文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものである。
(1) 企業集団の経営戦略
当社は、1909年の創業以来、わが国における段ボール産業のパイオニアとしての誇りと、業界のトップメーカーとしての地位を保ちながら、広くユーザーを開拓し、技術力を高め、新しい需要を創造し続けてきた。
現在、当社グループの事業領域は、板紙から段ボールまでの強固な一貫生産体制に、紙器や軟包装、重包装が加わり、国内外で多様なパッケージング・ソリューションを生み出している。当社グループは、高い倫理観と公正な経営姿勢をもって経営資源を効率的に活用のうえ、収益力の向上と企業価値の極大化に努め、株主・取引先・従業員・地域社会などさまざまなステークホルダーとの良好な関係を構築し、あわせて適正かつ魅力ある還元を行うことにより広く社会に貢献していきたいと考えている。
同時に、地球環境保護の観点より企業レベルでの対応が要求されている環境経営についても、全社的な取組みを行っている。
当社グループが目標とすべき重要な経営指標は次のとおりである。
・売上高経常利益率: 6%以上
・D/Eレシオ : 1.5倍以下
なお、当連結会計年度においては、売上高経常利益率5.3%、D/Eレシオ1.0倍である。
当社グループは、「製紙」「段ボール」「紙器」「軟包装」「重包装」「海外」の6つのコア事業を中心に多彩な事業を展開し、包装全般にわたり幅広くソリューションを提供してきた。今後も、たゆまぬ意識改革とイノベーションを通じて、産業全般に積極的に働きかける提案型の企業集団「ゼネラル・パッケージング・インダストリー」=GPIレンゴーを目指していく。また、当社グループは、コア事業および周辺事業において、ユーザーオリエンテッド(顧客志向)を基本方針とし、より高い品質とサービスを提供することによる顧客満足度の向上に努め、持続的な成長を図っていく。
製紙事業については、需要に見合った供給体制の維持に努めるとともに、生産性の向上、コスト削減、新製品の開発に、継続的に取り組んでいる。
段ボール事業については、グループ全体での営業力の強化、最適な生産体制の構築を進めている。また、お客様のニーズにお応えする「提案型営業」へ積極的に取り組み、競争力向上に努めている。
紙器事業については、求められる機能に対応する最適なパッケージを提供するとともに、これまで蓄積してきた知識、技術を集結して、新時代のパッケージづくりを追求していく。
軟包装事業については、当社子会社である朋和産業株式会社およびアールエム東セロ株式会社(2024年4月にサン・トックス株式会社と三井化学東セロ株式会社のパッケージソリューション事業を統合し、社名変更)を中心に展開している。お客様の要望にお応えできる高機能な製品を、最新の設備で提供し、当社グループの軟包装事業のさらなる競争力と収益基盤の強化を図っていく。
重包装事業については、当社子会社である日本マタイ株式会社を中心に展開している。当社グループにおける相乗効果を追求すると同時に、お客様の商品の価値を高める重包装製品を提供し続けるために、社会の変化に対応する技術革新に取り組んでいく。
海外事業については、今後の成長分野として事業の拡大を図ると同時に、「選択と集中」による経営資源の有効活用を目指した施策にも、積極的に取り組んでいく。中国・東南アジアでの事業展開を強化するとともに、当社グループが近年拠点を拡充しているヨーロッパや北米等の地域についても、トライウォールグループを通じて新しい展開を推進する。
当社グループは、各コア事業と周辺事業の総力を結集し、お客様の包装に関わるプロセス全体に対して、最適なソリューションを提供することにより、企業価値の向上に取り組んでいく。
また、環境負荷の低減、社会貢献活動への取組みといった、企業が果たすべき社会的責任についても積極的に遂行し、さまざまなステークホルダーの信用と信頼に足る企業グループとなるべく、鋭意努力していく。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後のわが国経済は、雇用・所得環境が改善に向かう中で緩やかな回復が期待される一方で、国際社会における地政学リスクの高まりや世界的な金融引締め、中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが景気を下押しするリスクとなる可能性がある。
このような状況のもと、揺るぎない経営基盤を構築するために、以下の課題に対し、グループ全体で取り組んでいく考えである。
① 製品の適正価格の維持
当社グループは、板紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装など、それぞれの製品において、継続的なコスト削減努力や製品の品質向上、安定供給の取組みと同時に、需要に見合った生産および設備能力の実現を目指し、再生産可能な適正価格水準の維持に尽力する。
② 環境問題への取組みの強化
当社グループは、地球環境の保全に配慮した経営を実践することが、企業の持続的発展には不可欠であるという認識に立ち、全力をあげて環境保全活動に継続的に取り組んでいく。
また、環境負荷の小さい製品の研究・開発および設計に努め、環境配慮製品を提案・推進していく。
③ コスト競争力の強化
製造コストおよび物流コストの低減や生産性の向上については、産業界全般にわたる課題でもある全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)改善の観点を踏まえ、従来からの取組みに加え、新たな発想で諸問題を創造的に解決するためのプロジェクトチームを必要に応じ発足させ、活動している。
④ グループ経営の強化
コア事業、その他周辺事業ともに、当社各事業部門を軸とし、グループ各社との連携強化へ向けての取組みを加速していく。その一環として、「グループ経営会議」と、その分科会である「営業戦略部会」および「財務戦略部会」を設置し、情報と戦略の共有を図り、グループ全体の業容の拡大とともに、財務体質の改善に取り組んでいく。
⑤ 海外事業の拡大と収益向上
今後の成長に向けた原動力として、新たな海外への事業展開を検討していく。また、既存の海外事業においては、これまで培ってきた国内外でのネットワークの有効活用による日系企業、多国籍企業との取引拡大、および現地化を推進するとともに、「選択と集中」をキーワードとして、経営資源の配分を見直し、収益の向上を図っていく。あわせて、グローバルなフィールドに対応した人材育成に取り組んでいく。
⑥ DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進
当社グループは、最新のデジタル技術を活用し、製造・物流・営業・管理の各方面で、業務の効率化、新たな付加価値の創造、働き方改革への対応を進めていく。代表取締役社長を委員長とする「DX推進検討委員会」を設置し、全社ビジネスの各フェーズのデジタル化を俯瞰的、横断的に検討し事業プロセスの進化を図る。同時に、情報セキュリティ対策の強化やDX人材育成にも取り組んでいく。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものである。
(1) サステナビリティについてのガバナンス
当社グループは、気候変動などの地球環境問題、人権の尊重、従業員の健康・安全、公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しており、これらの課題に積極的に取り組んでいる。
あわせて、経営品質の向上と将来のリスクの低減あるいは回避などを目的に、代表取締役会長を委員長とするCSR委員会を設置し、コンプライアンス、環境、災害、品質、情報等に係るリスク管理については、各担当部門およびCSR委員会の下部組織である倫理、環境、安全衛生、CS(顧客満足)、広報、情報セキュリティの6つの委員会が協力して、社内規程の制定、マニュアルの作成等を行うとともに、グループ全体の状況の監視を行っている。
取締役会は、これらの取組み状況について、各部門を管掌または担当する取締役および各委員会の委員長から報告を受けるとともに、必要に応じて改善策等を審議、決定している。
コーポレートガバナンス体制図(2024年6月27日)

(2) マテリアリティ(重要課題)とその取組
当社は、当社グループが取り組む重要課題について、国内外のガイドラインやイニシアティブに含まれる社会的課題との関連性が高いもののうち、ステークホルダーにとっての重要度、当社グループにとっての重要度の双方が特に高いと考えるものを「マテリアリティ」としている。


(3) 環境への取組
① 2050年に向けての環境の取組
当社グループは2021年、優先的に取り組むべき環境に関わる6つの重要課題を特定し、あわせて課題解決に向けた中長期の環境目標として、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロへの挑戦を掲げた長期目標「レンゴーグループ環境アクション2050」および2030年度までの中期目標「エコチャレンジ2030」を策定した。環境マテリアリティを特定して3年が経過した現在、環境課題の多様化やステークホルダーの期待など外部環境の変化と、当社グループの事業領域拡大を踏まえて、環境マテリアリティの見直しを進めている。
持続可能な社会の実現と当社グループのさらなる価値向上を目指して「エコチャレンジ2030」の目標達成に向けて取組みを進めていく。
② エコチャレンジ2030
2030年度を達成年度とする「エコチャレンジ2030」では、当社グループの6つの重要課題に対応する具体的な目標を設定し、取組みを進めている。2023年には、「脱炭素社会の形成」「循環型社会の形成」「水リスクの管理」の3つの重要課題への取組みをさらに強化するため、2024年度からの指標・目標の改定を行った。これらの新たな目標を達成するため、環境投資に概算700億円を組み込む。
「エコチャレンジ2030」指標・目標の改定内容
・脱炭素社会の形成
対象ガスおよび対象範囲を拡大し、国内グループ会社一体となって温室効果ガス排出量の削減に取り組む。
・循環型社会の形成
板紙の古紙利用率の目標を引き上げ、あわせて未利用材の利用拡大を目指し、資源の有効利用に取り組む。
・水リスクの管理
水使用量の削減目標を新たに設定し、国内グループ会社一体となって水リスクの低減に取り組む。
エコチャレンジ2030(2024年4月改定:改定部分のみ抜粋)
※1 国内連結子会社の子会社を除く
※2 「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(省エネ法)
※3 「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく調整後温室効果ガス排出量
※4 水使用量÷売上高
エコチャレンジ2030 2023年度の実績
※1 国内連結子会社の子会社を除く
対象企業:レンゴー㈱、大和紙器㈱、セッツカートン㈱、東海紙器㈱、日之出紙器工業㈱、RGコンテナー㈱、アサヒ紙工㈱、㈱朝日段ボール、㈱金羊社、丸三製紙㈱、大興製紙㈱、大阪製紙㈱、朋和産業㈱、サン・トックス㈱、㈱タキガワ・コーポレーション・ジャパン、日本マタイ㈱、レンゴー・ノンウーブン・プロダクツ㈱(2024年3月31日時点 17社)
※2 国内海外連結子会社の子会社を除く
※3 トラック輸送におけるCO2排出量÷販売量
③ 温室効果ガス排出量の削減
気候変動問題への対応は、世界共通で取り組むべき喫緊の課題となっている。当社グループは、脱炭素社会の形成を環境経営の最重要課題と捉え、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減に積極的に取り組むとともに、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減に努めている。
「エコチャレンジ2030」では、温室効果ガス排出量の削減目標として、2030年度までに化石エネルギー起源CO2排出量を2013年度比で46%削減することを目指して取組みを進めている。2023年度は、バイオマスボイラの稼働や自家発電の縮小などにより、化石エネルギー起源CO2排出量は2013年度比で14.5%の削減となった。2024年度からは、当社および国内連結子会社を対象とする温室効果ガス排出量(*)を2030年度までに2013年度比で46%削減することを新たな目標とし、取組みを進めていく。また、2023年11月には、2030年度に向けた国内・海外グループ会社の温室効果ガス削減目標について、SBTi(Science Based Targets initiative)から「1.5℃水準」のSBT認定を取得した。
当社グループは、これらの目標の達成に向けて、徹底した省エネルギー化とともに、石炭・重油ボイラの燃料転換、バイオマスボイラの新設、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入促進に取り組んでいく。
(*)「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく調整後温室効果ガス排出量

④ 気候変動への対応(TCFD提言への取組)
当社グループは、気候変動によるリスクおよび機会に関連する影響評価、対応策の立案と推進に向け、2021年12月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明した。同提言に沿った情報開示として、主要な事業である板紙・紙加工関連事業におけるリスクおよび機会の評価を実施した2022年度に続き、2023年度は軟包装関連事業および重包装関連事業に評価範囲を拡大し、その詳細な結果を含む情報をインターネット(注)等で開示している。
[ガバナンス]
経営品質の向上と将来のリスクの低減あるいは回避等を目的に、代表取締役会長を委員長とするCSR委員会の下部組織として環境経営推進部管掌役員を委員長とする環境委員会を設置している。環境委員会の開催頻度は年4回で、CSR委員会は議事の報告を受けている。CSR委員会に報告される内容は、案件の重要性や緊急度に応じ、適宜取締役会にも連携されており、環境経営に対する監視と指導が有効に働く体制としている。
環境委員会の下部組織である「脱炭素ワーキンググループ」「グループ環境活動会議」では、温室効果ガス排出削減に関する情報収集や当社各部門およびグループ全体の活動計画・進捗状況を管理している。
[リスク管理]
(リスク・機会の特定とマネジメントシステムを通じた対応の枠組み)
当社は重要な環境側面ならびに環境法規制等を考慮の上、環境委員会での審議を経て、環境経営の推進にかかる事業計画上のリスク・機会を特定している。
環境委員会およびCSR委員会では、リスク・機会を特定の上、その発生可能性と影響度を評価するとともに、即時ないし中長期といった対応の時間軸を念頭に取組みの優先順位付けを行い、リスク・機会に対応した事業計画を検討している。また、社内規程の制定、マニュアルの作成等を指揮するほか、グループ全体の状況を監視している。
取締役会では、特定されたリスク・機会の認識を踏まえ、環境経営にかかる事業計画の遂行を監督するとともに、グループ全体の状況を踏まえ、必要に応じて改善策等を審議・決定している。
環境経営推進部は、これらのリスク・機会の認識に則した対応の戦略的枠組みを具体化し、当社各部門およびグループ全体で運用するため、現場人材の育成支援やモニタリング等の運用全般を調整・指導している。当社グループでは、これらのパフォーマンスにおいて改善の機会を特定し、その後のパフォーマンス改善につながる施策を遂行するとともに、その効果をモニタリングするサイクルを継続することで、気候変動に対するレジリエンスの向上に努めている。これらのマネジメントシステムにおいては、その全体にトップマネジメントが関与し、環境パフォーマンスの継続的な改善を指揮することで、当社グループ全体のマネジメントシステムの一つとしての実効性確保を図っている。
[戦略-気候変動関連のリスクおよび機会と対応策]
(シナリオ分析に基づくリスク・機会の特定)
当社は2022年度に主要事業である板紙・紙加工関連事業を対象に、2030年時点における外部環境の予測に基づいたシナリオ分析を実施したことに続き、2023年度は軟包装関連事業および重包装関連事業にシナリオ分析の範囲を拡大した。シナリオについては、パリ協定を踏まえて低炭素経済に移行する1.5℃シナリオと、現状の想定以上の気候変動対策は実施されない4℃シナリオを設定した。
部門横断型ワークショップ等で議論を重ね、気候変動によるリスク・機会の絞り込み、予想される財務影響の把握、対応策の検討を行った結果、4℃シナリオでも、リスク・機会の両面で影響が生じる可能性が確認されたが、低炭素社会への移行が進む1.5℃シナリオでは、移行リスクと機会における影響がより大きくなる可能性が高いとの認識に至った。当社グループでは、各シナリオにおけるリスクおよび機会を考慮し、環境経営を推進している。
(リスク・機会の認識と対応策)
当社ではシナリオ分析に基づき、2030年度において事業継続または利益への影響が懸念される要因として、炭素税の導入をはじめとする政策・法規制の変更や、電力小売価格等の上昇を含む移行リスクのほか、災害の激甚化と頻繁化に伴い施設への影響等が懸念される物理リスクを認識している。
当社グループでは、これらへの対応策として、移行リスクについては、エネルギー転換のための設備投資や財務影響を最小化する適正な製品価格の実現を基本としつつ、工場の稼働や調達の平準化による原燃料価格変動リスクの制御等を図るとともに、物理リスクについては、BCPの策定とその実効性確保、生産拠点における水害対策(嵩上げ、止水板、非常用電源等の設置)を行うほか、有事の際の分散調達も可能とするサプライチェーンマネジメントの強化等を図っている。
また、これらのリスク回避の一方、物流効率化に資する包装設計やグリーンロジスティクス、ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づく低炭素化を戦略的に推進するとともに、一連の取組みに関する情報開示の拡張と深化を図ることで、新たな機会の獲得に努めている。
なお、これらのリスク・機会の認識と対応策の詳細はインターネット(注)等で開示している。
[指標と目標]
当社グループは、2050年を目途とする長期目標「レンゴーグループ環境アクション2050」を掲げ、温室効果ガス排出量実質ゼロの達成を目指している。2021年4月には、2030年度を目途とする中期目標「エコチャレンジ2030」の中で、国内グループ会社を対象とするCO2排出削減目標を制定した。なお、2024年度以降、「エコチャレンジ2030」の排出削減対象は温室効果ガスとしている。また、2023年11月にはSBT(Science Based Targets)認定を取得したことにより、国内・海外グループ会社のScope1、Scope2、Scope3の削減目標が、パリ協定の要求する温室効果ガス削減の目標と整合することになった。これらの目標の達成に向け、脱炭素ワーキンググループにおいて温室効果ガス排出削減のロードマップを策定し、省エネの推進や再生可能エネルギーへの転換等の進捗を管理することで、温室効果ガス排出量の削減を進めている。
(注)詳細情報URL
https://www.rengo.co.jp/sustainability/environment/tcfd/2023/index.html
(4) 人的資本・多様性に関する取組
[戦略]
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は次のとおりである。
当社グループは、人本主義(人間中心主義)を会社経営の柱に据えて、人への投資、人づくりを通して、持続的な成長と生産性向上に取り組んでいる。
人材育成に関しては、優秀な人材を確保し適正に配置したうえ、「現場にこそ真理がある」をモットーに、それぞれの持ち場におけるニーズに対応した職種別や階層別教育を計画的に実施するとともに、グローバル人材の育成、自己啓発の支援といった教育制度を整備・拡充し、自己の成長を実感できる取組みを進めている。
生産性についてあらゆる要素を分析し、技術革新とともに人の働き方、心のありようも意識しながら全要素生産性を高めることに労使一致協力して取り組んでおり、2022年度からは、「生産性とは人間の心の持ちようである」という基本に立ち返り、「心をみがこう」をスローガンとする人づくりの研修を全社展開している。3事業年度にわたって全社員が受講するもので、第一弾は製造現場の係長・主任を対象とした全国研修を、その後は全国事業所や事業所・部門ごと、また階層別・職種別に順次実施して、2024年3月までで参加者は延べ人数で約3,500名となった。特に職場におけるコミュニケーションは、働く人と人を結びつけ、組織力・現場力の源になる重要なものと考えている。さらなる現場力の強化、生産性の向上を図り、人への投資、人づくりにこれまで以上に力を入れている。
多様な人材が互いに尊重かつ受容し、個々の能力を最大限に発揮することによってイノベーションが生まれる企業を目指している。2014年4月に女性活躍推進室を設置して女性が能力をさらに発揮できる企業風土づくりや環境整備に取り組み、2022年4月にはD&I推進室へ改組してダイバーシティ&インクルージョンを推進・強化している。
中でも女性の活躍推進については、「女性の活躍推進に関する行動計画」に掲げる目標の達成はもとより、採用促進と職域拡大に注力し女性比率を高めるとともに、教育・キャリア形成の強化・充実を図っている。さらに、管理職登用についても積極的に取り組み、女性の役員登用につなげていく。
また、生涯現役の考えのもと、2019年4月に導入した65歳定年にあわせて「レンゴーはつらつ健康宣言」を策定し、誰もが健やかで心豊かなはつらつとした生活を実現するために、日々の健康づくりと安全・安心な職場づくりに取り組み、健康経営を実践している。
少子化対策と次世代育成支援の一環としては、第3子以降の出産には100万円の祝い金を贈呈している。制度導入の2006年4月から延べ490名が受給し、子育てを制度面と経済面の両方からサポートしている。
[指標および目標]
当社グループにおける、上記[戦略]において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、提出会社においては次の指標を用いている。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりである。なお、当社グループにおいては事業特性や企業規模が多様であるため、各社の課題に応じた取組みを行っている。
① 女性の活躍推進に関しては行動計画(期間:2021年4月1日から5年間)を策定し、次の目標を掲げている。
1.総合職女性採用比率を3割以上とする
2.業務職女性採用比率を2割以上とする
3.女性管理職数を1.5倍以上とする(2020年度40名 → 60名以上)
4.男性の育児休業取得率を8割以上とする
② 誰もが働きやすい職場環境を整える中で、障がい者の雇用促進や職域拡大に積極的に取り組んでいる。2024年3月時点の障がい者雇用率は2.6%と法定雇用率を満たしている。
③ 2015年より「全要素生産性(TFP)向上による総労働時間削減」に取り組んでいる。年次有給休暇取得促進については、2023年度の取得率は目標とする60%を超えた。引き続き70%に向けて取組みを着実に進めていく。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものである。
(1) 製品需要、市況動向
当社グループの主力製品である板紙、段ボール製品は、国内の景気動向の影響を大きく受ける。景気後退による需要の減少、競争の激化等による市況の悪化要因により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
これらに対し当社グループでは、安定した需要が見込まれる食品向けの受注に加えて、特定業種における需要の減少等の影響を相対的に低減させるべく、幅広い業種の取引先と良好な関係を構築するよう努めるとともに、より付加価値の高いパッケージづくりを通じて、提案型営業を推進することで競争力を高め、リスクの最小化に努めている。
(2) 原燃料価格
当社グループの主要原材料である段ボール古紙の価格は、東南アジアをはじめとする海外の需要動向の影響を受ける。国内における需給バランスに変動が生じた場合には、購入価格の上昇によるコスト増加要因となり、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループにおいては、主に都市ガス、LNG、バイオマスを燃料として利用している。これらの価格は、国際商品市況の影響を受けるため、市況が上昇した場合には、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
これらに対し当社グループでは、生産性の向上や省資源・省エネルギーに資する設備投資等の実施によって原単位の改善、燃料の多様化に取り組み、リスクの最小化に努めている。
(3) 自然災害、疫病
当社グループの製造拠点等が、大規模な地震、台風等の自然災害によって多大な被害を受けた場合、事業活動の中断等により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
また、大規模感染症の流行等によって当社グループの事業活動が中断等を余儀なくされた場合、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
これらに対し当社グループでは、特定の事業所において事業活動の中断等が起こった場合は、全国に展開している製造拠点から製品の供給が行えるよう、供給責任を果たす体制の構築に努めている。
(4) 海外事業
当社グループは、中国、東南アジアならびにヨーロッパを成長市場と位置づけ、板紙・紙加工関連事業、軟包装関連事業、重包装関連事業を展開している。海外進出に対し、当社グループは、リスクを十分に検討したうえで投資の意思決定を行っているが、海外における事業活動については、為替変動リスク、自然災害・疫病等のリスクあるいは国ごとにさまざまな経済的、政治的リスクが存在しており、これらの顕在化により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
これらに対し当社グループでは、早期に適切な対応が取れるよう、グループ各社や当社の担当部門が適時に情報の収集および共有をし、リスクの最小化に努めている。
なお、当連結会計年度の当社グループの海外売上比率は21.3%である。
(5) 金利の変動
当社グループの有利子負債は、当連結会計年度末現在において437,669百万円である。有利子負債については、削減に鋭意取り組んでいるが、金利変動リスクを有しているため、市場金利が上昇した場合には、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(6) 株価の変動
当社グループは、取引先を中心に株式を保有しているが、市場性のある株式においては、各種要因による株価の下落により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループにおける年金資産は、株価水準の影響を受けるため、退職給付費用に変動が生じる。
(7) 為替の変動
当社グループは、製品、原材料および燃料の輸出入取引において、為替変動の影響を受けることがあり、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(8) 事業再構築
当社グループは、企業価値の増大に向けて事業の選択と集中に取り組んでおり、この過程における一時損失が発生し、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(9) 訴訟
当社グループは、国内外で継続して事業活動を行う過程において、知的財産関連、環境関連等の訴訟を提起されるリスクを負っており、訴訟の内容によっては、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
これらに対し当社グループでは、法令順守等のコンプライアンス経営に努めており、役員、従業員のコンプライアンス意識向上のために階層別に研修・教育を実施し、リスクの最小化に努めている。
(10) その他
当社グループは、上記の事項以外にも、予期せぬ事態によるリスクを負う可能性があり、これらの内容によっては、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は、次のとおりである。
当連結会計年度のわが国経済は、物価上昇、円安などさまざまな課題に直面したが、新型コロナウイルス感染症の5類移行や政府による各種政策効果もあり、人流の増加、輸出や企業収益を背景とした設備投資の持ち直し等により緩やかな回復基調が続いた。
このような経済環境の中で、板紙業界においては、段ボール需要の減少、低調な輸出も相まって、生産量は前年を下回った。
段ボール業界においては、通販・宅配分野は好調を維持したものの、幅広い分野で需要が低迷し、生産量は前年を下回った。
紙器業界においては、ギフト関連市場の縮小は続いているが、人流増に伴う需要やPOPなど展示品、販促物向けの回復により、生産量は前年並みとなった。
軟包装業界においては、インバウンドやイベント需要が回復する一方で、物価高による節約志向の影響もあり、生産量は前年を下回った。
重包装業界においては、中国をはじめとする世界的な景気後退の影響を受けて石油化学関連の需要が減少し、生産量は前年を下回った。
以上のような状況のもとで、当社グループは、再生産可能な価格体系に向けての取組みを推し進めるとともに、あらゆる産業の全ての包装ニーズをイノベーションする「ゼネラル・パッケージング・インダストリー」=GPIレンゴーとして、営業力の強化、積極的な設備投資やM&A等を通じ、業容拡大と収益力向上に鋭意取り組んできた。
なお、物流費や労務費の上昇、環境対策や労働環境改善のための設備投資等、バリューチェーン全体にわたるコスト構造の変化に対して自社努力だけでは抗し難い状況となったことから、段ボール、紙器製品について2024年4月納品分からの価格改定に取り組んでいる。
2023年8月、朋和産業株式会社(千葉県船橋市)が株式会社金羊社(東京都大田区)と丸福株式会社(石川県白山市)の水性フレキソ印刷事業を統合・一元化し多様化する軟包装製品のニーズに対応する体制を整備するとともに、10月には、紙器事業の経営効率の向上と競争力の強化を図るため富士包装紙器株式会社(滋賀県蒲生郡日野町)と丸福株式会社が合併(新社名:富士丸福株式会社)した。2024年1月には、愛媛東温工場(愛媛県東温市、松山工場を移転)の操業を開始し段ボール事業の一層の強化を図り、4月には、軟包装事業における一貫体制の拡充を目指しサン・トックス株式会社(東京都台東区)と三井化学東セロ株式会社(東京都千代田区)のパッケージソリューション事業を統合して子会社化(新社名:アールエム東セロ株式会社)した。
また、大興製紙株式会社(静岡県富士市)が事業ポートフォリオの見直しに着手、バイオベンチャー企業である株式会社Biomaterial in Tokyo(福岡県大野城市、2024年4月に子会社化)と提携し、国際航空分野で需要が高まるSAF(持続可能な航空燃料)の原料となる第二世代バイオエタノールの生産実証事業を開始した。
海外においては、2023年4月、トライコー社(ドイツ)が最先端技術を駆使した新工場の建設を決定するとともに、5月には、トライウォール社(香港)が中国に設立した新会社において営業運転を開始、10月にはスペインを中心にポルトガル、モロッコにも事業を展開するジェコインサ社を子会社化するなど、重量物包装資材事業の一層の拡充に取り組んだ。また、同月、インドの段ボールメーカーであるヴェルヴィン・コンテナーズ社の株式を取得(新社名:ヴェルヴィン・レンゴー・コンテナーズ社)し、グローバル戦略のさらなる充実を図った。
ESG経営における環境への取組みは、“Less is more.”をキーワードに掲げる当社グループとして最も優先すべき課題であり、2030年度におけるCO2排出量削減目標「2013年度比46%削減」(エコチャレンジ2030)に向け、石炭使用ゼロを実現すべく、2026年に金津工場(福井県あわら市)、2027年には丸三製紙株式会社(福島県南相馬市)の燃料をLNGに転換する。
また、国際的イニシアティブであるSBTi(Science Based Targets initiative)から東京証券取引所プライム市場における国内製紙会社で初めてとなるSBT(パリ協定が求める水準と整合した企業が設定する温室効果ガス排出削減目標)認定を取得した。
この結果、当連結会計年度の売上高は900,791百万円(前期比106.5%)、営業利益は48,855百万円(同188.2%)、経常利益は47,984百万円(同167.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は33,025百万円(同161.7%)となった。主な内容は次のとおりである。
売上高については、製品価格の改定および連結子会社の増加が寄与したことにより増収となった。
営業利益、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益については、人件費の増加等はあるものの、製品価格の改定および連結子会社の増加が寄与したことにより増益となった。
当連結会計年度の売上高経常利益率については、5.3%と目標を0.7ポイント下回った。これは主に人件費等の固定費の増加によるものであるが、現在、当該コストアップを回収できる適正な製品価格の水準の維持に努めている。なお、当連結会計年度においては、営業外費用として、持分法適用関連会社に関する減損損失を計上している。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。
[板紙・紙加工関連事業]
板紙・紙加工関連事業については、販売量の減少はあったが、製品価格の改定により増収増益となった。
この結果、当セグメントの売上高は510,945百万円(同105.6%)、営業利益は34,966百万円(同244.3%)となった。
主要製品の生産量は、次のとおりである。
(板紙製品)
板紙製品については、段ボール需要の減少により、生産量は2,427千t(同96.2%)となった。
(段ボール製品)
段ボール製品については、幅広い分野で需要が低迷し、生産量は段ボール4,217百万㎡(同97.3%)、段ボール箱3,531百万㎡(同97.9%)となった。
[軟包装関連事業]
軟包装関連事業については、製品価格の改定が寄与し増収増益となった。
この結果、当セグメントの売上高は121,278百万円(同105.0%)、営業利益は4,770百万円(同159.7%)となった。
[重包装関連事業]
重包装関連事業については、石油化学関連需要の減少により減収減益となった。
この結果、当セグメントの売上高は44,348百万円(同98.4%)、営業利益は906百万円(同80.6%)となった。
[海外関連事業]
海外関連事業については、連結子会社が増加したこと等により増収増益となった。
この結果、当セグメントの売上高は189,177百万円(同113.7%)、営業利益は6,781百万円(同112.8%)となった。
[その他の事業]
その他の事業については、運送事業の採算悪化等により減収減益となった。
この結果、当セグメントの売上高は35,041百万円(同99.1%)、営業利益は1,162百万円(同87.4%)となった。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりである。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
当社グループにおいては、紙器機械等一部の事業で受注生産を行っているが、その重要性が乏しいため記載を省略している。
その他の製品については、見込み生産を行っているか、受注生産であっても生産と販売の関連において製品の回転が極めて速く、月末(または期末)における受注残高が少ないため、記載を省略している。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
(注) 当連結会計年度において、海外関連事業の販売実績が著しく増加している。これは、連結子会社が増加したことによるものである。
当連結会計年度末の総資産は、主に現金及び預金、受取手形及び売掛金および有形固定資産の増加により、1,172,515百万円となり、前連結会計年度末に比べ119,377百万円増加した。
負債は、主に長短借入金や支払手形及び買掛金の増加により733,537百万円となり、前連結会計年度末に比べ66,132百万円増加した。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加や、為替レートの変動に伴う為替換算調整勘定の増加により、438,978百万円となり、前連結会計年度末に比べ53,246百万円増加した。
この結果、自己資本比率は36.3%となり、前連結会計年度末に比べ0.9ポイント上昇した。
また、D/Eレシオについては1.0倍となり、目標の1.5倍以下を達成している。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は103,782百万円となり、前連結会計年度末の残高と比べ32,870百万円増加した。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。
営業活動による資金の増加額は89,628百万円(前連結会計年度に比べ43,562百万円の収入の増加)となった。主な内訳は、税金等調整前当期純利益50,290百万円、減価償却費48,761百万円、売上債権の増加25,297百万円、法人税等の支払額8,479百万円である。
投資活動による資金の減少額は76,033百万円(前連結会計年度に比べ15,387百万円の支出の増加)となった。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出63,975百万円、定期預金の純増額11,988百万円である。
財務活動による資金の増加額は17,265百万円(前連結会計年度に比べ2,758百万円の収入の減少)となった。主な内訳は、長短借入金の純増額19,897百万円、社債の発行による収入20,000百万円、社債の償還による支出10,110百万円、配当金の支払額5,977百万円である。
資本の財源および資金の流動性について、当社グループは、資金調達については銀行借入および社債発行により行っている。また、キャッシュマネジメントサービスを国内子会社に導入しており、グループ全体における効率的な資金活用による有利子負債の削減と金融収支の改善を図っている。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いているが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは第5「経理の状況」 1「連結財務諸表等」「注記事項」 (重要な会計上の見積り)に記載している。
当社は、2023年6月29日開催の取締役会の決議を経て、当社の子会社であるサン・トックス株式会社を消滅会社、三井化学株式会社の子会社である三井化学東セロ株式会社を存続会社とする吸収合併を実施すること、および、吸収合併の効力発生後に当社が三井化学東セロ株式会社の株式を取得して同社を子会社化すること等を内容とする統合契約を同日付で締結し、2024年4月1日付で実施した。
詳細は、第5「経理の状況」 1「連結財務諸表等」 「注記事項」(重要な後発事象)に記載のとおりである。
当社中央研究所において、製紙、段ボール、紙器、軟包装および機能材の各事業とその周辺領域に研究開発の中心を置き、地球環境に配慮した独創的で付加価値の高い新商品と新技術の開発を進めている。また、当社パッケージング部門技術開発本部および包装システム開発推進本部において、紙器機械の開発・改良を進めている。さらに、情報システム本部において、新規の情報技術の開発を進めている。
サン・トックス株式会社では軟包装関連事業において、顧客と連携しながら環境に配慮した食品包装用フィルムの新製品開発および品質改良を行っている。
日本マタイ株式会社では国内の重包装関連事業において、江蘇中金瑪泰医薬包装有限公司では海外の軟包装関連事業において、それぞれ安全・環境への配慮と市場の要求に沿って、新製品の開発および品質改良を行っている。
当社グループでの研究開発費の総額は
当社において、CO2排出量削減に向けた段ボール貼合技術および接着剤の開発、白板紙の品質向上技術の開発、ならびにデジタル印刷の周辺技術の開発を進めている。また、生産工程における省人化と生産性向上を目指しDX化の研究を行っている。
さらに当社で使用する紙器機械について、他社にない独自の機械装置・システムの開発を通じて、品質・生産性向上、省力・省エネ、作業環境の改善等に取り組んでいる。当連結会計年度において注力したのは、品質・生産性向上設備としては、全面全数検査装置付き平盤ダイカッタラインの開発で、三田工場に据え付け運用を開始し、さらに同設備を東京工場に2ライン新設した。検査装置としては、印刷情報・罫線情報など検査に必要な情報が入ったPDFファイルと連携できる検査装置の機能拡充や、以前から運用している印刷検査装置の検査精度の向上である。管理装置としては、開発した次世代コルゲータ管理装置のRYCC-DXの水平展開・機能拡充を行った。また、松山工場(愛媛県松山市)の移転先として、愛媛東温工場(愛媛県東温市)を新たに建設、太陽光発電設備およびLNGサテライト設備などを導入し、環境目標「エコチャレンジ2030」に掲げるCO2排出量削減に取り組むとともに、デジタル技術の活用により生産性の向上を図った。
加えて、2022年度より、物流課題対応として製紙工場の物流部門を支援する取組みを継続している。2023年度においては、板紙製品の在庫配置を適正化するためのシステム開発を実施した。
また、生成AIなどの先端技術導入と同時に、既存システムの老朽化を見据え、次期システム基盤へ移行するための事前調査・開発も並行して進めている。
当事業にかかる研究開発費は
当社において、「2R(リデュース、リサイクル)+リニューアブル」を基本とするプラスチックの資源循環に向けた取組みとして、モノマテリアル包材の開発やマテリアルリサイクル技術の開発をグループ会社と連携して進めている。また、海洋プラスチック問題に対応するため、当社で生産しているセロファンや紙と生分解性樹脂などを組み合わせた生分解性と高バイオマス度を有するパッケージシリーズ「REBIOS®(レビオス)」を開発・上市し、拡販に向けてラインアップ拡充や機能性向上に取り組んでいる。なお、セロファン製造の際に発生するトリム屑など端材の再原料化技術の開発も進めている。
サン・トックス株式会社において、主に食品包装に使用される二軸延伸ポリプロピレンフィルム製品ならびに無延伸ポリオレフィンフィルム製品の開発を行っている。サーキュラーエコノミー達成のため、化石原料由来プラスチック削減や温室効果ガス排出低減に向けてバイオマス原料を使用したバイオマスフィルム製品を開発し、市場投入している。顧客やグループ内連携を密にして更なる新規アイテムを継続的に開発している。
当事業にかかる研究開発費は
日本マタイ株式会社において、機能性フィルム、樹脂加工製品、ラミネート製品および重包装製品の開発を行っている。
機能性フィルム・樹脂加工製品においては、既存製品にコーティング技術で機能を付与した製品開発として、「塗装代替フィルム」「自動車フロントガラス用保護フィルム」等を進め、自動車市場を中心とした装飾・加飾分野での製品展開を図っている。そして、機能付与を目的としてコンパウンドマシンも導入し、独自性機能製品の開発を強化している。
ラミネート製品においては、生分解性プラスチック、バイオマス由来のプラスチック案件に加え、モノマテリアル、リサイクルを意識した軽包装製品および紙製品の開発、製品展開を進めている。
当事業にかかる研究開発費は
江蘇中金瑪泰医薬包装有限公司において、主力事業である医薬品向けPTP包装用アルミ箔の水性インキ実用化に向けた生産工程の研究が成功し、上市段階に入った。
また、海外輸入原材料から中国製原材料に切替えを促進するための研究及び製薬メーカー各社から要望される医療医薬用包装材料の課題に対しての研究開発も成功し上市に入った。その他大学とも連携し、ハイバリアコーティング品や易開封性アルミ箔の上市に向けた試験研究を進めている。
当事業にかかる研究開発費は
当社において、木材の主成分であるセルロースを素材とする球状粒子「ビスコパール®」、カラシ・ワサビ成分を用いた天然系抗菌防カビ剤「ワサヴェール」、パルプ繊維内部でゼオライトを高密度に結晶化させた高機能繊維「セルガイア」など、これまでに開発してきた環境と機能を両立した素材を応用した商品開発に取り組んでいる。「ビスコパール®」はセロファンとともに海洋生分解性の国際認証「OK biodegradable MARINE」を取得し、海洋プラスチック問題に貢献するマイクロプラスチックビーズ代替素材として注目されている。さらなる用途拡大を図るべく、研究開発を進め小粒径の「ビスコパール®」の製造技術を開発し、2022年度に年間120tを生産するプラント設備を環境省補助事業として導入し、順調に稼働している。また、当社が有するセロファン製造技術を応用した木材パルプ由来の機能性素材であるセルロースナノファイバー「RCNF®」の事業化を目指し、製造実証、製品ラインアップの拡充、用途開発を進めサンプルワークを行っている。その他、木質バイオマスを用いたバイオエタノール製造技術の開発を進めている。
さらに、2024年問題への対応のため、物流業界では搬送物の多様化が進んでいる。ポストイン化もその一つで、段ボールでの搬送だけでなくフィルムや封筒での出荷輸送が顕著化してきた。これを受け片段で製品をサンドイッチした形態のレンクッションパックを開発した。エアークッションフィルムやラミネート材を塗布されたものでなくコールドグルーとエコプレスバインダーを用いて封函することにより環境面も考慮した優しい包装となっている。比較的小物に適応した包装形態として提案を開始している。
また、サイズ別運賃にも対応可能な高さ可変ランダム封函機を日本で初めて国産開発した。これまでは、長巾寸法固定の高さ可変封函機を海外から輸入し国内展開していたが、本機は複数のケースサイズに対応できる高さ可変機となっている。内容品高さに対して罫線入れやケースカット機構をオリジナル開発し、生産拠点での問題点をできる限り解消する仕様とした。既に複数社からオファーがあり近々に納入を開始していく。
当事業にかかる研究開発費は