第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)新 2030年度ありたい姿

当社グループは、「暮らしのより確かな基盤をつくる」という理念のもと、新たに2030年度のありたい姿を設定し、エネルギービジネスにおけるバリューチェーン全体を手掛ける総合エンジニアリング力を発揮し、安全を最優先に最適な品質を提供することで社会インフラ構築事業を強固なものにしていくとともに、カーボンニュートラルに向けた事業などを通じて、サステナブルな社会の実現へ貢献してまいります。

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(2)経営戦略等

当社グループは、経営環境の変化に適応し、持続的な成長を実現していくために「2024年度中期経営計画(2024~2026年度)」を策定し、最終年度(2026年度)到達目標達成に向けて、『人』を最上位に位置づけ、3つの重点課題に取り組んでまいります。

 

[基本方針]

『人』を真ん中にした 強くて しなやかな Q'dづくり

 

[重点課題]

① 人材への投資による 人的資本の強化

② お客さまに選ばれるための 「Q'd」の磨きこみ

③ 当社に関わるすべての 人・組織とのつながり強化

 

Q'd(キュード):クオリティオリエンテッド

常に本質を問う企業でありたいとの願いを込めたシンボルワード

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

今後の見通しにつきましては、期待成長率の高まりを背景に設備投資の増加基調は続くものの、不安定な国際情勢や為替変動の影響、金利の上昇傾向等から、エネルギーインフラ事業に携わる当社グループにとっては厳しい経営環境が継続するものと予想されます。

一方で、脱炭素社会の実現と経済成長の両立に向け、「GX推進法」「GX脱炭素電源法」が成立し、省エネの推進、再エネの主力電源化、原子力の活用等の具体的な道筋が示されたことは、当社グループにとってビジネス領域を拡大する好機であると考えております。また、電力需給ひっ迫対応と脱炭素電源の拡大を目的とした長期脱炭素電源オークションの具体的な応札手続きが進み、アンモニア・水素の導入を可能とする既設火力発電所の改造工事やLNG火力・バイオマス・太陽光・洋上風力発電所の新設工事等、脱炭素電源への設備投資が見込まれております。

このような情勢を踏まえ、当社グループは、新たに2030年度のありたい姿として「一人ひとりの技術力でカーボンニュートラルをリードするクオリティファースト企業」を掲げるとともに、2024年度中期経営計画(2024~2026年度)を策定しました。このありたい姿を実現するための最も重要な要素である人的資本の強化を主眼に「『人』を真ん中にした強くてしなやかなQ'dづくり」を基本方針として、最終年度(2026年度)到達目標達成に向けて、重点課題の「人材への投資による人的資本の強化」、「お客さまに選ばれるための「Q'd」の磨きこみ」、「当社に関わるすべての人・組織とのつながり強化」に取り組んでまいります。

火力発電分野につきましては脱炭素の流れから縮小傾向にありましたが、先述の通り長期脱炭素電源オークションの導入により既設火力発電所の改造工事やLNG火力発電所の新設工事が計画されており、当社としてもこれまでに蓄積した技術力を発揮し、カーボンニュートラルに貢献してまいります。

原子力発電分野につきましては、今後の再稼働状況に合わせて随時、再稼働準備や再稼働後の保守工事の場を拡げてまいります。また、第6次エネルギー基本計画で明記された核燃料サイクルの推進に向けて原子力燃料関連施設の稼働準備が進むことから、地域共生の観点も視野に青森支社の機能強化を図り、事業の拡大を進めてまいります。

すでに公表しております柏崎刈羽原子力発電所6、7号機固定式消火設備配管溶接部の溶接不良への対応は、再施工を概ね完了しており、今後同種工事における再発防止対策を含めた不適合発生の予防に全力で取り組んでまいります。

また、福島第一原子力発電所の廃炉・安定化作業に関しましても、引き続き水処理関連設備の工事を中心に取り組むとともに、2023年度に設置したロボット開発推進グループを中心に1号機PCV内部調査用ロボット開発の成果をもとに、原子炉建屋内部調査等、今後も困難な作業に取り組んでまいります。

グリーンエネルギー分野につきましては、国内各所のバイオマス発電所のO&M(運転・保守)業務やLTSA(長期保守契約)業務の受託の他、新たなバイオマス燃料の調達・開発を進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するとともに、発電所の安全・安定運転を通して地域に貢献してまいります。

さらに、水力発電事業につきましては、施工中の鳥取県営水力発電所再整備事業をはじめとするリニューアル工事が全国各所で続くことが見込まれており、当社創立以来積み重ねてきた技術力を活かして取り組んでまいります。

また、各地域における地産エネルギー活用の推進に向けて、バイオガス発電、系統用蓄電池、PPA(電力販売契約)、バイオマス発電へのCCUS適用(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)等に関わる新しいビジネスの創出にも引き続き取り組んでまいります。

合同会社境港エネルギーパワーのバイオマス発電所につきましては、大きなトラブルもなく順調に運転を継続しております。引き続き、地元の皆さまのご理解とご支援をいただきながら、性能維持に向けた発電所運営を行うとともに、エネルギー環境教育の支援活動や燃焼灰の利活用等を通して、地域社会の発展に貢献してまいります。

海外事業分野につきましては、タイ王国内にあるTokyo Enesys(Thailand) Co.,Ltd.の工場において、日本国内メーカーや東南アジアをはじめとする近隣諸国のお客さまからの様々なニーズに応じた製品を供給できる体制構築により、受注を拡大しております。今後、発電設備から一般産業分野への拡大やEPC(設計・調達・建設)への展開も視野に入れた営業活動を進めてまいります。また、エネルギー関連事業投資が旺盛なベトナム社会主義共和国にTokyo Enesys Vietnam Co.,Ltd.を2024年5月に設立しました。当社グループの技術力を活かし、両国を中心にエネルギー関連事業の海外展開を行ってまいります。

以上のような事業領域拡大を実現するため、2024年6月にエネルギー・産業本部、電力本部の再編や地域に根差した営業拠点の新設などを行い、お客さまの期待を超える価値を届け、全国のお客さまに選ばれ続ける企業を目指して活動を展開してまいります。

今後とも「暮らしのより確かな基盤をつくる」という理念のもと、エネルギービジネスにおけるバリューチェーン全体を手掛ける総合エンジニアリング力を発揮し、安全を最優先に最適な品質を提供することで社会インフラ構築事業を強固なものにしていくとともに、カーボンニュートラルに向けた事業などを通じて、サステナブルな社会の実現へ貢献してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ方針

 当社グループは、「暮らしのより確かな基盤をつくる」という基本理念のもと、お客さま等に「信頼・選択され続ける」ことを第一に、企業成長の源泉に位置付けた人的資本の伸展により社会的課題を解決し、企業価値の向上と持続可能な社会の実現に力強く取り組むことを「サステナビリティ方針」として策定しております。

サステナビリティ方針

当社グループは、「暮らしのより確かな基盤をつくる」という基本理念のもと、以下を実践してまいります。

●人的資本の伸展をエンゲージメントにつなげて、組織基盤を強化してまいります。

●主体的に社会的課題を解決しステークホルダーから信頼・選択され続けることで、企業価値を高め、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(2) 気候変動への対応(TCFD提言への取組)

 当社グループは、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードを踏まえ、気候変動問題を重要な経営課題の一つと捉え、2023年5月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。

 そのうえで、「暮らしのより確かな基盤をつくる」という基本理念のもと、株主及び投資家はもとより地域社会・お客さま・取引先・従業員等のステークホルダーから信頼・選択され続ける企業を目指すとともに、社会的課題の解決に向けてカーボンニュートラル関連事業を主力に更なる挑戦を展開してまいります。

 今後も、事業活動を通じた持続可能な社会の実現に貢献するとともに、TCFD提言に基づいた気候変動への対応について情報開示に取り組んでまいります。

<TCFD提言による開示推奨項目>

ガバナンス

気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス

戦略

気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス、戦略、財務計画に及ぼす影響

リスク管理

気候関連のリスクの認識、評価、管理プロセス

指標と目標

気候関連のリスク及び機会を評価・管理する指標と目標

(注)TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略)

金融安定理事会(FSB)によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース。2017年6月、気候変動の影響を金融機関や企業、政府等の財務報告において開示することを求める提言を公表。

 

① ガバナンス

 当社グループは、2024年2月に代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を執行側に設置しました。経営に重大な影響を及ぼすおそれのある気候関連のリスクや機会とその情報開示並びに脱炭素社会実現に向けた社会的課題の解決による企業価値向上について審議を行ってまいります。

 気候変動への対応に対する取締役会によるガバナンスとしては、執行側並びに監査側(監査等委員会及び内部監査部門)の複線化したレポートラインから定期的に報告を受け、監督しております。

 なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制の詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制」に記載しております。

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② 戦略

イ シナリオ設定

 当社グループは、2つのシナリオにおける2050年までの社会を想定し、各シナリオにおける気候関連のリスクと機会の特定を行っております。

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

今世紀末までに産業革命前と比較し、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるため、大胆な政策や技術革新が加速される。

脱炭素社会への移行に伴う社会変化が事業に影響を及ぼす社会を想定。

パリ協定に即して各国政策が進められるも、現状を上回る対策をとらなければ世界の平均気温が4℃程度上昇する。

温度上昇等の気候の変化が事業に影響を及ぼす社会を想定。

 

ロ シナリオ分析結果

 当社グループは、2つのシナリオ分析によって特定された気候関連のリスクと機会の中から、重要度の高い主な項目について財務インパクトを評価した結果は次のとおりであります。

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 今後も評価結果を踏まえた対応策を実践する一方、社内外の変化にあわせて適宜見直しを行ってまいります。

 

③ リスク管理

 気候関連のリスクについては、代表取締役社長が委員長を務めるリスク管理委員会において識別・評価を行い、全社横断的なリスクとともにリスクの事前回避や顕在化時の被害軽減について統括的に管理しております。

 万が一重大なリスクや損失が顕在化した場合には、迅速かつ的確に対応することにより、経営に及ぼす影響を最小限に抑制するよう努めております。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、カーボンニュートラル目標として、温室効果ガス排出量について、2030年度に2021年度比で46%削減、2050年度に実質ゼロを目指しております。

 当社は、経済産業省が主導するGXリーグに参画し、トランジション戦略に基づきグループ大で温室効果ガス削減に努めております。

 当社の事業における燃料や電気の使用に伴う自社の温室効果ガス排出量として、Scope1排出量(直接排出)及びScope2排出量(間接排出)の算定結果は以下のとおりです。

 今後は、Scope3(事業者の活動に関連する他社の排出等Scope1、Scope2以外の間接排出)を含むサプライチェーン全体へ対象範囲の拡充に向けて取り組んでまいります。

    0102010_004.png

 

(3) 人的資本

① 戦略

 当社はこれまで、事業活動を支える人的資本に関しては、中長期的なガバナンス確保の観点から、2021年に『人材育成大綱』を策定し、人材戦略を進めてまいりました。企業活動を支えるのは『人』であり、人は最大の財産であります。そこで、キュードの価値観に基づき「人の成長こそが企業の成長や価値向上につながる」との認識に立ち、人材育成を重要な企業活動と位置づけ、全社を挙げて人材育成に力を入れております。そして、社員が自身の成長を実感し活き活きと活躍する事で、キュードの価値観の実現と企業価値の向上へつなげていくことを、目指しております。2024年度中期経営計画(2024~2026年度)においては、「人を真ん中にした強くてしなやかなQ'dづくり」を実現するため、『人材育成大綱』のブラッシュアップを図るとともに、教育訓練費、福利厚生費などの人材への投資を2023年度対比で倍増・強化してまいります。

 

<人材育成の方針>

 人材育成については、4つの方針を掲げて取り組んでおります。

イ 目指す社員像に向けた人材育成

 当社が目指す社員像を明確にすることで、必要な能力と行動を具体的に提示し、成長を促進しております。目指す社員とは、次の3つの要件を満たす社員であります。

a [職場の一員として]

  「論理的な思考と判断、的確な意思疎通により、協働する社員」

b [組織のリーダーとして]

  「メンバーの能力を引き出して組織の総合力を高め、成果を挙げる社員」

c [社内外に通用するプロフェッショナルとして]

  「自身の専門性を充分に発揮し、課題解決、目標達成できる社員」

 

 このために、aに相応する「基盤力」、bに相応する「マネジメント力」、cに相応する「専門性」の育成に取り組んでおります。また、これらは「年度教育訓練計画」によって着実な浸透を図っております。

 

ロ 部門が目指す社員像に向けた人材育成

 各部門においては、部門が目指す社員像を明らかにし、能力、行動を定義して、各部門における人材育成に取り組んでおります。また、技量力量評価を実施し、目指す技量レベルと力量グレードの到達時期の目標を設定し、その実現を目指しております。

 

ハ 企業価値向上を担う人材開発の充実

 経営環境の変化に対応し、業務遂行能力の向上を図るため、特別管理職の育成強化を始めとした、階層別教育の再構築に取り組んでおります。また、経営リテラシーを高めるための選抜型の研修を実施しており、今後、その拡大を図り、事業の成長、革新を実践できる人材の育成を早期に進めてまいります。

 

ニ 人材採用の強化

 前述の施策に対処するためには、人材育成だけでなく採用強化が必須であります。処遇改善や、採用プロセス最適化、採用チャネルの充実、採用広報の強化を展開するとともに、新卒採用に加えて経験者採用も活発化させ、合わせて100名規模の安定的な採用に取り組んでおります。

 

<社内環境整備の方針>

 社内環境整備方針については次のとおりであります。

イ 業務効率化・スリム化

 IT技術を活用し、業務への取り組み方の変革・改善を実施しております。定例業務における「4悪(紙処理・手入力・定期的なピーク発生・例外処理の多さ)」の改善を目指して現場作業・施工管理のデジタル化や管理部門の業務プロセス変革に全社で取り組むほか、蓄積されたビッグデータ活用も実施してまいります。

 

ロ 組織風土向上のためのエンゲージメントスコアの改善

 仕事のやりがいを高めるワークエンゲージメントと、帰属意識を高める組織エンゲージメントの向上に取り組んでおります。前者は、主として業績向上に関係する指標であり、後者は、定着率向上・採用強化の指標となることから,目標とするエンゲージメントスコアと対処すべき重点項目を定め、組織風土の向上を図ってまいります。

 

ハ 拡大安全衛生委員会の有効活用

 拡大安全衛生委員会は、安全・環境・衛生に関する、東京エネシスグループの取り組みについて審議し、グループ全員で目標達成に向けた意思統一を図ることを目的に開催しております。これにより全員参加による社内環境の改善を行っております。

 

② 指標と目標

 人材育成及び社内環境整備の方針に従い、以下の指標、目標を定めて人的資本の価値を高め、業績向上に資する人材マネジメントを行っております。

<人材育成の方針関連>

 

2023年度

目標

2023年度

実績

達成率

2024年度

目標

目指す社員像に向けた人材育成

 

 

 

 

中堅層・新任主任研修(ロジカルライティング)

36名

36

100%

未設定

若年層(1・2・3年目)研修(ロジカルシンキング)

85名

86

101%

80

管理者マネジメント能力開発研修(真因追究(問題、課題解決、ライティング))(注)1

90名

46

51.1%

40

部門が目指す社員像に向けた人材育成

 

 

 

 

施工管理技士資格取得者数(注)2

179名

87

48.6%

45

施工管理技士資格保有率

56.5%

45.7

80.9%

50.5

技量力量評価(力量グレードⅣ保持率)

90.0%

60.5

67.2%

90.0

企業価値向上を担う人材開発の充実

 

 

 

 

特別管理職の育成(行動型学習)

20名

16

80.0%

16

聴く力向上研修

45

選抜型リーダー養成研修

40

人材採用の強化

 

 

 

 

新卒者採用(2024年度目標は2025年4月入社者)

50名

36

72.0%

50

経験者採用(注)3

40名

75

187%

50

海外人材の採用

5名

4

80.0%

3

 

<社内環境整備の方針関連>

業務効率化・スリム化

 

 

 

 

 電子契約、支払業務、タレントマネジメントデータのスマホ

 利用等7項目の改革の実施

7項目

7項目

100%

一人当たり労働時間

2,000時間

未満

2,066時間

3.3%超過

新たな人材価値創出のための業務デジタル化による削減時間(目標値は2024年度中期経営計画最終年度(2026年度)末時点)

20,000時間

組織風土向上のためのエンゲージメントスコアの改善

 

 

 

 

心理的安全性の保てる環境整備のための調査

実施

実施

(達成)

実施

エンゲージメントスコアの改善(目標値は2024年度中期経営計画最終年度(2026年度)末時点)

3.75以上

拡大安全衛生委員会の有効活用

 

 

 

 

熱中症重症化

ゼロ

ゼロ

(達成)

ゼロ

業務災害休業4日以上

ゼロ

1発生

(未達成)

ゼロ

(注)1 管理者マネジメント能力開発研修は、研修効果の最大化を優先し実施人数を絞って実施しております。

2 施工管理技士資格取得者の2023年度目標・実績数は、中期経営計画(2021年度~2023年度)の3年間を対象としております。

3 品質保証部の新設に伴い、2023年度実績が計画を大きく上回っております。

3【事業等のリスク】

  当社は代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、リスク顕在化の予防に努めるとともに、万一顕在化した場合には、迅速かつ的確に対応することにより、被害・影響範囲を極小化し、事業の継続性を確保してまいります。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクには、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、これらのリスクの影響により、実際の業績が想定しているものと異なってくる可能性があります。

 

発生頻度や影響度合を認識した上で、リスクの回避及び発生した場合の対応策を以下のように考えております。

 

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リスク項目

リスク概要

対応策

頻度

影響度

経営・財務リスク

投融資事業

の不採算

投資・融資を行っている事業のリスクが顕在化し、多額の損失を計上する可能性があります。

経営層による会議の場でリスクの確認と運用状況のモニタリングを実施しています。

特大

経営環境変化

への対応

エネルギー政策をはじめとする外部環境の変化に事業戦略が追従できず、収支悪化に繋がる可能性があります。

経営計画策定時の市場分析ならびに事業環境に合わせた組織体制の見直し、外部機関との意見交換を実施しています。

特大

国際情勢変化

への対応

国際情勢の予期しない変化により、収支悪化が想定されます。

為替予約による為替変動対策や調達先の多様化等によるリスク分散に取り組むとともに、専門知識を有するパートナーとの業務委託契約締結による情報収集と事業性評価を実施しています。

業務リスク

不適合発生

施工不良等による不適合が発生し、コスト増加の可能性があります。

三現主義を確実に実践するため、関係者への教育・啓蒙活動を行うとともに、品質保証体制を強化し不適合発生の未然防止に努めています。

特大

法令違反

法令違反による行政処分、事業活動の停止、社会的信用失墜のリスクがあります。

関係者への徹底した教育・啓蒙活動やケーススタディを実施しています。

特大

契約トラブル

事前の契約審査が不十分で、不可抗力が請負責任となる可能性があります。

新規案件等は、法務担当の事前審査を実施しています。

重大事故

死亡災害等の重大事故が発生する可能性があります。

軽微な事象であっても原因と再発防止策を検討並びに関係者への教育・啓蒙活動を強化し、重大事故発生の未然防止に努めています。

サイバー攻撃

サイバー攻撃による顧客情報等の重要情報の流出、社内システムの停止等が発生する可能性があります。

当社グループ全体でセキュリティ対策とバックアップを定期的に実施しています。

人材リスク

人材不足

採用活動の難航等から、人員不足になる可能性があります。

人事制度の見直しと多様な採用チャネルを活用した採用活動の強化を実施します。

また、離職防止策を実施しています。

特大

技術力低下

知識・技術が継承されず、事業運営に支障をきたす可能性があります。

社員の技量・力量を評価・分析し、若手社員の育成へ反映しています。

また、必要資格の取得を推進しています。

特大

気候リスク

環境規制強化

環境保護等の規制強化によるバイオマス燃料の調達コスト増加が収支を悪化させる可能性があります。

法規制に準拠した燃料調達と市況に応じた適正な価格調整を実施します。

特大

自然災害の

激甚化

豪雨・強風等の自然災害による自社設備の損傷から、復旧まで事業が中断する可能性があります。

地域の特性を設計に反映し、気象情報から事前の災害対策を実施したうえで、必要に応じて損害保険を付保しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①  財政状態及び経営成績の状況

イ  財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて10億42百万円減少し、1,074億71百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて36億51百万円減少し、389億23百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べて26億9百万円増加し、685億48百万円となりました。

 

ロ  経営成績

当連結会計年度の経営成績は、受注高641億68百万円(前期比11.7%減)、売上高884億67百万円(前期比11.9%増)、営業利益39億59百万円(前期比14.5%増)、経常利益52億12百万円(前期比88.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益29億60百万円(前期比39.6%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

設備工事業は、受注高585億45百万円(前期比16.6%減)、売上高830億49百万円(前期比8.2%増)、セグメント利益99億99百万円(前期比7.4%増)となりました。

その他の事業は、受注高56億22百万円(前期比103.5%増)、売上高54億18百万円(前期比110.8%増)、セグメント損失45百万円(前期は6億77百万円)となりました。

 

②  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末と比べて10億16百万円減少の、121億58百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、85億3百万円の資金の増加(前連結会計年度は81億43百万円の資金の増加)となりました。これは主に未払消費税等の増加によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、51億26百万円の資金の減少(前連結会計年度は31億19百万円の資金の減少)となりました。これは主に投資有価証券の取得によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、44億46百万円の資金の減少(前連結会計年度は6億56百万円の資金の減少)となりました。これは主に短期借入金の返済及び配当金の支払によるものであります。

 

③  生産、受注及び販売の実績

  セグメントごとの受注実績及び売上実績は、次のとおりであります。

 

イ  受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

 (自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

 (自  2023年4月1日

 至  2024年3月31日)

(百万円)

増減率(%)

設備工事業

70,201

58,545

△16.6

その他の事業

2,762

5,622

103.5

セグメント計

72,964

64,168

△12.1

差異調整額

△255

0

72,708

64,168

△11.7

 

ロ  売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

  (自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

  (自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

(百万円)

増減率(%)

設備工事業

76,740

83,049

8.2

その他の事業

2,570

5,418

110.8

セグメント計

79,311

88,467

11.5

差異調整額

△255

0

79,055

88,467

11.9

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  生産実績については、定義することが困難であるため、記載しておりません。

3  売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

売上高(百万円)

割合(%)

売上高(百万円)

割合(%)

東京電力ホールディングス㈱

12,504

15.8

17,294

19.5

三菱重工業㈱

15,388

19.5

15,733

17.8

㈱JERA

14,764

18.7

10,082

11.4

 

  なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

セグメントの名称

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

 

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

前事業年度

 (自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

設備工事業

130,332

70,684

201,016

79,727

121,288

その他の事業

220

220

220

セグメント計

130,332

70,905

201,237

79,948

121,288

差異調整額

△255

△255

△255

130,332

70,649

200,981

79,692

121,288

当事業年度

 (自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

設備工事業

121,288

59,985

181,274

84,532

96,742

その他の事業

223

223

223

セグメント計

121,288

60,208

181,497

84,755

96,742

差異調整額

0

0

0

121,288

60,209

181,498

84,756

96,742

(注) 1  前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。

2  次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。

 

b 受注工事高の受注方法別比率

工事受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

セグメントの名称

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

 (自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

設備工事業

76.6

23.4

100

当事業年度

 (自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

設備工事業

81.8

18.2

100

(注)  百分比は請負金額比であります。

 

c 完成工事高

期別

セグメントの名称

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

 (自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

設備工事業

1,923

77,804

79,727

その他の事業

220

220

セグメント計

1,923

78,025

79,948

差異調整額

△255

79,692

当事業年度

 (自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

設備工事業

1,746

82,785

84,532

その他の事業

223

223

セグメント計

1,746

83,008

84,755

差異調整額

0

84,756

(注) 1  完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

前事業年度  請負金額1億円以上の主なもの

相手先

工事件名

(同)境港エネルギーパワー

境港発電所向けPKS販売

日本原燃㈱

2022年度 設備点検工事(その10)

(同)五浦ソーラー

北茨城太陽光発電所 設備復旧・安全対策工事

㈱JERA

広野火力発電所 5号ボイラー定検手入工事その1

HFC Plus化建設関連工事共同企業体

[東関東局]2022年度FTTNPlus化工事

当事業年度  請負金額1億円以上の主なもの

相手先

工事件名

東京電力ホールディングス㈱

1F-ALPS処理水希釈放出設備設置工事

東京エネシス・東北発電工業特定工事共同企業体

女川2号機自動消火設備設置工事(Ⅱ期工事)(B工事)

三菱重工業㈱

西条 ボイラ・脱硝設備機械据付工事及び電気計装工事(ボイラ機械・新設)機械・電計工事

川崎重工業㈱

JERAパワー横須賀合同会社横須賀火力発電所 揚貯運炭設備(Ⅰ~Ⅲ期工区)据付工事

三峰川電力PFI

鳥取県水力発電所再整備事業 小鹿第二発電所

 

2  完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

当事業年度

完成工事高

(百万円)

割合(%)

完成工事高

(百万円)

割合(%)

東京電力ホールディングス㈱

12,504

15.7

17,294

20.4

三菱重工業㈱

15,388

19.3

15,733

18.6

㈱JERA

14,764

18.5

10,082

11.9

 

d 次期繰越工事高

2024年3月31日現在

 

セグメントの名称

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

設備工事業

3,180

93,561

96,742

その他の事業

セグメント計

3,180

93,561

96,742

 

(注)  次期繰越工事のうち請負金額1億円以上の主なものは、次のとおりであります。

相手先

工事件名

完成予定年月

㈱ジェネックス

(仮称)栃の木CC太陽光発電所建設工事

2026年3月

新菱冷熱工業㈱

日本橋一丁目中地区電気・熱供給プラント建設工事(機器費)

2026年3月

東京電力リニューアブルパワー㈱

竹之沢発電所 水車・発電機購入

2027年5月

三菱ふそうトラック・バス㈱

三菱ふそうトラック・バス㈱ 川崎工場 特高受変電設備更新工事

2025年12月

東京電力パワーグリッド㈱

昭島北変電所新設工事

2027年2月

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①  重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。具体的には「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

 

見積り及び仮定の重要度が高いものは以下であります。

イ 重要な収益の計上基準

重要な収益の計上基準については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)(工事契約における一定の期間にわたり履行義務を充足し認識する収益)」に記載のとおりであります。

 

ロ 固定資産の減損

 固定資産の減損については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)(固定資産の減損)」に記載のとおりであります。

 

ハ 工事損失引当金

受注工事の損失に備えるため、当連結会計年度末の手持工事のうち、損失が発生すると見込まれ、かつ金額を合理的に見積ることが可能な工事について、損失見積額を計上しております。

損失額の見積りは実行予算によって行います。実行予算作成時には、入手可能な情報に基づいた施工条件や資機材価格等を仮定し、作業効率等を勘案して各工種ごとに積み上げて作成しております。工事着手後は実際の発生原価と対比して適時・適切に実行予算の見直しを行っておりますが、発注者との変更契約の締結や、設備工事における人的・物的事故等の内的要因、また、市況の変動や自然災害及び感染症拡大等の外的要因により、仮定要素は将来変動する可能性があります。

ニ 退職給付に係る負債

退職給付費用及び債務の計算は、割引率、退職に対する給付額、利息費用、年金資産の期待収益率、死亡率、退職率等の要素が含まれております。これらの仮定と実際の結果が異なる数理計算上の差異については、発生した連結会計年度に全額一括費用処理しております。

 

ホ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性の評価については、当社グループの各社ごとに将来の課税所得を見積り、回収可能と認められない金額について評価性引当額を計上しております。

将来の課税所得は、現在入手可能な情報に基づき合理的に見積っておりますが、大幅な経営環境の変化等により、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

②  当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ  経営成績等

わが国経済は、堅調な企業収益等を背景に、設備投資の増加や雇用・所得環境の改善がみられる等、全体として回復傾向にある一方で、為替相場の円安基調や物価上昇が続き、依然として先行き不透明な状況でありました。

このような状況の中、当社グループは、中期経営計画(2021年度~2023年度)の最終年度である2023年度において、最重点課題として掲げている「基盤事業の強靭化と新事業領域の更なる拡大による企業価値の向上」を果たすため、様々な事業領域において鋭意活動してまいりました。

具体的には、火力・原子力・水力発電所の建設・点検・保守、福島第一原子力発電所の廃止措置関連業務、原子力発電所の安全対策工事、変電所及び大型公共施設の設備新設・更新等の工事といった基盤事業に加えて、カーボンニュートラル社会実現に向けた太陽光発電所及びバイオマス発電所の建設工事、バイオマス発電事業やバイオマス燃料販売事業にも戦略的に進出してまいりました。

また、エネルギービジネスにおけるバリューチェーン全体を手掛ける総合エンジニアリング企業として、お客さま・地域の脱炭素ニーズにワンストップで応えるソリューション提案や、脱炭素先行地域関連案件、地域レジリエンス案件への営業活動を全国各地で精力的に展開し、中・長期的な受注・売上の拡大と利益の創出に取り組んでまいりました。

この結果、当連結会計年度の経営成績等の状況については次のとおりとなりました。

 

 a 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて10億42百万円減少し、1,074億71百万円となりました。これは主に現金預金等の減少によるものであります。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて36億51百万円減少し、389億23百万円となりました。これは主に契約負債等の減少によるものであります。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べて26億9百万円増加し、685億48百万円となりました。これは主にその他有価証券評価差額金の増加によるものであります。

 

 b 経営成績

当連結会計年度における受注高は、太陽光発電所の建設工事、バイオマス発電所のLTSA(長期保守契約)、大型公共施設の電気設備工事、変電所新設工事、バイオマス燃料販売等の受注があったものの、バイオマス発電所の建設工事や火力発電所の保修工事が減少したこと等により、641億68百万円(前期比11.7%減)となりました。

一方、売上高は、福島第一原子力発電所の廃止措置関連業務、バイオマス発電所の建設工事や水力発電所のリニューアル工事の進捗に加えて、2022年10月に営業運転を開始した当社グループ自前のバイオマス発電所の売電収入も貢献し、884億67百万円(前期比11.9%増)となり、過去最高額を更新しました。

次期繰越高は、976億77百万円(前期比19.9%減)となりました。

利益面につきましては、人手不足に伴う外注費の上昇等があったものの、売上高の増加により、営業利益は39億59百万円(前期比14.5%増)となりました。経常利益は、為替変動リスクの低減を目的とした為替予約に係るデリバティブ評価益の計上等により、52億12百万円(前期比88.1%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、29億60百万円(前期比39.6%増)となりました。

 

 c キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

ロ  経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループを取り巻く経営環境は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 事業上及び財務上の対処すべき課題」に記載のとおりであり、また、「3 事業等のリスク」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 重要な会計方針及び見積り」に記載している各要因が、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 

ハ  資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の施工に要する外注費等の工事費や販売費及び一般管理費の営業費用によるものであります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資や債券の購入等によるものであります。

当社グループは、財務基盤の健全性を維持しつつ、成長分野への投資を可能とする財務環境の創出を基本方針としております。

運転資金及び設備資金については、自己資金及び金融機関からの借入により資金調達しております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は69億56百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は121億58百万円となっております。

 

ニ  経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当期の連結業績目標に対する達成状況は、次のとおりであります。

売上高は、福島第一原子力発電所の廃止措置関連業務、バイオマス発電所の建設工事や水力発電所のリニューアル工事の進捗に加えて、2022年10月に営業運転を開始した当社グループ自前のバイオマス発電所の売電収入も貢献し、計画比84億円増(10.6%増)となり過去最高額を更新しました。

利益面につきましては、人手不足に伴う外注費の上昇等があったものの、売上高の増加により、営業利益は計画比4億円増(13.1%増)となりました。経常利益は為替変動リスクの低減を目的とした為替予約に係るデリバティブ評価益の計上等により、計画比17億円増(48.9%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、計画比4億円増(18.4%増)となりました。

 

 

指標

連結業績目標

(2023年度)

連結業績実績

(2023年度)

計画比

売上高

800億円

884億円

84億円増(10.6%増)

営業利益

35億円

39億円

4億円増(13.1%増)

経常利益

35億円

52億円

17億円増(48.9%増)

親会社株主に帰属する当期純利益

25億円

29億円

4億円増(18.4%増)

 

ホ  セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 (設備工事業)

受注高は、電力部門や原子力部門の減少により、585億45百万円(前期比16.6%減)となりました。売上高は、原子力部門やエネルギー・産業部門の増加により、830億49百万円(前期比8.2%増)となりました。

セグメント利益は、99億99百万円(前期比7.4%増)となりました。

 

 (その他の事業)

受注高は、56億22百万円(前期比103.5%増)となりました。

売上高は、54億18百万円(前期比110.8%増)となりました。

セグメント損失は、45百万円(前期は6億77百万円)となりました。

 

参考:セグメントの名称に対応した部門等の名称

セグメントの名称

部門等

設備工事業

グリーンエネルギー事業部門、エネルギー・産業部門、電力部門、原子力部門、溶接・検査センター、海外事業部

その他の事業

発電事業、不動産事業、リース・レンタル事業、保険代理業、製造・販売事業、卸売業

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  当社の研究開発は、主に技術開発部が中心となり、工事施工における生産性の向上、コストダウン及び安全性の向上を目的とした新技術、新工法の研究開発及び新分野における研究開発に重点をおいて推進しております。

  当連結会計年度における研究開発費は136百万円であり、主な研究開発の内容は以下のとおりであります。

  なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。

 

(1) IoTを活用した遠隔赤外線検査管理システムの最適化(設備工事業)

設備の状態監視に赤外線サーモグラフィーを使用し、当社が関与している設備にてデータを採取しました。蓄積したデータは、様々な評価方法を組み合わせて構築した赤外線検査システムソフト内で集約し、経年的なトレンドグラフより傾向を監視することで、温度による迅速な状態評価を可能としました。

 

(2) 低レベル汚染廃棄物低減 配管半割装置の開発(設備工事業)

 原子力発電所で発生した低レベル放射線配管廃棄物の内面汚染量を容易に測定するために配管を軸方向に効率よく半割できる自動切断装置を開発しました。

 これにより管理区域外への搬出可能レベルに汚染されていないものは再利用が可能となり、廃棄保管量の低減に貢献するものです。

 

(3) IoTを活用した肉厚管理ソフトの開発(設備工事業)

 肉厚測定に必要なデータのデジタル化及び一元管理ができる肉厚管理ソフトを開発しました。測定時にタブレットを使用することで、作業効率化、省力化、人為的ミスの低減になります。