推進しています。私たちは、人権を尊重する責任をよりいっそう果たすべく、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が掲げる保護・尊重・救済のフレームワークに依拠し、取締役会の承認を経て、グループの人権方針を制定しました。本方針は、当社グループで働く全役職員等(役員、正社員、契約社員、派遣社員のすべて)を適用の対象としています。
当社の取締役会は、本方針で規定する人権尊重の活動全般を持続的に監督する責務を持ちます。とりわけ顕著な人権課題への取り組みに関するモニタリング機能を果たしながら、人権侵害への直接的または間接的な関与を回避するため、合理的措置を講じます。サステナビリティ管轄部門である「サステナビリティ推進室」は、サステナビリティ担当取締役のもと、本方針の浸透および人権尊重全般に関する取り組みを推進します。
当社グループは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、人権尊重の責任を果たすために人権デュー・ディリジェンスを実施することで、グループの事業活動による人権面での影響について説明責任を果たすよう努めていきます。
さらに、人権デュー・ディリジェンスの結果をもとに、顕著な人権問題に対する取り組みに注力するよう努めます。さらには既存事業に加え、M&Aを実施した企業を含む事業会社を対象に、グループ各社の内部統制部門と連携しながら、リスクマネジメントの取り組みの一環として、事業活動で起こりうる人権に対する負の影響の整理・評価・対策を検討していきます。
人権リスクを特定するにあたり、下記の対応ステップを通じて顕著な人権課題の特定を実施しております。
ⅰ.人権課題の網羅的な把握
国際的規範及び業界動向等から想定される重要な人権課題を網羅的に列挙の上、事業展開国・地域における人権課題の調査及び担当者へのヒヤリングを実施。上記を踏まえ、当社グループのバリューチェーン上でどのような人権課題が発生しうるか、候補リストを作成しました。
ⅱ.重要度評価
人権への負の影響(発生可能性及び深刻度)、当社グループ事業との関連性に基づき、過去及び将来的な発生可能性を考慮し、各人権課題に対して重要度を評価し、優先度を検討しました。
ⅲ.顕著な人権課題の特定
ⅱ.の重要性評価に基づき、博報堂DYグループサステナビリティ委員会で協議の上、顕著な人権課題を特定しております。
(注)1 主に協力機関
当社グループでは、全役職員等に対して、企業内通報・相談窓口を設置しており、人権に関する通報や相談を極めて高い匿名性と秘匿性を確保した上で受け付け、人権侵害を受けた方が救済を受けられるように誠実に対応します。さらに、グループ各社における人権に対する負の影響の評価および対応を検討するため、企業内通報・相談窓口に届く人権侵害に関する通報件数および傾向を定期的に確認し、深刻な侵害につながる可能性のある事案に対しては対応策を議論し、グループコンプライアンス委員会への報告を行っています。
<従業員の人権リスク評価>
従業員における人権リスク評価のため、2023年度は、当社グループ内における人権教育として、人権研修を実施しています。また、その浸透度合いを測るとともに、潜在的な人権課題を検出し、人権デュー・ディリジェンスの進捗を評価することを目的としたアセスメント(アンケート調査)を実施しています。
人権に関わる影響について、関連するステークホルダーとの対話と協議を通じて、適切な対応を行います。また、本方針に規定する取り組みを含む、人権尊重に対する活動の進捗および結果をコーポレートサイトにて情報開示することで、より積極的な取り組みを図ります。
当社グループは、事業活動において本方針の実効性を高めるよう、全役職員等に対する本方針の浸透、周知徹底、および人権に関する理解を深める教育を実施します。また、現在行っている各種ハラスメントに関する研修、広告における表現リスク研修についてもいっそう強化していきます。
2023年度の実績は下記の通りです。初年度である当期は、主要事業会社社員及び契約社員に向けたデュー・ディリジェンスを実施しています。
人権リスクに関する課題に対応すべく、今後も引き続き人権デュー・ディリジェンスを推進し、適切な対応を検討していきます。
また、人権に配慮し尊重したバリューチェーンの確立・維持のため、調達先や生活者をはじめとした社外ステークホルダーとのエンゲージメントについても検討を進めていきます。
当社グループの事業及びその他に関するリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項について、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社の株式に関する投資判断は、本項目及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。また、本項目に記載した予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来実現する実際の結果とは異なる可能性がありますのでご留意ください。
国内企業の広告費の支出は、企業が景況に応じて広告費を調整する傾向にあるため、国内の景気動向に大きく影響を受ける傾向にあります。当社グループの国内売上高は、連結売上高全体に占める割合が高く、国内景況が悪化すると当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、景況の悪化による影響を軽減するため、広範囲の業種にわたる顧客基盤の構築、マーケティング・コミュニケーションサービスの多様化、海外展開等をはかる所存でありますが、日本経済の回復が遅いもしくは不十分な場合、又は当社グループの対応が十分ではない場合もしくは十分にはかかる影響を軽減できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディア広告の国内売上高は、ここ数年、売上高全体に占める構成比が減少してきているものの、2024年3月期においても、33%程度と大きなシェアを占めております。また、今後も引き続き、広告主のマーケティング活動に活用され、当社グループの中心的な事業のひとつであり続けると認識しております。
また、インターネット広告の国内売上高は引き続き成長しております。インターネット広告は従来のマスメディア広告と組み合わせることでより高い広告効果が得られるため、複数のメディアを最適化するプラニングが求められます。
さらに、近年急速なテクノロジーの進展により、当社グループを取り巻くビジネス環境は大きく変革期を迎えております。従来の広告領域をオリジンとしつつも、その枠を超えた価値を提供することで、ビジネスの拡大を目指しております。
当社グループは、環境変化に対応するため事業構造の変革を進めています。しかし、このような取り組みを迅速かつ十分に行うことができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
マスメディアの広告取引は、主として、広告主からの受注に基づき行いますが、各広告会社は自社の責任で媒体社等と取引を行うのが一般的です。そのため、広告主の倒産等により、債権を回収できなかった場合には、広告会社が媒体料金や制作費を負担することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、広告業界では、慣行上、広告計画や内容の変更に柔軟かつ機動的に対応できるよう契約書を締結することは一般的には行われておりません。当社グループにおいても、継続的な取引関係が成立している広告主との間であっても、個別取引に関する書面は存在するものの、基本契約書等を締結していないことが一般的であります。そのため、広告主との間で明確な契約書を締結していないことにより、取引関係の内容、条件等について疑義が生じたり、これをもとに紛争が生じたりする可能性があります。
なお、欧米では「一業種一社制」(同一業種では一社のみの広告主を広告代理店が担当する取引形態)が一般的であり、広告会社の報酬構造や報酬決定方法も異なっております。日本においてはこのような取引形態は一般的ではありませんが、欧米の広告主、広告会社が日本に進出してきている昨今の状況に鑑みると、今後これらの取引形態及び報酬構造や報酬決定方法が日本の広告の取引慣行に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、こうした動向に対応し、サービス形態の多様化等に努めてきておりますが、今後、取引慣行の動向・変化に適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
広告主の広告活動、メディアにおける広告の掲載・放送方法や内容等、広告会社の事業活動等に関する法令・規制・制度の導入や強化、法令等の解釈の変更等がなされる場合があります。法規制等の導入や強化等に対して当社グループが適切に対応できない場合又は広告主の広告活動が減少する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループと広告主の間は、継続的な取引関係が成立しておりますが、広告主がコスト削減、取引関係の合理化等の要請を強める昨今の状況の中で、今後取引関係が解消、縮減等されない保証はなく、また、報酬等の水準は当事者間の合意によるものであり、その水準が今後も保証されるものではありません。従前と同様の取引関係が継続されない場合又は従前の取引条件が変更される場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。なお、2024年3月期における当社グループの上位広告主10社に対する売上高は、当社グループの国内売上高の18%程度となっております。
当社グループの広告事業においては、新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディアの広告及びインターネット広告に関する事業が主体であるため、主要媒体社等からの仕入れの依存度は高くなっております。
当社グループと媒体社等は、長年の継続的な取引関係が成立しておりますが、媒体社等との取引が継続されない場合又は取引条件等が変更された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
日本の広告業界では、サービスの多様性、対応力、企画力、販売力等の観点から、売上高で上位の広告会社への集中傾向が高く、またインターネット広告専業を含む上位広告会社を中心に熾烈な競争が行われております。さらに、大手の海外広告会社や各種プラットフォーマーも参入し、競争がますます激しくなる傾向にあります。
また、事業領域を拡大していく中で、コンサルティング会社など異業種企業と新たな競合が生じる機会も増加しております。
当社グループは、サービスの多様化、企画力、創造的提案力、経験、広告主との長年の継続的な取引関係等により競争上の優位性を確保していく所存でありますが、継続してかかる優位性を確保できる保証はなく、優位性を逸した場合あるいは競争の激化に伴い報酬が減額した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
近年、インターネット広告の進展は著しく、この分野においては技術の進化や多様な広告手法が生み出されております。当社グループは、これまで培ってきたリソースとノウハウを集約した新会社“Hakuhodo DY ONE”を新たに設立し、フロントラインの最適化、QCD(クオリティ・コスト・デリバリー)の改善、プラットフォーマー対応機能強化を通じて、競争力の強化と生産性・収益性の向上を目指します。
しかしながら、今後、インターネットメディアの拡大をはじめとしたマーケティングのデジタル化の進展に対して当社グループが適切に対応できない場合や新しいメディアやマーケティング手法に対する当社グループの事業戦略や取り組みが功を奏しないもしくは十分ではない場合には、当社グループのサービスの品質の低下が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、広告事業会社である株式会社博報堂、株式会社大広、株式会社読売広告社、株式会社Hakuhodo DY ONE及びソウルドアウト株式会社、総合メディア・コンテンツ事業会社である株式会社博報堂DYメディアパートナーズの6社並びに専門性と先進性の継続的な当社グループへの取り込みを狙った当社傘下の事業組織「kyu」に加えて、各組織がそれぞれ所有する広告関連サービスを提供する子会社群等から形成されており、広告主に対しワンストップでのマーケティング・コミュニケーションサービスを提供すべく国内外において事業展開をしております。また、中期経営計画においては「マーケティングビジネスの構造改革」「新たな成長オプションの創造」「グローバルビジネスのリモデル」の3つの取り組みを進め、事業構造を変革することとしており、「収益性改善と成長オプションの創造期」と位置づけております。
グループ会社を通じた事業展開、新たな価値を生み出す事業領域として注力する会社の設立、買収、資本業務提携等により出資を含むグループ会社関係を構築することについては、出資額あるいは場合によっては出資額を超える損失が発生するリスク、グループの信用を低下させるリスク等を伴う可能性があり、出資会社の事業活動や経営成績によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
広告業において一般的なリスクではありますが、当社グループにおいても同様に、事業活動を行う過程で、当社グループが所有する又は使用許諾を受けている以外の知的財産権の侵害及び逆に当社グループが所有する知的財産権が侵害されてしまうおそれがあり、当社グループがかかる事態を防止し、あるいは適切な回復をすることができない可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの成長性及び競争上の優位性は、優秀な人材の確保に大きく依存します。人材に関しては、新卒者の安定的採用や即戦力となる中途採用の推進により確保をはかり、各職責、能力、市場環境の変化に対応した教育研修等による育成に努めておりますが、何らかの理由により優秀な人材の流出や人材の確保に支障をきたす可能性もあります。かかる事態が生じた場合、当社グループの競争力に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、今後もスポーツ等イベントの権利取得や興業、映画製作への投資、アニメ・キャラクター関連番組制作等のコンテンツ関連ビジネスを行っております。しかしながら、メディア・コンテンツビジネスの事業展開には、投資リスクを伴う場合があり、計画通りに進行しない場合又は収益を確保できない場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、広告主のニーズに応えるため、また中期経営計画における基本戦略の一つとして、更なる拠点拡充や専門マーケティングサービス企業のM&Aによるグループ内への取り込みを含め、積極的な事業展開を行っておりますが、これらの事業展開には、海外の事業投資に伴うリスク(為替リスク、カントリーリスク等)、出資額あるいは出資額を超える損失が発生するリスク及びグループの信用を低下させるリスク等を伴う可能性があり、計画通りに事業展開ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、持株会社体制という枠組みの持つ優位性等、経営統合の相乗効果を最大限活用し、グループ経営基盤の強化に努めておりますが、持株会社統治等の効果が十分発揮されなかった場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、資金運用面においても、グループ内での資金運用、配分の効率化を進めておりますが、その効果が十分に発揮されない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、様々な要因により今後直接又は間接的に、何らかの訴訟・紛争に関与することとなる可能性は否定できません。当社グループが訴訟・紛争に関与した場合、その経過・結果如何によっては、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。
なお、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関する事案については、現在裁判中ですが、特別検証委員会からの提言も踏まえ再発防止策の実施を徹底しております。
当社グループは、投資有価証券の評価基準及び評価方法として、市場価格のない株式等以外のものは期末の時価にて評価するため、株式市況等の変動により評価損を計上する可能性があります。一方、市場価格のない株式等は実質価額で評価するため、発行会社の財務状況や今後の見通しなどに鑑み、時価が著しく下落し、その回復が見込めない場合には、減損処理により評価損を計上する可能性があります。このような状況になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率、年金資産の期待運用収益率等の一定の前提条件に基づいて数理計算を行っております。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その差額は将来にわたって規則的に損益認識されます。金利の低下、運用利回りの低下、年金資産の時価の下落等があった場合や退職金制度、年金制度を変更した場合には、追加的な退職給付に係る負債の計上、未認識の過去勤務費用の発生又は将来の退職給付費用の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、これらの影響を軽減すべく退職給付制度の一部を2018年4月以降、確定給付年金から確定拠出年金に変更しておりますが、引き続き確定給付年金も残されているため、これらの可能性を完全になくすことはできません。また、退職給付に関する会計基準の変更等により、従来の会計方針を変更した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
役職員等の不正行為の防止を目的として、当社グループでは、「グループコンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体のコンプライアンス活動を推進する体制を構築しております。また、博報堂及び博報堂メディアパートナーズにおいて、博報堂の代表取締役社長を委員長とする「ビジネス意識・行動改革委員会」を設置し、行動規範および遵守事項の徹底、取引ルールの明確化と周知、倫理のみに頼らない仕組みづくりなど、各種テーマで再発防止策の策定と実施を行っております。しかし、法令及び社内規定の遵守のための様々な取組みをもってしても、役職員の不正行為を完全に防止することはできません。また、当社グループの取引先等の不正行為への関与が問題となる可能性もあります。これらの役職員等の不正行為により、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。
当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合又その回復状況等が、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼすことが想定されます。
当社グループは、広告主のマーケティング又は広告に関する情報の管理を含む当社グループの事業のために、情報システムを使用し、情報インフラに依存しております。当社グループ又は当社グループが利用する第三者の情報システムに、システムの障害や停止、システムへの不正なアクセス、コンピュータウィルスの侵入、サイバーアタック、従業員の不適正な事務・事故・不正等による人為的過誤などが発生した場合、また同様の要因により情報の外部漏洩・不正使用等が発生した場合、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動あるいは当社グループの社会的信用に悪影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における日本経済は、インバウンド需要の回復や製造業の持ち直しに支えられ、緩やかな回復基調が継続しましたが、物価高に起因する個人消費の回復鈍化など、一部に弱さがみられました。国内広告市場(注1)は、力強さを欠く個人消費や為替の急速な変動に伴う経済の先行き不透明感が企業のマーケティング活動の重石となり、経済状況と比べ弱い動きが続いています。このような環境下、当社グループは、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画に則り、積極的な事業展開を継続してまいりました。
当連結会計年度の売上高(注2)は1兆5,793億50百万円(前期比3.4%減収)、収益は9,467億76百万円(同4.5%減収)となりました。
当連結会計年度の売上高を種目別に見ますと、インターネットメディア及びテレビが前年を上回り、メディア合計で前年から増収となりました。一方、メディア以外では、マーケティング/プロモーションにおいて大型案件の反動減があり、前年を大きく下回りました。
また、得意先業種別では、「官公庁・団体」及び「情報・通信」などで前年を下回りましたが、「交通・レジャー」、「流通・小売」及び「外食・各種サービス」で前年を上回り、21業種中、12業種が前年を上回りました。(注3)
売上総利益に関しても、3,941億74百万円(前期比2.3%減少)と前期より93億89百万円の減少となりました。なお、このうち国内事業については2,976億85百万円と3.2%の減少、海外事業についてはアジアにおいて堅調に推移したことに加えて為替影響もあり、1,081億64百万円と6.0%の増加となりました。また、中期的な成長を見据えた戦略費の投下を継続したことに加え活動費の戻りにより、販売費及び一般管理費が増加した結果、営業利益は342億88百万円(同38.1%減少)となりました。
営業外収益は、受取配当金が22億77百万円、条件付取得対価に係る公正価値変動額が33億79百万円計上されたこと等により、前年同期比18億7百万円増加の92億64百万円となりました。
営業外費用は、支払利息が11億39百万円、持分法による投資損失が20億70百万円計上されたこと等により、前年同期比32億50百万円増加の57億37百万円となりました。
以上の結果、経常利益は前年同期比37.4%減少の378億15百万円となりました。
投資有価証券売却益を252億61百万円計上したこと等の結果、特別利益は255億79百万円となりました。また投資有価証券評価損を42億5百万円、特別退職金を42億42百万円計上したこと等の結果、特別損失は120億60百万円となりました。以上を加味した税金等調整前当期純利益は513億34百万円(前期比13.3%減少)となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前年同期比11億82百万円減少の245億42百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は、前年同期比6億6百万円減少の18億69百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は249億23百万円(前期比19.6%減少)となり、前期より60億86百万円の減益となりました。
(注1)「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)によります。
(注2)「売上高」は従前の会計基準に基づくものですが、財務諸表利用者にとって有用であると考えていることから、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等に準拠した開示ではないものの、自主的に開示しております。
(注3) 当社の社内管理上の区分と集計によります。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ85億98百万円増加し、1兆350億14百万円となりました。
主な増減は、現金及び預金の増加215億45百万円、棚卸資産の増加142億45百万円、受取手形及び売掛金の減少89億49百万円、のれんの減少66億3百万円であります。
負債は、前連結会計年度末に比べ107億87百万円減少し、6,258億13百万円となりました。主な増減は、長期借入金の増加1,254億77百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少1,050億4百万円、支払手形及び買掛金の減少349億13百万円、賞与引当金の減少100億69百万円であります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ193億85百万円増加し、4,092億円となりました。主な増減は、利益剰余金の増加112億57百万円、為替換算調整勘定の増加60億43百万円、その他有価証券評価差額金の増加59億44百万円であります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて209億85百万円増加し、1,800億67百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(513億34百万円)の計上等に対して、減価償却費(133億6百万円)、投資有価証券売却益(△252億14百万円)、売上債権の減少(142億70百万円)、仕入債務の減少(△385億53百万円)等により、98億83百万円の増加(前連結会計年度末は380億35百万円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入(281億48百万円)、無形固定資産の取得による支出(△102億28百万円)等により、63億29百万円の増加(前連結会計年度末は327億92百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金による収入(1,301億34百万円)、長期借入金の返済による支出(△1,102億53百万円)、配当金の支払額(△117億68百万円)等により、10億97百万円の増加(前連結会計年度末は288億39百万円の減少)となりました。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、広範囲かつ多種多様にわたる広告業務サービスの提供を主たる事業としており、その内容、構造、形式が必ずしも一様ではないため、生産実績及び受注実績について、その金額あるいは数量を記載しておりません。
また、販売実績については、(1) 経営成績に含めて記載しております。
(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2019年5月に2024年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表し、各種取り組みを進めてきましたが、コロナ禍の影響によりビジネス環境が激変したことを受け、一旦目標をとり下げ、2022年2月に、2022年3月期から3ヵ年の見直し中期経営計画を発表しました。同計画では、中期経営目標及び同目標を達成するにあたり注視すべき重点指標を掲げ、積極的に事業を展開しました。
中期経営計画の最終年度にあたる当連結会計年度においては、既存事業での市場を上回る成長に加え、為替影響やM&Aの押し上げ効果があり、十分な成長を実現することができましたが、コロナ関連業務の反動減、北米事業の業績悪化、積極的な先行投資等の影響で、利益面では課題の残る結果となりました。
<中期経営目標>
<重点指標>
また、中期経営計画で掲げた“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティングの実践をはじめとする各種戦略は着実に進捗しました。広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS」の活用拡大やAI技術を活用した多様なソリューションの開発/提供が進行すると同時に、2022年4月に子会社化した、地方や中小企業向けのデジタルサービス提供に強みを持つソウルドアウト㈱のグループ内連携が深化したほか、海外においても、専門性/先進性の取り込みやアジア圏におけるケイパビリティ強化が進展しました。さらに、グループのコーポレート機能の高度化・効率化を推進するため、㈱博報堂DYコーポレートイニシアティブを設立しました。
なお、2025年3月期以降については、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 に記載の通り、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画及び中期経営目標を新たに設定しております。
(注1)連結のれん償却前営業利益とは、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連結営業利益のこと。投資事業を含むすべての事業を対象とする。
(注2)調整後売上総利益年平均成長率とは、投資事業を除いた主力事業における売上総利益の、2021年3月期の実績から2024年3月期までの3年間の年平均成長率のこと。
(注3)調整後のれん償却前営業利益年平均成長率とは、投資事業を除いた主力事業における、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連結営業利益の、2021年3月期の実績から2024年3月期までの3年間の年平均成長率のこと。
(6) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、経営環境のいかなる変化のもとでも事業活動を安定的に継続させる為に必要な手元流動性を確保した上で、事業活動から生み出されるネットキャッシュを、中期経営計画に基づき成長分野に重点的に投下することを基本方針としております。また、安定かつ継続的に株主に配当を実施することを株主還元の基本方針とし、資金需要の状況、業績の動向及び内部留保の充実等を総合的に勘案の上、配当額を決定しております。
将来の成長の為に必要な投資資金や株主還元の為の資金は、前述の通り自己資金から賄うことを基本方針としておりますが、M&Aや設備投資は個別案件毎の規模やタイミングにも依存するため、状況次第では手元資金のみで賄えない場合も想定されます。このような場合には、当社グループの財務状況や金融・資本市場の動向を鑑み、コストや機動性等を精査した上で、金融機関からの借入等の適切な手段で資金調達を実行する所存であります。
なお、現在の当社グループの財政状態等から勘案すると、十分な資金調達能力を有していると判断しております。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。