文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 経営方針
当社は、「利他利己」というお客様第一の精神のもと、技術と品質に一層の磨きを掛けるとともに、株主、お客様、取引先、従業員をはじめ、社会の信頼と期待に応えられる企業集団を目指している。
(2) 経営環境
当連結会計年度における我が国経済は、長期化した新型コロナウイルス感染症の影響が収まり、社会活動が一段と正常化へ向かい、日経平均株価が平成バブル前の最高値を超えるなど、明るい兆しが見え始めたものの、ウクライナ・中東情勢の長期化、中国経済の先行き懸念などの世界情勢に加え、円安の進行等により、景気の回復に足踏みがみられる状況となった。国内建設市場においては、労務費・資機材の価格高騰が続いたものの、建設投資は前年と比較して増加傾向となり、比較的堅調に推移した。
今後の我が国経済の見通しについては、地政学的リスクに起因した不安定な国際情勢やエネルギーコストの高止まり等に伴う景気への影響が懸念される。国内建設市場においては、地震や自然災害等への対応を背景とした国土強靭化施策の推進等により引き続き堅調に推移するものと予想しているが、建設コストの上昇やゼロ金利が解除されたことなどに伴う企業の投資意欲への影響を注視する必要があるほか、技能労働者の減少や時間外労働上限規制への対応が課題となっている。
(3) 会社の対処すべき課題等
建設業界においては、少子・高齢化社会の到来を背景とした建設投資の縮小や労働人口の減少・高齢化が避けられず、これらへの対応が継続的な課題となっている。また、社会的な要請として、コーポレートガバナンスの強化や脱炭素を始めとしたサステナブルな社会の実現への貢献が求められている。
当社グループが発展を続けていくためには、社会に求められる「なくてはならない企業」への持続的な変化が必要であり、また多様化する社会課題に迅速かつ機動的に対応するため、事業領域の拡充も必要となっている。
このような状況のもと、グループの持続的成長と企業価値向上を実現するため、「ブランド・ストーリー」「バリュー」「目指すべき姿」からなる中長期経営ビジョンを策定した。
将来のグループの目指す姿とその行動指針を「ブランド・ストーリー」「バリュー」として全てのステークホルダーの皆様と共有し、またその目指す姿の実現に向けた戦略の方向性を「目指すべき姿」として明確化することにより、これまでの『建設技術でインフラを造り・守る建設会社』から『イノベーションで建設業を創り・育てる建設会社』への進化を目指していく。



当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) サステナビリティ全般
① 戦略
トビシマグループは、トビシマSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を掲げ、ステークホルダーとの対話を深化しながら、トビシマのDNAであるイノベーションマインドを原動力としたDX(デジタルトランスフォーメーション)による画期的な生産プロセスの変革を通じた『企業のサステナビリティ』と、トビシマの創業精神である「利他利己」の実践であるESG・SDGsに配慮した経営による『社会のサステナビリティ』という2つのサステナビリティの融合を推進し、企業価値の向上を目指している。

② ガバナンス・リスク管理
サステナビリティ全般に関し、経営または事業活動に重大な影響を与える可能性がある事項について、課題の整理、施策の立案、展開、進捗管理を行う「リスクマネジメント委員会」「コンプライアンス委員会」「情報化協議会」をそれぞれ設置しており、各委員会等での検討内容は、執行役員社長を委員長とする内部統制委員会を通じ、取締役会へ報告(4回/年)される。

③ 指標及び目標(KPI)
SDGsをはじめとする社会課題と事業活動の課題を整理し、各課題のトビシマグループとステークホルダーにとっての重要度を社内評価し、多様な分野に高い知見を持つ有識者との意見交換を経て、SX経営推進のため優先的に取り組むべき重要課題(SXマテリアリティ)として10項目を特定した。あわせて、各項目への対応状況を評価するKPI(重要業績評価指数)を設定した。
なお、当該重要課題(SXマテリアリティ)における取組内容やKPI等については、2024年度中に見直す予定である。




※各項目の進捗状況は、
(2) 気候変動
① 戦略
全社横断的なメンバーにより組織された「TCFDワーキンググループ」において気候変動が当社に与えうる財務的影響について分析を行い、今後の脱炭素社会への「移行」において影響が想定される項目と、平均気温の上昇により気象災害等が激甚化する等の「物理」的変化において影響が想定される項目を特定し、それぞれの項目における財務的影響をリスク・機会に分け検証を行い、対応している。


② ガバナンス・リスク管理
気候変動に関するリスクの管理については、「リスクマネジメント委員会」において各部門における事業への影響の確認を行うとともに、定期的にモニタリングを実施し、必要な対策が講じられているかについて確認しており、「リスクマネジメント委員会」での検討内容は、執行役員社長を委員長とする内部統制委員会で組織全体のリスク管理プロセスに統合され、取締役会に報告される。
③ 指標及び目標(KPI)
SXマテリアリティ「環境への貢献」において、KPIを設定している。
(3) 人的資本・多様性
① 戦略
<人材育成>
将来を担う人材像として「T型人材(深い専門力+幅広い知識と人間力)」を定義し、若手から、中堅社員、管理職まで段階に応じた教育研修を実施し、T型人材の計画的な育成を図っている。従来の技術や知識などの「専門力」に重点を置いた研修に加え、2016年度より導入した「人間力研修」は、「知的能力的要素(考える力・想像力等)」、「社会・対人関係的要素(コミュニケーション力・リーダーシップ等)」、「自己制御的要素(主体性・継続力等)」の3要素を身につけ、人間としての総合力を高めることを目的としており、職種を超え、新入社員から管理職まですべての社員が各階層に応じた研修を受講し、日々の生活や仕事に活きる人間力を身につけている。
<人権尊重>
人権基本方針として、国際的に認められた人権の尊重が企業にとっての重要な社会的責任と認識し、すべての人々の基本的人権を尊重することとしており、従業員一人ひとりが人権に関して正しく認識し、理解を深めるべく研修・普及活動も積極的に推進している。また、「人権啓発推進委員会」を設置し、人権基本方針・活動計画の策定と見直しなどに継続的に着手しているほか、「企業倫理通報窓口」、「職場ハラスメント相談窓口」を設け、従業員が匿名で通報・相談ができる仕組みを構築している。
<ダイバーシティ推進>
人材の多様化とそれら人材の育成が組織を活性化させ、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に繋がるものと考え、多様な人材がその適正と能力を最大限に発揮できるよう、人材育成や職場環境の改善に取り組んでいる。ダイバーシティ推進に向けては、労使による「ダイバーシティ推進委員会」を立ち上げ、「育児や介護と仕事の両立がしやすい環境づくり」「教育研修制度の充実」「労働時間短縮・休日取得推進等」「全従業員の能力向上とワーク・ライフ・バランス推進」などに積極的に取り組んでいる。
<シニア人材の活躍>
2019年7月より65歳定年制を導入するとともに、給与制度等の見直しを行い、経験豊富なシニア人材が安心して、意欲的に働くことができる環境を整備している。
<健康経営>
代表取締役社長を健康経営責任者として、会社と従業員が一体となって「健康経営活動」を継続的に推進していくための健康経営推進体制を構築し、すべての従業員が心身ともに健康で、活き活きと働ける会社をつくるために、アブセンティーイズム(病気により従業員が会社を欠勤・休業している状態)とプレゼンティーイズム(健康問題が理由で生産性が低下している状態)の改善、ワーク・エンゲージメント(仕事に対する活力・熱意・没頭)の向上を目指している。
なお、当社は働きやすい労働環境の提供のため、「健康経営」の推進を会社方針として掲げ、全ての従業員が健康で、笑顔あふれる会社づくりを目指して、2020年度から5年連続で「健康経営優良法人」の認定を受け、心身の健康を向上させるための各種施策に取り組んでいる。
(注) 健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標である。
<働き方改革>
全社員を対象に、「多様な人材が自分の力を柔軟に、効果的に発揮できる会社」、「非常事態下でも事業継続性を確保できる会社」、「従業員のワークライフバランスの向上を考え、対応している会社」を目指し、「テレワーク勤務制度」や「フレックスタイム勤務制度」など、柔軟な働き方を可能にする制度や環境の整備を継続的に進めている。
② ガバナンス・リスク管理
人的資本・多様性に関するリスクの管理については、「人権啓発推進委員会」や「ダイバーシティ推進委員会」等を通じ、「リスクマネジメント委員会」及び「コンプライアンス委員会」において各部門における事業への影響の確認を行うとともに、定期的にモニタリングを実施し、必要な対策が講じられているかについて確認しており、各委員会での検討内容は、執行役員社長を委員長とする内部統制委員会で組織全体のリスク管理プロセスに統合され、取締役会に報告される。
③ 指標及び目標(KPI)
当社グループでは、上記「① 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係るKPIについては、当社においては、関連するKPIのデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難である。このため、次のKPIに関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載している。
(注) 従業員満足度調査及び従業員ストレスチェックについては、これまでの調査を取り止め、「ストレスチェック」と「エンゲージメント・サーベイ」を同時に調査し、その複合的な結果アウトプットにより、個人と組織の状態をより深く把握できる新たな調査を行うこととし、2023年度より、KPIを新たに「ストレス反応」及び「ワークエンゲージメント」として目標設定の上、当該進捗を管理することとした。なお、当該KPI等については、2024年度中に見直す予定である。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。なお、当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存である。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 国際情勢や経済動向等の外部経営環境に関わるリスク
当社グループでは、工事用材料をはじめとする様々な資機材等を使用しているが、国際紛争等によるサプライチェーンの混乱に伴う急激な価格上昇や納品遅れによる工程への影響などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
② 法令等に係るリスク
当社グループでは、企業活動に関してさまざまな法的規制を受けており、コンプライアンス体制の充実に努めているが、これらの法的規制により行政処分等を受けた場合、また、法律の新設、改廃、適用基準の変更等があった場合には、業績及び企業評価等に影響を及ぼす可能性がある。
(2) 当社の携わる事業に関わるリスク
① 国内建設市場の動向
国内建設市場の急激な縮小や競争環境の激化は、当社グループの業績への懸念材料となる可能性がある。
② 取引先の信用リスク
建設業は、一取引における請負金額が多額であり、また、支払条件によっては、工事代金の回収に期間を要する場合がある。当社グループでは、取引に際して与信管理、債権管理を徹底し、可能な限り信用リスクの軽減に努めているが、当社グループの取引先に信用リスクが顕在化し、追加的な損失や引当ての計上が必要となる場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
③ 品質不良及び工事災害の発生
建設業においては、品質不良及び工事災害が発生した場合には、社会的に大きな影響を及ぼす場合がある。当社は全社的なISO活動及び安全管理活動により、仮設も含めたあらゆる面での品質の向上に取り組んでいるが、契約不適合責任若しくは工事災害等による損害賠償が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
④ 技能労働者の確保困難
少子高齢化の影響により、建設業に従事する作業員の減少が顕著になってきている。計画的な技能労働者の確保に努めているが、建設市場の動向によっては、確保が困難になることが想定され、当社グループとして想定すべきリスクであると認識している。
⑤ 企業買収、資本提携及び事業再編
当社グループは、事業ポートフォリオの改革を目指した企業買収、資本提携等を実施しているが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業の環境等により、当初期待した成長シナジーその他のメリットを獲得できなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがある。
また、事業再構築に伴い、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがある。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループの当連結会計年度の連結業績については、売上高は、土木工事の一部において着手遅延や協議遅延等による影響等はあったものの、概ね予定通りに進捗したことにより、計画値136,000百万円に対し2.9%減の132,049百万円(前連結会計年度比4.8%増)となった。
売上総利益は、売上高前年対比増加や工事採算性の向上等もあり15,039百万円(前連結会計年度比10.5%増)となり、販売費及び一般管理費9,786百万円(前連結会計年度は9,457百万円)を控除し、営業利益は、計画値5,100百万円に対し3.0%増の5,252百万円(前連結会計年度比26.7%増)となった。
営業外損益は、為替差益等を計上したものの、シンジケートローン手数料等金融費用発生等により476百万円の損失(前連結会計年度は468百万円の損失)となり、経常利益は、計画値4,300百万円に対し11.1%増の4,775百万円(前連結会計年度比29.9%増)となった。なお、売上高経常利益率は3.6%(前連結会計年度比0.7ポイント増)、総資産経常利益率は3.4%(前連結会計年度比0.4ポイント増)となった。
特別損益は、保有資産見直し等に伴う一部固定資産の売却等により188百万円の利益(前連結会計年度は6百万円の損失)となり、法人税、住民税及び事業税1,128百万円(前連結会計年度は607百万円)及び法人税等調整額430百万円(前連結会計年度は24百万円)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、計画値2,700百万円に対し26.1%増の3,403百万円(前連結会計年度比12.0%増)となった。
報告セグメント別の経営成績は、次のとおりである。
(土木事業)
土木事業については、工事が順調に進捗したこと等により、完成工事高は68,062百万円(前連結会計年度比3.7%増)、セグメント利益は5,466百万円(前連結会計年度比10.5%増)となった。
(建築事業)
建築事業については、工事が順調に進捗したこと等により、完成工事高は53,155百万円(前連結会計年度比2.6%増)、セグメント利益は2,680百万円(前連結会計年度比87.6%増)となった。
(開発事業等)
開発事業等については、開発事業等売上高は10,830百万円(前連結会計年度比27.3%増)、セグメント利益は662百万円(前連結会計年度比31.7%増)となった。
(注)セグメント別の記載において、売上高については「外部顧客への売上高」の金額を記載しており、セグメント利益については連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりである。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
(注) 受注実績の開発事業等については、当社グループ各社の受注概念が異なるため記載していない。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに、売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 次期繰越高の施工高は支出金により手持高の施工高を推定したものである。
3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致する。
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
第80期 請負金額10億円以上の主なもの
第81期 請負金額10億円以上の主なもの
2 第80期及び第81期ともに、売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 手持工事のうち請負金額50億円以上の主なものは、次のとおりである。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える主な要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に、当社グループを取り巻く経営環境については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境」に、当社グループの目標とする経営指標等は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 会社の対処すべき課題等」にそれぞれ記載のとおりである。
総資産は、借入金の増加等による現金預金3,751百万円の増加、立替工事の増加等による受取手形・完成工事未収入金等16,084百万円の増加、未収消費税等の増加等による流動資産その他3,846百万円の増加等及び連結子会社による不動産物件販売促進等による販売用不動産1,705百万円の減少等これらに起因する流動資産の増加並びに退職給付に係る資産1,202百万円の増加等これらに起因する固定資産の増加により、前連結会計年度末比22,813百万円増の150,869百万円となった。
報告セグメント別の資産は、次のとおりである。
(土木事業)
土木事業については、87,017百万円(前連結会計年度比24.1%増)となった。
主な増加要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加等によるものである。
(建築事業)
建築事業については、36,354百万円(前連結会計年度比24.5%増)となった。
主な増加要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加等によるものである。
(開発事業等)
開発事業等については、27,090百万円(前連結会計年度比4.4%減)となった。
主な減少要因は、連結子会社の販売用不動産の減少等によるものである。
負債は、支払手形・工事未払金等1,416百万円の増加、預り金3,670百万円の増加、借入金16,202百万円の増加等及び未払消費税等の納付等による流動負債その他1,495百万円の減少等により、前連結会計年度末比19,740百万円増の102,066百万円となった。なお、有利子負債残高は34,846百万円となり、自己資本に対する比率であるデット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ)は、前連結会計年度末比0.3ポイント増の0.7倍となった。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益3,403百万円の計上及び2023年3月期株式配当金1,153百万円の支払い等により、前連結会計年度末比3,072百万円増の48,803百万円となった。なお、自己資本比率は前連結会計年度末比3.4ポイント減の32.3%となった。
今後も自己資本の充実を図りつつ新規事業を含めた事業投資を行うことで、将来的な収益基盤の拡充に向けた戦略推進を加速させていく。
営業活動によるキャッシュ・フローは、9,992百万円の資金減少(前連結会計年度は6,332百万円の資金増加)となった。主な資金増加項目は、税金等調整前当期純利益の計上4,964百万円、連結子会社による不動産物件販売促進等による販売用不動産の減少1,705百万円及び仕入債務の増加1,261百万円、預り金の増加3,669百万円であり、主な資金減少項目は、立替工事の増加等による売上債権の増加15,914百万円、未収消費税等の増加3,525百万円及び未払消費税等の減少1,857百万円である。なお、営業活動によるキャッシュ・フローの売上高に対する比率である営業CFマージンは、前連結会計年度末比12.6ポイント減の△7.6%となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,441百万円の資金減少(前連結会計年度は508百万円の資金減少)となった。主な内訳は、事業用資産投資等に伴う有形固定資産の取得による支出1,173百万円等である。なお、将来の成長のための投資については、配当政策、事業リスク等を勘案し剰余金の範囲内で実施する方針である。
財務活動によるキャッシュ・フローは、14,912百万円の資金増加(前連結会計年度は1,446百万円の資金増加)となった。主な内訳は、短期借入金の純増額15,850百万円、長期借入れによる収入12,721百万円及び長期借入金の返済による支出12,483百万円である。
これらにより、現金及び現金同等物の期末残高は3,584百万円増加し、23,673百万円(前連結会計年度比17.8%増)となった。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりである。
(資金需要)
当社グループの運転資金需要のうち、主なものは、建設工事の立替資金のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要のうち、主なものは、設備投資等によるものである。
(財政政策)
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としている。資金調達については、金融機関からのタームローンによる借入れをベースとして、不足が生じる場合には当座貸越或いはリボルビングラインによる借入れ等でそれを賄っている。また、これらの資金調達契約を締結することにより、必要な資金水準の維持や緊急的な資金需要に対応可能であることから、資金の流動性は確保しているものと思料する。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び仮定を用いている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積り等については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、使用される当社の見積り等が、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を及ぼすと考えられるものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
(単独株式移転による持株会社設立)
当社は、2024年5月15日開催の取締役会において、2024年10月1日(予定)を効力発生日とする当社の単独株式移転により、持株会社(完全親会社)である「飛島ホールディングス株式会社」を設立することを決議し、2024年6月27日開催の当社第81回定時株主総会にて承認可決された。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりである。
当社は、「ブランド・ストーリー」「バリュー」「目指すべき姿」からなる中長期経営ビジョンのもと、土木・建築・環境分野を柱に、「建設生産システムの革新」、「社会基盤施設の維持管理」、「Well-being」、「国土保全と防災・減災強化」を重点戦略とした技術の研究開発に取り組んでいる。
当連結会計年度における研究開発費は
(土木事業)
〔コンクリート中鉄筋の腐食状態を非破壊で測定する「Dr.CORR」〕
学校法人東京理科大学、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所と共同で、コンクリート中の鉄筋の腐食状態を非破壊で測定する鉄筋腐食測定機「Dr.CORR」を開発し市販を開始した。3つの測定プローブを鉄筋直上のコンクリート表面に貼り付けることで、コンクリートをはつり出すことなく構造物中の鉄筋のインピーダンスが測定可能であり、測定結果に対して等価回路によるフィッティングと既往手法を適用することによって、鉄筋の腐食速度が推定できる。鉄筋の腐食状態はコンクリート構造物の補修・補強工法の選定における重要な指標になるものであり、「Dr.CORR」の普及、活用を推進し、橋梁をはじめとする全てのコンクリート構造物の効率的な維持管理の推進に貢献していく。
〔建設振動対策技術「防振堤」〕
国立大学法人埼玉大学と共同で、建設工事振動の伝播経路となる地表面に設置するだけで工事振動を低減する「防振堤」を開発し、製品展開を開始した。防振堤には、約15Hz以上の幅広い振動に対して効果を発揮する「質量体」と、受振側の建物の固有振動数を低減対象として適用することで高い低減効果が期待できる「振動系」の2種類があり、求められる低減効果や現場条件によって使い分けを行う。
(建築事業)
〔FMS合金製U形ダンパー制震工法「アイラッド制震工法」〕
鉄筋コンクリート造建築物向けの小型で軽量な履歴型制震ダンパー「アイラッド」を開発し、「FMS合金製U形ダンパー制震工法「アイラッド制震工法」について、一般財団法人日本建築センターより評定(BCJ評定-SS0060-01)を取得した。アイラッドは、①二次壁内への配置が可能であり、平面プランの制約を受けることなく配置が可能、②小型・軽量であるため人の手で運搬、設置工事が可能、③構成部材がシンプルであるため低コスト、④繰返し性能に優れるため被災後の取替えは不要など、これまでの制震ダンパーにはない特長を多く有している。巨大地震や繰返し発生する地震に対して、継続使用が可能なRC造建物の提供に貢献できるように、アイラッド制震工法を積極的に提案していく。
〔音場可視化システム「OTOMIRU Ver.2」〕
学校法人早稲田大学と共同で、3次元の音場情報をリアルタイムで実空間上に投影する音場可視化システム「OTOMIRU Ver.2」を開発した。OTOMIRU Ver.2は、マイクロホンアレイで収録した音から空間全体の音圧レベル分布を算出し、MRデバイスやARデバイスを介して実空間上に音圧レベル分布のカラーマップを投影するシステムである。複数断面内もしくは物体表面上の音圧レベル分布をMR・ARデバイスを用いて可視化することで、空間全体の騒音源や遮音欠損部を一度に探査することを可能とした。本システムを建設工事現場や建物内部での騒音調査・騒音対策効果の検証に適用し、環境負荷の少ない施工や音環境品質の向上に貢献するとともに、エンタメ分野等他分野への適用についても展開していく。
(開発事業等)
1 開発事業
当連結会計年度においては、研究開発活動は特段行っていない。
2 その他の事業
◇「トビシマダッシュボード」<情報・作業所管理の可視化>
「e-Stand」を基盤に、様々な情報を共有し、作業所管理状況、工事進捗等を可視化する取組みを継続している。社内技術資料の検索を容易にする仕組み、帳票入力の一元化等高効率化と業務の高度化を、更に目指していく。
◇「自動化に向けたAI活用」
「AI現場監督」による施工管理の自動化を目指している中、ルーチンワークにおいて自動化を開始したが、「生コンクリートの荷下ろし管理」を、任意に設置したカメラ映像にて荷下ろし開始と終了を判断、記録し、結果をリアルタイムで帳票に落とし込むAIを開発した。このシステムにより、省力化だけではなく、生コンクリート打設終了後に作成していた帳票類が自動で作成されるようにもなり、労働時間削減にも寄与している。また、作業所定点カメラ映像を利用した「AIによる不安全行動検知」の開発も継続しており、トラック荷台からの飛降りなどの不安全行動を、AIが高い精度で検知している。
今後は、脚立作業等の「不安全行動検知」と開口部の有無等「設備不備の検知」等にも取り組んでいく。
◇「サイバー建設現場」
建設現場を俯瞰して理解するため、映像・写真・BIM/CIM、センサデータ、その他のデジタルデータを統合し、Web上に再現する「サイバー建設現場」を開発した。建設現場を、時間推移を反映させた4Dモデルとして表現でき、工事関係者間の情報共有プラットフォームや遠隔支援プラットフォームとして機能するものであり、本システムは、現場から収集したデータを分析して、課題発見・解決を図り、検討結果を施工へフィードバックする施工改善システムである。既に国土交通省発注工事にて運用を開始しており、国土交通省が提唱する「インフラ分野のDX」における「コミュニケーションをよりリアルに」と「現場にいなくても現場管理を可能に」を実現している。
今後は、更なる機能向上と適用現場の拡大を進めていく。
(注) 1 アイラッド(I2(2は二乗)RUD)は、当社の登録商標である。
2 OTOMIRUは、当社及び株式会社INSPIREIの商標(出願中)である。
3 サイバー建設現場は、当社の登録商標である。