文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、メディア・コンテンツ事業においては、地上波テレビ放送で長年培ってきたコンテンツ制作力と媒体力をコアコンピタンスとし、事業を拡大し成長させてまいりました。しかし、インターネットメディアの普及等に伴うコンテンツ視聴環境の変化や、それに伴う広告手法の進化によって、インターネット広告へのシフト、動画配信市場の拡大等が進み、テレビが持つメディアとしてのパワーの維持が大きな課題となっています。また、オリンピック等の大型スポーツイベントを中心に放送権料が高騰しているほか、5Gなどの新技術対応のためのコストも必要となり、収益の確保が難しくなってきていると認識しています。一方で、インターネットを通じた動画配信事業は、社会のデジタルシフトを受け、市場全体が右肩上がりに成長していくことが見込まれているものの、豊富な資金力を有する外資系企業が日本に進出しているほか、国内配信事業の統合もあり、会員獲得に多額の投資が必要なビジネスモデルとなっていることから、厳しい競争環境に晒されています。
生活・健康関連事業においては、総合型スポーツクラブから特化型スポーツクラブへの利用者ニーズの移行に伴い、小規模事業者の新規参入が容易な状況となっており、24時間営業のトレーニングジム、ホットヨガ、ストレッチ専門店等に加え、アプリ等を利用した自主トレーニングなど多様化が進んでおります。また、コロナ禍において減少した会員数の回復に時間を要しているなど、厳しい状況が継続しています。
これらに加えて、急激な社会のデジタル化へのシフト、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などの世界情勢不安、甚大な被害を伴う自然災害といった外的要因による大きな経営環境の変化が生じております。当社グループはこのような経営環境の変化に適切に対処し、進化していくことが重要な課題であると認識しております。
当社グループは2022年5月、経営方針を新しく定めるとともに、2022年度から2024年度を計画期間とする中期経営計画を策定し、当連結会計年度はその2年目に該当します。中期経営計画2022-2024は、「総合コンテンツ企業」への進化を目指した前中期経営計画をさらに深化・拡張させ、あらゆる感動を創造し、生活者に信頼されるNo.1企業となるための取り組みと目標を示すものです。
当社グループは、すべてのステークホルダーから信頼されるコンテンツ・サービスを提供し、報道機関として迅速・正確な報道の強化に努めます。また、サステナビリティポリシーに則り、多様な人材の活躍と共生を支援し、社会的責任を果たしていきます。
■報道の信頼性向上
▶報道機関として公平・公正さを保ち、迅速・正確な情報を発信し、信頼性を高めます。
▶言論および表現の自由を確保し、健全な民主主義の発展に尽くすことで社会の信頼に応えます。
▶放送とインターネットの両輪による安心・安全な情報の発信に努めます。
■サステナビリティへの恒常的な取り組み
▶サステナビリティポリシーに則り、あらゆる活動をクリエイティブに発想し、持続可能な未来に向けて積極果敢に取り組みます。
・Good For the Planet(※1)の地上波にとどまらない通年発信
・健康経営の推進、DXによるワークライフバランスの実現 など
中期経営計画2022-2024重点目標
コンテンツの価値最大化
新規ビジネス創出の加速
ウェルネス経済圏の構築
①中期経営計画2022-2024の取り組み
メディア・コンテンツ事業領域においては「コンテンツ中心主義」を改めて掲げ、あらゆるプラットフォーム、デバイスに向けて生活者に最適なコンテンツを制作します。また、外部パートナーとの協業・共創を推進し、国内外に向けて発信していきます。
さらに、VTuber事業を始めとした社内インキュベーション事業の強化・拡充を図るとともに、新たな領域への投資機会を追求し、新規ビジネスの創出を加速させます。また、ティップネスを始めとしたウェルネス経済圏を構築し、国民の健康寿命の伸長に貢献します。
当社グループは、あらゆるボーダーを超えた「感動×信頼のNo.1企業」として、生活者に新たな価値を提供し、企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。
A コンテンツの価値最大化
コンテンツ戦略本部の設立
▶顧客体験価値(カスタマーエクスペリエンス)を重視し、これまで以上にメディア横断的に生活者が見たいコンテンツを届けるためのコンテンツ制作・指揮組織を作ります。
▶戦略的パートナー ウォルト・ディズニー・ジャパンなどとのコンテンツ共同開発により、世界配信強化を図ります。
▶海外展開を軸としたアニメ事業の強化を行い、利益最大化での配信を目指します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶コンテンツ戦略本部を中心に、放送・配信を統合した総合編成戦略を強化し、コンテンツのPF最適化、生活者接点の最大化に向けたコンテンツ制作の指揮コントロールに努めています。引き続き、「生活者接点No.1」の実現を目指してまいります。
▶日本テレビ系2023年1月期ドラマ「ブラッシュアップライフ」及び2023年7月期ドラマ「こっち向いてよ向井くん」のNetflixグローバル配信を行いました。また、2024年度に向けてドラマ・配信一括制作の「ACMA:GAME」プロジェクトをスタートさせました。本作は、地上波放送後にTVerとHuluに加えPrime Videoで国内配信を行っている他、多くの国と地域において世界配信も実現しました。ウォルト・ディズニー・ジャパン㈱との取り組みではHuluとディズニープラスとのセットプランをスタートするなど連携を深めています。今後も、世界市場に向けたコンテンツの共同開発を目指してまいります。
▶2023年10月からスタートした金曜23時台の新アニメ枠、「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」にて第一弾「葬送のフリーレン」を放送し、日本テレビ系「金曜ロードショー」での初回2時間スペシャルも大きな話題となりました。また、土曜24時台枠では「薬屋のひとりごと」を2クール連続で放送し、2023年に放送・配信が開始された新作アニメ番組の中でTVerでの総再生数1位を記録しました。今後も、グローバル展開の強化、有力な原作の獲得及びグループ会社である㈱スタジオジブリ、㈱マッドハウス、㈱タツノコプロ等との連携をさらに強め、アニメ事業の拡大を目指してまいります。
知的財産(IP)コンテンツの開発
▶Nizi Project、THE FIRSTに次ぐ大型IP開発を推進します。
▶ビーグリーとの共創、メディアミックス展開により原作クリエイターの発掘・育成を行い、世界でヒットする新規IPを開発します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶第2のBiSHを作るオーディション番組「BiSH THE NEXT」から、人気絶頂の中で解散したBiSHの魂を継ぐ6名の男女混合グループ「BiTE A SHOCK」が誕生。2023年7月の「THE MUSIC DAY」で華々しいデビューを飾りました。また、NiziUを生んだ「Nizi Project」のシーズン2、J.Y.Parkによるボーイズグループオーディションを行い、昨年12月に7人組ボーイズグループ「NEXZ(ネクスジ)」が誕生しました。
▶BE:FIRSTの生みの親SKY-HIと日本テレビが手掛ける、番組&イベントプロジェクト「D.U.N.K.-DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-」の第二弾を2023年12月に京セラドームで行うなど、自社が関与したヒトIP(グループやアーティストを生み出す、またはブーストする過程における権利)との良好な関係を築き、収益性の高い主催LIVE興行を行うことが出来ています。
▶今後は、更なるヒトIPの精度の向上、新しいジャンルへの挑戦の他、自社が関与したIPを活かしたデジタル展開の拡大及び海外進出の強化を図ってまいります。
新たな共創体制の構築
▶ムラヤマ、ビーグリー、ディズニーに続く共創体制の構築機会を追求します。
▶アフターコロナ時代に向けた、共創によるリアルイベント制作体制強化を図ります。
(当連結会計年度の取り組み)
▶2023年10月に㈱スタジオジブリの株式を追加取得し、子会社化しました。英国演劇界で最も権威のある「ローレンス・オリビエ賞」で6冠を獲得した舞台「となりのトトロ」について、2023年度もロンドン公演を開催した他、展覧会「金曜ロードショーとジブリ展」を東京と富山で開催しました。今後も引き続き全国各地で開催していきます。2024年度は展覧会「ジブリパークとジブリ展」を開催するなど、引き続き共創を進めてまいります。
▶また、前年に引き続き㈱アールビーズとの共創による「カラダWEEK47都道府県対抗ウオーキングバトル」の開催など、当社グループ内の共創によるリアルイベントの制作体制強化を着実に推進しております。
B 新規ビジネス創出の加速
社内インキュベーションからの新規事業確立
▶VTuber事業はClaN Entertainmentへの分社化と人材採用強化でインフルエンサーに特化したエンターテイメント企業へと進化させます。
▶HR事業(※2)・XR事業(※3)について、独立した事業として体制を構築します。
▶上記に続く新規事業を社内インキュベーションから立ち上げます。
(当連結会計年度の取り組み)
▶㈱ClaN Entertainmentは分社化後も順調に事業を拡大しており、2023年7月にはバーチャルアーティストとリアルアーティスト双方による祭典「バズリズム LIVE V 2023」を開催しました。
▶XR事業を手掛ける「日テレXR」では、新たな没入体験および撮影ができるサービス「mixta IMMERSIVE Shot」をリリースしました。ディズニー・アニメーションへの没入体験を楽しめるイベント「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス」では「日テレXR」が技術面を担うなど、事業の幅を拡大しています。
▶2018年に開始したeスポーツ事業は順調に事業を拡大しています。大会・イベント部門では「ポケモンユナイト甲子園2023」等の大型イベントを開催いたしました。また、子会社であるアックスエンターテインメント㈱が担うチーム事業では、AXIZシャドウバース部門が対戦型オンライントレーディングカードゲーム「Shadowverse」の大会「RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 23-24 CHAMPIONSHIP」で年間王者となった他、AXIZ WAVE(第五人格部門)が2年連続で世界大会に出場する等、順調に成果を上げています。
▶トップアスリートを多数集めたアスリート派遣マッチング事業である「Dream Coaching」では、スポーツ庁によるアスリート全国学校派遣プロジェクト「アスリーチ」事業を受託して全国622校にアスリートを派遣する等、事業の幅を拡大しています。
▶その他にも、新たな社内インキュベーション事業として、人気声優陣演じる、星座の王子様が星占いを毎週届けるサブスクリプションサービス「君ノ隣ニ座ル星。」をローンチいたしました。
新規事業領域への投資機会の追求
▶当社グループならではの価値を創造できる領域の探索・進出を行い、M&Aを含め、収益の柱となる事業領域への投資機会を追求します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶2023年7月には、VR/XRコンテンツの制作と配信プラットフォーム事業を手掛ける㈱アルファコードへの出資を行い、同社とのジョイントベンチャーとしてVR/XRコンテンツ制作を担う㈱NeoRealXを設立しました。日本テレビが持つ企画力やコンテンツ力と㈱アルファコードが持つVR/XR関連技術を結集し、VR/XRコンテンツの制作や配信及びビジネス創出に取り組んでいきます。
▶2023年9月にはeスポーツ事業の更なる拡大に向けて、㈱JCGを子会社化しました。数々のeスポーツ大会を手掛けてきた㈱JCGの実績とノウハウと当社グループのメディアパワーやコンテンツプロデュース力を融合してeスポーツ業界の更なる活性化を目指します。
▶新規事業創出及び戦略的投資に際しては、当社グループならではの価値を創造できる領域の探索・進出を引き続き行っています。
C ウェルネス経済圏の構築
CDP(顧客情報システム)構想によるウェルネス経済圏
▶ティップネスの顧客情報を、当社グループが持つ他の顧客情報と併せて活用することにより、生活者個々に寄り添った生活満足度の向上に寄与します。
▶CDPの活用を検討する委員会を発足、ウェルネス事業者CDPとの連携を行いサービスの付加価値をさらに向上させていきます。
(当連結会計年度の取り組み)
▶㈱ティップネスをご利用の皆様への満足度を高めるべく、前連結会計年度に立ち上げたCDP開発プロジェクトチームにより、次年度に導入するフィットネス支援アプリの開発を進めました。
ティップネスの再成長
▶ティップネスはコロナ禍からの早期回復を図り、CDP活用により健康ニーズに迅速・的確に応える「コンテンツ・サービス企業」へと進化します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶地域に開かれたフィットネスクラブを目指し、従来の会員向けのサービス提供に加えて、地域住民のライフスタイルを豊かにする体験や学びを積極的に提供し、地域のウェルネス実践者を増やしていく活動として「OPEN TIPNESS」を2023年5月にスタートしました。また2023年6月にはAI姿勢分析サービスの「シセイカルテ」を総合店の全店舗に、更にキッズスクール事業でも、スイミングスクールにおいて、新サービス「スタディスイム」を33店舗に導入しました。IT技術を駆使した動画の活用で、お子様のアクティブラーニングにつなげています。
健康事業部の設置
▶生活・健康関連事業をさらに強力に推進するために、当社グループに統括する部門を設置します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶2023年8月に生活者自らアクションし、進んで、楽しんで運動に励む活動に積極的にチャレンジする「運DO!部」プロジェクトを発足しました。また2023年11月のカラダWEEKのキャンペーンでは㈱askenや㈱博報堂らと共同企画を実施したり、47都道府県対抗ウオーキングバトルを開催したり、生活者に向けた健康の啓発活動を精力的に行いました。
②戦略的投資方針
投資枠1,000億円を継続し、メディア・コンテンツ事業と生活・健康関連事業の強化と領域の拡張、さらに新規領域への挑戦に向けて投資を実行し、企業価値の持続的な向上を目指します。
メディア・コンテンツ事業領域
・知的財産(IP)開発
・コンテンツ制作体制の強化
新規事業領域
・XR領域、メタバース領域をはじめとする成長テクノロジー投資
・HR事業の拡大
生活・健康関連事業領域
・CDP構築のためのデータ保有企業との連携
・ウェルネス経済圏構想の具体化
サステナブル投資
・社会に貢献する事業への積極的な投資の実行
(当連結会計年度の取り組み)
▶当連結会計年度においては、複数の事業領域において投資を実行いたしました。具体的には、メディア・コンテンツ事業領域において、㈱スタジオジブリの株式を追加取得し子会社化した他、ECサイト大手のla belle vie㈱の株式を取得し子会社化するとともに、eスポーツ事業を営む㈱JCGの株式を取得し子会社化いたしました。新規事業領域において、VR/XRコンテンツの制作等を手掛ける㈱アルファコードへの出資を行うと共に、㈱NeoRealXを持分法適用関連会社化いたしました。
▶また、当社グループがこれまで行ってきたサステナブル投資に関しても、経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的インパクトを同時に生み出す「インパクト投資」という考えを取り入れた上で、投資検討段階から継続的に社会的インパクトの測定・マネジメントを行う「インパクト投資」の1号案件として、映像クリエイター支援事業を手掛ける㈱Vookへの出資を行いました。今後も引き続き積極的に投資を実行し、企業価値の向上に努めてまいります。
③財務方針
A 重要な経営指標
事業の規模と成長の尺度である「売上高」と、事業の収益性の尺度である「営業利益」とします。また、事業資産の効率的な利用と金融資産を活用した積極的な投資により「ROE(自己資本利益率)」の向上にも努めてまいります。なお、政策保有株については保有の合理性について随時見直しており、2023年度も売却を進めております。
B 株主還元政策
事業環境の変化への対応や収益基盤の強化、成長領域への投資の調和を図りながら、持続的な収益の拡大・成長に努め、業績動向など諸要素を勘案しながら継続的で安定的な株主還元を行うことを基本方針とします。なお、具体的な施策として、自己株式の取得を実行したほか、株主名簿外の外国人等株式への配当支払を実施いたします。
(※1)Good For the Planet グップラ …2020年からスタートした日本テレビ系SDGsキャンペーン。「地球のため、未来のため、より良い暮らしのために今できること」を情報・バラエティ・スポーツ・報道番組が「オール日テレ系」で一丸となって取り組みます。
(※2)HR事業…Human Resources(人的資源)。育成・研修等を含む人事支援サービス。
(※3)XR事業…Extended Reality。VR(仮想現実)、AR(現実拡張)、MR(複合現実)などの先端技術を活用した事業。
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
日本テレビホールディングス㈱は、SDGs(持続可能な開発目標)の精神に共感し、環境問題、人権問題等われわれを取り巻く社会課題の解決に向けて、「持続可能な未来への貢献」を経営方針の1つとしています。「24時間テレビ」「Good For the Planet」をはじめとした放送での発信を通じて、われわれの価値観を多くの人々と共有しながら、社会的責任を果たします。
サステナビリティへの対応を加速させるため、「サステナビリティ委員会」(以下、「サステナ委」)が司令塔の役割を担います。石澤顕代表取締役社長執行役員が委員長を務め、日本テレビホールディングス㈱の執行役員が委員に就いています。サステナ委のもとには、グループ各社の事業部門の責任者らによる3つのワーキング(「気候変動対策」、「人権」、「人的資本」)が設置されていて、サステナビリティに関する課題への対応策を検討し、サステナ委に提言を行います。サステナ委は年に2回開催され、ワーキングからの提言を受けて、グループ全体の方針や目標、ロードマップを決定します。取締役会はサステナ委から重要事項や活動状況について報告を受け、対応方針や実行計画を監督します。

当社は、サステナビリティへの対応が経営に重大な影響を及ぼすリスクであると位置づけています。サステナ委は、各ワーキングや関係部局の報告をもとに、リスク及び機会を特定し、リスク及び機会が発生する可能性や時期、経営への影響を適切に評価します。また、重大なリスクと評価した事項については取締役会に速やかに報告します。必要な場合は、危機管理委員会と情報を共有、連携し、リスクの最小化に向けて対応策を決定します。
気候変動や温暖化対策などの政策動向による事業環境の変化を想定し、当社の事業や経営に与える影響を検討しました。TCFD提言が推奨する複数の気候シナリオでの分析として、主要事業の放送事業を行う日本テレビ放送網㈱に加え、㈱日テレ アックスオン、 ㈱日テレ・テクニカル・リソーシズ(以下、「NiTRo」)、㈱日本テレビアート、㈱日テレイベンツ、㈱日本テレビサービス、㈱ティップネスのグループ7社を対象に、1.5℃シナリオと4℃シナリオで想定されるリスクと機会を検討しました。
<対象>
メディア・コンテンツ事業:日本テレビ放送網、日テレ アックスオン、 NiTRo 、日本テレビアート、
日テレイベンツ、日本テレビサービス
生活・健康関連事業:ティップネス
■1.5℃シナリオ(低炭素社会が急速に進展)
温室効果ガス排出量の削減に向けた厳しい規制措置が取られ、今世紀末の時点で、世界の平均気温の上昇が産業革命前と比べて1.5℃以内に収まる想定。低炭素社会が急速に進展し、法規制や社会的要請への対応を迫られるシナリオ。
※IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のSSP1-1.9シナリオ、IEA(国際エネルギー機関)の NZE2050シナリオを参照
(メディア・コンテンツ事業)
(生活・健康関連事業)
※1:◎:影響が大きい ○:影響あり △:やや影響
※2:短期:3年以内、中期:2030年ごろ、長期:2050年ごろ
1.5℃シナリオでは、温室効果ガスの削減に向けて企業はより厳格な対応を迫られ、炭素税導入や再生可能エネルギーの需要増加によるコストの上昇が見込まれます。政府により規制が強化されれば、設備投資の増加は避けられません。さらに、CO2削減の取り組みの遅れは企業イメージの悪化に直結します。
一方、気候変動に関する社会の関心が高まり、正確な情報を発信するというメディアの役割はますます重要になります。役割が不十分だと判断されれば、視聴者やスポンサーからの信頼が低下することは避けられません。また、番組制作においては、サステナビリティ、カーボンニュートラル実現に向けたコンテンツの需要が高まることが予想されます。メディア・コンテンツ事業を軸とする当社グループとしては、自社のCO2削減を進めることはもとより、気候変動の一層の深刻化を食い止めるため、社会に訴えかけていくことも大きな責務であると認識しています。
生活・健康関連事業においても、CO2削減に向けた規制強化の影響、エネルギー調達コストの増加が事業リスクとして予想されます。操業コスト増加による価格転嫁を抑えつつ、DX化の進展やリモートワークの拡大など、ライフスタイルの変化や健康意識の高まりをとらえる施策が必要になると考えています。
■4℃シナリオ(地球温暖化が深刻に)
温暖化対策が徹底されず、今世紀末の時点で、世界の平均気温が産業革命前と比べて4℃程度上昇する想定。異常気象の増加や自然災害の激甚化など気候変動の物理的影響が顕著となるシナリオ。
※IPCCのSSP5-8.5シナリオ、IEAのSTEPSシナリオを参照
(メディア・コンテンツ事業)
(生活・健康関連事業)
※1:◎:影響が大きい ○:影響あり △:やや影響
※2:短期:3年以内、中期:2030年ごろ、長期:2050年ごろ
4℃シナリオでは、異常気象が慢性化し、台風や豪雨による水害の激甚化、干ばつ被害の増加などが予想されます。気温上昇は熱中症患者の増加をもたらし、新たな感染症を発生させる恐れもあります。日本テレビ放送網は公共性を有する放送を担っており、防災や災害に関する報道機関の役割が一層求められることになります。一方で、高温下での屋外撮影によって、番組制作が制約を受ける恐れが生じるほか、放送機材に不具合が発生するリスクが高まります。放送を継続して報道機関としての責務を果たすためには、従業員の被災リスクを低減しつつ、放送機材の強靱化を進めていく必要があります。平均気温の上昇により、社会活動全体が制約を受け変容を迫られることも予想されます。そうした変化に対応し、新たなビジネス、新たな需要を生み出せるかも問われることになります。
・温室効果ガス削減に向けた取り組み
■再生可能エネルギーの利用促進とCO2排出量の開示拡大
当社は「サステナビリティポリシー」(2021年11月策定)において、日本テレビ放送網におけるすべての電力の再生可能エネルギー比率を2030年度までに100%とすることを表明しています。これを実現するために、再生可能エネルギーの調達に加えて、生田スタジオの屋上に太陽光パネルを設置するなど自社内での発電にも力を入れていきます。2050年の日本テレビグループ全体でのカーボンニュートラル実現に向けて、CO2排出量等を開示する範囲を他のグループ会社にも拡大するとともに、今後も年度ごとに排出量を当社HPにて開示します。
■省エネ機器の利用拡大により消費電力を削減
2031年までに汐留本社の照明はすべてLED化することを計画しています。空調機やポンプ類などを資源効率性の高い機器に更新することで、消費電力自体を削減します。
■日本列島ブルーカーボンプロジェクト
日本テレビが開局70年を迎えた2023年、「海の森を守ろう!日本列島ブルーカーボンプロジェクト」をスタートさせました。生長する際に吸収固定するアマモや海藻を育てる取り組みで、グループ各社の社員やその家族らがアマモ場を再生させる活動を定期的に行っています。
日本テレビはブルーカーボンの可能性に着目し、「news every.」「真相報道バンキシャ!」などで特集を放送しました。2023年10月からは海洋環境の保全を学ぶ旅番組「ウミコイ-今 海に出来ること-」を放送しています。「ウミコイ」を制作する過程では、取材ロケの効率化・最小化とハイブリッドカーでの移動などにより、通常の番組に比べてCO2排出量を約63%(※)削減しました。番組の趣旨に賛同したパートナー企業とともに情報発信しているほか、東京湾にアマモ場を造成するプロジェクトを推進するため、2023年10月に三浦半島の5市町(横須賀市/三浦市/鎌倉市/逗子市/葉山町)と包括連携協定を結びました。
※Earth hacks株式会社による集計 (2024年3月末現在)
■1.5℃シナリオ
■4℃シナリオ
このほか、グループ各社では自然環境に配慮した取り組みも行っており、今後も継続・推進していきます。
<日本テレビアート>
テレビ番組等の美術セットについて、従来から使用している南洋材(ラワン材)に代えて環境負荷の少ない資材で試作品の製作や試運用を行っています。
<日本テレビ放送網><日本テレビアート><NiTRo>
2023年(NiTRoについては2023年度)のコピー用紙の削減量は日本テレビ放送網が約79%(2017年比)、日本テレビアートは約57%(2019年比)、NiTRoは約44%(2019年度比)となりました。
社内書類や契約書の電子化に加えて、日本テレビ放送網の番組では、スケッチブックに書いていた出演者への指示(カンペ)を電子化するなど積極的なペーパーレス化を進めています。
<ティップネス>
2022年3月までにすべての店舗でシャワーに節水バルブを装着し、省資源化に努めています。
③ 指標及び目標
1.日本テレビ放送網は2030年度までに電力の再生可能エネルギー比率を100%とします。
CO2排出量(Scope1+Scope2)を2030年度までに2019年度比で50%削減します。
2.2024年度は日本テレビ放送網がScope3の算出に着手するとともに、CO2排出量(Scope1+Scope2)を開示するグループ会社を、7社からさらに拡大します。
3.2050年度までに日本テレビグループでのカーボンニュートラルを実現します。
※Scope1(事業による直接排出)
Scope2(電力・熱・蒸気の購入による間接排出)
Scope3(Scope2以外の間接排出(自社事業の活動に関連する他社の排出))
・指標
■日本テレビ放送網の3拠点(汐留・番町・生田)のCO2排出量(2023年度実績)
Scope1: 3,956.2 t-CO2
Scope2:18,811.5 t-CO2

※2023年度よりScope2の算出の一部で調整後排出係数を使用しています。
■グループ7社のCO2排出量(Scope1+Scope2。2023年度実績)
日本テレビ放送網、ティップネス、日テレ アックスオン、NiTRo、日本テレビアート、日テレイベンツ、日本テレビサービスのCO2排出量
※使用するエネルギーがグリーン電力のみのため、0t-CO2としています。
(2)人権尊重の取り組みに関する戦略並びに指標及び目標
①戦略
「ビジネスと人権」に関する企業の対応への要請は年々高まっており、事業活動における人権尊重の責任を果たすことが求められています。当社グループ内部や対外取引において、人権に負の影響を与える可能性を特定、防止、軽減し、適切に対処していくための人権デューデリジェンスに関する取組みを開始しました。これまでの実績として以下の取組みを行っており、今後も国内外の指針等が提唱するプロセスに則り、外部専門家の意見も聴取しながら、あらゆる人権リスクに対応し、発信してまいります。

a)人権研修の実施(2024年2月)
外部弁護士による「ビジネスと人権」についての解説、グループとしての取り組みの周知、制作や放送現場での具体的事例研究について、グループ全従業員を対象に研修を行いました。
b)契約書ひな型(一部)への人権保護のための条項の登載(2024年4月~)
日本テレビ放送網が締結する契約書ひな型の一部について、人権保護のための条項を加えました。これにより、ビジネスパートナーの皆さまとともに人権を尊重したビジネスを実現してまいります。
c)日テレHDホットラインへの人権相談機能追加(2023年12月~)
人権デューデリジェンスにより対処してもなお必要となる救済の窓口、手段として、従来から運用している内部通報制度「日テレHDホットライン」に人権相談窓口としての機能を追加しました。この日テレHDホットラインは、当社の役員・従業員だけでなく、当社のビジネスに関わる方はどなたでも利用することができます。
2023年11月、当社は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際基準や国内ガイドライン等に則り、企業内外の専門的な情報・知見を得て、「日本テレビホールディングス人権方針」を定めました。この人権方針は、当社グループの全役員、全従業員に適用されるほか、ビジネスパートナーの皆さまにもご賛同いただけるよう明記しております。
その他、人権ワーキングを定期的に開催して人権リスクの課題を検討するとともに、経営陣に迅速に提言、情報共有できる体制を取り、適時適切な対応をしております。
「日本テレビホールディングス人権方針」の具体的な内容及び当社の人権尊重のための取組みの詳細等は、
(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標
「感動×信頼のNo.1企業」を目指す当社グループでは、人的資本は、最も重要な価値創造の源泉であると考えております。多様なバックグラウンドを持つ人材が、心身ともに健康かつクリエイティブに活動できる職場環境を整備することは、当社グループの持続的な成長に必要不可欠です。
当社の「サステナビリティポリシー」において、6つの重要課題のうち、「健康でクリエイティブな職場作り」と「多様な人材の活躍と共生」の2つが人的資本に関連するものです。例えば、グループを挙げての取り組みとして、同性間のパートナー婚に異性間の結婚と同様の祝金や特別休暇を認める「同性パートナー制度」の導入を、グループ全体で推進するなど、社員一人ひとりが自分らしく働くことのできる制度作りを進めております。
当社グループでは、各社がそれぞれの事業環境や人材要件等にあわせて多彩な取り組みを行っており、「② 指標及び目標」を含めて、連結グループ全体としての記載が困難であるため、主要な事業会社である日本テレビ放送網㈱単体の取り組み等を中心に記載しております。
日本テレビ放送網㈱では、「感動体験を創造する人財の獲得・育成」、「健康経営の推進」、「多様な人材の活躍・共生」を人的資本に関する戦略の三本柱に据え、中期経営計画2022‐2024を推進しております。人材の多様性の確保を含む人材の採用・育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。
■多様性の確保を含む人材の採用・育成方針
IP創出やコンテンツ開発に必要なクリエイター人材をはじめ、DX推進に寄与するITエンジニア、経営戦略・事業戦略の推進を担う管理人材等、多種多様な人材の採用を、新卒採用・キャリア(経験者)採用を問わず、積極的かつ継続的に行っております。また、今後のコンテンツビジネスを牽引するビジネスプロデューサーの採用・育成も進めております。個人の成長が組織と事業の成長の原動力となるよう、社員のキャリアパスを支援し、定着と成長を促す育成・研修制度を実施しております。
<採用>
新卒を対象とした定期採用では、毎年30名前後を採用しています。クリエイター、ジャーナリスト、アナウンサーなど、従来の番組制作の核となる人材に加えて、次世代のメディアビジネスを担う人材やエンジニアを志す「理系人材」の採用にも注力しております。
年間を通して行っているキャリア(経験者)採用では、ITエンジニアやデータサイエンティストをはじめとする「デジタル系人材」やコーポレート機能強化に必要な「コーポレート人材」など、今後の当社グループの事業成長に必要な専門性の高い人材を中心に、積極的に採用しております。2023年度に採用した社員に占めるキャリア採用の比率は26%となっております。高度な知見と多様な経験・価値観の融合がイノベーションの創出につながるよう、トップクリエイターとキャリア採用社員が交流する機会を設けるなど、オンボーディング施策も随時実施しております。
<育成・研修>
加速する環境変化に対応しながら、組織として成長し続けるため、社員個々の自律的な成長、公正な評価・処遇の実施、組織強化・課題対応をテーマとして人材育成に取り組んでおります。マネジメント能力やリーダーシップ開発および新たなスキル・知識の習得を促進するため、従前のOJT(On-the-Job Training)を軸とした育成に加え、Off-JT(Off-the-Job Training)の機会を増やし強化しております。

a)組織強化およびマネジメント力の向上
職位・役職ごとに求められる能力や知識の習得およびリーダーシップの開発を目的として、任用・登用、昇進などの節目で階層別研修を実施しております。また、人事評価における公正性と適切なコミュニケーション・フィードバックは、人材育成の観点で極めて重要であることから、評価者のスキルアップを図る研修を年数回にわたって行っております。そして、管理職を対象とした研修等を通して、ガバナンスの強化にも取り組んでおります。
b)スキルアップ・キャリア支援
社員個人の自律的な学びと成長を支援する制度も整備を進めております。
重要性が増しているビジネス全般およびデジタルのスキル・知識の底上げを図るため、希望者を対象に、eラーニングの受講費用を補助する制度を導入しております。また、現在の業務に関連する学びのために学校に通う社員の学費等を補助する「修学サポート制度」を実施、国内のみならず海外での学びも支援しております。
さらに、資格取得や留学、配偶者・パートナーの転勤への同行などに伴う休職を可能とする「キャリアサポート休職制度」と、起業・転職などによるキャリアアップや育児・家族の介護のために退職した社員が復職しやすくする「カムバック採用制度」を整備しています。優秀な社員が会社との関係性を継続しながら多様な経験を積み、再び日本テレビで活躍してもらうことが狙いです。
加えて2023年度は、若手社員が短期間他部署で働くことができる「社内留学」制度を新設しました。留学先での実務を通じて新たなスキル・知識を習得し、その後の業務やキャリアアップにつなげることを目的としています。
c)シニア対象のキャリア研修の充実と副業の推進
「人生100年時代」と言われる中、シニア世代のキャリア自律も重要な課題の一つととらえております。40代・50代の各年代でキャリアやライフプランに関する研修を実施し、リスキル・学び直しやキャリア自律を推進しております。また、55歳以上の社員を対象にした副業制度は、利用者が徐々に増えており、セカンドキャリアをみすえながら、これまで培った経験・スキルを社外で活かしております。
d)女性社員の活躍推進
女性管理職比率は、近年16%前後で推移していましたが、2023年度は17.8%となりました。グループ内や出資先企業との人事交流で、出向先企業の役員や管理職として活躍の場を広げている女性社員も増えております。また、新卒社員の女性比率は2020年から50%前後で推移しており、全社員における女性比率は年々上昇しております。当面の目標である女性管理職比率20%(2025年度末)達成に向け、成長機会の創出などに積極的に取り組んでまいります。
<新・人事労務制度>
2024年6月、日本テレビ放送網㈱は新しい人事労務制度を導入いたします。新・人事労務制度のコンセプトは⑴社員の自律的なキャリア形成の実現、⑵社員一人ひとりの専門性を高め、スキルを発揮する仕組みづくり、⑶役割・成果に基づく公正な評価・処遇、⑷成長しようとする人が活躍できる会社づくり、の4つです。
管理職に対しては、担う役割の難易度や責任の重さなどに応じて等級を定める「役割等級制度」を導入するとともに、ライン管理職となる「マネジメント職」と専門性・スキルで貢献する「スペシャリスト職」に複線化いたします。また、一般社員については、職務遂行能力に応じて等級を定める「職能等級制度」を継続しつつ、評価上位者に対して飛び級の仕組みを新たに導入いたします。
これまで以上に社員が自律的にキャリアを描き、専門性を高め、高いモチベーションを持って事業に貢献できる環境を整えることで、会社の継続的な成長につなげてまいります。
■社内環境整備方針
<健康経営の推進>
社員の健康を最重要と考え、社員の健康増進・健康意識の向上に努めております。健康経営推進委員会を中心に、健康保険組合とも連携しながら、全社的に健康経営の推進に取り組んでおり、具体的には以下の環境を整備しております。

a)HRM(Human Resource Manager)の設置
社員一人ひとりと向き合いサポートする管理職「HRM」を各局・室に1名ずつ配置しております。健康保持・増進や職場環境の改善に向けて、直属の上司とは違う立場で面談を行うことで、早期の把握と対応につなげる役割を担っております。2023年度は、対象となる社員の約8割が自局・室のHRMとの面談を1回以上行っております。
b)健康経営に関するイベント・研修の実施
2023年度は「生活リズムを整えよう」をテーマに掲げ、㈱ティップネスによる「朝活ヨガ」や「体組成測定会」、㈱アールビーズのシステムを使った「社内ウオーキングバトル企画」のほか、「快眠セミナー」や、社員食堂で毎月1週テーマに応じたスペシャルメニューを提供する「健康食事週間」などを行いました。また、定期健診の結果の見方や、メンタルヘルスなど様々なテーマに関するオンライン研修を実施し、社員一人ひとりの健康に対する意識の向上に努めております。
2024年度は、健康に影響を及ぼす食事・飲酒・睡眠・運動・喫煙などの生活習慣の改善を重点に、心と体の健康のための取り組みをより一層推進してまいります。
c)年次有給休暇取得キャンペーンの実施
ワーク・ライフ・バランス向上のため、連続休暇取得を奨励する「ホリデー24」キャンペーンや休暇取得奨励日「リフレッシュデー」の設定などを実施し、年次有給休暇の取得を促進しております。こうした取り組みを通じて休日を取りやすい環境を整備するとともに、コミュニケーションツールの適切な活用方法を周知するなど、ワーク・ライフ・バランスと業務の円滑化を図っております。
d)エンゲージメント・サーベイの実施
組織と社員の状態を可視化し分析するため、毎月、全社員に対して「エンゲージメント・サーベイ」を実施しております。働きがいのある職場づくりと組織力の強化のため、管理職向けの説明会などを通して、サーベイ結果から算出されるエンゲージメントスコアのマネジメントへの活用を促進しております。
<誰もが働きやすい環境の整備>
現在も日本企業の平均より長い勤続年数と低い離職率ではありますが、高い意欲と能力を持つ多様な人材が、その力を最大限発揮しながら、より安心して働き続けられる環境の整備に努めております。具体的には以下の取り組みを行っております。
a)男性社員の育児目的休暇取得の促進を含む子育て支援の強化
充実した育児休業制度・勤務時間短縮制度などを整備しており、産休・育休復帰率は100%を維持しております。さらに、管理職に出産・育児関連制度をまとめたパンフレットを配布するなどの取り組みを通じて、男女問わず、それぞれの価値観やライフスタイルが尊重されながら、育児と仕事が両立しやすい職場環境が実現できるよう努めております。
また、これらの制度や慶弔見舞金・慶弔特別休暇は、自身または配偶者(パートナー)が出産した社員はもちろん、特別養子縁組等で養子を迎えた社員も利用することができ、ライフスタイルや家族の在り方の多様化に対応できるよう取り組んでおります。
b)従業員持株会制度によるモチベーション向上
従業員持株会制度は、会員となった従業員が日本テレビホールディングス㈱の株式を毎月定額で購入する制度で、従業員の拠出金に対して会社からの奨励金が補助として上乗せされて株式を購入します。奨励金率は国内上場会社でも上位です。
2023年度は開局70年を記念して、これまで日本テレビ放送網㈱で行われていた本制度の対象を、日本テレビホールディングス㈱および連結子会社全社の従業員へ拡大し、希望する対象従業員に70株を配布する取り組みも行いました。グループ全体で、従業員の資産形成に寄与するとともに、株価への意識を高めることで業績拡大へのモチベーション向上につなげております。
c)ハラスメント防止研修やDE&I研修の実施
多様な人材がお互いに尊重しながら働きやすい環境を作るため、ハラスメント防止研修やLGBTQ研修などを継続的に行っております。2023年度は、SDGs、ダイバーシティ、ジェンダー表現などをテーマに研修を実施しました。また、メディア企業として、多様性のある社会の実現に寄与する情報発信にも取り組んでおります。
d)テレワークの活用など柔軟で多様な働き方の推進
ワーク・ライフ・バランスの推進、特に、意欲ある社員の育児・介護と仕事との両立を支援するため、テレワークなど働き方の多様化を実現する制度を整備しております。今後も、生産性向上に向け、ICTの活用やDXによる業務効率化、オフィス環境の改善をさらに進めてまいります。
日本テレビ放送網㈱においては、「① 戦略」にて記載した、人材の多様性の確保を含む人材の採用・育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
■女性管理職比率
女性の活躍推進のための重要な指標と考え、2025年度末までに女性管理職比率を20%とすることを目標としております。さらに、女性社員比率が現在28%であることなども踏まえ、2030年度末までには25%に到達することを目指しております。
■産休・育休復帰率
女性活躍推進および多様性の確保において、産休・育休復帰率は重要な指標といえます。現在、100%を達成しており、今後も、100%を維持することを目標としております。
■有給休暇取得率
健康でクリエイティブな職場環境の実現に向け、重要な指標の一つととらえ、各局・室のHRMや労働組合とも連携しながら、上昇に努めております。
■定期健診受診率
定期健診は病気の早期発見・予防や生活習慣の見直しの基礎となります。健康経営の各施策により、従業員の健康に対する意識は高まり、定期健診受診率は100%を維持しております。今後も100%を継続することを目標としております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。当社グループは、これらのリスクの存在を認識した上で、その回避及び顕在化した場合の対応に努める方針です。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクを網羅するものではありませんのでご留意下さい。
(地上波テレビ放送の媒体価値と収益性)
当社グループの主たる事業であるメディア・コンテンツ事業は、地上波テレビ広告枠の販売による地上波テレビ広告収入に依存しており、当連結会計年度における地上波テレビ広告収入は総売上高の51.7%を占めています。一般に、広告市況は経済のマクロ動向と連動する傾向があり、日本国内においては、少子高齢化と人口減少により大きな市場の伸びが期待できない状況です。また、長引くロシアによるウクライナ侵攻や海外景気の下振れ等の外的環境の変化により広告市況が影響を受ける可能性があります。これらに加え、メディアの多様化やインターネット広告市場拡大等の変化により、地上波テレビ放送事業は厳しい状況に晒されています。2023年の日本の総広告費(暦年、㈱電通調べ)は、7兆3,167億円(前年比103.0%)となったものの、地上波テレビの広告費は1兆6,095億円(前年比96.0%)と前年割れの状況が継続しています。インターネット広告費はこのような状況下においてさらなる成長(前年比107.8%)を見せており、広告価値における地上波テレビ放送が有してきた絶対的優位性の維持・確保が課題であると認識しております。
当社グループとしましては、視聴者から支持される番組を作り続けることにより、視聴率・視聴質の維持・向上に努め、今後厳しさが増すと予想される市場環境の中でも、地上波テレビ広告市場におけるシェアを圧倒的に拡大することで地上波テレビ広告収入の確保に努めております。これに加え、SAS(スマート・アド・セールス)の活用や、新たなクライアントニーズを取り込むことで、地上波テレビ広告の高度化と価値の維持、広告体験の向上に努めております。近年高まっている、広告の効果分析に対するニーズに対しては、DMP(顧客情報システム)構築や獲得した大量のデータの有効な処理・活用のためのデータサイエンティストの確保などを推進し、視聴データの整備を進めると同時に、さらに広告価値を高める方法についても引き続き研究を行っております。これに加え、AIを活用した新セールス方法の開発を目指す㈱松尾研究所との共同研究や、地上波広告でインターネット広告と同様のリアルタイムなプログラマティック取引を実現するアドプラットフォーム(Ad REACH MAXプラットフォーム)の開発を進めるなど、広告商品の高度化を推進しています。
また、2022年5月に策定した中期経営計画において「テレビを超えろ、ボーダーを超えろ。」をスローガンに掲げており、コンテンツ戦略本部の設立、知的財産(IP)コンテンツの開発、新たな共創体制の構築などを実行し、コンテンツの価値最大化を目指してまいります。
しかしながら、今後の日本経済のマクロ動向や広告市場の動向により、地上波テレビ広告収入が大幅に縮小し、かつ、地上波テレビ広告収入の落ち込みを補う非放送広告収入を創出できなかった場合は、当社グループの存続に関わる、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(メディアの多様化)
通信環境の進化とともにスマートフォンやタブレット等の端末が広く普及する中、インターネットメディアをはじめ、視聴スタイルが多様化しております。当社グループは、地上波・BS・CSの3波協業を皮切りに、2014年4月にアメリカの動画配信会社 Hulu,LLC の日本市場向け事業(定額制動画配信サービス「Hulu」の運営)を承継し、SVOD(Subscription Video On Demand:定額動画配信)事業に参入し、現在ではTVOD(Transactional Video On Demand:都度課金型動画配信)事業も開始しております。また、「日テレ無料!(TADA)by日テレオンデマンド」において、2014年度より放送事業者として初めて、一部放送コンテンツで広告付き無料見逃し配信(キャッチアップ)のサービスを開始し、インターネット環境下での放送コンテンツ視聴のBtoB事業化に着手、2015年には民放公式テレビポータル「TVer」をスタートし、AVOD(Advertising Video On Demand:広告付き無料動画配信)事業も順調に成長しております。
SVOD事業及びTVOD事業は、今後の動画配信市場の拡大と、それに伴う会員数の拡大という目標に向け、連続ドラマからHuluオリジナルストーリーへの展開や、スポーツコンテンツについてテレビ放送との工夫のあるライブ配信を行うなど、当社グループが展開しているコンテンツ・サービスとの連携を強め、注目を集めています。AVOD事業はドラマの見逃し配信を中心に着実に利用者を拡大しております。さらに2021年10月より「日テレ系ライブ配信」として一部番組の無料ライブ配信を民放で初めて実施いたしました。2022年4月からは在京民放キー局全てが一部番組のリアルタイム配信を開始しております。当社グループといたしましては、今後も地上波テレビ放送にとどまらず多様化するメディアに積極的に参入してまいります。
しかしながら、これらの事業は成長分野であるとともに、豊富な資金力を有する外資系企業が参入するほか、国内配信事業の統合など競争環境は年々厳しくなっております。事業が想定通りに伸長しない場合や、ネットワークインフラと端末の高機能化等により、市場を取り巻く環境が大きく変容する可能性もあります。このような場合には、投下資本の回収が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
映画・イベント等への展開に関しては、慎重にシミュレーションを行った上で、投資判断を行っております。しかしながら、実際の映画の興行収入や劇場公開後の二次利用収入・イベントチケット販売収入や関連グッズなどの物品販売収入等がシミュレーション通りの収益を確保する保証はなく、当初計画した収益を確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(地上波テレビ放送の視聴動向)
テレビ広告収入に大きな影響を及ぼすのが視聴率動向です。当社グループは、国民の皆さまの視聴ニーズを的確に捉え、最も視聴され共感されるコンテンツの制作を目指しております。地上波での2023年の年間平均視聴率は、情報発信や経済活動が活発なコア(13歳~49歳男女)層において、全日帯、ゴールデン帯、プライム帯の3部門全てでトップとなり、11年連続で三冠を維持しました。
コンテンツ制作においては、新たなデジタルテクノロジーの導入を進めるなどして制作体制を強化するとともに効率化を進めております。当社グループが有するコンテンツ制作力を結集し、引き続き、視聴者の皆さまから支持される良質なコンテンツを開発してまいります。
しかしながら、日本国内の人口減少やコンテンツの視聴環境の多種多様化により、地上波のタイムテーブル全般で視聴率の大幅な低下があった場合には、地上波テレビ広告収入の大幅な減少等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(放送権・配信許諾等ライセンスの高騰)
メディア・コンテンツ事業を主たる事業とする当社グループは、オリンピックやFIFAワールドカップ等、全国民が注目するスポーツイベントの放送をテレビ放送事業者の使命として行ってまいりました。しかしながら、近年これらのスポーツイベントの放映権料が高騰する一方で、高額なテレビ放映権料に見合う広告収入の確保は年々困難になっており、その採算性は悪化する傾向にあります。当社グループといたしましては、今後も、国民の皆さまに娯楽を提供するという放送事業者としての使命を全うすべく、スポーツイベントのテレビ放送に携わっていく所存ですが、テレビ放映権料のさらなる高騰は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
動画配信事業においては豊富なコンテンツを安価で提供することが、サービスが顧客から選ばれる要因となっていることから、近年、コンテンツホルダーの交渉力が高まっており、配信許諾等ライセンスが高騰する傾向にあります。当社グループといたしましては、コンテンツの選別を精緻に行い、慎重に収支のシミュレーションを行った上で、ライセンスを購入しております。また、購入したライセンスは効果的に利用すべく、コンテンツ中心主義の下、当社グループが有する地上波テレビ放送をはじめとする各メディアとの連携を図り、収益の最大化を進めております。しかしながら、配信許諾ライセンスのさらなる高騰により、投下資本の回収が困難なケースが増えた場合は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(コンテンツ制作の取り組み)
当社グループでは、今後、多様化するメディアの中で、制作したコンテンツのテレビ放送での利用は、ゲーム・商品化・映画・舞台等様々な利用方法と並列と捉えてマネタイズを組み立てる必要があり、IP(知的財産)の構築及び確保が重要であると考えております。当初より様々な利用を前提とし、権利処理関係においてより上流に位置することになるIPの構築には、これまでのテレビ放送を前提としたコンテンツ制作とは異なるケースも多々発生し、構築までに時間と費用がかかる場合があります。今後、当社グループの収入源の多様化を図るためにもIPを構築し確保することは重要でありますが、想定した通りのIPの構築が進まない場合、あるいはIPの構築に想定以上のコストが必要となった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
番組制作においては、働き方改革の促進に伴い、クラウド上での編集システムの検討など効率化に取り組んでおります。しかしながら、現状の番組クオリティを維持するためには、スタッフの人員増や編集システムへの投資など、費用が増加する傾向にあります。
また近年、SNS等のインターネットメディアの拡大に伴い、テレビ番組以外の制作物も増加しております。その対応のための人材確保や外部リソースの活用などを推進しておりますが、業種を問わずニーズが高い分野のため、優秀な人材を確保できない場合や確保できたとしても高コストになってしまうことも想定されます。計画的な設備投資、人材の採用を行い、コスト抑制に努めてまいりますが、想定を超える技術革新、人件費の高騰が進んだ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(著作権等の知的所有権)
当社グループの制作するテレビ番組は、原作者、脚本家、音楽の作詞・作曲者、レコード製作者、実演家等多くの人々(以下、「著作者等」という。)の知的・文化的な創作活動の成果としての著作権や著作隣接権(以下、「著作権等」という。)が密接に組み合わされた創作物です。著作権法は、その第1条においてこれらの創作活動を行う著作者等の権利を定め、その公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、文化の発展に寄与することを目的としています。
当社グループは制作したテレビ番組を、地上波テレビ放送や動画配信、BS・CS等の衛星放送、ケーブルテレビへの配信、DVD / Blu-ray Disc等によるパッケージメディア化、海外への番組販売等によるグローバル展開、番組キャラクター等のマーチャンダイジングや出版化等によりマルチユース利用することで収益を獲得しております。この際、様々な著作者等が保有する著作権等に十分配慮しつつ展開することが求められます。
しかしながら、当社グループの制作するテレビ番組は、原則として日本国内における地上波放送や衛星放送を前提として著作者等から著作権等の利用を許諾されており、これら以外への利用を目的とした権利取得が十分に行われていないテレビ番組が存在します。このため、テレビ番組をインターネット等の新たなメディアでマルチユース利用する場合や、海外展開をしていく上で、予め著作者等の許諾を得るか、放送と並行して、あるいは放送後に著作者等の許諾を再度取得することが必要不可欠となります。これらの権利処理には多くの時間と費用が必要となる可能性があります。当社グループでは、新たに番組を制作する際には予めマルチユース利用を前提とした著作権等の許諾を得て制作を進めていくほか、これまでに制作した番組については、必要に応じて適切に著作者等から著作権等の許諾を取得する作業を行い、コンテンツのマルチユースがスムーズに進められるよう心掛けております。
万が一、当社グループが著作者等に対し、不適切な対応を行った場合には、放送等の差し止め要請や損害賠償請求を受ける可能性があります。このような場合には、収益の大幅な減少・訴訟等に伴う費用の大幅な増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、2014年12月に総合スポーツクラブ事業を営む㈱ティップネスを連結子会社化し、生活・健康関連事業を展開しています。生活・健康関連の市場規模は拡大傾向にあるものの、新規事業者の参入などにより事業の競争環境は厳しさを増しております。㈱ティップネスは従来の総合型スポーツクラブ「ティップネス」や24時間営業のトレーニングジム「FASTGYM24」を展開し、顧客層の獲得へ取り組んでおります。また、2020年3月には水泳スクールを営む㈱ジェイエスエスを関連会社とし、㈱ティップネスとのシナジーも含め、本セグメントにおけるスクール事業の強化に努めております。
しかしながら、スポーツ施設の運営において、同業他社や他のスポーツ関連サービス等との競合により会員を計画通りに確保できない場合や、価格競争により平均単価が低下した場合、あるいは賃貸契約を更新できずに店舗を閉鎖せざるを得ない場合には、安定的な収益が得られない可能性があります。また、新規出店やリニューアルなどには、規模に応じた投資を要するため、会員の確保が計画通り進まない場合には投下資本の回収が困難になる可能性があります。特に昨今では、コロナ禍において減少した会員数の回復に時間を要しております。当社グループといたしましては、不採算店舗の閉鎖も実施しつつ、コスト構造の見直しを通じて収益性の回復を図るほか、デジタル化を通じた新規事業の創出やデータの活用を通じ、健康ニーズに迅速・的確に応えるコンテンツ・サービスの開発に取り組んでまいります。しかし、引き続き会員数の回復が見込めない場合や想定外の多額の費用投下が必要になった場合などには、収益の大幅な減少やさらなる不採算店舗の閉鎖コストの発生、固定資産のさらなる減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、汐留及び番町地区等において不動産賃貸事業を計画、実施しており、保有地の活用検討を進めております。
当社グループといたしましては、建設費の高騰等を想定し、できる限りコストコントロールに努めた上で事業を進めてまいりますが、予期せぬ事情により今後の計画に何らかの影響が及んだ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、2014年に岩手県九戸発電所と胆沢発電所を稼働させ、2018年5月には、大規模営農型の熊本県小国発電所を稼働させました。当社グループではクリーンエネルギーの創生は、環境に配慮した発電事業として社会的に意義のあるものと考えており、電力会社と固定価格買取保証の契約を締結することなどにより、長期安定的に収益を計上できるよう取り組んでおります。
しかしながら、合理的な理由を前提とした電力会社から事業者への出力抑制の要請等で、計画通りに買い取りが行われないような状況が発生した場合や、設備トラブルや天候不順・天変地異等により発電量が大幅に低下した場合、営農型発電所において営農の継続性に疑義が生じた場合、稼働済みの発電所から撤退する場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、2022年度から2024年度を計画期間とする日本テレビグループの中期経営計画「日本テレビグループ 中期経営計画2022-2024」において投資枠を1,000億円とし、M&A等による事業セグメントの拡大をグループ全体で進めております。しかしながら、M&Aについては、適切な候補先が見つからない場合や、条件に合致しないなどの理由により、当社グループの想定通りに取引が進まない可能性があります。
M&Aを行うにあたっては、事前に対象企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行い、十分にリスクを回避するように努めていますが、対象企業に偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査で把握できない問題が生じる可能性も否定できません。
また、M&Aにおいては、対象企業とのシナジー効果を含んだ金額での合併・買収価額となることが通常であるため、事前段階から綿密な統合計画を作成し、合併・買収後において、速やかに統合計画を実行することにより、早期のシナジー発現を目指しております。しかしながら、合併・買収後に重要な役員・従業員の退職や取引先との関係悪化といった躓きが生じた場合や、事業環境の変化その他の理由により統合後の事業展開が計画通りに進まず、シナジー効果が発現できない場合には、のれん等の減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループが事業活動を行う上で、人材の確保は重要な課題と捉えています。様々なプラットフォーム・デバイスや海外に向けたコンテンツ制作等、現在の事業をさらに拡大するために、また、新たなビジネス・サービスを創出するためには、それぞれに必要なスキルを有した人材が不可欠です。しかしながら、昨今、労働需要がひっ迫し、労働力及び人材の確保が難しくなってきております。また、今後、DXやAIがますます重要になることから、デジタル技術を用いて新規サービス、業務改善につながるシステム等を開発するエンジニアや、獲得した大量のデータを適切に分析・活用できるデータサイエンティストに対するニーズが一段と高まってきております。当社グループにおきましても、このような「デジタル系人材」を獲得することが非常に重要と考えておりますが、様々な業界・企業が求める人材であるため、採用は容易ではありません。
当社グループでは、テレワークやコミュニケーションツールの活用をはじめとした働き方改革に全社を挙げて取り組み、社員や協力スタッフにとって働きやすい環境の整備に努めることで、人材の確保に注力しております。さらに、キャリア採用の強化等で多彩な人材を迎え入れ、当社グループの一番の強みであるコンテンツ制作力を強化するとともに、新規事業にも積極的に取り組んでおります。このほか、経理等の重要な管理部門においても、専門スキルを有する「コーポレート人材」を継続して採用するなどし、ガバナンス機能の強化に努めております。
これらに加え、優秀な人材の永続的な確保という観点では、社員の流出を防ぐことも重要であると考えております。より働きやすい環境を目指して絶えず制度を改善していることから、離職率は、日本テレビ放送網㈱が1%程度である等極めて低い水準を維持しております。特に女性が働きやすい環境作りに注力しており、出産後の女性の復職率は非常に高く、出産を経た女性もキャリアを積み上げていくことが可能な環境を整えております。
また、人材の確保のみならず、人材の育成も事業の成長において重要な要素であると考えております。当社グループでは、業務に必要なスキル・知識、マネジメント能力等の習得に向けて、OJT(On-the-Job Training)を軸とした育成に加え、Off-JT(Off-the-Job Training)の機会を増やしております。また、部署の横断プロジェクトの立上げや社内あるいはグループ内外の人事交流を深めること等を通じて、優秀な人材の育成に努めております。評価制度を充実させるとともに、報酬については成果・業績に基づく賃金体系を導入しており、社員のモチベーション及びパフォーマンス向上に取組んでおります。
しかしながら、労働力・人材を十分に確保できなかった場合、また労働関係の法令や制度の改正等により人材に関わる費用が増加する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、人的資本を活かす上で、適切な組織の構築と適材適所の人材の配置が重要であると考えております。組織においては、当社グループが創り出すコンテンツの価値最大化とDXを実現するための組織改編や、生活・健康関連事業を強力に推進・統括する部署の創設、社内ベンチャーとして誕生したVTuber事業の分社化等、中期経営計画の達成に向けて、適切な組織の構築に努めております。また、会計システムにおける伝票の申請・承認・保管及び受取請求書の電子化、クラウドサービスの導入等ITテクノロジーの活用、社内横断プロジェクトを通じた業務のボトルネックの改善等、業務の効率化を図り、余裕が生じた労働力を新規事業に充当することにより、事業の拡大に努めております。
しかしながら、人的資本が有機的に機能しない事態に陥った場合、企業活動が停滞し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
なお、2[サステナビリティに関する考え方及び取組]において「(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標」に関する記載がありますので併せてご覧ください。
当社グループは、事業の用に供する様々な不動産を保有しております。このうち、汐留地区にある本社ビル「日本テレビタワー」及び番町地区に保有する不動産は、メディア・コンテンツ事業及び不動産関連事業に供している資産で、当連結会計年度末における汐留地区の「日本テレビタワー」及び番町地区の保有不動産の帳簿価額は合わせて、2,111億5千8百万円(建物及び構築物と土地の合計額)であり、当社グループの総資産の17.8%を占めております。
当連結会計年度末現在、汐留地区の「日本テレビタワー」及び番町地区の保有不動産に関して減損の兆候は認識しておらず、将来における回収可能性はあるものと認識しており、当面、減損の兆候を認識するような事態にはならないと考えております。しかしながら、将来において、経営環境の著しい悪化等により当社グループの収益性や営業キャッシュ・フローの大幅な悪化が見込まれた場合や、地価が著しく下落した場合、保有する不動産に対して減損損失を計上する必要があるため、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
当社グループは、放送事業における基幹システムの更新・改修に加え、動画配信事業におけるシステムの開発、さらにはクラウドを利用する番組制作システムやインカメラVFXといった新技術への対応を行うなど、次世代技術を含めた開発・新規投資を行っております。加えて、新規に事業を開始する際には新たに対応するシステムの構築が必要となる場合もあります。事業の効率性を高め、競争力のあるサービスを提供するためには、これら様々なシステムの重要性はますます高まっています。
必要と認められるシステムは、初期費用、ランニング費用、その後の必要な改修費用等を慎重にシミュレーションし、外部ベンダーへの依頼やグループでの内製及びクラウドサービス等の利用により、システム開発及び改修の必要性を精査することでコストコントロールに努めて構築しております。
しかしながら、近年の技術革新のスピードや消費者ニーズの変化はとても速く、当初の予想を超えて開発・投資した技術やシステムが陳腐化する等、当初計画値以上の再投資が必要になる場合、さらに投資額に見合った収入の確保あるいは業務の効率化が見込めない場合には、固定資産の減損及び減価償却費の増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、近年ではサイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化していることから、各種システムのセキュリティリスクは年々高まっています。当社グループとしても様々な高度なセキュリティ対策を講じていますが、これらを超える新たなセキュリティ上の脅威が発覚し、その対策として多額の投資が発生した場合、あるいは個人情報や営業上の機密の漏洩をはじめとするリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、事業上の結びつきまたは資金運用を目的とし、複数の会社・組合等に投資を行っています。一方で、当社グループは、保有有価証券等の評価に当たり、会計基準に則した社内ルールを設定し、減損処理等の必要な措置を適宜施し、投資先企業の業績や市場での取引価額が当社グループの業績に適切に反映されるよう厳格に運用しています。
新規の投資案件に関しては、リスク及びリターンを充分に考慮し、投資判断を行っています。また、保有している有価証券等につきましても、投資先との関係、取引状況、協業機会、シナジー効果及び市場の動向や投資先企業の業績を定期的にチェックし、最大限の収益獲得に努めています。しかしながら、これらの投資先企業の業績や市場動向を確実に予想することは困難であり、将来的に当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
認定放送持株会社は、放送法による認定を受けることで、複数の地上波放送局とBS放送局及びCS放送局を子会社として保有することが認められています。当社は日本テレビ放送網㈱、㈱BS日本、㈱CS日本を子会社とする認定放送持株会社として認定を受けています。今後、認定放送持株会社の資産に関する基準等、放送法で定める基準を満たさなくなった場合には、認定の取り消し(放送法第166条)を受ける可能性があります。仮に認定の取り消しを受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
また、放送法で定める外国人等が直接及び間接に占める議決権の割合が、当社の議決権の20%以上となる場合には、認定放送持株会社としての認定が取り消されることになります。このため、このような事態に至る場合は、放送法に基づき、外国人等が取得した当社株式につき、株主名簿への記載または記録を拒むことができ、その議決権は制限されることとなります。
当社グループの主たる事業であるメディア・コンテンツ事業におけるテレビ放送は、「放送法」及び「電波法」等の法令による規制を受けています。
このうち、放送法は放送の健全な発展を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議機関の設置、BS・CS放送等の衛星基幹放送の業務の認定に関する基準等を定めています。また、電波法は電波の公平且つ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的としています。電波法第4条は電波を送信する「無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。」、電波法第13条では「免許の有効期間は、免許の日から起算して五年を超えない範囲内において総務省令で定める。」など、地上基幹放送の免許を定めています。当社グループのテレビ放送事業については、当社が1952年7月31日に我が国初のテレビ放送免許を取得し、それ以来、放送局の再免許を受けてきました。2012年10月1日には認定放送持株会社化した当社に代わって、子会社の日本テレビ放送網㈱が同日免許を承継し、現在に至っております。また、㈱BS日本、㈱CS日本につきましてはそれぞれ衛星基幹放送の業務の認定を受けており、放送法等の法令による規制を受けています。
所定の事態が生じた場合における総務大臣の権限として、衛星基幹放送に関しては放送法の「業務の停止」(第174条)や「認定の取り消し等」(第103条、第104条)、地上基幹放送に関しては電波法の「電波の発射の停止」(第72条)や「無線局の免許の取り消し等」(第75条、第76条)を定めております。将来にわたるテレビ放送事業の継続は、当社グループの存立をも左右する問題であり、当社グループといたしましては、そのような事態が生じることのないよう常に公平・公正さを保ち、信頼される番組作りを心掛け、放送の社会的使命を果たしていく所存です。具体的には視聴者センターを設け、視聴者の皆様の声を伺い番組作りに役立てるほか、考査部や番組審議会を組織し、定期的に放送番組をチェックすることで放送倫理を保つことを心掛けます。しかしながら、仮に放送法や電波法に反するような状態が生じ、放送事業の免許や認定の取り消し等を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
当社グループは、動画配信サービスや通信販売事業、スポーツクラブ事業等のサービスを展開するにあたり、会員及びユーザーの氏名、住所、電話番号、口座情報などのほか、番組の観覧者や出演者などの個人情報も取り扱っております。当社グループは、これらの個人情報は当社グループの事業の運営に際し必要不可欠な資産であると認識しております。従って、当社グループは、全ての会員及びユーザー並びに番組関係者等が安心して当社グループのサービスの利用若しくは番組等と関係を築くことができることが重要であると捉え、個人情報保護の観点から、従業員等に対する研修を行い、社内ルールの徹底を図ることで情報セキュリティの確立に注力しております。
しかしながら、昨今のサイバー攻撃の手口は高度化・巧妙化していると同時に個人情報の保護に関する法令等もますます複雑化しております。不正アクセス・不正利用などにより、当社グループの有する個人情報が漏洩した場合、あるいは複雑化する個人情報の保護に関する法令等に適切に対応できなかった場合、当社グループのデータ管理への信頼性の低下による各事業への影響並びに損害賠償等の発生により、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
我が国は元来、地殻変動や火山活動が発生しやすい地理特性にあり、地震・津波や噴火及びそれに伴う事故といった大きな被害が度々発生しております。これに加え、近年、地球温暖化に伴う異常気象の影響もあり、大型台風や局所的な集中豪雨といった風水害の危険性も高まってきております。
日本テレビ放送網㈱等は放送法により「暴風、豪雨、洪水、地震、大規模な火事その他による災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、その発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をするようにしなければならない」と災害時の放送を義務付けられております。当社グループは、報道機関としてこのような有事の際に、携わる社員・スタッフの安全を確保しつつ、国民の皆さまにいち早く正確な情報を伝達する使命を有しております。大規模災害が発生し、報道特別番組等を放送する場合には、事前に予定されていたCM放送を休止することがあるほか、被害状況によっては、当社グループの放送設備が被災し、テレビ放送自体に支障が生じる可能性があります。
当社グループではこのような大規模災害時でもテレビ放送を続けられるよう、番町地区に耐震性が高くBCPに対応したスタジオ棟を建設する等の対策を講じております。また、首都圏が甚大な被害に見舞われ、東京地区からのテレビ放送が困難な事態に陥った場合には関西地区からの放送が実施できる仕組みを整えることで放送の継続を可能とする体制を築いております。
このほか、テレビ放送以外の事業におきましても、保有または利用する設備等が被災した場合、あるいは携わる社員・スタッフが何らかの被害にあった場合でも事業への影響を最小限に抑えられるよう、様々なケースを想定してシミュレーションを行ない、対策を講じております。
しかしながら、想定以上の事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
なお、気候変動に関しましては、2[サステナビリティに関する考え方及び取組]「○ガバナンス及びリスク管理 ②リスク管理」及び「(1) 気候変動問題に関する重要な戦略並びに指標及び目標」に記載しております。
新型コロナウイルス感染症を含む感染症の拡大等により、テレビ広告収入への影響や公開映画・イベント等の延期・中止、スポーツクラブの時短営業やテーマパークの入場制限などの影響が広範囲に及ぶことが想定されます。これらにより、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要、及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成には、予想される将来のキャッシュ・フローや経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告されている数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」にて記載しておりますが、経営者による見積りを要する主な会計方針及びそれらに内在する見積り要素は下記のとおりです。
なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは第5「経理の状況」の連結財務諸表の「重要な会計上の見積り」に記載しております。
売上債権等の貸倒損失に備えるため回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。将来、債務者の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
棚卸資産、番組勘定は、評価基準として原価法(収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)を採用しております。市場の需給動向や回収可能額を超える番組制作費の発生等により、棚卸資産、番組勘定の収益性が低下した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
繰延税金資産の回収可能性を評価するに際しては将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算定されております。これらの前提条件には、長期的な金利水準、将来の給付水準、退職率等が含まれますが、実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、退職給付に係る負債及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
固定資産については、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に、その差額を減損損失として計上しております。回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のいずれか大きい方としていることから、不動産取引相場や賃料相場が変動した場合や固定資産の収益性が低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。将来の市況悪化や投資先の業績不振など、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生するなどにより投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
(2) 経営成績の概要・分析
当連結会計年度における我が国の経済を概観すると、景気はこのところ足踏みもみられますが緩やかに回復しており、雇用・所得環境が改善する中で、各種政策の効果もあって、回復の継続が期待されています。しかしながら、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動、さらに、令和6年能登半島地震の経済に与える影響等にも十分注意する必要があります(政府「月例経済報告」2024年3月)。
こうした経済環境の中、2023年の日本の総広告費(暦年、㈱電通調べ)は、過去最高の7兆3,167億円(前年比103.0%)と伸長しました。このうち地上波テレビの広告費は1兆6,095億円(同96.0%)となりました。インターネット広告費は引き続き高い成長率を維持し3兆3,330億円(同107.8%)となったほか、テレビ番組の見逃し配信やリアルタイム配信サービスなどテレビメディア放送事業者が主体となったインターネット動画配信の広告費である「テレビメディア関連動画広告費」も443億円(同126.6%)と高い伸びを見せています。
テレビメディア広告費(関連動画広告費含む)とインターネット広告費(暦年)
(単位:億円)
(㈱電通調べ「2022年/2023年 日本の広告費」)
このような状況の下、当社グループは、在京キー局間の2023年度平均個人視聴率において、全日帯(6~24時)、ゴールデン帯(19~22時)でトップとなりました。また、2023年の年間平均個人視聴率では、ゴールデン帯(19~22時)でトップを獲得しています。
日本テレビの年度平均個人視聴率と在京キー局間の順位(関東地区個人視聴率)
(㈱ビデオリサーチ調べ)
当連結会計年度における当社グループの売上高は、主たる事業であるメディア・コンテンツ事業において、タイム収入の減少やスポット広告費の地区投下量が前連結会計年度を下回った影響などで、地上波テレビ広告収入が大きく落ち込んだものの、デジタル広告収入が堅調に推移したほか、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復によりコンテンツ制作収入や興行収入が増加したことや、la belle vie㈱及び㈱スタジオジブリの連結子会社化などにより、前連結会計年度に比べ95億4千4百万円(+2.3%)増収の4,235億2千3百万円となりました。
売上原価と販売費及び一般管理費を合わせた営業費用は、新型コロナによる行動制限がなくなったことを受けて事業費が増加したことや、「パリ2024オリンピック」の放送権料に係る評価損の計上、la belle vie㈱及び㈱スタジオジブリの連結子会社化による費用増などにより、前連結会計年度に比べ142億6千1百万円(+3.9%)増加の3,816億4千6百万円となりました。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ47億1千6百万円(△10.1%)減益の418億7千7百万円、経常利益は22億7千2百万円(△4.4%)減益の495億3百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、la belle vie㈱に係る減損損失の計上があったものの、投資有価証券売却益や段階取得に係る差益の計上などにより5億7千8百万円(+1.7%)増益の346億6千万円となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
(メディア・コンテンツ事業)
地上波テレビ広告収入のうちタイム収入は、「ラグビーワールドカップ2023™」などの大型スポーツ中継番組のセールスが堅調だったものの、レギュラー番組セールスの減速が続き、62億3千9百万円(△5.6%)減収の1,051億5千3百万円となりました。スポット収入は在京キー局の中で引き続き高いシェアを維持したものの、地区投下量が前連結会計年度を下回った影響などにより、64億6千9百万円(△5.4%)減収の1,138億7千4百万円となりました。この結果、地上波テレビ広告収入は前連結会計年度に比べ127億8百万円(△5.5%)減収の2,190億2千7百万円となりました。
BS・CS広告収入は、厳しい市況の影響を受け、前連結会計年度に比べ2億9百万円(△1.4%)減収の149億7千5百万円となりました。
デジタル広告収入は、民放公式テレビポータル「TVer」等による動画広告セールスが堅調に推移し、前連結会計年度に比べ17億4百万円(+33.1%)増収の68億6千万円となりました。
コンテンツ販売収入は、アニメ事業の海外向けセールスが好調だったことや、㈱スタジオジブリを連結子会社化した影響によって、前連結会計年度に比べ60億5千4百万円(+8.2%)増収の797億7千1百万円となりました。
コンテンツ制作収入は、新型コロナの影響からの回復によりイベントや展示会受注などが好調で、㈱ムラヤマが増収となったことから、前連結会計年度に比べ22億2千8百万円(+10.1%)増収の242億3千5百万円となりました。
物品販売収入は、ファッションECサイトを運営するla belle vie㈱を連結子会社化した影響によって、前連結会計年度に比べ52億8百万円(+28.8%)増収の233億4百万円となりました。
興行収入は、舞台「となりのトトロ」、「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス」、「ルーヴル美術館展 愛を描く」などのイベントがきわめて盛況に推移したほか、「アンパンマンこどもミュージアム」の入場者数が好調に推移していることなどにより、前連結会計年度に比べ46億6千万円(+47.2%)増収の145億4千万円となりました。
その他の収入は、前連結会計年度に比べ13億7千万円(+17.2%)増収の93億4千5百万円となりました。
この結果、メディア・コンテンツ事業の売上高は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含め、前連結会計年度に比べ85億9千万円(+2.2%)増収の3,935億6千7百万円、営業利益は前連結会計年度に比べ56億1千3百万円(△12.7%)減益の385億3千9百万円となりました。
メディア・コンテンツ事業の外部顧客への売上高の内訳は次ページの表のとおりです。日本の総広告費のうち、地上波テレビ広告費は縮小傾向にあり、当社グループにおける地上波テレビ広告収入は漸減しています。そのため、地上波テレビ広告収入の在京キー局間トップを継続しながら、媒体力を明確に示す為のデータ活用や、クライアントのニーズに即したセールス改革を通じて、テレビ広告の価値向上に努めております。また、インターネット広告へのシフト、動画配信事業の拡大が進む中、当社グループでは動画配信サービス「Hulu」によるコンテンツ販売収入と、広告付き無料動画配信を営む民放公式テレビポータル「TVer」によるデジタル広告収入の伸長を継続しております。加えて、la belle vie㈱及び㈱スタジオジブリの連結子会社化や、アニメ事業中心とした海外向けセールスの拡大、豊富なコンテンツと映画・イベントなどの事業を有機的に連動させることによる興行収入の増加など、収入の拡大に努めております。
外部顧客への売上高(メディア・コンテンツ事業)
(単位:百万円)
(生活・健康関連事業)
スポーツクラブ運営による施設利用料収入を主とする生活・健康関連事業の売上高は、キッズ会費収入の増加などにより、セグメント間の内部売上高又は振替高を含め、前連結会計年度に比べ4億3百万円(+1.6%)増収の264億5千6百万円となり、5億3千8百万円の営業利益となりました(前連結会計年度は4億3千8百万円の営業損失)。
当社グループは、デジタル化を通じた新規事業の創出やデータ活用を通じ、健康ニーズに迅速・的確に応えるコンテンツ・サービスの開発に取り組み、減少した会員数の回復を図ると共に、CDP(顧客情報システム)によるウェルネス経済圏の構築に向けて取り組んでおります。
(不動産関連事業)
汐留及び番町地区を主とする不動産関連事業の売上高は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含め、前連結会計年度に比べ6億3千5百万円(+6.0%)増収の112億7百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に比べ5億5千7百万円(+14.9%)増益の43億1百万円となりました。
当社グループは、不動産賃貸事業を実施しており、保有地の活用検討を進めております。
なお、当連結会計年度の期首より、従来「その他の収入」に含まれていた「コンテンツ制作収入」について、事業上の重要性が高まってきたことから別掲しております。前連結会計年度の情報についても、変更後の区分に組み替えて記載しております。
(資産)
流動資産は、現金及び預金の増加や1年内償還予定の公社債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ789億1千3百万円増加し、3,161億9千8百万円となりました。
固定資産は、投資有価証券の時価上昇があったことなどにより、前連結会計年度末に比べ688億8千4百万円増加し、8,671億円となりました。
この結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ1,477億9千7百万円増加し、1兆1,832億9千9百万円となりました。
(負債)
流動負債は、支払手形及び買掛金や未払費用・未払法人税等の増加などにより、前連結会計年度末に比べ127億6千7百万円増加し、1,182億8千2百万円となりました。
固定負債は、投資有価証券の時価上昇に伴う繰延税金負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ313億1千9百万円増加し、1,177億2千1百万円となりました。
この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ440億8千6百万円増加し、2,360億3百万円となりました。
(純資産)
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加や、投資有価証券の時価上昇に伴いその他有価証券評価差額金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,037億1千万円増加し、9,472億9千5百万円となりました。
なお、主要な自己資本比率の推移は下記のとおりです。
当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は下記の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、446億6千9百万円となりました(前連結会計年度は454億6千1百万円の資金の増加)。これは主に、税金等調整前当期純利益517億2千万円や減価償却費の計上137億8千5百万円、減損損失121億4千8百万円の計上による増加があった一方で、投資有価証券売却損益111億5千4百万円の計上や法人税等の支払い141億6千5百万円による減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の増加は、74億9千3百万円となりました(前連結会計年度は237億2千4百万円の資金の減少)。これは主に、投資有価証券の取得による支出432億5千万円があった一方で、有価証券の償還による収入180億円や投資有価証券の償還による収入222億1千2百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入172億3千2百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、配当金の支払い95億4千2百万円や自己株式の取得による支出65億7千万円等により149億6千万円となりました(前連結会計年度は94億5千2百万円の資金の減少)。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より375億5千5百万円増加し、1,124億7千1百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性に係る情報は下記の通りです。
(基本的な考え方)
・中期経営計画2022-2024
当社グループが2022年5月に策定した中期経営計画2022-2024では、あらゆるボーダーを超えた「感動×信頼のNo.1企業」として、生活者に新たな価値を提供し、企業価値のさらなる向上を図るため、以下の重点目標と取り組みを掲げております。
コンテンツの価値最大化
メディアコンテンツ領域においては「コンテンツ中心主義」を改めて掲げ、あらゆるプラットフォーム、デバイスに向けて生活者に最適なコンテンツを制作します。また、外部パートナーとの協業・共創を推進し、国内外に向けて発信していきます。
新規ビジネス創出の加速
VTuber事業を始めとした社内インキュベーションからの新規事業の強化・拡充を図るとともに、当社グループならではの価値を創造できる領域の探索・進出を行い、M&Aを含め、収益の柱となる事業領域への投資機会を追求します。
ウェルネス経済圏の構築
㈱ティップネスを始めとしたウェルネス経済圏を構築し、国民の健康寿命の伸長に貢献します。
・戦略的投資方針
当社グループは戦略的投資枠1,000億円を継続し、メディア・コンテンツ事業と生活・健康関連事業の強化と領域の拡張、さらに新規領域への挑戦に向けて投資を実行し、企業価値の持続的な向上を目指します。
・重要な経営指標
当社グループは、事業の規模と成長の尺度である「売上高」と、事業の収益性の尺度である「営業利益」を重要な経営指標とします。また、事業資産の効率的な利用と金融資産を活用した積極的な投資により「ROE(自己資本利益率)」の向上にも努めてまいります。なお、政策保有株式については保有の合理性について随時見直しております。
・株主還元政策
当社グループは、事業環境の変化への対応や収益基盤の強化、成長領域への投資の調和を図りながら、持続的な収益の拡大・成長に努め、業績動向など諸要素を勘案しながら継続的で安定的な株主還元を行うことを基本方針とします。 株主還元の詳細につきましては、「第4[提出会社の状況]2[自己株式の取得等の状況]及び3[配当政策]」をご参照ください。
(経営資源の配分に関する考え方)
当社グループは、上記財務方針に従い企業価値向上に資する経営資源の配分に努めてまいります。また、安定的な経営及び事業展開に伴う資金需要等に対して機動的に対応するため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準は定めておりませんが、事業活動等の資金需要を越える余剰資金に関しましては金融情勢等を勘案しつつ、安全性並びに流動性の高い金融商品で運用しております。
(資金需要の主な内容と資金調達)
当社グループにおける主な資金需要は、当社及び子会社が事業活動を行っていく上で必要な運転資金、設備投資、戦略的なM&A及び有利子負債の返済等です。
また、予定される主な投資実行は以下のとおりです。
・メディア・コンテンツ事業領域:知的財産(IP)開発、コンテンツ制作体制の強化
・新規事業領域:XR領域、メタバース領域をはじめとする成長テクノロジー投資、HR事業の拡大
・生活・健康関連事業領域:CDP構築のためのデータ保有企業との連携、ウェルネス経済圏構想の具体化
・サステナブル投資:社会に貢献する事業への積極的な投資の実行
これらの資金需要につきましては、主に自己資金によって賄う予定ですが、それを超える資金需要が発生する場合には当社グループ及びメディア・コンテンツビジネス業界を取り巻く諸環境や金融情勢等を総合的に勘案し、それぞれの時点において最も有利で最適と考えられる方法により資金調達を行う方針です。
また、当社グループは、CMS(キャッシュマネージメントサービス)を活用し、グループ内資金を一元的に管理しております。
なお、2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。
このほか、オペレーティング・リース取引を行っており、解約不能のものに係る未経過リース料は104億4百万円(1年内:29億6千5百万円、1年超:74億3千8百万円)です。
また、当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の建物賃貸借契約における連帯保証債務と従業員の住宅資金銀行借入に関する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2024年3月31日現在の債務保証額は、9億3千5百万円です。
当社グループの主たる事業であるメディア・コンテンツ事業の大きな柱は地上波テレビ放送事業であり、下記に記載のプライム帯(19~23時)などの番組を中心にタイムテーブルを編成し、広告枠の販売を行いました。
当連結会計年度における番組制作費は、レギュラー番組を中心にコストコントロールを行ったものの、「パリ2024オリンピック」の放送権料に係る評価損の計上等により、前期比18億4百万円(+2.1%)増加の893億3千1百万円(日本テレビ放送網㈱の数値)となりました。
(主な地上波レギュラー番組)
[プライム帯(19~23時)]
(注) 当連結会計年度内に改編を行っております。
(主な地上波単発番組)
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 当初に予想される契約期間が1年以内の契約については受注実績に含めておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.当社グループは、主要な顧客である広告主に対し、広告代理店を通じてテレビ広告枠の販売などを行っております。最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合を広告代理店別に示すと次のとおりです。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」に記載のとおりです。
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2[事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (3) 中期経営計画 2022-2024 ③財務方針」に記載のとおりです。
(1)la belle vie株式会社の完全子会社化
当社は、2023年4月21日付でファッションECサイト大手のla belle vie株式会社の創業者であるアラン・スラス氏らとの間で株式譲渡契約を締結し、2023年5月19日に同社の全株式を取得しました。この結果、同社は当社の連結子会社となりました。
なお、本株式取得の詳細につきましては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)連結財務諸表[注記事項](企業結合等関係)」に記載しております。
(2)株式会社スタジオジブリの子会社化
当社の連結子会社である日本テレビ放送網株式会社は、2023年9月21日開催の取締役会において、株式会社スタジオジブリの株式を追加取得し、子会社化(当社における孫会社化)することについて決議し、2023年10月6日付で株式譲渡契約を締結し、同日付で株式を取得しました。
なお、本株式取得の詳細につきましては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)連結財務諸表[注記事項](企業結合等関係)」に記載しております。
当社グループは、公共の資源である電波を預かる放送事業者として、多様化する視聴者ニーズと放送局を取り巻く技術面での課題に応えるため、AI(人工知能)を使用した番組制作の効率化や、将来の番組制作設備に関する技術検証などに取り組んでおります。
メディア・コンテンツ事業における研究開発項目は、以下を主要テーマとしております。
(1) コンテンツ制作や放送・配信運行へのAI活用
映像・音声のAI解析結果をCG 表示する基本プログラム「エイディ」を使用した、スポーツ中継や様々な番組の業務支援に寄与するアプリケーションの開発
(2) 効率的かつ効果的に社内設備導入するための技術検証
放送設備のIP化や映像・音声番組素材のファイル化、放送設備機能のソフトウェア化など新たな技術の調査研究や検証など
当連結会計年度におけるメディア・コンテンツ事業の研究開発費は
①「エイディ」を使用した「スピードガン表示システム」、バスケットボールとラグビーのワールドカップにおける「自動テロップ表示システム」の開発などを行いました。また、「エイディ」は、ボリュメトリックビデオを用いたプロ野球中継の映像に投球軌跡を表示する技術により、キヤノン株式会社・株式会社読売新聞東京本社と共に「経済産業大臣賞(第26回 日本映画テレビ技術大賞)」、「日本映画テレビ技術協会 第76回映像技術賞」、「AIS グッドプラクティスアワード 2023 本賞」を、キヤノン株式会社と共に「映像情報メディア学会 第50回技術振興賞 コンテンツ技術賞」を、日本テレビとして「2023年 日本民間放送連盟賞 技術部門 優秀」を受賞するなど社外から高い評価を得ております。
② 番組表現上放送に不適切な単語等がないかを自動判別して制作者に注意喚起する「番組制作者向け考査補助ツール」を開発し、生放送番組へ導入致しました。
③ 番組収録後の速やかな編集を可能とするために、収録時に複数の編集ソフト用ファイルフォーマットへの変換を行う「収録同時デジタイズ機器」を加賀ソルネット㈱と共同で開発し、収録スタジオへの常設化を進めています。
また、多様化する放送サービスへの対応と、配信による新たなサービスの提供、さらには新規事業開拓に向けて、より幅広い分野における最新技術の調査と開発項目として、以下テーマに取り組んでおります。
放送・配信分野におけるビジネスモデルを支える開発
デジタル広告市場においては、コンテンツの価値向上と収益強化を図るために、「アドプラットフォーム」開発を進めています。この施策は、コンテンツを地上波、TVerに加え、今後、外部プラットフォームにも配信する際に、地上波を含むすべての広告在庫を、管理・販売・計測していくシステムを構築することで、より広いリーチと、コンテンツホルダーとしての優位性を発揮することを狙っています。
具体的には、放送CMにアドテクノロジーを適用することで、従来では運用上難しかった発注リードタイムの短縮、素材指定の柔軟性、結果レポートなどのデジタル広告の利点を取り入れる開発を進めています。
今後は、デジタル新商品の研究とセールスの場を開発することでビジネス面でも新商流の開拓に繋がることを期待しています。
当連結会計年度は、研究開発に関する出願済み特許のうち5件が特許登録されました。
なお、生活・健康関連事業及び不動産関連事業に係る研究開発活動は行っておりません。