第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、企業理念「美道五原則 髪・顔・装い・精神美・健康美」に基づく事業の拡大を図るとともに、事業を通じて社会課題の解決へ向けた貢献を目指しております。  

この基本方針のもと、2024年5月に「中期経営計画~Tsunageru2027~」を発表し、当社グループの果たすべき使命であるミッションを「豊かさと彩りあるライフスタイルを創造し続けます」とし、さらに、2030年をゴールとしたビジョンを「従業員が投資したくなる会社へ」と定めました。当社が持続的な成長をしていくためには、お客様から選ばれ続ける会社でなければなりません。その前提として、日々、お客様やお取引先様と接し、当社の状況を一番理解している従業員が、まず、投資したくなるような会社にならなければならないという思いが、このビジョンに込められております。

 

(2)経営環境及び中期経営計画策定の背景

当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症による社会経済活動の制限が解消され、株価上昇や賃上げ率の上昇等、コロナ禍で激減した外出型消費の回復が期待されております。一方で、不安定な国際情勢による原材料やエネルギー価格の高止まり、急激な物価上昇による消費マインドの低下、生活者の価値観の多様化等、外部環境変化のスピードは一層加速しており、依然として景気の先行きは不透明な状況が続くと想定されます。加えて、コロナ禍の影響による新規顧客の開拓不足、慢性的な各部門における人財不足等、従前からの人的資本に起因する構造改革への対応が喫緊の課題であると認識しております。このような経営環境に対し、新たに対応できる体制を整備するとともに、当社の強みを活かした独自の付加価値を創造し、持続的な成長につなげていくための経営目標として、2025年3月期から2027年3月期を対象とする中期経営計画を策定いたしました。

 

(3)当社のビジネス成長モデル

当社グループは、これまでも企業理念である美道に基づき、対象企業と従業員全員を受け入れる友好的な「Win-WinのM&A」を数多く成功させてきた事業投資会社であります。現在は、和装宝飾事業を中心に、美容事業、DSM事業、教育事業等にリソースを配分しておりますが、本中期経営計画期間においては、独自の技術やノウハウを持ち国内外の経済を支えつつも、後継者不足等に課題がある中小企業を対象とする、「事業承継型M&A」を積極的に推進してまいります。この「事業承継型M&A」においては、これまでのPMIの成功実績で培ってきた知的資産を活かし、経営管理面を全面的にバックアップいたします。対象会社が営業活動により専念し、持てる強みを最大限に発揮することで、当社グループとしての企業価値を向上させてまいります。

 

(4)中期経営計画~Tsunageru2027~

当社グループは、本中期経営計画を「経営基盤のさらなる充実を図る3ヵ年」として位置付け、以下の3つの重点事項を対処すべき課題とし、グループ一体となって取り組んでまいります。

 

①人的資本をより活かす経営

少子高齢化が進む中、採用難や人財の流動化は今後さらに進むと予想されております。当社グループにおいては、全ての価値創造の源泉である「人」が、主体的に仕事に取り組み、個々の能力を最大限に発揮するために、さらなる仕組みと環境の整備が重要であると認識しております。当社グループには、「多様性を受け入れるユニークな企業風土」があります。M&Aを通じて事業を展開してきた結果、出身企業の異なる多様な人財をグループ内に数多く抱えており、当社においては女性社員比率が72.1%と高いことも当社グループの特徴であり、強みであると考えております。

当社グループは、注力する取り組みを「多様な人財の活躍と有機的な結びつきで生産性の向上につなげる」とし、その実現に向けた組織風土と成長環境の改革を、グループ横断で進めてまいります。

 

②既存事業の収益安定化

当社グループには、創業時より構築してきた顧客ネットワークと、そこに蓄積されたノウハウがあります。すなわち、以下の強みがあります。

・対面だからこそ共有できる安心感や信頼感を大切にした接遇

・お客様との永年にわたる取引関係に支えられた営業基盤

・一人ひとりの要望に応え、納得感の高い商品とサービスを提供

当社グループは、注力する取り組みを「全ての事業で店舗運営における課題を解決し、生産性の向上につなげる」とし、その実現に向けて、グループ一体となって取り組みを進めてまいります。

 

③資本コストや株価を意識した経営

当社グループは、株主からの資金や銀行からの借入金を元手に事業を営んでおります。そのため、それら調達コストを上回る当期純利益を安定的に稼ぐことで、株主の期待に応え、持続的な株価向上につなげていくことが重要であると認識しております。

当社グループは、注力する取り組みを収益性の改善、資本効率化、IR活動の強化とし、株価水準の向上を目指してまいります。

 

(5)2027年3月期利益計画・財務目標・利益配分方針

本中期経営計画においては、各事業の収益性の向上を重視し、次の目標を掲げて取り組んでまいります。

 

<利益計画>

・既存事業とM&Aの両輪による利益成長を図り、売上高は175~185億円、 EBITDAは7~8億円の達成を目指す。

 

<財務目標>

・事業収益力を高め、株主資本コストを上回るROEの実現を目指す。

なお、2027年3月期時点における目標は、以下のとおりとする。

EBITDAマージン 5.0% 以上

エクイティスプレッド 7.0% 以上(ROE 15%、株主資本コスト8%)

PBR 2.5倍 以上

 

<利益配分方針>

・安定的かつ継続した株式配当を基本とし、株式価値の向上に資する「人的投資」と「事業成長投資」並びに「自己資本の蓄積」など、バランスを重視した利益配分を計画する。配当性向については、利益配分方針に沿い、また各年度の業績に連動して適切に検討する。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、“持続的成長に向けた「経営基盤のさらなる充実」”を目標に据えるとともに、“人財投資によるGoodサイクルの実現“を目指しております。

当社グループは、ご縁を持つ皆さまとともに持続的に成長するために、サステナビリティ経営の視点を事業の成長戦略に取り入れ、企業価値の向上を図ります。

当社グループは、企業に求められる法的責任、経済的責任、社会貢献を重視し、中長期的な視点で持続的な成長に繋げます。

当社グループの最大の財産は「人」であり、当社グループの今を支え、これからの持続的な成長の源泉である「人財」の多様性をより一層奨励します。

 

◇ガバナンス

 <サステナビリティ推進体制>

当社グループでは、人的資本をはじめとする、企業の持続的成長に係る課題への全社的な取り組みを推進するため、サステナビリティ委員会を設置しております。委員長は代表取締役社長が務めております。また、同委員会は、管理部門担当取締役の他、社外取締役(非常勤)、社外監査役(非常勤)及び委員長が指名した役職員で構成されております。

同委員会では、取締役会に対して、サステナビリティに係る基本方針、指標や目標、施策等の企画・立案・提言を行うとともに、施策の実施状況や目標の達成状況のモニタリング、社内外への周知活動等を行います。

取締役会は、サステナビリティに関する重要な事項についてサステナビリティ委員会から定期的に報告を受け、必要に応じて指示や助言を行うことで、ガバナンスを機能させる体制としております。

 

◇戦略

  人的資本に関する取り組み

 

 当社グループでは、中期経営計画の実行に当たっては、適切なタイミングで必要な人財を採用すること、及び個々人の能力が適切に発揮できる環境を整備することが重要と考えております。そのため、当社グループでは、当社社内で推進する人的資本に関する取り組みと、中長期の事業戦略における取り組みを一体的にとらえ、以下の「人的資本経営方針」を定めるとともに、それに基づく基本戦略として「人財育成方針」及び「社内環境整備方針」を規定しています。

また、経営戦略に則った人事戦略や組織づくりを統括する『グループ横断の”CHRO”機能の強化』を図ることで、従業員個人のキャリア形成を促進する職場環境の整備を実施してまいります。

 

<人的資本経営方針および基本戦略> 

人的資本経営方針 

当社グループは、お客様への新たな価値を提供し続けるために、多様な社員一人ひとりが、個々の能力を十分に発揮し、それぞれの部門で活躍できるよう取り組みます。

人財育成方針  

当社グループは、国籍、性別、年齢等を問わず、多様な社員の一人ひとりに公平に必要な能力開発の機会を提供するとともに、公正な評価と支援を行い、さらなる成長機会を創造します。

社内環境整備方針  

当社グループは、社員一人ひとりの多様な個性や志向を尊重し、個々人が仕事と生活の調和を図りながら、安心して十分に能力を発揮し活躍できるような環境や風土の整備に取り組みます。

 

 

また、上記の基本戦略に基づき、6つのテーマごとに人的資本経営に関する中期的課題、指標および目標を、次の通り設定します。 

 

<テーマ>           <主な中期的課題>

①人財確保           ・競争優位性の為の専門人財の確保  

                ・事業拡大を支える働き手の多様性・柔軟性の推進  

 ②人財育成          ・新入社員の早期育成  

                ・マネジメント人財の充実 

 ③ダイバーシティ推進     ・女性活躍推進分科会の取り組み  

                ・女性が積極的にキャリア形成を目指すことのできる社内体制を構築 

 ④エンゲージメント向上    ・従業員満足度、働きがいの向上  

                ・仕事と生活の調和が取れた働きやすい職場づくり 

 ⑤健康経営          ・社員の心と身体の健康づくり支援  

                ・長時間労働の是正や有給休暇の取得促進

 ⑥労働慣行とコンプライアンス ・法令、規程等の遵守  

                ・主体性に職場環境改善に取り組む組織風土づくり

 

 ①人財確保に関する取り組み

 当社グループにおいては、競争優位性確保のため、既存事業および事業拡大に対応した多様な人財を十分に確保していくことが重要な課題であると考えております。とりわけ当社グループでは、全国で約300カ所の店舗展開を行っており、美容室における技術職(スタイリスト)、学習塾における教務職(教室長・講師)、和装宝飾店舗における営業職(専門販売員)、本社部門における事務職など、必要とする人財は多岐にわたります。

当社グループが属する小売・サービス業は、人財流動化の波が大きい業種であることから、お客様へのサービス品質の維持・向上に併せて、各店舗の特性(業務内容・地域)に応じた競争優位性の確保のためにも、人財の確保は重要な取り組みと認識しております。

 

②人財育成に関する取り組み

 当社グループの中期経営計画の推進に当たっては、背景にある当社の企業理念や経営戦略を理解して行動できるマネジメント層や中堅若手幹部候補の人財育成強化が必要であると考えております。 

現在、各事業部門において実施している業務・専門教育に加えて、グループ合同での年次別・階層別研修の他、若手管理職向けマネジメント研修や次期上級管理職育成プログラムなど、体系的な研修制度の導入を検討し、マネジメント人財の育成にも取り組んでまいります。

 

③ダイバーシティ推進に関する取り組み 

 当社グループの事業を取り巻く環境変化や社会経済状況の変化に迅速かつ柔軟に対応し成長を続けるためには、異なるバックグラウンドを有する人財の多様な視点や価値観を経営に取り入れ、事業創造やサービス変革を進めることが有用であると考えております  

とりわけ当社グループでは数多くの女性社員が在籍し、当社においては女性社員比率が72.1%、女性管理職比率は14.7%、店長級を含めた女性準管理職は23.9%を占めており、それぞれの所属部門において素晴らしい成果を上げ、会社の成長や発展、企業価値向上に貢献しております。

当社グループではこれまでに、育児・介護休業制度や、リ・エントリー(再入社希望)制度、短時間正社員制度など、女性が働き続けやすい、女性が仕事を通じて活躍しやすい環境づくりに取り組んできましたが、より一層、人生の幸せと仕事のやりがいの両立が実現できる環境を整備し、女性が積極的にキャリア形成を目指すことのできる社内体制を構築します。  

その目的達成のため、当社グループでは、サステナビリティ委員会の下に「女性活躍推進分科会」を設け、社外取締役にも助言を得ながら、より良い環境整備と社内体制の構築を進めてまいります。 

 

 

 ④エンゲージメント向上に関する取り組み  

 社員一人ひとりが主体的に仕事に取り組み、能力を最大限発揮するためには、経営理念やミッション・バリュー

 の理解に加えて、事業活動等への理解を深め共感度を高めていくことが必要であると考えております。  

 当社グループでは、従業員を対象とした「エンゲージメント・サーベイ」を実施しており、人と組織の成長に

 向けた強み・弱みや取組課題の把握に努めております。また、抽出された課題をもとに、人事制度や評価制度の見

 直しを行い、採用力の強化・人財定着率の向上、効果的な人財育成などにつなげてまいります。

  また、当社グループでは、取締役および執行役員に対する業績連動型株式報酬制度の運用や、全従業員に対する

 従業員持株会の奨励支援制度の運用を通じ、社員の資産形成サポートを行うと同時に、経営参画意識の醸成にも役

立てております。  

 このほか、業務を円滑に遂行するためには社員同士の相互理解や交流機会を促すことも有益であるとの考えか

ら、タウンホールミーティングや座談会の開催など、社内コミュニケーション活性化に向けた取り組みの検討を行

ってまいります。

 

 ⑤健康経営に関する取り組み  

社員一人ひとりが心身ともに健康で、何事にも情熱をもって挑戦し続けられるよう、安心して働ける環境を整備するため、健康診断やストレスチェック、特定保健指導やインフルエンザワクチン接種補助等のヘルスケアサービスを提供し、社員が心身の健康状態を保ち、能力を最大限発揮できる環境整備に努めております。  

 また、仕事と生活の調和が取れたメリハリのある働きやすい職場づくりを目指し、長時間労働の是正や有給休暇の取得促進にも取り組んでおります。 

 

⑥労働慣行とコンプライアンスに関する取り組み  

 採用・育成した人財が持てる能力を最大限に発揮するためには、信頼関係に基づき、より良い職場環境づくりに継続して取り組む組織風土が重要であると考えております。  

 当社グループでは、コンプライアンス・マニュアルの配布やコンプライアンス通信の定期発行によって、不正や法令違反等の行為を許さない経営メッセージを伝えるとともに、グループ役職員の行動規範を規定し、健全な組織風土の理解浸透に取り組んでおります。また、コンプライアンス委員会を設置し、当社グループにおけるコンプライアンス関連の重要事項の審議、社内の啓蒙・教育等の施策に係る事項を取り決めております。役職員の業務執行状況については、内部監査室が内部監査規程に基づき、業務が適法に運営されていることを監査しております。併せて、不正や違反等の早期把握と解決を図るための内部通報制度の積極的な活用啓蒙に努めており、通報への相談事案を踏まえた職場環境の整備改善に取り組んでおります。

 

◇リスク管理

当社グループでは、サステナビリティに係るリスク・機会が事業活動や収益等に与える影響を把握し、適切に対応するためサステナビリティ委員会において必要なデータの収集と分析を行い、これに基づき取締役会で事業への影響度合い評価を行います。

特定したリスク・機会に対しては、関係部門と連携しながら具体的な対応策や目標を事業戦略に反映し、サステナビリティ委員会にて進捗状況の管理やリスク・機会の再評価を行います。また、その内容を定期的に取締役会に報告することで、継続的な情報収集とリスク管理に努めます。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

 

  人材の育成及び社内環境整備に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績については、上記に掲げた人的資本経営に関する中期的課題の解決に資する内容で、現在サステナビリティ委員会等において検討中であり、出来る限り早期に決定すべく取り組んでいるところであります。

  全ての価値創造の源泉である『人的資本の価値最大化』を図ることで、チャレンジ精神を持つ人財が活躍する企業集団への変革を目指してまいります。

 

その他実績については「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照ください。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 業績変動のリスク

 当社グループの事業は成熟産業に属しており、特に和装品、宝飾品につきましては、高額品のため顧客にとって当社グループの商品を購入することは、多くの場合必要不可欠とは言えません。また、当社グループのターゲット市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。そのほか、消費性向及び商品トレンドの変化により売上高の減少、台風などの気象状況、地震による災害により、売上を見込んでいる時期の業績が伸び悩み、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 法的規制について

当社グループの一部の事業は、和装品、宝飾品、健康関連商品等の訪問販売を行い、「特定商取引に関する法律」の規制を受けており、当社グループとして法令遵守を徹底しております。将来、訪問販売に関する規制を強化するような法改正が行われる等により、家庭訪問による販売体制の効率性を維持できなくなった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 顧客情報の管理について

当社グループは、商品・サービスの販売の過程において多くの顧客情報を取り扱っております。当社グループといたしましては、社内教育による啓蒙や顧客情報の閲覧及び出力について制限を強化するなどのIT統制により、顧客情報管理の徹底に努めておりますが、顧客情報の流出により問題が発生した場合、将来的な事業展開、経営成績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 金利市場の変動について

当社グループは、銀行借入等の有利子負債による資金調達を実施しており、金利情勢、その他金融市場の変動による金利市場の変動の影響を受けております。その結果、当社グループの業績等が悪影響を受ける可能性があります。

 

⑤ M&A等の投資について

当社グループは、M&Aによる事業拡大を重要な成長戦略のひとつとして位置づけております。

M&Aを行う際には、対象会社の財務内容や契約関係等について、詳細なデューデリジェンスを行い極力リスクを回避するよう努めておりますが、M&Aを実施した後に、偶発債務や未認識債務が発生する可能性が考えられます。また、買収時に発生するのれん等については、その超過収益力の効果が発現すると見積もられる期間にわたり償却を行う必要があります。今後、新たにのれんが発生し、その償却費用が増加する可能性があり、また、対象会社の業績が大幅に悪化し、将来の期間にわたって損失が発生する状態が継続すると予想される場合には、減損処理を行う必要が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 感染症拡大によるリスクについて

当社グループは、日本国内のほぼ全域において小売店舗を設け、事業活動を展開しております。感染症の拡大(パンデミック)が国内において発生した場合、小売店舗が閉鎖される等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当期における国内経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和され、個人消費は回復基調が続き、社会経済活動の正常化が緩やかに進みました。一方で、不安定な国際情勢の中、世界的な原材料やエネルギー価格の高騰に加えて、円安の影響による物価上昇、人手不足による人件費の上昇等が懸念され、景気の先行きは依然として不透明な状況が続きました。

このような状況の中、当社グループにおきましては、2022年5月にグループ入りした学習塾を運営する東京ガイダンス株式会社及び同年6月にグループ入りしたリユース事業を展開する株式会社OLD FLIPが期初より売上に貢献しました。さらに、2023年12月には、教育事業として3社目となる学習塾を運営する株式会社灯学舎の株式を取得し、当期は第4四半期から業績に寄与しました。一方で、教育事業及びその他事業を除く既存事業は減収となりました。売上構成比の高い和装宝飾事業については、当初、コロナ禍後の本格的な回復を下期以降に見込んでおりましたが、物価上昇に伴う消費者心理の低下等で顧客単価が減少し、売上高は前年を下回りました。また、利益面については、教育事業の増収効果はあったものの、和装宝飾事業の減収により、前年を下回りました。なお、コロナ禍で抑制されていた採用や人財教育・研修等に積極的に取り組むことで、サービス力の向上を目指し、組織基盤の一層の強化に努めました。

これらの結果、当連結会計年度の連結業績については、売上高は138億37百万円(前期比0.5%減)となりました。また、営業利益は1億円(前期比66.2%減)、経常利益は1億2百万円(前期比64.4%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失については、株式会社OLD FLIPに係るのれんの減損損失34百万円、不採算店舗の減損損失33百万円の計上等により、28百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1億73百万円)となりました。

なお、営業利益につきまして、前期は販管費の一部を特別損失「新型コロナウイルス感染症による損失」へ振替計上しており、前期の特別損失振替前の営業利益40百万円から60百万円の増加となりました。

 

セグメント別の業績は、次のとおりです。

 

・美容事業

美容事業においては、指名制度の導入やメニュー提案等の強化に努めた結果、顧客単価は上昇いたしました。一方で、前期に実施した不採算店舗の閉鎖により、来店客数の減少等の影響があり、売上高は19億31百万円(前期比1.5%減)となりました。損益面では、広告媒体の見直しによる広告費の削減等を進めましたが、売上の減少の影響に加え、従業員の採用及び育成強化による人件費等の増加もあり、セグメント利益は6百万円(前期比69.7%減)となりました。

美容事業では、引き続き、一人当たり生産性の向上や来店客数回復への取り組みの強化、業態・ブランドごとの広告宣伝見直し等を実行し、効果的な顧客獲得に努めてまいります。また、付加価値の高いメニュー提案を強化するとともに、店舗業態の転換や新業態への展開の検討を継続して推進し、収益の拡大を図ってまいります。

 

・和装宝飾事業

和装宝飾事業においては、来店客数及び合同大型展示販売会の来場者数は増加いたしました。一方で、当初、コロナ禍後の本格的な回復を下期以降に見込んでおりましたが、物価上昇が続く中、消費者心理の低下により顧客単価が低下し、売上高は95億79百万円(前期比2.5%減)となりました。損益面では、売上高の減少に加え、採用強化による採用費及び人件費の増加、販売施策の強化による販促費の増加等もあり、セグメント利益は1億38百万円(前期比53.3%減)となりました。

和装宝飾事業では、新しいツールを活用した社員教育を導入し、商品知識の向上、顧客サービス力の強化に向け取り組んでおります。また、時代に沿った店頭商材の導入や「前楽結び着方教室」を通じたきものファン層の拡大を推進するとともに、着る機会の提供として「きもの会」を各店舗、各エリアで積極的に開催しております。引き続き、お客様へのソフトと価値の提供を強化し、顧客満足度の向上を図ってまいります。

 

・DSM事業

DSM事業においては、経営基盤の整備等を図っておりますが、販売員や顧客の高齢化により依然厳しい状況が続いております。今期は前期に拠点の統廃合を実施した影響や販売員稼働数の低下等もあり、売上高は8億68百万円(前期比8.2%減)となりました。損益面においてもコスト管理強化の推進は継続しておりますが、売上高減少による売上総利益の減少は補えず、セグメント損失は49百万円(前期はセグメント損失9百万円)となりました。

DSM事業では、引き続き顧客数を増やすための紹介キャンペーンの実施や休眠顧客の深耕開拓に努めるとともに、提案商品や動員企画の見直しを図り、収益改善に努めてまいります。

 

 

・教育事業

教育事業においては、株式会社マンツーマンアカデミーの安定した学習塾運営による増収に加え、2022年5月付で連結子会社に加わった東京ガイダンス株式会社が期初より寄与するとともに、2023年12月付で株式会社灯学舎が新たにグループ入りいたしました。その結果、売上高は11億50百万円(前期比22.2%増)となりました。損益面では、株式会社マンツーマンアカデミー、東京ガイダンス株式会社がともに順調に推移したことで、セグメント利益は94百万円(前期比116.8%増)と大きく伸長いたしました。

教育事業では、「スクールIE」のブランド特色を活かし、他社との差別化を図るとともに、キャリアアップ研修の充実や様々な育成プログラムなど人財育成にも注力し、さらなる顧客満足度向上につなげ、安定的な収益確保に努めてまいります。なお、株式会社灯学舎は2月決算であるため、当期は第4四半期から連結業績に含まれております。

 

・その他の事業

その他の事業の収益は、株式会社ヤマノセイビングの前払い式特定取引業による手数料収益及び一般社団法人 日本技術技能教育協会の着物着付け教室の運営収益に加え、2022年6月付で連結子会社化した、リユース事業を 営む株式会社OLD FLIPの業績が期初より寄与し、売上高は3億7百万円(前期比31%増)となりました。一方で、損益面については物価上昇による物流費や仕入単価等の上昇があり、セグメント損失は69百万円(前期はセグメント損失40百万円)となりました。

なお、株式会社OLD FLIPにつきましては、将来の回収可能性について見直しを行い、のれんの減損処理を実施いたしました。リユース事業については、コスト構造の見直しによる運営費の抑制、仕入業者の拡充、キャンペーン販売やインターネットを活用した集客力の強化を図り、収益の改善に取り組んでまいります。

 

 

なお、当連結会計年度の仕入実績及び販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

a. 仕入実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

前期比(%)

美容事業(千円)

157,687

98.9

和装宝飾事業(千円)

3,748,507

97.4

DSM事業(千円)

387,038

91.9

教育事業(千円)

34,484

129.1

その他の事業(千円)

69,546

169.6

合計(千円)

4,397,265

97.8

 

(注)  上記の金額は、連結消去前の金額によっております。

 

b. 販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

前期比(%)

美容事業(千円)

1,931,371

98.5

和装宝飾事業(千円)

9,579,704

97.5

DSM事業(千円)

868,881

91.8

教育事業(千円)

1,150,264

122.2

その他の事業(千円)

307,072

131.0

合計(千円)

13,837,294

99.5

 

(注)  セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて7億10百万円減少し86億47百万円となりました。これは主に現金及び預金が5億87百万円減少、商品が22百万円減少、投資有価証券が18百万円減少、繰延税金資産が55百万円減少したことによるものです。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べて6億2百万円減少し74億23百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が65百万円増加し、短期借入金が2億90百万円減少、一年以内返済予定長期借入金が91百万円減少、長期借入金が2億45百万円減少したことによるものです。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ1億7百万円減少し12億23百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失計上による利益剰余金28百万円、配当52百万円、その他有価証券評価差額金26百万円の減少によるものです。

なお、セグメントごとの資産は、次のとおりであります。

 

・美容事業

美容事業の総資産は5億21百万円(前期比15.5%減)となりました。

これは主に、前期に美容事業を営む子会社の株式会社ヤマノプラスへ当社美容事業を譲渡したことにより発生していた、当社に対する未収入金が90百万円減少したことのほか、有形固定資産が25百万円減少、長期未収入金が11百万円増加したことによるものです。

・和装宝飾事業

和装宝飾事業の総資産は46億6百万円(前期比9.9%減)となりました。

これは主に、現金及び預金が2億68百万円減少したことや、グループ預け金が2億15百万円減少、敷金保証金が20百万円減少したことによるものです。

・DSM事業

DSM事業の総資産は1億44百万円(前期比13.0%減)となりました。

これは主に、売掛金が7百万円減少し、未収入金が12百万円減少、敷金保証金が2百万円減少したことによるものです。

・教育事業

教育事業の総資産は5億41百万円(前期比30.7%増)となりました。

これは主に、株式会社灯学舎を子会社化したことにより、現金及び預金が1億18百万円増加、有形固定資産が13百万円増加、敷金保証金が11百万円増加したことによるものです。

・その他の事業

その他の事業の総資産は9億16百万円(前期比5.9%減)となりました。

これは主に、売掛金が12百万円減少、グループ預け金が23百万円減少したことなどによるものです。

 

 

(3)キャッシュフロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5億87百万円減少し22億43百万円となりました。 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、2億9百万円(前期は1億8百万円の支出)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益33百万円、仕入債務が2億9百万円増加、棚卸資産が22百万円減少、前

受金が71百万円減少したことによるものです

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果得られた資金は9百万円(前期は2億19百万円の支出)となりました。

これは主に、差入保証金の回収による収入55百万円、有形固定資産の売却に係る収入14百万円、連結範囲の変更を伴う連結子会社株式の取得による収入48百万円、敷金及び保証金の差入による支出36百万円、有形固定資産の取得による支出32百万円、無形固定資産の取得による支出42百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、8億6百万円(前期は1億29百万円の支出)となりました。

これは主に、短期借入金の減少額2億90百万円、長期借入れによる収入5億円、長期借入金の返済による支出9億43百万円、配当金の支払額52百万円によるものです。

 

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について

①資金需要

当社グループの運転資金需要は、営業活動に係る資金支出では、商品の仕入及び人件費並びに賃借料を始めとする販売費及び一般管理費があります。

また、投資活動に係る需要としては、新規出店や店舗改装費用が発生するほか、事業領域の拡大を図るために事業買収(M&A)等の投資を推進しており、それに伴う資金需要の発生が見込まれます。

 

②財政政策

当社グループは、運転資金につきましては、手許資金及び短期借入金により調達することとしておりますが、グループ内の資金効率化のため、当社と子会社との間で、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、資金余剰状態にある会社から資金需要が発生している会社への資金の流動性を確保しております。

またM&A等の投資に伴う資金については、金融機関からの借入を活用しており、取引金融機関からの資金調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。