第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は、「開発・設計のプロ集団として業界の長期安定と社員の永続的成長を図り技術を通じ社会に貢献する。」の経営理念に基づき、技術者を第一に考えた会社作りに努め、付加価値の高い技術力を顧客に提供してまいりました。

今後も技術者が生涯技術者として活躍していくための環境づくりとプロの技術者の育成を図り、質の高い技術サービスの提供を通じて顧客と共に環境・社会課題の解決を推進し、企業価値向上に努めてまいります。

また様々な分野の顧客に対し、専門性の高いプロフェッショナルサービスを提供するビジネスを中心として拡大を図り、強固な経営基盤を構築していくと共に、持続的成長と社会貢献を目指してまいります。

 

(2)経営戦略等

当社の主要事業である技術サービス事業の中心となるのは人材です。社員一人ひとりに寄り添い、技術者それぞれが成長していけるキャリア形成を支援する企業こそ、真の意味で社員から選ばれ、最終的には顧客から選ばれる強い会社になると考えています。そのためには技術者のベネフィットを追求していくことが重要あり、プロの技術者を育成する教育体制の強化や能力を最大限発揮できる環境の提供、目指すキャリアに即した幅広い分野の受注の獲得、会社と社員のつながりやサポート体制の強化、経済的なメリットの向上に取り組んでまいります。

技術者にとって魅力ある会社作りを進め、当社の技術者の価値を高めていくことで、顧客価値の向上や企業価値・社会価値の向上を目指してまいります。

 

(3)経営環境

①企業構造

当社は単体企業、単一セグメントであり「アウトソーシング事業」以外の事業活動は行っておりません。本社に管理部門を集約し、事業運営の統括を行っております。全国を東日本、神奈川、中日本、西日本に分け、4つの事業部を設置しております。それぞれの事業部は各地域の営業所を統括し、営業活動及び採用活動を管轄しております。

現在の企業体系は、業績の状況や事業運営の状況等から判断し、良好に機能していると考えております。

②市場環境

当社の中核事業であるアウトソーシング事業においては、製造業を中心とした顧客企業が開発投資を継続するなかで、慢性的な技術者不足の状況にあり、顧客企業からの技術者要請は今後も継続していくことが見込まれます。新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に移行し社会経済活動は回復基調にある一方で、資源価格の高騰や物価の上昇などの影響には引き続き注視が必要な状況が続いております。現状では当社への技術者要請は堅調に推移しており、顧客企業や応募者との綿密なコミュニケーションを図り、稼働率の向上及び稼働人員の増加、優秀な技術者の確保に努めてまいります。

③競争優位性

当社は経営理念に基づき、設立当初から技術者を第一に考えた会社作りに努めており、「生涯技術者」「心の福利厚生」をキーワードに掲げた社員満足度を高めるための施策を実施しております。技術者の心に根差した施策が、技術サービスの良質なアウトプットや、優秀な人材の獲得などの効果を生み、顧客満足度の向上と事業成長へとつながっております。今後も時代に合った独自の施策を継続的に展開し、事業の拡大に努めてまいります。

④法改正

当社事業において、経営環境に影響を与える主なものは労働者派遣法や労働基準法が想定されます。平成27年9月30日に改正労働者派遣法が施行され、それまでの特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別は廃止され、すべての労働者派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制となりました。当社は平成30年1月1日に労働者派遣事業の許可を取得し、法令遵守のもと運営を行っております。働き方改革により、平成31年4月1日には改正労働基準法が施行され、時間外労働時間の上限規制の導入や年次有給休暇の一部取得の義務化が実施されました。また、令和2年4月1日において改正労働者派遣法が施行されました。改正の主な概要は派遣労働者の待遇改善に向けた「同一労働同一賃金」の実現が目的となっています。当社では改正内容を関係各所と確認し、必要な手続きと適切な対応を実施しております。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、経営基盤、キャリア形成の支援、財務体質の強化を図る上で、企業規模を拡大することが重要であると考えており、中長期的には社員数1,000名体制を目標としております。

また、当社の目標とする経営指標は売上高と経常利益であり、株主の皆様の期待にお応えするためにも収益力を高め、経常利益率の向上に努めてまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社の主要事業である技術サービス事業の中心となるのは人材です。そのため優秀な技術者の確保とキャリア形成支援が重要であり、多様な働き方に応える受注の獲得が必要です。技術者と顧客に選ばれる強い会社を目指していくために、対処すべき課題は以下のとおりとなっております。

 

①優秀な人材の確保

当社事業を成長させるためには優秀な人材が欠かせません。当社の技術者は従来の組織内での働き方とは異なり、真のプロフェッショナルとして会社という組織を超えて横断的に設計・開発をおこないます。そのため、当社ならではの働き方や価値観、将来の方向性を正しく伝え共感を得る必要があります。社員からのメッセージや動画での解説、採用ツールを駆使して、当社の魅力を伝え積極的で丁寧な仲間づくりを行ってまいります。

②受注の獲得

安定的に受注量を確保することは、高い稼働率を維持するために重要です。また技術者のキャリア形成と多様な働き方に応えるために、幅広い業種や地域の受注を獲得していくことも大切です。全国に営業担当を配置し、顧客に寄り添った密接な対話から技術者ニーズをいち早く把握することに努め、最適な提案ができる社内連携の構築を進めることで、取引先の拡大を図ってまいります。

③キャリア形成支援

社員から選ばれる企業として重要なことは「自らの成長可能性が感じられるか」であると考えています。主体的なキャリア形成が必要でありその環境の整備が大切です。様々なプロジェクトに参画してスキルを高めたい、未経験でも開発業務に携わりたいなど、一人ひとりが思い描くキャリアの実現のために、当社は長期的な視点にたった教育や幅広い業務の確保、働きやすい環境の整備に取り組んでまいります。

 

当社ではこれらの施策を通じて、個々のキャリアアップを図り技術者の価値を高めることこそが、顧客価値の向上にもつながると考えております。経営理念で掲げる「社員の永続的成長」は最優先課題であるため、人材への投資を行いキャリア形成支援企業としての成長を目指してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社のサステナビリティを巡る取り組みについては、経営理念である「開発・設計のプロ集団として、業界の長期安定と社員の永続的成長を図り、技術を通じ社会に貢献する」に基づき、高い技術力と人間力を兼ね備えたプロの技術者を育成し、質の高い技術サービスの提供を通じてお客様と共に環境・社会課題の解決を推進してまいります。

 当社は事業部会を置き、担当役員及び事業部長、必要に応じ管理部門の部長等の出席のもと、毎月1回定期的に各部門に生じたサステナビリティ関連を含む問題等について検討しております。また、本社の管理部門長が出席する本社会議を定期的に開催し、サステナビリティを含む課題についての情報共有を行い、対応を検討しております。事業部会や本社会議で検討された内容は必要に応じて取締役会で報告され、取締役会の意見や助言が取り組みに反映される体制としております。

 

(2)戦略

 技術者が生涯技術者として働きやすい環境の整備を推進して定着率向上を図る一方、新卒及び中途技術者の採用の強化に取り組んでいきます。

 また、技術者の早期稼働、稼働率の安定を目指して、経験豊富な講師による社会人研修や、開発の第一線で活躍してきた技術者が行う長期的な視点での成長を見据えた技術者としての基盤を確立することに重点を置いた技術教育、オンライン研修やリーダー研修を通じて社会へ貢献できるプロの技術者の育成に努めてまいります。

 

 人的資本につきましては、当社は技術者が「生涯技術者」「プロの技術者」として永続的に成長していくことを目指しており、設立当初から人材教育に力を入れています。具体的には、入社時や、入社以降の経験年数に応じて段階別の研修を行い、技術力だけでなく人間力の向上にも注力しています。さらに幅広い業種の顧客に対し技術力を提供している強みを活かし、個々のキャリア形成に即した業務への転換を図るなど社員の能力向上に努めています。

 また、当社にとって、経営基盤や財務体質の強化を図るうえで、企業規模を拡大することが重要であると考えており、技術者の新卒採用、中途採用に力を入れております。当社では新卒や未経験者などを基礎から育成してきた教育実績があり、技術者を目指す人々を支援していく体制が整備されていることから、経験の有無に関わらず、幅広く柔軟な採用を実施しております。また女性の活躍を推進するため、女性社員の採用も積極的に進めるとともに、男性の育児休業取得を促進し、社員が長きにわたって活躍していけるよう誰もが働きやすい環境づくりを目指しています。

 

(3)リスク管理

 当社は事業運営に影響を及ぼす可能性があるリスクについては事業部会、本社会議で対応を検討しております。サステナビリティに関するリスクにおいても事業部会、本社会議で分析、評価を行い必要に応じて取締役会で報告し適切に対応してまいります。

 

(4)指標及び目標

 当社は、開発・設計に関わるあらゆる産業の発展と長期安定を図り、技術を通じた社会貢献を推進するため、幅広い業種や地域へ取引先を拡大することが重要であるとの考えから、以下のとおり社員数を指標とし、中長期的な目標を立てております。

指標

目標

実績(当事業年度)

社員数

1,000人

819人

 

 人的資本につきましては、上記「(2)戦略」において記載した人材の育成及び社内環境整備に関する方針について以下の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

段階別研修の受講割合

80%

69.6%

女性労働者の育児休業取得率

100%

100.0%

男性労働者の育児休業取得率

30%

50.0%

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①顧客メーカーの業績等による影響について

当社の主要顧客はメーカーであり、その技術開発部門などに対して技術サービスを提供しております。国内経済及び世界経済の景気が悪化し、顧客メーカーの業績低迷から、設計開発部門における開発費の削減や、アウトソース活用を抑制した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では新規開拓営業によって様々な業種や企業との取引先拡大を推進しており、年間約200社の顧客との取引実績を有しております。顧客との綿密なコミュニケーションなどから業種や企業毎の情報収集に注力し、状況に応じた戦略的な営業展開を図り、業績に及ぼす影響を最小限にとどめるよう努めております。

 

②法的規制について

当社の事業では、技術者派遣が主要事業となっており、「労働者派遣事業の適正な運用の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「労働者派遣法」という。)に基づいて事業を行っております。当社では関係法令の遵守に努め労働者派遣事業を行っておりますが、労働者派遣法に定める派遣元事業主としての欠格事由に該当した場合や、関係法令に違反するような行為や事象が発生した場合には当該事業の停止を命じられ、事業が営めなくなるリスクがあります。

また、今後新たに法規制の緩和や改正などが行われた場合、当社の事業に不利な影響を及ぼすものであれば、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

令和2年4月1日において改正労働者派遣法が施行されました。改正の主な概要は派遣労働者の待遇改善に向けた「同一労働同一賃金」の実現が目的となっています。当社では改正内容を関係各所と確認し、必要な手続きと適切な対応を実施しており、これによる業績への影響はないと認識しております。今後も、管轄官庁からの情報を漏れなく収集し、適時適法に対応するよう努めてまいります。

 

③競合について

当社が属するアウトソーシング業界において、新規参入や業界規模の縮小などにより、業界内での企業間競争が激化し、同業他社の低価格戦略や取引先からの値下げ要請を受ける可能性もあります。当社は、提供する技術サービス品質の向上を図るほか、戦略的営業・技術教育の推進により、適正な収益を確保しつつ事業の拡大を図るべく努めておりますが、競争の激化により受注が十分に確保できない、又は技術料金の低下等が生じた場合には当社の業績及び財政状態に影響を受ける可能性があります。

なお、当該リスクが顕在化した場合の経営成績等の状況に与える影響の程度につきましては、技術料金は当社事業の重要な構成要素であり、売上高の減少及び利益率の低下が見込まれます。顕在化する可能性の程度は現時点では認識しておりませんが、技術教育の充実による技術者のスキルアップなど、技術サービス品質の向上を図るほか、技術スキルに応じた適正な配属、顧客との継続的な契約条件の交渉を図り、適正な収益を確保しつつ事業の拡大に努めております。

 

④技術者の確保について

当社の事業では、サービスを提供する技術者が重要な経営資源であり、優秀な技術者の確保が事業拡大の必要条件であります。経済環境や雇用環境の変化により、技術者の確保が十分に行えない場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当該リスクが顕在化した場合の経営成績等の状況に与える影響の程度は想定しておりません。日本の雇用情勢は長期的には少子高齢化による生産年齢人口(15歳~64歳)の減少や、急速に進む技術革新によってIT人材不足が懸念されております。当社では、安定して優秀な人材を採用できるよう、時代に合わせた様々な採用活動を行い、技術者第一の会社作りを進めてきた当社の魅力をしっかりと伝えることで、優秀な人材の採用に努めております。また、技術者が生涯技術者として働きやすい環境の整備を継続的に推進し、社員の定着率向上にも努めております。

⑤機密情報や個人情報の情報管理について

当社がサービスを提供するにあたり、顧客企業における機密性の高い情報や、数多くの顧客情報・個人情報を有しております。そのため、当社では全社員に情報管理の重要性を認識させるため指導・教育を行っており、情報の管理・取扱いには細心の注意を払い、厳正な管理に努めております。しかしながら、何らかの事由により、万一機密情報の漏えいが発生した場合、当社の社会的信用への影響や、その対応による多額の費用が発生する恐れがあります。これまでにそのような事実が発生したことはありませんが、発生した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

なお、当該リスクが顕在化した場合の経営成績等の状況に与える影響の程度は想定しておりません。顕在化する可能性の程度は現時点では認識しておりませんが、時代に即した機密情報管理ルールへの更新や社員への機密情報管理教育の徹底、情報システム管理の強化に力をいれ、機密情報の漏洩を未然に防ぐ体制の構築に努めております。

 

⑥取引先業種の偏りについて

当社の顧客企業毎の業種別売上高をみると、自動車を中心とした輸送用機器業界への売上高構成比が高く、依存度の高い業界が不振となるなどの場合には、当社の業績及び財政状態に影響を受ける可能性があります。当社では、新規開拓営業などによって幅広い業種や企業との取引先拡大を推進しており、輸送用機器業界への売上高構成比は、令和4年3月期は31.1%、令和5年3月期は30.7%、令和6年3月期は31.8%と推移しております。なお、顕在化する可能性の程度は現時点では認識しておりませんが、全国に展開する営業所や事業部間の連携を強めた営業展開を推進し、新規開拓営業を中心とした幅広い業種への営業活動を行い、業種の偏りの緩和に取り組んでおります。

 

⑦自然災害等について

予期せぬ地震等の自然災害や事故等により、当社や顧客企業において事業活動の停止などの被害が発生した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

なお、当該リスクが顕在化した場合、経営成績等の状況に与える影響の程度は災害規模等により想定することは困難ですが、売上高の逸失につながる可能性があります。顕在化する可能性の程度は現時点では認識しておりませんが、当社では社員の安否確認体制の構築、定期的な備蓄品の補充や更新、全社員への防災備蓄品の配布、重要データのバックアップなど緊急時における社内体制の整備に取り組み、業績への影響の低減に努めております。

 

⑧感染症の蔓延について

感染症が蔓延し、多くの当社社員の健康が損なわれることによる稼働率の低下や、顧客企業の経済活動が停滞し、業績低迷等による設計開発部門における開発費の削減や、アウトソース活用を抑制した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

新型コロナウイルス感染症については、昨年5月には感染症法上の位置づけが5類感染症へと変更とされ、社会経済活動は回復基調にあります。顧客の製品開発の動きも強まってきており、当社への技術者要請は堅調に推移しております。

今後の感染症の流行状況は不透明ではありますが、当社においては、社員の健康維持に向けた情報発信や不調時のフォロー体制の構築、テレワーク対応などに取り組み、的確な情報収集を行いながら社員と顧客の安全に配慮した対策を継続してまいります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当事業年度において、製造業を中心とした顧客企業では、自動車、半導体、家電、製造装置など、いずれの業種においても製品開発への積極姿勢を維持しており、開発設計技術者の増員に向けた動きは活発でした。当社への技術者を求めるニーズも堅調に推移しました。

当社では、金沢営業所の開設や技術社員への新たな手当の導入などの施策を実施し、技術者のスキルアップと速やかな稼働のための新規顧客の開拓や、適正レートの確保に向けた交渉強化を推進しております。加えて技術者が安心して働いていける社員が中心となる会社づくりに努め、新卒及び中途技術者の採用強化を行っております。

このような状況のなか、技術者数の増加に加え早期稼働の推進によって新卒技術者を含めた稼働が進み、稼働人員は前年同期を上回りました。技術料金は技術者ニーズが更に高まるなかで、継続的なレートアップ交渉により前年同期を上回りました。稼働時間は前年同期と同水準となりました。

また、新たな手当の導入や賞与の増額など技術社員の待遇改善を実施したことで売上原価は増加し、売上原価率は前年同期と比べ1.1ポイント上昇しました。販売費及び一般管理費では技術者採用の促進に伴う費用が増加しましたが、その他経費の減少により全体では前年同期から微増に留まり、販管費率は前年同期に比べ0.4ポイント改善しました。

そして令和5年8月2日に当社創業者であり代表取締役会長兼社長であった田中吉武氏が逝去されたことに伴い、同氏に対する特別功労金を特別損失に計上し、役員退職慰労引当金に係る繰延税金資産の回収可能性の見直しを行いました。

これらの結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(a)経営成績

当事業年度の売上高は5,600,130千円(前年同期比3.4%増)、売上原価は4,365,821千円(同4.9%増)、販売費及び一般管理費は740,131千円(同0.4%増)、営業利益は554,177千円(同4.1%減)、経常利益は550,939千円(同7.0%減)、当期純利益は388,586千円(同3.2%減)となりました。

 

(b)財政状態

(資産)

当事業年度末における流動資産合計は4,541,404千円となり、前事業年度末に比べ307,826千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が336,479千円増加、売掛金が29,171千円減少したことなどによるものであります。

固定資産合計は1,602,616千円となり、前事業年度末に比べ68,153千円増加いたしました。これは主に有形固定資産合計が4,570千円減少、無形固定資産合計が6,019千円減少、投資有価証券が4,078千円減少、繰延税金資産が82,151千円増加したことなどによるものであります。

この結果、資産合計は6,144,020千円となり、前事業年度末に比べ375,980千円増加いたしました。

(負債)

当事業年度末における流動負債合計は1,635,621千円となり、前事業年度末に比べ135,040千円増加いたしました。これは主に未払金が58,503千円増加、未払費用が9,045千円増加、未払法人税等が5,762千円減少、預り金が44,531千円増加、賞与引当金が37,235千円増加、未払消費税等(その他)が8,954千円減少したことなどによるものであります。

固定負債合計は697,828千円となり、前事業年度末に比べ65,361千円増加いたしました。これは主に役員退職慰労引当金が66,309千円増加したことなどによるものであります。

この結果、負債合計は2,333,450千円となり、前事業年度末に比べ200,401千円増加いたしました。

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は3,810,570千円となり、前事業年度末に比べ175,578千円増加いたしました。これは当期純利益388,586千円、剰余金の配当159,008千円、自己株式の取得54,000千円によるものであります。

この結果、自己資本比率は62.0%(前事業年度末は63.0%)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ336,479千円増加し、当事業年度末には3,755,526千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は549,417千円(前事業年度は344,756千円)となりました。これは主に税引前当期純利益494,417千円、役員退職慰労引当金の増減額の増加66,309千円、預り金の増減額の増加44,531千円、未払金の増減額の増加48,931千円、法人税等の支払額193,699千円などによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、得られた資金は1,706千円(前事業年度は△4,463千円)となりました。これは有形固定資産の取得による支出5,473千円、有形固定資産の売却による収入3,724千円、投資有価証券の売却による収入4,078千円などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は214,645千円(前事業年度は170,082千円)となりました。これは自己株式の取得による支出54,151千円、リース債務の返済による支出1,144千円、配当金の支払額159,349千円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

 当社の主たる業務であるアウトソーシング事業は、機械、電気・電子、ソフトウエアの設計開発などの技術提供サービス事業であり、提供するサービスの性格上、生産実績になじまないため、記載を省略しております。

 

(b)受注実績

 当社のアウトソーシング事業はその形態から受注金額と販売金額がほぼ同等となるために、記載を省略しております。

 

(c)販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 令和5年4月1日

至 令和6年3月31日)

前年同期比

アウトソーシング事業

5,660,130千円

3.4%

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであり、将来に関する事項は不確実性を有しており、実際の結果と異なる可能性もありますのでご留意下さい。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)経営成績の分析

当社の当事業年度の経営成績については、売上高は5,600,130千円(前年同期比3.4%増)となりました。増加の主な要因は稼働人員の増加と技術料金の上昇です。稼働人員は技術者数の増加と高い稼働率の維持により増加しました。期末技術者数は新卒及び中途採用数の増加によって前年同期比1.9%増となり、通期稼働率は新卒入社数の増加が影響し94.1%(同1.1ポイント減)と前年同期からは低下したものの、高い稼働率を維持しました。また技術料金は、お客様に技術者の価値をしっかりと説明し、ご理解いただいた上での単価交渉が進捗したことで、前年同期比2.2%増となりました。

また新たな手当の導入や賞与の増額などの社員の待遇改善に取り組み、売上原価は4,365,821千円(同4.9%増)と例年よりも増加しました。

販売費及び一般管理費は、740,131千円(同0.4%増)となりました。前年同期から微増に留まり売上高比率は前年同期に比べ0.4ポイント改善しました。

営業利益は、売上原価増加の影響により554,177千円(同4.1%減)となり、経常利益は550,939千円(同7.0%減)となりました。当期純利益は令和5年8月2日に創業者であり代表取締役会長兼社長であった田中吉武氏が逝去されたことに伴い、同氏に対する特別功労金を特別損失に計上したものの、役員退職慰労引当金に係る繰延税金資産の回収可能性の見直しにより法人税等の税金費用が減少した影響もあり、388,586千円(同3.2%減)となりました。

 

(b)財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

(c)経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因としては、景気動向や市場環境の変化、法的規制、同業他社等の様々なリスク要因があると認識しております。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

(d)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、中長期的には社員数1,000名体制、経常利益率10%の目標を掲げております。当事業年度において、社員数は819名(前年同期比1.9%増)であり目標へ向けて新卒及び中途技術者の積極的な採用を継続してまいります。経常利益率は9.7%(同1.1ポイント減)となりました。今後も利益率の向上を目指してまいります。

なお、当社は技術者のための会社として更なるステップアップを図るため、次期を持続的成長を見据えた新しいステージへの挑戦の年と位置付けています。技術者と顧客に選ばれる強い会社、技術者のキャリア形成を支援する会社へ向け、これまで以上に人的資本投資の強化を図り、技術者価値、顧客価値、社会的価値の向上を目指してまいります。考える力と主体性を磨くプロの技術者教育や、個々キャリア形成を実現するための働きやすさの整備などへ投資を強化し、優秀な技術者の採用と技術サービスの質向上、そして技術を通じた社会貢献へとつなげてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社の資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

資本政策につきましては、内部留保の充実を図るとともに、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させることと、株主様への利益還元を考慮し、実施していくこととしております。

当社の資金需要の主なものは、主たる事業であるアウトソーシング事業に係る人件費のほか、販売費及び一般管理費の採用費、人件費等の事業に係る運転資金であります。

当社は必要となった資金については、主として内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フローによるものを活用しておりますが、安定的な財源確保のため、金融機関からの資金調達は短期借入を基本としております。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は600,667千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は3,755,526千円となっております。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。

なお、当社の財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5[経理の状況]1[財務諸表等](1)[財務諸表]の[注記事項](重要な会計方針)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は、研究開発活動を行っておりません。