当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは「お客様に喜んで頂く商品をつくり、社会に貢献する」を経営理念に掲げ、トラック製造業界、建設・産業機械業界をはじめ、実際に商用車や産業用機械を運転されるお客様の立場に立ち、ニーズを先取りした提案型の製品開発、設計、生産を行うとともに、製品の安全性を高め、しっかりとした品質が保証できるものづくりに真摯に取り組み、社会にとって必要な企業であり続けることが、株主の皆様をはじめ、当社を取り巻くすべてのステークホルダーにとって、真の企業価値の向上をもたらすものと考えております。
(2)経営環境、経営戦略等
世界的な合従連衡やそれに伴うサプライチェーンの変動、本格的なCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)時代を迎え、自動車産業の構造は激変しております。さらに、原材料・エネルギー価格高騰の外部要因に加え、国内事業の収益力低下に対する抜本的な対策の遅れ等により、当社グループの収益性に大きな影響が出ております。 こうした環境変化へ的確に対応するため、2022年4月から実施している、「第15次中期経営計画」において、「企業価値向上の取り組み」「新領域への挑戦」「ESG経営の取り組み」に経営資源を集中し、諸施策に取り組んでおります。
①企業価値向上の取り組み
国内市場縮小及び海外への生産シフトに対応するため、既存事業の抜本的な改革を実行しております。各地域の市場規模に応じた生産体制の再構築を進め、収益基盤の改善に繋げております。2022年4月から地域・機能統括制度を導入し、意思決定の迅速化や連携強化を図り、国内工場における生産効率化や北米事業の黒字化に注力しています。2024年1月には連結子会社の吸収合併が完了し、重複コストの解消や経営資源の集約を進めております。
②新領域への挑戦
乗用車に比べて遅れてはいるものの、商用車でもxEV(各種電動車)化への動きが顕著であり、電動化に向けた先行投資を積極的に行っています。その一例として、自社開発のエンジンアシストシステムを各自動車及び建産機メーカーへ販促し、また、サーマルマネジメント(熱管理)システムやe-Axle(電動アクスル)の開発を進めております。そのほか、粉塵回収装置付きの環境対応ブレーキや電動ポンプの更なる開発を進めつつ、自動車及び建産機メーカーの動向を踏まえた新製品の開発、拡販を進めてまいります。
これらに加えて、アルミ鋳物の量産化や、自動車産業で培った技術を活かしたロボット産業におけるソリューション事業にも取り組んでおります。
③ESG経営の取り組み
サステナビリティ経営の重要性が増す昨今、サステナビリティ推進室を中心に持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しております。
E:バリューチェーン全体で、2030年度までにCO2排出量の46%削減(国内)を目指します。
S:多様性のある人材の確保・活用に向けて、働きがいのある職場づくりを目指します。
G:コーポレートガバナンスの強化として、政策保有株式の縮減や後継者育成計画の策定に取り組みます。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
国内会社経営統合による効果刈り取り、成長を続けるアジア事業の収益強化により財務体質の健全化を推進します。しかしながら、中国事業不振の長期化、2024年問題に起因する物流費の上昇、賃上げ実施による人件費の上昇と課題がございますので、サプライチェーンの全体の中で解決してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、第15次中期経営計画最終年度となる2025年3月期は、現状を踏まえて2024年5月に計画の見直しを行い、「連結売上高540億円」、「連結営業利益10億円」、「連結営業利益率1.9%」、「ROE1.4%」を目標財務指標としております。
また、今中期経営計画より非財務指標についても目標設定しております。ESG経営の取り組みの中で進捗管理をしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、当社グループは、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース<Task Force on Climate-related Financial Disclosures>)提言で開示が推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの区分に基づいて、以下の記載を行います。なお、未充足の部分については、今後継続的に拡充してまいります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティへの全社的な取り組みや推進戦略に関する立案及び推進体制を強化するため、サステナビリティ委員会を2022年7月1日付にて設置しています。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、委員は経営層である地域統括、機能統括、子会社社長より主に構成されます。サステナビリティに関連する重要なリスクなどについては、全社リスク管理のプロセスと同様に、適宜取締役会への付議/報告を行っております。
サステナビリティ推進体制図
サステナビリティリスク対応図
②リスク管理
当社グループでは、リスク管理・コンプライアンス規則に基づき、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。本委員会は、四半期ごとに各部門から提出されるリスク評価を基に、経営への影響度合いや期間に応じて重要リスクを特定しています。さらに、リスク・コンプライアンス関連の報告をグループ会社から受け、重要な案件については取締役会での審議と決定を行います。
(2)気候変動に伴う対応
①ガバナンス
気候変動に関する具体的な分析や施策については、サステナビリティ委員会の監督の元に実施しています。また、各拠点における環境委員会が当社グループ内の各社と連携し、気候変動関連課題への対応策の推進、目標管理を行い、サステナビリティ委員会へ上申、報告を実施しています。
②戦略
当社グループは、気候変動が事業・業績に与える影響について、定性的なシナリオ分析を行いました。シナリオ分析では様々な事態を想定し備えることが重要と考え、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)及び国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)を参照し、「2℃未満」シナリオと「4℃」シナリオを用い分析を行いました。
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2℃未満シナリオ (低炭素経済へ移行するシナリオ) |
政府目標が推進され、カーボンニュートラルな世界が実現されている社会となります。国際社会や日本政府により環境対応規制が強化され、新しい技術革新が進むことで、社会や産業の構造が大きく変化していることが想定されます。 |
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4℃シナリオ (物理的気候変動リスクが高まるシナリオ) |
低炭素/脱炭素化の取り組みによる効果は限定的に留まり、気候変動の深刻化した物理的リスクが高い社会となります。自然災害が頻発することで、当社グループのサプライチェーンや生産現場に対する望ましくない影響が想定されます。 |
気候変動に関するリスクと機会は、政策や技術等による社会変化によって生じる「移行」側面と、自然災害や気温上昇などによって生じる「物理」側面を考慮しております。なお、分析の時間軸は、基本的に移行リスクは2030年、物理的リスクは2050年を基準としています。
特定した気候変動に関連するリスクと機会及び現在行っている対応策は、下表のとおりです。
2℃未満シナリオ
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世の中の変化 |
時間軸 短期:2025 中期:2030 長期:2050 |
リスク |
機会 |
対応策 |
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政策・規制 |
炭素税・GHG排出量規制の導入 |
中期 |
・炭素税などGHG排出量に比例するコスト増加 |
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・規制に先行した排出量削減への取り組み |
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技術開発 |
内燃機関車の低燃費要請 |
中期 |
・競合企業の先行した低燃費配慮製品開発による売上減少リスク |
・顧客のニーズを充足した低燃費配慮型製品の売上拡大 |
・低燃費など、顧客ニーズに対応した製品の開発 |
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商用車のEV化 |
中期 |
・EV化の進展による内燃機関関連商材の需要減少(ウォーター/オイルポンプなど) |
・EV対応型製品のラインナップ拡充による売上拡大 |
・EV対応型製品の開発加速 |
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市場動向 |
グリッドパリティ未到達 |
中期 |
・再生可能エネルギー電力の導入(購入)による電力コストの増加 |
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・工場への太陽光発電システムの導入 ・省エネ設備導入による電力消費量削減 |
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原材料価格の高騰 |
中期 |
・金属、樹脂などの原材料単価の値上がり |
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・原材料コスト上昇分の販売価格への転嫁交渉 |
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サプライチェーンにおけるCN*要請 |
中期 |
・省エネ、再エネ設備に関する投資コストの増加 |
・顧客のScope3におけるCN*貢献による販売機会の拡大 |
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CN*:カーボンニュートラル
4℃シナリオ
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世の中の変化 |
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リスク |
機会 |
対応策 |
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物理的(慢性) |
平均気温の上昇 |
長期 |
・工場内の高温化に伴う労働生産性の低下(人件費の増加) |
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・工場における労働環境の整備(空調設備、休憩時間確保等) |
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物理的(急性) |
異常気象の激甚化 |
短期 |
・風水害の頻発化による自社拠点への被害 |
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・各拠点におけるBCPへの取り組み ・被災に対応した損害保険への加入 ・BCPリスクを考慮した複数購買の実施 |
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短期 |
・サプライチェーン分断に伴う工場の操業停止 |
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③リスク管理
気候変動に関連する重要なリスクについても、全社リスクマネジメント管理のプロセスと同様に、リスク・コンプライアンス委員会がサステナビリティ委員会と連携し、その影響度や管理状況について適宜取締役会への報告を行ってまいります。
④指標及び目標
当社国内グループにおける、GHG排出量は以下のとおりです。ESG経営への取り組みを重点目標として定め、国内では2050年のカーボンニュートラル目標を設定いたしました。今後、カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ改善活動、再生可能エネルギー導入などの取り組みを加速させていきます。また海外グループ各社については、GHG排出量の捕捉を進め、各国の目標に鑑みながら、グループ全体でのScope1,2のGHG排出量削減目標を策定中です。
加えて、当社グループ全体における、Scope3のGHG排出量計測や、特定した事業機会に関する目標の設定なども、今後具体化に向け社内での検討を続けてまいります。
(3)人的資本
①戦略
外部環境の変化に対応しながら企業価値を高めていくには、多様な価値観を持った従業員が主体性や創造性を持ち、経営Visionを実現させることが重要であると考え、それぞれのキャリア階層で求められるスキルを習得できる教育体系を整備し、個々の能力を発揮できる体制を目指します。当社が目指す人材像を「主体性・創造性・責任感・実行力を持った人材」と定め、これを実現するため、下記の3つ方針の下、人材戦略を進めていきます。
<キャリア形成に向けた計画的育成>
TBKが目指す人材像を体現するため、若年層から管理職までの各キャリア階層に求められるスキルを明確にし、従業員がそのスキルを習得できるよう計画的・体系的な教育を実施します。さらに、次世代のリーダー教育として、従業員の総合力を強化するため、多様な価値観や経験を得られるよう、人事ローテーションや国内外グループ会社への出向などを積極的に行います。
また、部門や拠点を越えた研修を通じてグループ内でのコミュニケーションを促進し、組織の活性化や新しいことにチャレンジしていく企業風土の醸成を目指します。
<グローバル人材の育成>
日本国内のみならず、海外グループ会社も含めたグローバルでの人材育成、多様な人材の活用に取り組んでいきます。さらに、グループ内での人事ローテーションや研修による人材交流を行い、多様な価値観を持った社員が個々の力を発揮し、イノベーションが生まれる環境を目指します。
<人材の多様性>
人材の多様性を尊重し、グループ全体でダイバーシティへの理解を深めるとともに、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づき女性従業員を増やし、性別等に関わらず育児・介護等を含めた多様なライフスタイルや価値観を尊重し、長く働き続けられる環境の整備に取り組みます。
なお、海外子会社を含めた連結会社全体の女性管理職比率を2025年3月末までに15%に引き上げることを目標として掲げております。
これらを実現するため、当社は、働きがいのある職場づくりを目指し、従業員の健康及びワークライフバランスの推進、従業員満足度の向上に取り組みます。また、この取り組みの一環として、当社は以下のとおり「健康経営宣言」を行い、健康経営優良法人を取得しています。
「健康経営宣言」
当社は、「持続可能な成長を通して社会に貢献する」を長期目標として掲げています。従業員の健康を促進し、また、それぞれの力を最大限に発揮できる、健康で働きがいのある職場環境を実現することが、組織の活性化及び持続的な成長につながると考えています。従業員の生活を豊かなものとするため、そして企業として成長し続けるために、従業員の健康推進を経営戦略上の重要課題と位置づけ、従業員の心と体の健康づくりを推進していきます。
②指標及び目標
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方針 |
戦略的取り組み |
指標 |
2022年度 |
2023年度 |
目標値 |
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キャリア形成に |
体系的な階層別 教育の実施 |
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100% |
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- |
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グローバル人材 |
人事交流の促進 |
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1名 |
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人材の多様性 |
女性活躍の推進 |
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5.6% |
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働きがいのある 職場づくり |
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81.6% |
(14.0日) |
(14.0日) |
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28.6% |
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(注)1.特に記載がない限り、当社単体で集計
2.2022~2024年度の延べ人数
これら、サステナビリティに関する事項の詳細につきましては、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)国内外の経済状況に関わるリスク
当社グループの製品の需要は、国または地域の経済状況の影響を受ける可能性があるため、日本はもとよりタイ、中国、インド及びアメリカ等における景気悪化及びそれに伴う需要減少は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
自動車業界を中心とする当社グループの取引先は、新しい市場への対応やコスト削減のため、今後もますますグローバル化が進展していくものと思われ、当社グループにおいても積極的に海外事業展開を進め、収益基盤の強化を図っております。
中国においては不動産不況の影響で需要が低迷しており、それに伴う生産調整を実施しております。これら経済活動への直接的な打撃により、次期以降の業績に影響を与える可能性があります。
(2)トラック及び建設・産業機械需要の動向に関わるリスク
当社グループの国内普通トラック(積載量4トン以上)関連事業への依存度は依然として高く、また、当社製品のマーケットシェアも高いため、当社グループの業績及び財務状況は当該市場の動向に左右される可能性があります。また、2024年問題により、今後物流業界のトラック需要が減少した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、建設・産業機械関連事業についても、当社グループの業績及び財務状況は、インフラ整備等の公共投資、資源開発や不動産などの民間設備投資等の需要動向に大きく影響を受ける可能性があります。
当該事業への依存度を下げるため、部品鋳造やロボットの導入支援事業等、当社グループの技術、ノウハウを生かした新規事業の創出に取り組んでおります。
(3)製品構成の変化に関わるリスク
当社グループの主要な販売先は、国内普通トラック(積載量4トン以上)メーカーの他、海外の顧客も増えてきております。これら各社の技術開発の動向や調達方針の変更、市場・業界環境の急変等が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
トラックに搭載されている当社主力製品のドラムブレーキは、日本において独自に進化したドラムブレーキの一種であり、北米やアジアなどでは従来のドラムブレーキが主力となっております。昨今、中国では、ブレーキ規制強化により、欧州で主力のディスクブレーキが一部車種に導入されつつあり、国内においても、性能面で同等の当社主力のドラムブレーキがディスクブレーキと競合するリスクが存在します。今後、国内普通トラック市場においてディスクブレーキが普及すると、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、商用車においてもバス・中小型車にEV化への動きが出てきており、当社製品のポンプ需要が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらの変化に対応するため、2019年に韓国のSangsin Brake Co., Ltd.と技術提携契約を締結し、ディスクブレーキ化への流れにも対応しております。また、商用車のxEV(各種電動車)化に対応するため、冷却・潤滑用電動ポンプの高圧力・高効率化、サーマルマネージメント(熱コントロール)システム等の新しい製品の開発を推進しております。
(4)為替相場の変動に関するリスク
当社グループでは、タイ、中国、インド、アメリカに生産拠点を有しておりますが、主に現地製造・現地販売を行っているため、輸出入に伴う為替リスクは軽微です。しかしながら、海外各国における現地通貨建ての財務諸表は連結財務諸表作成時に円換算されるため、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
為替変動リスクを回避するために、一部の借入金に関しましてはデリバティブ取引を利用してヘッジしております。
(5)製品の品質・安全性に関わるリスク
当社グループの製品は開発から生産まできめ細かい管理体制を敷き、品質向上及び安全性の確保に努めておりますが、予期せぬ品質不良が発生する可能性があります。このような品質不良は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループの主力製品である商用車用ブレーキは、重要保安部品に該当し、品質不良が発生すると重大事故につながり、社会的な信用を損なうリスクがあります。
これらを軽減するために、IATF16949(自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格)に準拠した体制・仕組みを構築しており、さらには、定期的に社内の品質マネジメントシステム内部監査を実施する監視体制を確立しております。製品の出荷検査は社内認定検査員が行っており、また、重要保安部品を扱う工程は、社内認定作業者が従事しております。
(6)原材料・部品等の調達に関わるリスク
当社グループの生産活動における資材、部品その他の調達品につきましては、現在その必要量が十分確保されております。しかしながら、需要増加等の要因により、資材の調達遅延や、調達不足が生じた場合には、当社グループの生産活動に影響を及ぼす可能性があります。また、市場の急激な変化に伴う、資材、部品その他の調達品の価格上昇やサプライヤーの設備事故・自然災害等による操業停止あるいは倒産等により、諸資材等の調達に支障を来たす場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、二社発注など調達先の多様化の推進や、サプライチェーン情報の定期的な把握など、リスクの低減に努めております。
(7)自然災害や事故等に関わるリスク
当社グループは、日本、タイ、中国、インド及びアメリカに生産拠点を有しており、地震・台風などの大規模自然災害、感染症によるパンデミック、火災その他の事故の影響により、工場の操業度が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
大規模災害の発生に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、迅速かつ適切に情報を伝達する緊急体制を整備し、定期的に危機対応訓練や避難訓練を行っております。また、消火設備を定期的に点検し、リスク軽減を図っております。その他、大規模災害やパンデミック対策として、テレワークや時差出勤等を整備しております。
(8)海外拠点の動向に関わるリスク
当社グループの海外拠点であるタイ、中国、インド及びアメリカにおいて、法律・規制・税制等の大幅な変更、労働争議、電力等の社会インフラ面の障害、政治的不安定や戦争・テロ等による混乱、その他事故等の影響により、事業活動を停止する可能性があります。
当社グループの事業へ影響が大きいと想定されるシナリオに基づき、事業継続計画(BCP)を策定し、重要事業の継続と復旧にかかる体制整備の強化を図っております。
(9)コンプライアンス違反によるレピュテーションリスク
当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、各国で適用される関連法令の遵守に努めております。また、コンプライアンス違反案件が発生した場合には、迅速に対処する体制を構築しております。しかしながら、今後コンプライアンス違反が発生しない可能性は皆無とは言えず、違反内容の重大性が大きい場合や、事後の対処方法・対処時期が的確性を欠く場合には、当社グループの社会的信用が著しく低下し、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、ガバナンスに関わる不祥事や法令違反を未然に防ぐべく、グループ会社管理体制、リスク・コンプライアンス体制及び内部通報体制を整備する等、リスクの軽減を図っております。
(10)人材の確保・育成に関わるリスク
当社グループは、企業の競争力の源泉は人材にあるとの認識のもと、グローバルにも活躍できる、より優秀な人材を安定的に確保・育成できる基盤を構築することが重要であると認識しております。しかし、今後の人材獲得競争の一層の激化や従業員の高齢化により、当社グループ内の人材確保・育成・技能伝承が遅れた場合には、将来的な事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
その対策として、働きがいのある職場づくりを目指し、従業員の健康及びワークライフバランスの推進、従業員満足度の向上や報酬制度の整備に取り組んでおります。また、従業員のキャリア形成に向け、計画的な育成を進めています。
(11)気候変動によるリスク
当社グループは、経営理念に基づいた事業活動を通じてサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)に取り組むことで持続可能な社会の実現に寄与し、企業価値の向上を目指します。しかしながら、世界的な気候変動による事業活動や地球環境の変化及び温室効果ガス排出削減のための法的な規制強化などにより、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動から生じた重大災害によって、当社グループ及びサプライチェーンの拠点・設備・システム等が被害を受けた場合、営業・生産活動に支障をきたし、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、事業を通じた環境保全活動の一環として、日本におけるCO2排出量を2030年までに2013年度比で46%削減することを目標に定め、その削減に取り組んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(財政状態の状況)
総資産については、前年度末比8.3%増の56,536百万円(前連結会計年度末は、52,179百万円)となり4,357百万円増加いたしました。この主な要因は、前年度末に比べ、受取手形および売掛金の増加2,035百万円及び有形固定資産の増加1,113百万円に、棚卸資産の増加870百万円を加味したことによるものであります。
負債については、前年度末比10.3%増の27,178百万円(前連結会計年度末は、24,650百万円)となり2,528百万円増加いたしました。この主な要因は、前年度末に比べ、支払手形及び買掛金の増加1,638百万円に、繰延税金負債の増加562百万円を加味したことによるものであります。
純資産については、前年度末比6.6%増の29,358百万円(前連結会計年度末は、27,529百万円)となり1,828百万円増加いたしました。この主な要因は、為替換算調整勘定の増加888百万円及びその他有価証券評価差額金の増加422百万円に、親会社株主に帰属する当期純利益計上等に伴う利益剰余金の増加190百万円を加味したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末51.6%から50.6%となりました。
(経営成績の状況)
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類へ移行されるなど、経済活動の正常化に向けた動きが見られました。一方、海外におきましては、ウクライナや中東情勢をはじめとする地政学的リスクの高まりや、世界的な原材料・エネルギー価格の高騰、円安による物価上昇の継続など、先行き不透明な状況が続いております。
当社グループの関連するトラック製造業界は、世界的な半導体不足などの部品不足の影響を受けた状態から回復し、普通トラック(積載量4トン以上)の国内登録台数は、67,619台と前年度比22.9%の増加となりました。また、アセアン向けを中心とした輸出は堅調に推移いたしました。一方、中国においては不動産業の不振などから、中国経済全体の先行き不透明感は長期化が見込まれ、厳しい状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループの当連結会計年度における売上高は56,659百万円(前年度比5.9%増)となりました。損益面におきましては、営業利益は903百万円(前年度は営業損失628百万円)、経常利益は841百万円(前年度は経常損失623百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益332百万円(前年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,065百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
日本における売上高は、31,256百万円(前年度比1.8%増)、営業利益は、152百万円(前年度は営業損失425百万円)となりました。半導体などの部品不足の影響から回復したものの、一部完成車メーカーの受注減の影響を受け、売上は横ばいとなりました。一方、原材料及び燃料価格高騰による、コスト上昇については、販売価格への転嫁も見られ、営業利益増加の要因となりました。
アジアにおける売上高は、19,804百万円(前年度比8.0%増)、営業利益は、1,002百万円(前年度比7.1%増)となりました。タイにおいては、金利上昇やインフレの影響により需要が減退しているものの、新規商権の獲得により売上が増加しました。インドにおいては、政府による積極的なインフラ投資による好調な内需により、堅調に推移いたしました。
中国における売上高は、5,923百万円(前年度比40.9%増)、営業損失は、69百万円(前年度は営業損失728百万円)となりました。インフラ投資や不動産投資の停滞等が続いている中、売上は昨年対比回復は見られますが依然中国経済は不動産不況による景気低迷により、不透明な状況が続いております。
北米における売上高は、4,178百万円(前年度比1.1%減)、営業損失は、34百万円(前年度は営業損失449百万円)となりました。受注は昨年度同様であったものの、材料等のコスト上昇分の価格転嫁やコスト削減が進み、営業損失が大幅に減少しました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,254百万円となりました。なお、当連結会計年度における連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、3,163百万円(前年度は2,539百万円の収入)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益1,166百万円に減価償却費3,186百万円、仕入債務の増加1,395百万円及び売上債権の増加1,612百万円を加味したことによるものであります。
(投資活動におけるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,521百万円(前年度は3,847百万円の使用)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出3,411百万円及び投資有価証券の売却による収入594百万円によるものであります。
(財務活動におけるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、372百万円(前年度は958百万円の収入)となりました。この主な要因は、短期借入金及び長期借入金の有利子負債が合計で159百万円減少したことと配当金の支払額141百万円によるものであります。
(キャッシュ・フローの指標)
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|
第84期 2020年3月 |
第85期 2021年3月 |
第86期 2022年3月 |
第87期 2023年3月 |
第88期 2024年3月 |
|
自己資本比率(%) |
51.2 |
52.7 |
55.4 |
51.6 |
50.6 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
27.1 |
26.0 |
20.9 |
15.2 |
19.0 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
2.7 |
1.5 |
1.7 |
3.5 |
2.9 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
17.9 |
31.2 |
31.4 |
12.5 |
10.7 |
(注)上記各指標の算式は次のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー / 利払い
③生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年度比(%) |
|
|
日本 |
ブレーキ(百万円) |
14,373 |
15.0 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
17,289 |
0.6 |
|
|
アジア |
ブレーキ(百万円) |
3,720 |
△2.0 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
15,816 |
10.0 |
|
|
中国 |
ブレーキ(百万円) |
2,033 |
26.9 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
129 |
78.6 |
|
|
北米 |
ブレーキ(百万円) |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
4,281 |
3.4 |
|
|
合計(百万円) |
57,644 |
7.4 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.自動車部品等製造事業はブレーキ、エンジンコンポーネント他で構成されており、これらの業務の意思決定は地域別に一括して決定しております。
ロ 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||||
|
受注高 (百万円) |
前年度比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年度比(%) |
||
|
日本 |
ブレーキ |
15,044 |
6.9 |
989 |
3.9 |
|
エンジンコンポーネント他 |
13,793 |
△10.2 |
907 |
△9.0 |
|
|
アジア |
ブレーキ |
3,012 |
△14.3 |
421 |
△51.2 |
|
エンジンコンポーネント他 |
15,235 |
10.6 |
1,076 |
△63.3 |
|
|
中国 |
ブレーキ |
2,917 |
61.5 |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他 |
143 |
46.8 |
14 |
△31.4 |
|
|
北米 |
ブレーキ |
- |
- |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他 |
4,154 |
△1.4 |
- |
- |
|
|
合計 |
54,302 |
2.8 |
3,409 |
△40.9 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.自動車部品等製造事業はブレーキ、エンジンコンポーネント他で構成されており、これらの業務の意思決定は地域別に一括して決定しております。
ハ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年度比(%) |
|
|
日本 |
ブレーキ(百万円) |
14,838 |
9.0 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
14,885 |
△6.5 |
|
|
アジア |
ブレーキ(百万円) |
3,480 |
△2.9 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
15,762 |
11.1 |
|
|
中国 |
ブレーキ(百万円) |
3,061 |
61.4 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
455 |
342.5 |
|
|
北米 |
ブレーキ(百万円) |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
4,174 |
△0.9 |
|
|
合計(百万円) |
56,659 |
5.9 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.自動車部品等製造事業はブレーキ、エンジンコンポーネント他で構成されており、これらの業務の意思決定は地域別に一括して決定しております。
3.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
4.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 自 2022年4月1日 至 2023年3月31日 |
当連結会計年度 自 2023年4月1日 至 2024年3月31日 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
いすゞ自動車株式会社 |
10,237 |
19.1 |
10,002 |
17.7 |
|
三菱ふそうトラック・バス 株式会社 |
4,650 |
8.7 |
5,158 |
9.1 |
|
日野自動車株式会社 |
1,757 |
3.3 |
2,249 |
4.0 |
|
株式会社小松製作所 |
1,863 |
3.5 |
1,768 |
3.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、日本セグメントでは、半導体不足により売上が見込よりも伸長しなかったこと、原材料・エネルギーコストの高騰、原材料等のコスト上昇に対する価格転嫁の遅れにより増収減益となりました。アジアセグメントでは、タイにおいては、国内・輸出向とも堅調に推移し、インドにおいては、主要顧客向けの売上増により、アジアセグメントは増収増益となりました。中国セグメントでは、インフラ投資や不動産投資の停滞等により需要が引き続き停滞しており、減収減益となりました。北米セグメントでは、引き続き需要は堅調に推移したことと材料比率の良化により減益幅は縮小しました。
ブレーキ部門の売上高は、前連結会計年度に比べて976百万円増(前年度比5.1%増)の20,075百万円となり、エンジンコンポーネント他部門の売上高は、前連結会計年度に比べて2,159百万円増(前年度比6.3%増)の36,583百万円となりました。
主な販売先別の状況につきましては、いすゞ自動車株式会社に対する売上が、前連結会計年度に比べて234百万円減(前年度比2.3%減)の10,002百万円、三菱ふそうトラック・バス株式会社に対する売上が、前連結会計年度に比べて508百万円増(前年度比10.9%増)の5,158百万円、日野自動車株式会社に対する売上が、前連結会計年度に比べて492百万円増(前年度比28.0%増)の2,249百万円、株式会社小松製作所に対する売上が、前連結会計年度に比べて95百万円減(前年度比5.1%減)の1,768百万円となりました。
売上原価につきましては、前連結会計年度に比べて1,526百万円増(前年度比3.1%増)の50,678百万円となり、売上高に占める売上原価の割合は、前連結会計年度に比べて2.4%減の89.4%となりました。その要因として、材料市況高騰による材料費の増加・原油価格高騰に起因するエネルギーコストの上昇による動力費の増加によるものであります。
販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べて77百万円増(前年度比1.6%増)の5,078百万円となりました。増加の主な要因は、運搬費、支払手数料等の費用増加によるものであります。
営業外損益につきましては、61百万円の損失(前年度は5百万円の利益)となりました。減少の主な要因は為替差益の減少によるものであります。
特別損益につきましては、324百万円の利益(前年度は66百万円の損失)となりました。これは、投資有価証券売却益及び受取保険金の計上が主な要因であります。
税金費用につきましては、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額などを加えた金額は、前連結会計年度では1,270百万円の費用となっておりましたが、当連結会計年度におきましては765百万円の費用となりました。これは、法人税、住民税及び事業税として361百万円を計上する一方で、繰延税金資産を計上したことによる法人税等調整額として403百万円の費用を計上したことによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料の購入費用及び製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は9,082百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,254百万円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じ割引前将来キャッシュ・フローの総額が減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
第15次中期経営計画初年度の2022年度において、世界的な資源価格の高騰、急激な円安の進行という外部要因に加え、外部顧客への価格転嫁の遅れという内部要因を受け営業利益赤字というスタートになりました。
折り返し点にあたる2023年度においては、重要テーマとして掲げていたプライム市場への上場維持を断念し、スタンダード市場上場の選択申請を行いましたが、各経営戦略・経営目標については当初計画を据置として取組んでまいりました。前述の外部要因については依然として継続しておりますが、北米事業の合理化改善・国内事業の経営統合の実行・価格転嫁の実行などの内部要因については確実に実行できたことで営業利益黒字を実現できました。
中期経営計画最終年度の2024年度においては、北米事業の黒字化実現・経営統合効果の最大化により経営目標の達成を目指しておりましたが、国内では各社バックオーダー解消と新型へのモデルチェンジ前の駆け込み需要が終息した事、海外ではタイにおけるローン審査厳格化等に伴う需要減により国内外共に減収が見込まれます。また、中国事業の回復も想定より遅く当初目標から大きく需要減となります。
その結果として、中期経営計画最終年度となる2025年3月期には、「連結売上高540億円」、「連結営業利益10億円」、「連結営業利益率1.9%」、「ROE1.4%」を目標財務指標としております。
(1)技術提携契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
エアディスクブレーキ |
エアディスクブレーキの共同開発に関する技術提携 |
2019年4月3日 発効日より10年 |
(注)ロイヤリティの支払いについては、対象品目に応じて純売上高の一定率を支払う契約となっております。
(2)技術援助等を与えている契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
当社 |
TBKK(Thailand) |
タイ |
自動車用ブレーキ、カムシャフト、オイルポンプ、ウォーターポンプ、その他エンジン部品 |
1 工業所有権の実施権の設定 2 技術情報の提供 3 製造権及び販売権の許諾 |
2015年6月23日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
大型車両用ブレーキ |
-同上- |
1994年1月14日 量産時より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Full Win Developments Ltd. (注)2 |
中国 |
ブレーキライニング |
-同上- |
2002年8月1日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Changchun TBK |
中国 |
商用車用ブレーキ摩擦材 |
-同上- |
2016年7月25日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
TBK America, |
米国 |
自動車用ウォーターポンプ、オイルポンプ |
-同上- |
2006年11月15日 頭金支払い後10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
電磁式リターダ |
-同上- |
2010年9月30日 販売開始日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
TBK India |
インド |
自動車用ウォーターポンプ、オイルポンプ |
-同上- |
2011年6月28日 新製品量産時より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Changchun FAWSN (注)2 |
中国 |
商用車用ブレーキ |
-同上- |
2012年7月5日 量産時より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
自己発電型リターダ |
-同上- |
2014年4月30日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Hindustan Composites Limited (注)2 |
インド |
商用車用ブレーキ摩擦材 |
-同上- |
2017年8月31日 発効日より7年 以後2年ずつ自動更新 |
(注)1.ロイヤリティの受取りについては、対象品目に応じて純売上高の一定率を受け取っております。
2.ロイヤリティの受取りについては、対象品目に応じて純売上高の一定率を受け取る契約となっております。
(3)吸収合併契約
当社は、2023年9月26日開催の取締役会において、当社の連結子会社である東京精工株式会社及びティービーアール株式会社を吸収合併することを決議し、2024年1月1日付で吸収合併いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループの研究開発活動は環境と安全、省資源・省エネルギーを追求することを重点に自動車用・建設機械用のブレーキとポンプの先端技術の開発と将来の柱となるべき商品の開発を、セグメント別では「日本」及び「アジア」において行っております。
現在、研究開発は、当社の第一、第二、新製品開発部、実験部及び事業戦略部により推進されており、研究スタッフは79名で、グループ総従業員の約4.2%が従事しております。当連結会計年度の研究開発費総額は
①ブレーキ部門
国内商用車メーカー全社に採用されました当社ドラムブレーキは大幅に軽量・低コスト化し、次世代モデルとして展開拡大を図っております。また、ディスクブレーキは次期ブレーキの1つとして開発を進めており、当社独自開発のパッド、ロータを含めて信頼性の高い商品をご提供できる様に開発を進めております。新興国向けのドラムブレーキも構造合理化を行い、幅広いニーズに対応できる様、開発を進めております。
さらに、安全性向上、環境対応、省エネルギー対応を主眼とした研究・開発に注力し、将来への継承技術を蓄えております。当連結会計年度の研究開発費総額は463百万円であります。
②エンジンコンポーネント他部門
小型、中型、大型トラック・バス用エンジンのウォーターポンプとオイルポンプは、多くの国内外の得意先の性能向上、信頼性向上及び原価低減の要求に対応し、商品の改良・開発を推進し実績をあげております。
また、建機・産機向けOEMエンジンにおいても、欧州 排ガス規制Stage 5への対応を完了し、アジア圏の排ガス規制 中国4次(GB4)、インド5次(BS5)に向けた製品の開発を進めております。
さらに、海外メーカー向けに新規にウォーターポンプとオイルポンプの受注を獲得し、開発を進めております。
また、電動ポンプについても量産化しており、カーボンニュートラルへの取り組みとして新しい用途の要求に対し研究開発を推進しております。
また、これら技術を中心とした商用車向けサーマルマネジメントシステムの開発も進めております。
その他については、リターダは、サスティナブルの観点からのブレーキ摩耗紛抑制対応と、安全性の観点からの補助ブレーキとして中型・大型トラック用に採用いただいております。
さらに、FC商用車に適した補助ブレーキとして小型トラック用に採用をいただいており、さらに拡販を進めてまいります。
リターダ技術を進化させ、回生技術を取り込んだ自己発電型リターダ、その技術にインバータと燃費およびバッテリー制御を取り込み駆動力のアシストを付加した“エンジンアシストシステム(マイルドハイブリッドシステム)”の開発を進め、商用車・建産機のエンジンの燃費向上や出力向上に貢献する商品として、拡販を進めてまいります。
その設計・評価技術ノウハウを活用してe-Axleの開発にも取り組んでいます。
さらに、大型商用車のエアブレーキを扱っているがゆえにわかるエアマネージメントノウハウを活用した電動エアコンプレッサーの開発にも取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発費総額は707百万円であります。また、このうち新商品の開発に係る金額は129百万円であります。