文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社が経営理念に掲げる建設エンジニアリングとは、安全性、経済性、実用性を兼ね備えた社会にとって有用なモノや環境を作り出すことです。私たちはこの目的を追求するために、これまで培ってきた建築・土木の専門的な知識に加え、土地や資金、情報等の様々な要素を統合することで、お客様のニーズを上回る付加価値を生み出していきます。
多様化する社会にエンジニアリングによる新しい価値を提供し続けることで、従業員一人ひとりの成長と幸福の実現、そして企業の持続的成長を目指してまいります。
(2)会社の経営環境と対処すべき課題及び中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
今後の経営環境につきましては、地政学リスクや円安のさらなる長期化による資源及び原材料価格の高騰や供給面での制約など、依然として先行き不透明な状況にあります。国内建設市場においても、官民ともに需要は引き続き堅調な推移が見込まれる一方、建設資材価格の高止まりや、改正労働基準法の時間外労働時間上限規制適用による労務費高騰や工期遅延などが懸念されます。加えて、SDGsやカーボンニュートラルをはじめとした社会課題への対応、また中長期的には人口減少に伴う建設需要の減少や産業の担い手不足への対応が求められています。
このような事業環境のなか、当社グループは持続的成長を実現していくために、2030年度の目指す姿を「課題解決&価値創造型企業」と定めました。この「課題解決&価値創造型企業」とは、顧客・地域・社会が抱える課題を解決するだけにとどまらず、より良い社会を実現するために建設エンジニアリングによる新たな価値を創造・提供することで、顧客・地域そして社会の持続的発展に貢献する企業です。
この目指す姿の実現に向けて、前半5年間を既存事業の深化・進化と新規分野・領域の探索・開拓を両立推進し、後半5年間で加速度的に成長するための基盤を構築する期間と位置づけ、2021年度を初年度とする中期経営計画を掲げております。
「中期経営計画(2021年度~2025年度)」の事業方針及び数値目標等は以下のとおりです。
① 事業方針
② 数値目標(連結)
③ 配当方針
④ 投資計画
(1)ESG戦略
当社グループは、「建設エンジニアリングによる価値創造を通して、従業員の自己実現と企業の持続的成長を目指す」という経営理念のもと、お客様が求める建設物を提供してきました。
昨今、新型コロナを契機に産業構造やビジネスモデルは一挙に転換され、社会の価値観も経済性重視からサステナビリティ重視へ転換しております。
当社グループは、2021年に策定した中期経営計画において、2030年度の目指す姿を、顧客や地域が抱える課題を解決するだけにとどまらず、より良い社会を実現するために建設エンジニアリングによる新たな価値を創造・提供することで、顧客・地域、そして社会の持続的発展に貢献する企業(課題解決&価値創造型企業)と設定しました。また、2021年4月に「矢作建設グループSDGs宣言」を行うなど、環境、社会、ガバナンスに関わるさまざまな問題を解決しながら、持続可能な成長を目指すESG経営を推進し、グループ総力を挙げサステナビリティ社会への実現に取り組んでおります。
①ガバナンス
当社グループは、取締役会の監督・指揮のもと、サステナビリティに対する取組みを進めるため、CSR/ESG委員会を設置しており、その下部組織として、SDGs部会、環境管理委員会、人事部会及び内部統制部会を設置しております。
各下部組織の主な役割は、以下のとおりであります。
②戦略
当社グループは、「矢作建設グループSDGs宣言」にもとづき、その実現に向けて「環境」(Environment)、「社会」(Social)、「ガバナンス」(Governance)それぞれの観点について、リスクと機会を特定した上で、それらが顕在化した場合のインパクトを考慮し、取り組むべき課題を把握しています。その取り組むべき課題に対し、社会(ステークホルダー)と当社グループの観点から重要な戦略テーマ(マテリアリティ)を特定し、様々な取組みを推進しております。
A)マテリアリティ選定・運用プロセス
以下のプロセスによりマテリアリティを特定し、運用しております。
<STEP1:テーマの選定>
当社事業とSDGs・ESGの関係性(リスクと機会の特定)を分析し、取組み課題を把握し、テーマを選定。
<STEP2:マテリアリティの特定>
会社として重点的に取り組むべき課題と課題解決に向けた取組み方針を決定する。
<STEP3:KPIの設定>
行動計画のSDGsへの取組みをマテリアリティごとに分類・評価し、会社としての管理指標(KPI)、目標値の設定を行う。
<STEP4:運用と報告>
ステークホルダーの要望を把握し、進捗状況を定期的に報告し、コミュニケーションを実施。
B)リスクと機会の特定と取り組むべき課題の把握
環境、社会、ガバナンスそれぞれについてリスクと機会を特定し、以下の取組み課題を把握しております。
<取り組むべき課題>
(環境) 環境に配慮した持続可能な社会の形成
□リスク
気候変動に伴う異常気象や台風などによる大規模災害の頻発・激甚化
気候変動に伴う気温上昇や無秩序な開発による自然環境の破壊
炭素税(カーボンプライシング)の導入による材料・外注費の高騰
□機会
気候変動に対応した建築物の増加(省エネ建築物の増加)・クリーンエネルギー需要の増加
(社会) 安全・安心で快適なまちづくりの推進
□リスク
気候変動に伴う異常気象や台風などによる大規模災害の頻発・激甚化
□機会
ICTの建設技術への応用
持続可能な生産基盤の確立
□リスク
劣悪な労働環境
労働者の高齢化・若年者の入職減少による技術力の衰退
業務非効率による長時間労働
労働環境における多様性の欠如
□機会
高品質なインフラ需要の高まり
ICTの建設技術への応用
地域貢献/パートナーシップの強化
□機会
地域社会・企業との連携促進
(ガバナンス)健全な組織基盤の構築
□リスク
ガバナンス機能の低下による成長戦略遂行の遂行不全
内部統制、リスクマネジメント機能の低下、機能不全による業務遂行リスクの顕在化
C)マテリアリティの特定
取り組むべき課題に対し、社会課題及び当社にとっての重要度の観点から以下のマテリアリティ(19個)を特定しております。
<環境>
(取り組むべき課題) 環境に配慮した持続可能な社会の形成
[マテリアリティ]① 環境に配慮したまちづくり
② 環境に配慮した事業活動
<社会>
(取り組むべき課題) 安全・安心で快適なまちづくりの推進
[マテリアリティ]③ 安全・安心なまちづくり
④ 快適なまちづくり
(取り組むべき課題) 持続可能な生産基盤の確立
[マテリアリティ]⑤ 良質な建設物の提供
⑥ 安全な労働環境の整備
⑦ 持続可能なサプライチェーンの実現
⑧ 協力会社とのリレーション強化
⑨ 技術力の継承・人材育成
⑩ 生産性の高い建設プロセスの実現
⑪ 働きがいのある職場の実現
⑫ 人権尊重への取組み
(取り組むべき課題) 地域貢献/パートナーシップの強化
[マテリアリティ]⑬ 地域社会への貢献
⑭ 事業活動を通じたパートナーシップの強化
<ガバナンス>
(取り組むべき課題) 健全な組織基盤の構築
[マテリアリティ]⑮ コーポレートガバナンスの強化
⑯ 差別やハラスメントの撲滅
⑰ 情報セキュリティの確保
⑱ コンプライアンスの徹底
⑲ リスクマネジメントの向上
D)マテリアリティの内容と取組み事例
<環境> 環境に配慮した持続可能な社会の形成
(マテリアリティ)環境に配慮したまちづくり
省エネルギー化や脱炭素などに寄与する新たな技術メニューの拡充を図るとともに、環境に配慮した建設物やサービスの提案・提供を推進します。
(マテリアリティ)環境に配慮した事業活動
事業活動のあらゆる段階において、二酸化炭素の排出抑制、産業廃棄物の削減、生態系の保全、資源の有効利用、省エネルギー化等、環境負荷軽減に向けた取組みを推進します。
<社会> 安全・安心で快適なまちづくりの推進
(マテリアリティ)安全・安心なまちづくり
防災・減災技術をはじめ、これまで当社が培ってきた建設に関する様々な技術・ノウハウを活用し、安全で強靭な建設物を提供します。
(マテリアリティ)快適なまちづくり
健康性・快適性に優れた建築物の提供や技術の開発、安全で暮らしやすく利便性の高い居住環境の提供等を通じて、人々が生き生きと快適に暮らすことができるまちづくりを実現します。
<社会> 持続可能な生産基盤の確立
(マテリアリティ)良質な建設物の提供
安全な労働環境の整備
持続可能なサプライチェーンの実現
設計施工一貫体制のメリットを生かし、企画・設計段階から施工、維持管理に至る全てのプロセスにおいて、常に良質な建設物の提供と安全性の高い施工プロセスを追求します。
(マテリアリティ)協力会社とのリレーション強化
技術力の継承・人材育成
協力会社とのリレーション強化や技術力の継承、人材育成などを通じて安定した技術力の維持に努めます。
(マテリアリティ)生産性の高い建設プロセスの実現
ICT・AI等のデジタル技術や省人化工法などの技術開発・導入による効率化を図るとともに、業務の見直しや生産体制を強化することで、事業活動における全てのプロセスにおいて生産性の向上を図ります。
(マテリアリティ)働きがいのある職場の実現
多様な人材が働きやすく、個々の能力を最大限発揮できる職場環境を整備することで、誰もが働きがいを感じることができる魅力ある職場を実現します。
(マテリアリティ)人権尊重への取組み
役員、従業員ならびに会社の業務に従事する全ての者が、個人として行動するうえで遵守すべき基本事項を定め、法令遵守はもとより企業理念の実践を通じて会社が社会から信頼される企業となることを目的に「行動規範」を制定し、そのなかで「人権尊重」を掲げております。当社グループは、全ての役職員がお互いの多様性を認め合い、事業に関わる全ての人の人権を尊重します。
<社会> 地域貢献/パートナーシップの強化
(マテリアリティ)地域社会への貢献
地域との交流イベントや地域への貢献活動等へ積極的に取り組むとともに、不動産開発をはじめとした事業活動を通じて地域社会の活性化に貢献します。
(マテリアリティ)事業活動を通じたパートナーシップの強化
事業活動に関わるあらゆる分野のパートナー(自治体、大学、企業など)との価値共創を通じて、様々な社会課題の解決に貢献します。
<ガバナンス> 健全な組織基盤の構築
(マテリアリティ)コーポレートガバナンスの強化
差別やハラスメントの撲滅
情報セキュリティの確保
コンプライアンスの徹底
リスクマネジメントの向上
コンプライアンスの徹底、内部統制の実効性向上などコーポレートガバナンスの強化を通じて、健全な組織基盤の構築と企業価値の向上に努めます。
③リスク管理
上記②で設定した戦略テーマ(重要課題=マテリアリティ)の実現に向けては、これを阻害するリスクについて影響度や発生頻度に常に留意するとともに、機会についてもこれを確実に捉えていくために市場環境の変化や事業構成の推移を踏まえ課題を検討しております。
また、これらリスク・機会これに対応するマテリアリティについては、定期的にCSR/ESG委員会にて評価・見直しが行われるとともに、その取組みやKPIに対する達成(進捗)についても定期的にCSR/ESG委員会へ報告されることとなっております。
④指標と目標
上記のとおり、当社グループは持続可能な社会の実現に貢献すべく、ESG経営の観点から重要な戦略テーマ(マテリアリティ)を設定しております。この戦略テーマを実現すべく、それぞれについて重点的な取組みを明確化し、その取組みに係るKPI(2025年度目標)を定めております。
(2)気候変動に関する情報(TCFD提言への取組み)
近年、気候変動が原因と考えられる異常気象や自然災害の増加が、私達にとって身近に迫った脅威となっており、社会全体で脱炭素に向けた動きが加速しています。
矢作建設グループでは、気候変動への対応を重要な経営課題のひとつと捉え、2021年4月に公表した「矢作建設グループ SDGs宣言」の中で、「環境に配慮した持続可能な社会の形成」を重要課題に掲げ、温室効果ガス排出量の削減に向けた取組みを進めています。矢作建設グループはこれらの一連の取組みを、建設エンジニアリングによる価値創造を通して加速させるとともに、常に社会の要請にこたえる事業を展開してまいります。
① ガバナンス
全社的な取組みを進めるため、取締役会の監督・指揮のもと、CSR/ESG委員会が中心となり、その傘下のSDGs部会や環境管理委員会が、本社、支店、その他拠点、作業所、グループ会社の気候関連に関する各取組みを支援しております。また、SDGs部会で取りまとめられた取組み結果はCSR/ESG委員会に定期的に報告され、その審議結果が取締役会に報告されることとなっております。
[気候変動に関するガバナンス体制]
② 戦略
建設業では、建物・構造物の建設時における重機・その他車両の使用や、鉄・セメントをはじめ多くの温室効果ガス排出を伴う資材の調達などで、気候変動に大きな影響を及ぼす傾向にあります。また、完成・引渡し後、建物・構造物の長期間にわたる利用は、建設時以上の温室効果ガスの排出が想定されます。
これを踏まえ、脱炭素に向けた動きや気温上昇などの物理的な変化が進む中で、炭素価格や原材料コストの上昇、平均気温の上昇による労働生産性の低下などをリスクとして捉えています。加えて、温室効果ガスの低減技術への移行によるZEB、ZEHや再生可能エネルギー分野の新たな市場、豪雨災害の増加による防災・減災市場の拡大などを機会として特定しています。矢作建設グループでは、これらの評価・管理を通じて建設業が社会から求められる課題解決に貢献することで、リスクに備え、短期・中期・長期全ての視点から新たな事業機会を創出してまいります。
[シナリオ分析]
リスク・機会について、気候変動が事業活動に与える短期・中期・長期の影響を把握するにあたり、2030年度における建築事業及び土木事業を想定し、シナリオ分析を実施しました。
なお、分析に際して2100年時点において産業革命前に比べて平均気温が4℃程度上昇する4℃シナリオと2℃程度の上昇に抑制される2℃シナリオを想定しています。
[リスクと機会]
(注)国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオを参照しております。
2℃シナリオ 気候変動に対して社会全体で様々な対策が取られ、2100年時点で産業革命前に比べて平均気温が2℃程度の上昇に抑制されるシナリオ
4℃シナリオ 気候変動に対して社会全体で有効な対策が取られず、2100年時点で産業革命前に比べて平均気温が4℃程度上昇するシナリオ
[対応策]
③ リスク管理
気候関連リスクについては、SDGs部会において識別し、リスクの影響度や発生頻度に応じて設定された対応方針に従って、各リスクに適切に対応しているかをモニタリングしています。加えて、市場環境や事業構成の変移を踏まえ、リスク毎の重要性について定期的に点検し、必要に応じて対応方針を見直すこととしています。また、気象災害等に対するBCP(事業継続計画)については、内部統制部会が全社のリスクマネジメントの状況を確認しており、SDGs部会に報告し、迅速かつ効果的に機能するよう改善を重ねています。
なお、気候関連リスクは、優先すべき経営課題のひとつとして管理することとし、定期的にCSR/ESG委員会において報告・審議され、リスク項目や対応方針を見直す際には、CSR/ESG委員会の承認を経て回避や低減などの施策を講じるとともに、委譲元である取締役会に報告することとしています。
④ 指標と目標
矢作建設グループは、気候変動による事業への影響を管理すべく、2022年度より主要拠点及び作業所において温室効果ガスの排出量算出を開始しております。今後、2030年度の目標達成に向けて、気候変動に関するリスク・機会を定期的に見直しながら、温室効果ガス削減の実効的な取組みを進めてまいります。
[温室効果ガス排出量と削減目標]
(注)Scope1 :重機・その他車両の燃料使用に伴う温室効果ガスの排出
(算定範囲:作業所、本社、支店、その他拠点)
Scope2 :購入した電力の使用に伴う温室効果ガスの排出
(算定範囲:作業所、本社、支店、その他拠点)
排出原単位 :施工高1億円当たりの排出量
(3)人的資本に関する情報
①人財戦略に関する基本方針
当社グループは、『誠実・進取・創造』を企業理念に掲げ、『建設エンジニアリングによる価値創造を通して、従業員の自己実現と企業の持続的成長を目指す』ことを経営理念とし、企業の持続的成長を実現させる主体は「人財(従業員)」であるという考えのもと、人財戦略上の重要課題として「安全な労働環境の整備」「技術力の維持・人材育成」「働きがいのある職場の実現」「差別やハラスメントの防止」に取り組んでまいりました。
また、2030年の目指す姿として『課題解決&価値創造型企業』、売上規模2,000億円程度を設定しており、目指す姿の実現には、「規模の成長」とともに「質の成長」が必要不可欠であります。特に人財戦略においては、キーとなる“課題解決&価値創造人財(課題解決と価値創造を実現できる人財)”を育成し、創出し続けるとともに、多様性(価値観・専門性)に富んだ人財を「量」と「質」の両面で確保すること、またそれらの人財が当社グループで働く誇りとやりがいを感じながらポテンシャルを最大限に発揮することが重要であると考えております。従業員一人ひとりが輝ける会社へ、人財を維持するにとどまらず、人財を魅了する、惹きつける会社へと変革し、「選ばれる会社、働き続けたい会社」を目指してまいります。
その上で、人財戦略を支える3本の柱として、「① 多様性のある建設エンジニア人財の拡充」、「② 従業員一人ひとりの成長を後押しする仕組みづくり」、「③ 従業員一人ひとりが輝ける環境の整備」を据え、その取組みを推進していくことで、課題解決&価値創造人財を育成・創出し続けることができる企業風土を醸成し、従業員のエンゲージメントを向上させ、企業の持続的成長を実現してまいります。
<人的資本に関する取組みの全体像>
〇従業員エンゲージメント
人財戦略に基づいたあらゆる施策の効果は最終的にエンゲージメントに反映されるという考えのもと、2022年よりエンゲージメント調査を開始し、年に一度調査を実施することで従業員のエンゲージメント状況を可視化しております。調査結果については、組織別・役職別・項目別といった様々な角度から分析することで、現状の課題を抽出し各課題に対する施策を考える有効なデータとして活用しております。
〇エンゲージメント調査結果(連結)
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|
目標値 (注)3 |
実績 |
他社平均 (注)4 |
|
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〔2022年〕 |
〔2023年〕 |
|||
|
エンゲージメント調査 (平均値) (注)1 |
5.00 |
4.75 |
5.00 |
4.63 |
|
組織効果性調査 (平均値) (注)2 |
5.00 |
4.72 |
4.97 |
4.59 |
(注)1.従業員が熱意を持って仕事に取り組めているか、自社に対してどの程度愛着を持っているかなどを把握する調査(エンゲージメント21診断:㈱ビジネスコンサルタント)。
2.組織効果性調査は従業員から見た組織の状態を把握する調査(組織効果性サーベイ:㈱ビジネスコン
サルタント)。
3.「平均値5.0以上」はうまくいっている状態、従業員が肯定的に認知している状態。
スコア(=平均値)の配点 ※㈱ビジネスコンサルタント提供
4.㈱ビジネスコンサルタント提供データ
2023年に実施した調査結果は、前回調査と比較して全項目において改善しており、人財戦略の基本方針である
「選ばれる会社、働き続けたい会社」への取組みが着実に前進していると評価しております。一方、個別の項目や
一部組織で課題を認識しており、引き続き改善に向けた対応を進めてまいります。
②人財戦略における3本の柱の具体的な取組み
イ 多様性のある建設エンジニア人財の拡充
我が国の社会問題である人口減少や建設業就労者の減少に対し、建設DXやICT技術を活用した省人化・省力化等への取組みを強化・推進するものの、建設業の労働集約型の側面からは脱却しきれておらず、人口減少下における人材確保は大きな課題であります。加えて、人材獲得競争が激化する中で、当社グループの2030年の目指す姿である売上規模2,000億円程度の実現には、生産性の向上と併せて、人財の「量」を確保することが最重要課題であり、その解決には人材獲得に向けたあらゆる手段を活用し、多様性に富んだ人財をバランスよく確保していく必要があると考えており、具体的には「採用領域の深化・拡大」や「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの実践」への取組みを推進しております。
a)採用領域の深化・拡大
従来の最終学歴・専門分野に捉われた採用活動に固執せず、当社グループの理念や目指す姿に共感し、同じ思いを持つ多様な人財を積極採用しております。具体的には、技術者の採用において従来の理系学科出身者だけでなく文系学科出身者へ採用の枠を拡大した他、豊富な専門知識や経験を持つ高齢者人材を採用するなどの取組みを進めております。
更には、中期経営計画の事業方針に掲げている「既存事業の深化・進化」や「新規分野・領域の探索・開拓」を進めていくには、建設・不動産分野に関わらず、様々な専門分野で知識や経験を持った人財が必要であると考えており、様々な領域の高度専門人材の採用及び管理職への登用を図ることで、多様な考え方や経験を活かした新たな価値創出を目指してまいります。
〇
|
|
実績 |
目標 |
|||||
|
2019 年度 |
2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
2030 年度 |
||
|
新卒 採用 |
院・大卒 専門・高専卒 |
41名 |
44名 |
44名 |
53名 |
57名 |
- |
|
高 卒 |
5名 |
6名 |
4名 |
7名 |
5名 |
- |
|
|
中途採用 |
27名 |
17名 |
16名 |
36名 |
45名 |
- |
|
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合 計 |
73名 |
67名 |
64名 |
96名 |
|
|
|
(注)2024年度は、新卒採用87名(内、高卒5名)、中途採用23名、合計110名
(5月末時点実績)
〇技術者数(連結)の推移
(注)各年度における人数は年度末時点の従業員の数値を記載
b)ダイバーシティ&インクルージョンの実践
性別や国籍の垣根なく、女性や外国籍人材の積極採用と活躍できる仕組みづくりに取り組んでおります。女性人材の採用にあたっては、女性の入社希望者を増やすための様々な施策を実施しており、女性の活躍推進においても、女性の活躍を後押しし、より一層加速させる施策を実施してまいります。外国籍人材については2019年より積極的に採用を実施しており、2018年度末に1名だった外国籍人材は2023年度末時点で24名に増加いたしました。また、高齢者においても2021年より65歳定年制を導入し、高齢者の活躍推進を図っております。
更には、“課題解決&価値創造人財”の育成・創出には、個々人の多様な経験や専門性を尊重し、多様な意見を受け入れて活かすといった組織におけるインクルージョンが必要であると考えており、異動を伴う事業部門を超えた人財交流やグループ会社間の人財交流を積極的に実施しております。
|
〇主な取組み 2023年度においては、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が優良である等の一定の要件を満たした事業主が受けられる「えるぼし認定」(厚生労働大臣認定)を取得いたしました。これは、当社グループが今まで実施してきた女性人材の積極採用や女性活躍推進への取組みが評価された結果と考えております。一方で、特に女性リーダーの育成・創出は今後の女性活躍推進に向けた重要課題であると認識しており、育成プログラムの作成・実行や制度整備などへの取組みを強化してまいります。 |
〇女性人材の在籍人数の推移(連結)
〇女性人材の年齢構成(連結)
|
|
20代 |
30代 |
40代 |
50代 |
60代 |
|
連 結 |
38% |
18% |
23% |
19% |
2% |
|
(参考)提出会社 |
52% |
18% |
17% |
11% |
2% |
(注)2024年3月31日時点の女性人材(従業員)の年齢より算出
〇女性人材の新卒採用実績(連結)
|
|
2018 年度 |
2019 年度 |
2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
2024 年度 |
|
|
技術系 |
採用人数 |
4名 |
10名 |
6名 |
6名 |
8名 |
11名 |
9名 |
|
比 率 |
12% |
24% |
13% |
15% |
15% |
22% |
14% |
|
|
その他 |
採用人数 |
2名 |
2名 |
1名 |
4名 |
3名 |
4名 |
12名 |
|
比 率 |
40% |
40% |
25% |
50% |
43% |
33% |
57% |
|
(注)比率は各採用人数全体(技術系orその他)に対する女性人材の比率。
〇
|
連 結 |
|
|
(参考)提出会社 |
1.1% |
[補足説明]
当社グループでは、かつて男性は総合職(技術職、事務営業職)、女性は一般事務職が中心であったため、女性管理職に登用する女性総合職の対象者が少なく、女性管理職比率が低くなっております。一方、近年は女性総合職の採用を積極的に実施しており、次期管理職となる女性人材は増加傾向にあり、引き続き女性が活躍できる職場づくりと女性リーダーを育成・創出する環境づくりに取り組んでまいります。
〇
|
|
2018年度末 |
2023年度末 |
2024年4月入社 |
|
在籍人数 |
1名 |
|
10名 |
ロ 従業員一人ひとりの成長を後押しする仕組みづくり
VUCA時代が訪れ、SDGsへの対応やデジタル化の進展など、企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中で、産業構造やビジネスモデル、更には生産プロセス等も大きく変わってきており、その対応に伴い従業員一人ひとりに求められるスキルや能力も変化しております。また、2030年の目指す姿の実現に向けては事業規模拡大に伴う人財の「量」の確保と併せ、人財の「質」の向上、具体的には高い専門性や倫理観に基づき、自律的に考え行動し、成果に繋げることができる人財の増強が必要であると考えております。
当社グループとしては、従業員一人ひとりがその変化の中で求められる知識・スキルを獲得し、キャリア自律によって個人のポテンシャルを最大限に発揮できるよう、従業員に対する「学びたいの後押し、能力開発への積極投資」や「自身の将来目標を描くことができる仕組みづくり」への取組みを推進しております。
a)学びたいの後押し、能力開発への積極投資
従業員自らの“学びたい”という気持ちを後押しし、個々人のキャリアアップを応援する仕組みづくりに取り組んでおります。具体的には、従来の現場におけるOJTを中心とした成長機会だけでなく、Off-JTを活用した体系的かつ専門性の高い知識を深める機会を提供し、各々を複合的に活用することで、その効果の最大化を図っております。今後は従業員自身のモチベーションを原動力に学習する自己啓発やリスキリングをサポートする仕組みを再整備し、自ら学ぶ風土の醸成を図ってまいります。また、経営の持続性の観点から、時代の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる次世代の経営人財の育成にも取り組んでまいります。
〇研修・教育体系(2023年度)
|
〇主な取組み 2023年度においては、特に管理職を対象としたマネジメント力向上を図るための教育や新入社員を対象とした当社グループで働く目的の理解や働きがいの醸成を図るための教育等を強化したことなどにより、社員教育(能力開発)への投資は2022年度と比較し2.5倍に増加いたしました。引き続き、従業員自ら学ぶ企業文化の醸成と学びたいを後押しする環境づくりへの投資を積極的に実施してまいります。 |
b)自身の将来目標を描くことができる仕組みづくり
当社グループが事業規模や事業エリアの拡大を図る上では、建設・不動産事業分野における大型工事現場を担当できる所長や不動産開発プロジェクトをマネジメントできる人財、新規領域・分野にチャレンジできる人財などの増強が必要であると考えており、課題解決力や発想力、事業構想力などを養うため、様々な工事を経験するための配置や様々な職種を経験するための部門・会社を超えた人財交流などの戦略的人財配置を行っております。
また、企業の持続的成長の実現には、多様な価値観や専門性を持つ人財が、それぞれの個性を活かし、その持てる能力を十分に発揮できる環境の整備が必要不可欠であり、誰もが働きがいのある、成長を実感できる、また、従業員一人ひとりの価値観を尊重し、多様化する働き方に対応したキャリア形成を可能とする制度改革に取り組んでまいります。
|
〇主な取組み 2023年度においては、従業員自身のキャリアの振り返りと将来のキャリアビジョンを考える研修を各年齢層 (30歳、40歳、50歳、62歳)へ実施し、従業員のキャリア自律を促進するための取組みを実施いたしました。 |
ハ 従業員一人ひとりが輝ける環境の整備
少子高齢化に伴う労働力の減少や雇用形態の多様化等を背景に、様々な価値観を持った人材が、互いの価値観を受け入れ、活かし合いながら、従業員一人ひとりが持てる力を最大限発揮できる環境づくりが必要となっております。当社グループとしては、職場における心理的安全性を追求するとともに、従業員が仕事と生活を調和した働き方や永く健康に働くことができる職場環境を目指し、賃金制度の改定や働き方改革をはじめ、従業員が抱える様々な不安を取り除き、仕事に集中できる環境整備を進めてまいります。具体的には、以下のとおり「管理職のマネジメント改革」や「安心して働くことができる職場環境の整備」、「心身両面での健康経営の推進」への取組みを推進しております。
a)管理職のマネジメント改革
従業員のエンゲージメントを高め、働きがいのある職場環境づくりのキーパーソンである管理職に対して、継続的に教育・研修を実施することで、管理職のマネジメント力の向上を図り、職場の心理的安全性を高め、組織の活性化、人材の確保と定着、変化・リスクへの対応力向上に取り組んでおります。
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○主な取り組み 2023年度は、部長職及び最前線で職場づくりの役割を担うライン課長職及び現場所長など約200名(管理 職の約7割)を対象にマネジメント力の向上を目的とした研修を実施いたしました。 (研修テーマ)・部長職・管理職に求められる役割と自職場の使命の再認識 ・能力開発・人材育成をはじめとしたマネジメント手法を時代に合った方法へアップデート ・職場を活性化させる仕組みづくり |
〇その他の取組み
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項 目 |
取 組 み |
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ハラスメント対応 |
・ハラスメント相談窓口の設置 ・管理職を対象としたハラスメント研修の実施 |
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コンプライアンスの徹底 |
・コンプライアンス教育の実施 |
b)安心して働くことができる職場環境の整備
従業員が安心して働くことができるよう、長時間労働の改善や育児・介護への支援制度の充実等、ワークライフバランスに配慮した柔軟な働き方ができる職場環境の整備に取り組んでおります。また、公正な処遇を確保し安心して働くことができる就業環境の向上にも取り組んでおります。
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〇主な取組み 当社グループでは、改正労働基準法による建設業の時間外労働上限規制が2024年4月から適用になることを見 据え、数年前より現場作業所で働く従業員の働き方改革に取り組んできました。その取組み成果として、現場作 業所における時間外労働は減少し、休日・休暇取得も増加しております。
■作業所の一人当たり時間外労働(月平均) ■作業所の休日取得(4週8休)の達成率
(注)提出会社の年度実績の数値を記載 (注)提出会社の年度実績の数値を記載
[具体的な取組み①] 全社支援の仕組みづくり 現場作業所を支援し、働き方改革を推進するとともに、事業全体の生産性向上に向けた取組みを包括的 に推進する部署として「土木企画部」「建築企画部(現・第四工事部)」を2021年4月に新設し、現場作 業所の業務負担を軽減するための仕組みづくりに取り組んでおります。 |
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[具体的な取組み②] 業務フローの見える化による生産性向上 土木・建築の各現場作業所にて、業務フローの見える化と見直しを実施し、 業務開始前の抜け漏れ確認による手戻り防止や業務の平準化を徹底することで、 業務の”質の改善” と”効率化”(生産性の向上)を実現いたしました。
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〇その他の取組み
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項 目 |
取 組 み |
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処遇改善 |
・4期連続賃上げ実施(2023年度 前年基本給比4.7%UP) ・遠方勤務者手当の充実(2022年度制度改正) |
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インフレ対応 |
・物価上昇による生活への影響を軽減するため、従業員全員に一律10万円を支給(2023年2月) |
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ワークライフバランス |
・男性育休取得の促進(周知活動など) ・リフレッシュ休暇制度 |
〇
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全労働者 |
うち正規雇用 労働者 |
うちパート・ 有期労働者 |
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連 結 |
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66.4% |
106.7% |
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(参考)提出会社 |
54.8% |
57.1% |
62.2% |
(注)対象期間:2023年4月1日~2024年3月31日
[補足説明]
従業員の賃金は、性別に関係なく、同一の基準を提供しており、同一職位における男女の賃金の差異はありませんが、職位・賃金が高い管理職への女性登用が男性に比べ進んでいないことや現場職員の時間外勤務及び手当の違い等により差異が生じております。引き続き、差異縮小に向け女性総合職の採用や管理職登用等の女性活躍施策を計画的に推進してまいります。なお、提出会社における職位別の男女の賃金の差異は以下の通りとなっております。
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|
課長職 |
係長職 |
主任級 |
主任級前 |
|
賃金差異 |
92.6% |
85.0% |
91.5% |
92.3% |
〇
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実 績 |
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|
〔2022年度〕 |
〔2023年度〕 |
|
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連 結 |
30.8%(8名/26名) |
|
|
(参考)提出会社 |
31.8%(7名/22名) |
60.0%(15名/25名) |
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内、現場職員 |
0.0%(0名/ 9名) |
50.0%( 7名/14名) |
c)心身両面での健康経営の推進
従業員の健康保持・増進への取組みが、従業員の活力向上や生産性向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や企業価値向上へ繋がるとの考えのもと、従業員の心身の健康を大切にし、従業員が一人ひとりの豊かなライフスタイルを支援する環境づくりに取り組んでおります。
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〇主な取組み 従業員が自身の検診結果からからだの疾病の早期発見・早期治療に努め、一人ひとりが健康で生き生きと働き続けられることをサポートするために「健診結果管理システム」を導入いたしました。同システムを活用することで、生活習慣病の発症予測や健康状態を確認することができるなど従業員自身で健康管理を行うことができるため、従業員の健康維持・増進に繋がると考えております。 |
〇その他の取組み
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項 目 |
取 組 み |
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メンタルヘルスケア |
・社外EAP(従業員支援プログラム)を活用した相談窓口を設置 |
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健康リスクの早期発見 |
・精密検査費用を全額会社が負担 ・オプション検査費用の負担軽減策の実施 |
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職場環境の整備 |
・2022年9月に本社ビル内にリフレッシュ&コワーキングスペースを設置 |
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼすおそれのあるリスクとして、当連結会計年度末現在において当社が認識しているものを以下に記載しております。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を受けるおそれがあります。
当社グループではこうしたリスクに備えるため、リスクマネジメント体制を整備し(下図[①リスクマネジメント体制図]参照)、グループ全社にわたりリスクマネジメント活動を遂行しております。
具体的には、まず各部門・各子会社がリスク区分に基づいたリスク項目を抽出(下図[②リスク区分表]参照)し、影響度・頻度(下図[③リスク評価基準表]参照)の観点から各リスクについての評価を行います。これにより各部門・各子会社がリスクの統制手法を構築し、統制活動を実施した上でこれらの自己評価を行います。また、内部監査部門がモニタリングを通じ、各部門・各子会社のリスクマネジメントの評価を行っております。内部統制部会はこれら各部門・各子会社及び内部監査部門の活動を受けて是正に係るフィードバックを行うとともに、特に重要なリスクについては、個別にCSR/ESG委員会へ報告・検討する等、リスクマネジメントが有効にかつ効果的に機能するようにしております。
(注)[②リスク区分表]に掲げる各リスクには、「2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」で記載したリスクと内容が重複するものがありますが、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼすおそれのあるリスクという切り口から、改めて記載しております。
[①リスクマネジメント体制図]
[②リスク区分表]
[③リスク評価基準表]
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により経済活動の正常化が進み、企業収益の改善や個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかに回復しました。しかしながら、長期化する地政学リスクや円安の影響で資源価格の高騰が続くなど、景気の先行きは不透明な状況が続きました。
建設業界におきましては、公共投資、民間投資ともに底堅く推移した一方で、資材価格の高騰や人手不足等により、経営環境は依然として厳しい状況が続きました。
このような状況のもと、当社グループは持続的成長をしていくために、2030年度の目指す姿を「課題解決&価値創造型企業」と定め、この目指す姿を実現するための前半5年間を計画期間とする新たな中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定し、その3年目として計画達成に向けた取組みを推進してまいりました。
この結果、当連結会計年度の業績は、受注高が134,965百万円(前期比37.0%増)、売上高は119,824百万円(前期比7.8%増)、営業利益は9,514百万円(前期比31.9%増)、経常利益は9,588百万円(前期比32.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,462百万円(前期比43.4%増)となりました。
また、当連結会計年度末の資産合計は126,000百万円(前期比3.1%減)、負債合計は59,461百万円(前期比14.5%減)、純資産合計は66,538百万円(前期比10.1%増)となりました。
受注高、売上高の部門別の内訳については、次のとおりであります。
〔受注高〕
|
区分 |
受注高 |
構成比 |
前期比増減率 |
|
|
建設事業 |
建築工事 |
102,006百万円 |
75.6% |
59.3% |
|
土木工事 |
32,958百万円 |
24.4% |
△4.4% |
|
|
計 |
134,965百万円 |
100.0% |
37.0% |
|
〔売上高〕
|
区分 |
売上高 |
構成比 |
前期比増減率 |
|
|
建設事業 |
建築工事 |
65,464百万円 |
54.6% |
1.8% |
|
土木工事 |
30,766百万円 |
25.7% |
2.8% |
|
|
小計 |
96,230百万円 |
80.3% |
2.1% |
|
|
不動産事業等 |
23,594百万円 |
19.7% |
40.1% |
|
|
計 |
119,824百万円 |
100.0% |
7.8% |
|
(建設事業)
建築工事では、物流施設をはじめとして複数の大型工事を受注したことにより、受注高は102,006百万円(前期比59.3%増)となりました。また、売上高は、前期末に新たに北和建設株式会社を連結子会社としたことなどにより、65,464百万円(前期比1.8%増)となりました。
土木工事では、大型の道路工事など官庁工事の受注が伸長したものの受注高全体としては32,958百万円(前期比4.4%減)となりました。一方、売上高は、民間工事の施工が順調に進捗したことから、30,766百万円(前期比2.8%増)となりました。
(不動産事業等)
不動産事業では、当社が開発した大規模産業用地の売却により売上高は23,594百万円(前期比40.1%増)となりました。
セグメントの業績(セグメント間の内部売上高等を含む)は次のとおりであります。
|
(建築セグメント) |
耐震補強工事を含む建築工事全般及び建設用資材販売事業等から構成され、セグメント売上高は68,326百万円(前期比2.0%減)となり、セグメント利益は1,224百万円(前期比69.5%減)となりました。 |
|
(土木セグメント) |
土木・鉄道工事全般及びゴルフ場の経営・コース維持管理に関する事業から構成され、セグメント売上高は31,720百万円(前期比2.7%増)となり、セグメント利益は4,939百万円(前期比9.1%増)となりました。 |
|
(不動産セグメント) |
マンション分譲事業を中心とした不動産の売買、賃貸等に関する事業から構成され、セグメント売上高は23,256百万円(前期比40.9%増)となり、セグメント利益は7,826百万円(前期比171.3%増)となりました。 |
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、19,917百万円(前期比2,803百万円減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、10,235百万円(前期は4,152百万円の資金の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、1,181百万円(前期は3,069百万円の資金の使用)となりました。これは主に、固定資産を取得したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、11,857百万円(前期は253百万円の資金の使用)となりました。これは主に、短期借入金の返済を行ったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 受注実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円)(増減率) |
|
建築セグメント |
64,034 |
102,006( 59.3%) |
|
土木セグメント |
34,485 |
32,958( △4.4%) |
|
合計 |
98,520 |
134,965( 37.0%) |
b. 売上実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円)(増減率) |
|
建築セグメント |
64,333 |
65,440( 1.7%) |
|
土木セグメント |
30,545 |
31,362( 2.7%) |
|
不動産セグメント |
16,231 |
23,021( 41.8%) |
|
合計 |
111,110 |
119,824( 7.8%) |
(注)1.当社グループでは、不動産セグメントは受注生産を行っておりません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
4.最近2連結会計年度の主な相手先別の売上実績及び当該売上実績の総売上実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
||
|
建築・土木セグメント |
名古屋鉄道株式会社 |
8,855 |
8.0 |
12,776 |
10.7 |
|
建築・不動産セグメント |
野村不動産株式会社 |
4,804 |
4.3 |
23,773 |
19.8 |
※ なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
④ 建設事業における受注工事高の状況
a. 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
|
期別 |
区 分 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計
(百万円) |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
建 築 工 事 |
67,155 |
64,049 |
131,204 |
67,485 |
63,718 |
|
土 木 工 事 |
24,936 |
26,787 |
51,723 |
22,652 |
29,071 |
|
|
計 |
92,091 |
90,836 |
182,927 |
90,137 |
92,790 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
建 築 工 事 |
63,718 |
94,388 |
158,106 |
59,608 |
98,498 |
|
土 木 工 事 |
29,071 |
22,558 |
51,630 |
21,956 |
29,673 |
|
|
計 |
92,790 |
116,947 |
209,737 |
81,565 |
128,171 |
(注)1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含めております。
2.次期繰越工事高は、(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致しております。
b. 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
建築工事 |
60.8 |
39.2 |
100.0 |
|
土木工事 |
31.7 |
68.3 |
100.0 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
建築工事 |
87.1 |
12.9 |
100.0 |
|
土木工事 |
39.1 |
60.9 |
100.0 |
(注)百分比は請負金額比であります。
c. 完成工事高
|
期別 |
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
計(百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
建築工事 |
- |
67,485 |
67,485 |
|
土木工事 |
7,980 |
14,671 |
22,652 |
|
|
計 |
7,980 |
82,156 |
90,137 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
建築工事 |
113 |
59,494 |
59,608 |
|
土木工事 |
6,793 |
15,163 |
21,956 |
|
|
計 |
6,906 |
74,658 |
81,565 |
(注)1.完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
|
DH弥富開発特定目的会社 |
|
DPL名港弥富新築工事 |
|
三菱地所レジデンス株式会社・三菱商事都市開発株式会社・野村不動産株式会社 |
|
名古屋市西区則武新町3丁目計画新築工事 |
|
野村不動産株式会社・アイシン開発株式会社 |
|
(仮称)豊橋駅西口駅前再開発プロジェクト新築工事 |
|
独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
|
北陸新幹線、福井橋りょう他 |
|
名古屋高速道路公社 |
|
令和元年度高速3号大高線橋梁修繕工事(白金工区) |
当事業年度
|
合同会社はまぐりONE(伊藤忠商事、伊藤忠都市開発 組成SPC) |
|
(仮称)アイミッションズパーク桑名新築工事 |
|
東急不動産株式会社 |
|
(仮称)埼玉県白岡市篠津計画新築工事 |
|
株式会社浅野研究所 |
|
(仮称)浅野研究所新工場建設工事 |
|
中日本高速道路株式会社 |
|
新東名高速道路 御殿場インターチェンジ工事 |
|
東洋エンジニアリング株式会社 |
|
蒲郡バイオマス発電設備建設工事 土木建築工事 |
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
|
合同会社はまぐりONE |
9,666 |
百万円 |
11 |
% |
当事業年度
|
名古屋鉄道株式会社 |
12,774 |
百万円 |
16 |
% |
|
野村不動産株式会社 |
12,668 |
百万円 |
16 |
% |
d. 次期繰越工事高(2024年3月31日現在)
|
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
計(百万円) |
|
建築工事 |
1,632 |
96,866 |
98,498 |
|
土木工事 |
14,975 |
14,698 |
29,673 |
|
計 |
16,607 |
111,564 |
128,171 |
(注)次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
|
センコー株式会社 |
|
(仮称)センコー新小牧第2PDセンター新築工事 |
2024年8月完成予定 |
|
株式会社相鉄アーバンクリエイツ |
|
羽村物流施設新築工事 |
2024年11月完成予定 |
|
野村不動産株式会社 |
|
Landport東海大府新築工事 |
2025年10月完成予定 |
|
三井不動産レジデンシャル株式会社・トヨタホーム株式会社 |
|
(仮称)愛知県刈谷市神田町一丁目計画 |
2026年1月完成予定 |
|
名古屋鉄道株式会社 |
|
三河線若林駅付近鉄道高架化事業に伴う本線土木(その6)工事 |
2026年2月完成予定 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
a. 経営成績の分析
(売上高)
当社グループの当連結会計年度における売上高は、119,824百万円(前期比7.8%増)となりました。これは、建設事業において、当期より北和建設を新規連結したことなどに加え、不動産事業のうち当社が開発した大規模産業用地の売却によるものであります。
(売上総利益)
当社グループの当連結会計年度における売上総利益は、19,797百万円(前期比19.3%増)となりました。これは、建設事業は前期に比べ採算の厳しい建築工事が多かった影響により減益となったものの、不動産事業において利益率の高い自社開発産業用地の売却があったことによるものであります。
(営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益)
不動産事業の増益により、営業利益は9,514百万円(前期比31.9%増)、経常利益は9,588百万円(前期比32.1%増)となりました。また、売上総利益が大幅な増益となったことにより、販売費及び一般管理費の増加を吸収し、親会社株主に帰属する当期純利益は6,462百万円(前期比43.4%増)と、前期実績を大きく上回りました。
b. 各事業の概況
当社グループは、建設事業においては、限られた経営資源の中で利益を最大化すべく、生産性の高い大型の一般建築・土木工事への取り組みを強化してまいりました。
また不動産事業では、分譲マンション事業を中核とする総合不動産デベロッパーとして、分譲マンション事業のみならず、工業団地や商業施設などの開発事業や、不動産賃貸事業、仲介・販売代理などの流通事業、マンション及びビルの管理事業に注力してまいりました。
なお、各セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
(建築セグメント)
建築工事の受注高は、物流施設をはじめとして複数の大型工事を受注したことにより、前期実績を大きく上回りました。また、売上高は、前期末に新たに北和建設株式会社を連結子会社としたことなどにより、前期実績を上回りました。
(土木セグメント)
土木工事の受注高は、大型の道路工事など官庁工事の受注が伸長したものの受注高全体としては、前期実績を下回りました。一方、売上高は、民間工事の施工が順調に進捗したことから、前期実績を上回りました。
(不動産セグメント)
不動産事業では、当社が開発した大規模産業用地の売却により、売上高は前期実績を大きく上回りました。
c. 財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は87,910百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,313百万円減少しております。これは大型建築工事を中心に工事代金の回収が進み売上債権が減少(42,753百万円から39,657百万円へ3,095百万円減)したことが主要因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は38,090百万円となり、前連結会計年度末に比べ326百万円増加しております。これは繰延税金資産が増加(2,047百万円から3,792百万円へ1,745百万円増)したことが主要因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は43,708百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,135百万円減少しております。これは大規模産業開発用地の売却により獲得したキャッシュをもとに短期借入金の返済(28,100百万円から14,100百万円へ14,000百万円減)を進めたことが主要因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は15,753百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,041百万円増加しております。これは協力会社に対する手形の廃止に伴い、長期借入金が増加(3,800百万円から8,300百万円へ4,500百万円増)したことが主要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の合計は66,538百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,107百万円増加しております。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加が主要因であります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、内部留保資金と金融機関からの借入などの調達手段により確保しております。当連結会計年度末のグループ全体の現金預金残高は約200億円、金融機関からの借入は約224億円となっており、緊急時の対応を含めて、必要な量を確保しております。来期以降につきましても、適時適切な資金調達によって、安定的な資金運営を実施してまいります。
当社は財務の健全性確保と資本の有効活用のバランスを最優先に、安定的な株主価値の向上に努めることを資本政策の基本方針としておりますが、今後も収益基盤の確立に向けた成長投資を適切に行っていく考えです。
当期も継続的に開発案件への投資などを進め、その資金につきましては、当期の営業活動によって獲得した資金と財務活動による借入にて賄っております。
また、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて、長期的な視点に立って株主資本の充実に努めるとともに、企業収益の配分については、株主への安定的な配当を継続実施することを基本方針としております。
③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的成長を実現していくために2030年度の目指す姿を「課題解決&価値創造型企業」と定め、この目指す姿を実現するための前半5年間を計画期間とする新たな中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定し、その数値目標(最終年度)を売上高1,300億円、営業利益100億円、配当性向30%以上としております。
本中期経営計画期間においては、2030年度の目指す姿の実現に向けて建設生産プロセスの改革、新規技術・サービスの開発、事業エリアの拡大、様々なパートナーとの価値共創等に取り組むとともに、安全・品質レベルの向上、魅力的で働き甲斐のある職場環境の整備、SDGsへの積極的な取組みなど成長を支える経営基盤の確立に取組み、顧客・地域、そして社会の持続的発展に貢献する会社を目指してまいります。
a. 数値目標
b. 配当方針
本中期経営計画期間(2021~2025年度)の目標である配当性向30%以上を維持
c. 投資計画
不動産投資を中心に、中期経営計画2年目(前期)と同程度の成長投資を実施
④ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
a. 収益及び原価の処理
当社の主要な事業である建築事業、土木事業において、一定の期間にわたり履行義務が充足される工事契約の収益認識については、工事原価総額を基礎として期末までの実際発生原価額に応じた進捗度に工事収益総額を乗じて完成工事高を算定しています。
一定の期間にわたり履行義務が充足される工事契約の収益認識については、以下の理由により、収益及び原価が変動する場合があるため、適時適切な見積りを実施する必要があります。
Ⅰ.工事収益総額・・・施工中の工法変更あるいは施工範囲の変更に伴う契約変更や対価の変動などにより、請負金の変動が発生する可能性があること
Ⅱ.工事原価総額・・・施工条件や資材、労務費、外注費等に係る価格変動などにより、工事原価総額の変動が発生する可能性があること
Ⅲ.工事進捗度・・・・工事原価総額を基礎として算定されるため、工事原価総額の変動により工事の進捗度の変動が発生する可能性があること
b. 退職給付
当社グループでは、確定給付型の制度として、退職一時金制度及び企業年金基金制度を採用しております。
従業員に対する確定給付費用及び確定給付制度債務は、
・債務の割引率
・企業年金の期待収益率
・退職率及び死亡率などの数理計算上の基礎率
などにより見積られており、実績と見積りとの差異は「その他の包括利益」として認識され、包括利益及び純資産へ影響を及ぼします。
したがって、これらの変数(見積り)については適時適切に見直しを実施しておりますが、実績との差異や仮定の変動は確定給付費用や債務に影響を与えます。
なお、これらに関する見積りや前提条件については、「第5 経理の状況 1. 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」を参照願います。
c. 販売用不動産の評価
当社グループは、建設事業に加えてマンション販売や開発事業など不動産事業も手掛けており、これに係る資産を「販売用不動産」として連結貸借対照表に計上しております。
個々の販売用不動産の評価に係る会計方針としては、原価法(収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)を採用しており、毎期行う収益性の評価の結果、評価額が帳簿価額を下回る場合は、評価損を計上することとなります。
販売用不動産の評価に際しては、個々の特性に応じて一定の評価手法で評価額を算定しておりますが、予測を超えた市場変化などが発生した場合、販売用不動産の評価に影響を及ぼす可能性があります。
d. 繰延税金資産の評価
当社グループにおいて繰延税金資産の計上に当たっては、個々の発生原因ごとにその解消時期の予測及びこれらを考慮した将来の課税所得予測に基づき、その回収可能性が確実でない場合については「評価性引当」を計上し減額しております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りや発生原因の解消時期の予測に依存するため、その前提とした条件や仮定に変化が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性に影響を及ぼし評価性引当額の増減が発生します。
当社グループの繰延税金資産及び評価性引当額については、「第5 経理の状況 1. 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」を参照願います。
e. 減損損失
当社グループは、固定資産の減損損失の判定に際しては原則として継続的に損益の把握を実施している建築、土木、不動産の3つの報告セグメント区分をベースに、資産のグルーピングを行っております。また、賃貸用不動産と遊休資産については個々の物件ごとにグルーピングを行い、本社・福利厚生施設等については、独立したキャッシュ・フローを生み出さないことから共用資産としております。
これらのうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
なお、減損を認識した当該資産の回収可能価額は、主として正味売却価額(不動産鑑定評価に基づく鑑定価額)により測定しております。
f. 投資有価証券の評価
当社グループが保有する有価証券については、投資その他の資産に「投資有価証券」として計上しておりますが、個々の有価証券の実質価値が帳簿価額を著しく下回り、その低下が一時的でないと判断される場合には、評価損を計上しております。
評価損の計上に際しては、下落の期間や下落の程度など一定の基準により四半期ごとに計上の判断をしておりますが、予測を超えた市場変化などが発生した場合、有価証券の評価に影響を及ぼすおそれがあります。
(販売用不動産の売買契約等)
当社は、2023年10月30日付けで、同月20日開催の取締役会決議に基づき、以下のとおり当社が保有する販売
用不動産の売買契約及び当該土地にて売却先が建築を予定している建物の建築工事請負契約の締結をしました。
(販売用不動産の売買契約内容)
所在地:愛知県東海市名和町一枚畑1-1、愛知県大府市共和町児子廻間4-1
地積 :98,265㎡(登記簿記載面積)
引渡決済:2023年10月30日
(建築工事請負契約内容)
建物用途:マルチテナント型物流倉庫
延床面積:250,051.49㎡
構造規模:PCaPC、免震構造、地上6階建て
工事期間:2023年11月~2025年10月
(相手先)
商号 :野村不動産株式会社
本店所在地:東京都新宿区西新宿1丁目26番2号
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費は、
当社グループは、研究開発プロジェクトを一元管理するエンジニアリングセンターを中心に、建築・土木分野における生産性向上や事業領域の拡大に加え、高度化・多様化するニーズやSDGs達成への貢献に対応するための新工法・新技術の研究開発を、施工部門・グループ企業と連携を図りながら進めております。また、企業や大学等との技術交流・共同開発にも注力しており、更なる技術メニューの拡充を推進しております。
当連結会計年度におけるセグメント別の主な研究開発活動は、以下のとおりであります。
1.建築セグメント
(1)大規模建築におけるコスト競争力向上に関する技術の拡充
大規模・超高層建築の競争力向上を目的に、コスト低減や省力化を実現できる設計方法について、実績を重ねることで得られた知見を活用し、更なる改良を継続しています。外部環境の変化により発生が予想される課題について迅速に対応すべく、各種コスト・技術検証手順の変革にも着手しています。引き続き、顧客への提案技術の拡充に向けて、設計・施工技術の底上げと新工法の開発を進めてまいります。
(2)デジタル技術を活用した業務改革
顧客との合意形成の迅速化や業務効率化の観点から、建物の3次元モデルデータにコストや仕上げ・管理情報などの属性データを兼ね備えたBIMデータの活用を継続しています。設計や施工フェーズにおいて、社内だけでなく、顧客や協力会社など社外関係者とのデータ連携を目指し、最適なしくみを構築してまいります。また、建物の維持管理をはじめ建物のライフサイクルのあらゆる場面においてBIMなどデジタルデータを活用すべく、各種データ収集・分析するプラットフォームの構築やAI(人工知能)活用に向けた研究も進めております。
(3)SDGs達成に貢献する技術の拡充
環境問題など社会課題を背景に多様化する市場に対して持続的に価値を提供する取組みの一環として、学識者や他企業など社外関係者と共に、環境配慮技術をはじめとする各種研究開発・改良を継続しています。当社が所有するZEB化建物のデータ測定や各種実証実験から得られたエビデンスを蓄積し、技術力・提案力の拡充を図ってまいります。
2.土木セグメント
(1)技術提案力の向上
公共工事の受注力向上に向けて、総合評価方式における技術提案の評価向上を目指します。提案技術の高度化と差別化を図るべく、活用実績の確保、活用効果の検証、公的認証の取得などに取り組んでいます。
(2)課題解決力の向上
発注者が抱える課題・困り事や工事現場が直面している課題に対して技術的に解決する活動を活発化します。解決の過程で習得する創意改善実績や技術的ノウハウをヒントにすることで新たな技術開発にもつなげてまいります。
(3)環境技術の開発
SDGsの一環として、脱炭素や環境負荷低減につながる技術の開発を積極的に実施しています。保有技術である「パンウォール工法」の低炭素化や自然由来の原材料を用いた新工法の開発を進めています。
(4)省人省力化技術の開発
現場の生産性向上、施工管理業務の効率化、社内連携の最適化などを目指し、機械化施工、DXの活用、管理システムの開発などに取り組んでいます。具体的には、自動設計・積算システムの開発、安全管理アプリケーションの開発、データ基盤(プラットフォーム)の構築と連携ツールの開発を進めています。
「パンウォール工法」については、機械化施工や安全性向上の実証実験を完了し、実用化に向けて準備を進めています。
「軌道工事」の安全な施工と技能労働者不足の解消を目的とした次世代型道床締固め機械の開発を完了し、実用を開始しました。引き続き、レール更換機やレール研磨・嵩上装置など、省人省力化につながる技術の導入、開発を進めてまいります。
(5)保有技術の改良
防災・減災の機能に優れ、全国で数多くの施工実績を持つ地山補強土工法「パンウォール工法」と「キャブウォール工法」では、ニーズの多様性を考慮し、耐震性や耐凍害性などの性能評価および改良を進めています。引き続き、頻発する地震や豪雨などの災害への安心を支え、適用範囲の拡大、耐久性・施工性・経済性などの価値向上のために、性能評価および改良を継続的に行ってまいります。
3.不動産セグメント
研究開発活動は特段行われておりません。