文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念とし、法の下に社業を忠実に行い、職務を通じて社会の進歩と発展に寄与することが責任遂行の基本と考え、高性能、高品質の製品を開発し、国内外の顧客に供給することによって、豊かな社会作りに貢献するとともに、会社の限りない繁栄を実現することを経営の基本方針としております。
当社は建設機械メーカーとして長きに亘り、上記の経営方針に則り、これまで蓄積してきた技術と経験を活かしたモノづくりを行ってまいりました。
しかしながら近年、国内需要の伸び悩みや海外メーカーとの競争が一層激化しております。さらにグローバルサプライチェーンの混乱や鋼材を始めとする原材料の高騰による収益への影響に加え、米中の貿易摩擦やウクライナ問題により国際情勢も不安定な状況のため、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続いております。
このような環境下においても経営方針を守り、絶やすことなく付加価値の高い製品を製造・販売していくことが社会づくりの基盤たる建設機械メーカーとしての当社の責務と考えております。
さらに事業を磨き上げ、将来に向けさらなる飛躍を果たし、あらゆるステークホルダーから共感・支持を得られる企業であり続けられるよう、全社一丸となって取り組んでまいります。
(2) 当社グループの経営環境
当社グループは、当社を中心に国内外にある子会社及び関連会社とともに、「建設用クレーン」、「油圧ショベル等」及び「その他の建設機械」の製造・販売を主要事業とする企業構造となっております。当社グループは構成単位ごとの独立性や採算性をもとに、取締役会が経営資源の配分の決定及び業績の評価を定期的に行っております。
当社グループの主要な市場は先進国・開発途上国を問わず、当社製品を必要とするあらゆる地域でありますが、「日本国内」、「中国」、「欧州」及び「その他海外諸地域」(東南アジア、北米)を当社グループの主要な市場として捉えており、日本国内においては当社が、中国、欧州及びその他海外諸地域では当該地域の子会社が製造・販売活動を行っております。当該地域の製造・販売拠点を基礎として報告セグメントを決定しております。
現在の当社グループを取り巻く市場環境は、国内では緩やかな景気回復が継続しております。一方、欧米では、金融引き締めに伴う景気下振れや、中国における、建設需要の落ち込みが継続するなど、依然として不透明な状況が続いております。
なお、当連結会計期間より、従来「その他」に含まれていた「欧州」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法へ変更しております。
(3) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
① 中長期的な会社の経営戦略
国内における新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことにより、社会経済活動の正常化が一段と進み、建設機械の需要も堅調に推移するものと想定しております。海外においては、アジア・米国での堅調な需要が期待される一方、中国においては、厳しい事業環境が今後も継続するものと見込んでおります。
足元では欧米での金融引き締めに伴う景気下振れやウクライナ問題及び中東情勢の悪化など地政学的リスクの拡大・長期化など不透明な事業環境が継続しております。
当社グループでは、厳しい事業環境下でも安定した収益をあげるため、また、さらなる成長を遂げることを目的に2023年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「中期経営計画2022-2024『スリムで骨太体質への変革』―次なる飛躍に向けた徹底的な変革の3年―」を策定し、「収益性改善・強化」「財務体質の改善」「将来の基盤構築」に取り組んでおります。
「中期経営計画2022-2024」のテーマ及び基本方針並びに数値計画については以下のとおりです。
●テーマ
『スリムで骨太体質への変革』次なる飛躍に向けた徹底的な変革の3年
●基本方針
●数値計画
●2025年3月期までの改善施策効果
(注)上記の金額は2023年3月期に実施したものも含む当初計画値であります。
なお、当社は株式会社東京証券取引所のプライム市場上場維持基準に対し、2024年3月末時点において、全項目に適合いたしました。今後も各施策を推進し企業価値向上に取り組んでまいります。
② 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中期経営計画2年目である2024年3月期は、売上高は主要部品の供給制約が継続したものの、海外向け売上高が回復したことや、北米でのインフラ設備の需要増や為替により前年同期と同水準となりました。損益につきましては、販売価格の見直しやアフター部品の販売強化など、中期経営計画にて掲げた「収益性改善・強化」の効果が発現したことにより、営業利益面では前年を上回ることができました。
また、「将来の基盤構築」の施策として加藤(中国)工程机械有限公司の生産一時停止や加藤中駿(厦門)建機有限公司におけるミニショベル事業の見直しを行い、将来成長に向けた選択と集中を行っております。
これらの結果として、中期経営計画2年目については、当初計画を上回ることができなかったものの、売上原価率は着実に改善しております。
③ 2025年3月期の業績見通しについて
2025年3月期の連結業績見通しにつきましては、国内の生産・販売台数増加により売上高700億円(前年同期比21.7%増)、営業利益21億円(前年同期比27.0%増)、経常利益については、為替影響が不透明なこともあり、15億円(前年同期比41.8%減)を予想しております。
親会社株主に帰属する当期純利益については、既に公表のとおり、中国事業の見直し及びインドにおける新規事業等の海外事業ポートフォリオの見直しを行っており、現在精査中であるため判明しだい公表いたします。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「中期経営計画2022-2024」において、収益性改善・強化、財務体質の改善、将来の基盤構築 を基本方針としております。したがって、それを実現する経営指標として、売上高、売上原価率、営業利益、営業利益率、棚卸資産の残高を目標としております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①サステナビリティ基本方針
当社は「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念のもと、長年各種荷役機械、建設機械、産業機械を開発して今日に至っております。
今後もより一層、新しい技術を通じ、環境・社会における課題解決に継続的に取り組み、あらゆるステークホルダーから共感・信頼を得られる企業として、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
②マテリアリティ特定
サステナビリティ経営を重要課題の一つと考え、企業として求められる環境・社会問題への取り組みを推進するため、新たにマテリアリティ特定プロジェクトメンバーを組織し、当社の経営理念およびサステナビリティ基本方針に基づき、ESG観点から当社が取り組むべき5つのマテリアリティを特定いたしました。
今後は、関連する各マテリアリティ項目の目標およびKPIを定め、サステナビリティ活動を推進し、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
<5つのマテリアリティ>

③気候変動対応について
当社は「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念として創業以来、様々な製品の技術革新に長年取り組んでまいりました。昨今、世界規模で気候変動対策が叫ばれるなか、当社は本件の対応を重要な経営課題の1つと捉え、2020年に「エネルギー管理委員会」を設置し、生産拠点の使用エネルギーの把握と省エネルギー化に向けた取り組みを推進しております。また、2023年には取締役会の下に「サステナビリティ委員会」を新設し、会社全体で事業活動における脱炭素化、技術革新による持続可能な社会への貢献を目指した活動を進めております。
なお、当社は、2023年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)へ賛同を表明いたしました。以下、TCFDの提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4項目の概要について説明いたします。
当社は、サステナビリティ活動のさらなる推進を目的として、2023年に取締役会の下に代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会を新設いたしました。同委員会は、年2回開催され、その下部組織である「環境分科会」「人事分科会」で気候変動を含むサステナビリティへの対応について、検討・協議・戦略立案・実行計画の策定・目標の設定したものを同委員会にて審議および進捗モニタリングを行い、取締役会に報告し、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行っております。
■ガバナンス体制図

■会議体の説明
当社の中長期的な成長には、気候変動への対応が不可欠であるとの認識から、今後も継続的なCO2排出量の削減に向け取り組んでまいります。また、当社ではTCFD提言に基づいたシナリオ分析により、2030年における各セクターの事業環境に対する変化とそれに伴う財務面での影響を予測いたしました。なお、シナリオ分析にあたっては、環境問題に関する積極的な政府政策が講じられる場合の1.5/2℃シナリオに加え、政府政策が消極的で、気候変動による物理的な影響が顕著になる4℃シナリオも含めた複数のシナリオを用いております。
■使用したシナリオの説明
当社はシナリオ分析の結果として、1.5/2℃シナリオおよび4℃シナリオにおいて、それぞれ当社事業に重大な影響を及ぼすと考えられるリスクと機会を特定いたしました。まず、1.5/2℃シナリオにおいては、炭素税の導入による操業費の増加、鉄鋼・アルミをはじめとする原材料価格の高騰などが代表的なリスクであると考えており、当社は事業活動全体でその対策を進めております。具体的な事例としては、照明機器のLED化、エアコンの温度設定管理、コンプレッサーの出力調整、夜間及び休日の待機電力削減、ボイラーの稼働時間調節など省エネ設備の導入や管理面の強化により、エネルギー使用量とCO2排出量の削減に取り組んでおります。併せて、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減、製品価格の安定化を目的に各サプライヤーとのコミュニケーションを強化し、CSR調達を推進しております。
一方、当社事業に関わる機会については、環境配慮型製品の需要が拡大することが想定されるため、当社では、引き続き環境に配慮した低燃費製品の開発・販売を進めてまいります。2023年に全旋回式クローラキャリアの新シリーズ第一弾として、クローラキャリア IC70Rの販売を開始いたしました。同機は、EU stage V基準に適合するエンジンを搭載し、2014年排気ガス基準よりPM排出量を半分以下となっており、ジョイスティックレバーの操作量に応じてエンジン回転数とポンプ流量を同時に制御し、最適な走行運転・荷台操作・旋回操作が可能となり、さらには、レバー操作が中立の時はアイドリング状態となり燃料消費を抑えたエコな運転が可能となります。
また、走行やクレーン作業時の動力を電動モーターでアシストする「ハイブリッドラフター」の開発を進めており、さらにCO2排出抑制を目的に外部電源を使用したユニットを追加装備し、量産化に向けた準備を進めております。
4℃シナリオにおいては、異常災害の激甚化による事業活動の停止や労働環境の悪化といった生産面への低下を起因した収益性悪化をリスクとして考えております。これらのリスクに対し、当社は調達網の強化や高効率化を目指した設備投資などを対応策として講じる予定です。一方、機会については、各業界での労働環境の悪化によって、省人化、自動化への需要が高まることを想定しております。当社では2019年にJAXAとの共同研究を株式会社熊谷組とともに締結し、林業機械システムの自動化に向けた取り組みを進めており、今後も本件を含め自動化や遠隔操作技術の研究・開発を積極的に推進してまいります。[1]
[1] https://kato-works.co.jp/profile/news/pdf/20190130_jaxa.pdf
■リスクと機会一覧
(時間軸)短期:0~3年 中期:4~10年(2030年) 長期:11~20年(2050年)
(注)CN:カーボンニュートラル
<リスク管理>
当社では、気候変動に関連するリスクは事業活動に重大な影響を及ぼすと捉えており、常に全社でリスクの管理・監督ができる管理体制を整備しております。当社は取締役会に加え、すべての執行役員が出席する経営執行会議においても、事業で発生する恐れがあるリスクについての情報共有を行っております。
また、各事業部門では、自部門が関与するリスクの特定・評価及び各リスクの詳細な発生確度や影響度合について、適宜必要に応じ経営会議体に付議し、議論を行っております。
なお、当社の気候変動に対するリスクと機会の一覧については、上記<戦略>をご参照ください。
<指標及び目標>
気候変動の国際的な枠組みが強化されるなか、事業活動で排出されるCO2を削減することは、現在当社を含めた多くの企業が直面する重大な課題と認識しております。当社は、2018年度を基準年として、2030年度までに事業活動におけるCO2排出量38%削減(国内事業所におけるScope1+2)の目標を設定いたしました。これらの目標を達成するため、当社は事業活動におけるエネルギー利用のモニタリングを行っております。今後はScope3の算定を進めCO2排出量の可視化を進めるとともに同排出量削減を推進してまいります。
■Scope1+2排出量(2018~)

(注) 上記数値は、当社国内拠点の合計値であります。
④人的資本多様性
<戦略>
当社における人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針は以下のとおりであります。
人材育成方針
当社は、人材が経営における最重要資源の一つであるという考えのもと、人材の育成とその活用について継続的に取り組んでまいります。当社では「創業以来のパイオニア精神を抱き新たなものを生み出し挑戦し続ける人材」、「社会の要求を的確に捉え機敏に対応し続ける人材」の育成を目指し、社員の個々の意見を尊重するとともに、その能力を伸ばしていく環境整備に努めてまいります。
人材の登用状況
当社は、持続的な成長を遂げるためには多様な価値観や経験値を持つ人材が重要と考え、性別、国籍、人種、民族、宗教、社会的身分、障害の有無、性的指向にとらわれることのない採用活動を行っております。区分別では中途採用者につきましては、従来よりスキル・経験等を総合的に勘案した積極的な登用を行っており、2024年3月現在の当社管理職のうち約24%が中途採用者となっております。
一方で、女性の管理職登用につきましては、建設機械業界という業種に加え、過去には現状に比べ、女性が担当する業務を限定されていたこともあり管理職・次期管理職候補者の女性比率が相対的に低い状況にあります。現在は、設計をはじめとしたこれまで配属機会が少なかった技術・技能枠での新卒採用、さらに就業環境の改善や出産・子育て支援制度の拡充など就業者数の拡大と離職率低減に繋がる施策を推進し、将来的に中核ポストを担う女性社員の増加に努めております。
2024年4月の新卒採用においては、3名の女性(全体の13.0%)を採用いたしました。外国人につきましては、国内外の拠点にて就業できる当社グループの強みを活かした採用活動を行っており、2024年4月の新卒採用においては、昨年に引き続き、外国人(ミャンマー出身)のエンジニア1名を採用いたしました。また、新入社員については、長きにわたり当社で力を発揮してもらえるよう、性別、国籍等を問わず最長1年間の研修を実施しております。
なお、当社は人財確保はサスティナビリティ経営上、重要な経営課題と認識しており、女性活躍推進に対して豊富な経験・実績を有する社外取締役の協力を仰ぎつつ、目標数値が達成できるよう引き続き改善策を推進してまいります。
<指標及び目標>
業種や業務の特性上、当社において採用の中心が男性に偏重していた時期が長く続いたことが、結果として現在の低い女性管理職比率に繋がっております。上記に起因して男女の賃金においての差異も生じており、今後改善に向け、新卒中途問わず女性の採用強化にこれまで以上に努めるとともに、女性が働きやすい職場環境の改善に注力してまいります。
男性労働者の育児休業取得率につきましては、制度への社会的な理解増進に伴い一定数の取得者は発生しているものの、さらなる取得率向上を目指し、引き続き制度の案内等社内外への周知を徹底してまいります。その他、当社独自の仕事と子育てを両立させるための取り組みとして、有給休暇とは別にチャイルドケア休暇制度を設けており、小学校卒業までの子を養育する社員を対象にこどもの入学式、卒業式、運動会などの学校行事への参加やこどもの育児・看護のために使用できる休暇をこども1人につき最大25日付与しています。今後も男女問わず仕事と子育てを両立出来る環境の維持向上を目指し、各種取り組みを推進してまいります。
また、当社グループでは上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
なお、当社の人材育成に関する方針および取り組み状況につきましては当社サステナビリティサイトに掲載しております。[2]
[2] https://www.kato-works.co.jp/sustainability/
(注) 上記数値は、当社単体の合計値であります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは下記に記すとおりです。
なお、文中に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが扱う建設機械等の需要は、インフラ整備等の公共投資や資源開発、不動産の建設等に使用されることが多いことから、景気循環の影響を受け易い状況にあります。国内市場はもとより、各国のインフラへの公共投資、民間設備投資やエネルギー価格、地域紛争の影響による経済安全保障、通貨変動等の要因が、当社グループ製品の需要に影響を与える可能性があります。加えて、世界的規模で経済・市場環境が急激に悪化した場合も、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、経営企画部門が中心となって業績及び「中期経営計画2022-2024」における各施策の進捗状況を管理し、会社全体のPDCAサイクルの迅速化を図り、対応することによって、これらリスクの低減に努めております。
当社グループでは、資金調達の機動性ならびに安定性向上のため、金融機関との良好な関係を維持しつつ、銀行借入に加え社債発行などによる資金調達手段の多様化やコミットメントライン契約の締結を行っております。シンジケートローン契約やコミットメントライン契約及びその他一部の借入金には財務制限条項が付されており、特定の条項に抵触し、返済請求を受けた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループでは、定期的な説明会を開催するなど金融機関との良好な関係を維持しつつ、銀行借入に加え社債発行などによる資金調達手段の多様化に努めております。
当社グループは、海外向け販売や海外からの資材調達を実施しているため、輸出入において為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、この変動リスクを回避するため、円建てによる輸出取引に加え、外貨建債権の為替予約取引を行うなど為替変動によるリスクを最小限に抑えるよう留意しております。
当社グループは、海外販路の拡大を図るため中国、欧州、北米において生産・販売の事業活動を展開しております。中東情勢の混乱や、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などの世界的な地政学リスクの高まりなどによるエネルギー価格及び原材料価格の高騰などが今後長期にわたり継続した場合、または、その他の国や地域等で新たな紛争等が発生した場合、当社グループの販売及び部品調達計画に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループは、中国、欧州、北米に有する海外子会社を通じ、政治・経済情勢や各種規制等の動向を定期的に収集し、地域毎の事業環境の変動や業績への影響を把握することで、事業に及ぼす影響を分析し、対応を行っております。
当社グループが取り扱う建設機械等は、製品及びその製造過程等においてCO2排出量削減や排ガス、騒音、エネルギー規制等様々な環境規制の適用を受け、対応を求められております。今後、環境規制・気候変動への対応等が更に厳格化し、さらなる費用が必要となった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、各国の環境規制・気候変動への対応及び関連法規等を遵守するため、研究開発等に資金を投入し、必要な措置を講じているほか、サステナビリティ委員会において重要課題への取り組みを深化させております。
(6) 自然災害・事故等について
日本を含め当社グループが事業展開を行っている国や地域において、自然災害等の発生や労働環境の違いによる労働争議等の発生、紛争・テロ、感染症の流行が発生し、大幅な需要の減少や、操業の中断などがあった場合、当社グループの事業計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、地震、火災、風水害等、自然災害の発生に対し、リスク管理体制のもと、一定の防災対策を講じております。また、海外子会社については適切な管理者の派遣を行うとともに、カントリーリスク分析及びモニタリングを実施するなど、各社の独立性を保ちながらリスクの低減に努めております。
当社グループは、国内外に事業を展開していることから、各国の法規制の適用を受けております。機械安全に係る保安事項はもとより、近年は環境保全のための排出ガス規制が年々強化される傾向にあります。そのため、法令の改正または新たな規制の制定等に対応するための費用が発生した場合、または、各国の政策による輸入制限、輸入禁止措置等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業展開に係る各国の法規制に関する情報収集を継続的に行い、早期に情報を把握し対策を実行することによりリスク軽減を図っております。
当社グループで扱う建設機械等を製造するには、一定程度の広さの敷地や多くの設備等を必要とし、工場敷地、生産設備等に高額の設備投資を要する場合があります。事業環境の悪化等により収益性が事業計画の想定を下回り、新たに減損損失を計上する必要がある場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、経営企画部門が中心となって業績及び「中期経営計画2022-2024」における各施策の進捗状況を管理しており、設備資産については収益性の抜本的改革をするためコア事業に集中させることで、これらリスクの低減に努めております。
当社グループは、様々なビジネスパートナーとの提携を通じてグローバル戦略の構築を目指しておりますが、期待する効果を得られなかった場合や提携が解消された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、新規提携時及び解消時には、外部専門家のアドバイスや適切なデューデリジェンスを実施することで、リスクの低減に努めております。
当社グループの製品は、調達部品の比率が高く、原材料価格の高騰などによる原価高の発生や、部品や資材の仕入状況の悪化等が生産への影響、ひいては業績の悪化へとつながる可能性があります。
当社グループでは、社内における原価低減活動に加え、仕入先企業とのコミュニケーション強化を図り、最適価格の維持を図りつつ安定供給体制の維持に努めております。また、長期のリードタイムを要する調達部品、調達リスクの高い部品については特に在庫管理と生産計画管理の徹底を図っております。
(11)価格競争及び研究開発について
当社グループの製品・サービスが競合企業と比較して性能・品質・コスト面で十分な競争優位性を得られなかった場合は、売上の減少等により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの製品に、開発の遅れや市場ニーズとの不一致等が生じ、製品の競争力が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、経営企画部門が中心となって業績及び「中期経営計画2022-2024」における各施策の進捗状況を管理しており、開発施策については、既存製品の徹底的なコストダウン及び新製品群の積極的な市場投入に取り組み、更なる競争力のある製品の開発を進めております。
(12)債権管理について
当社グループが扱う建設機械等は、比較的高額な売買となり、債権の返済期間が長期になることがあります。その間取引先の財政状況が悪化するなどして予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、追加の引当計上が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、取引先の業態や資金状況に応じた与信管理を行うとともに、必要に応じて担保の提供を受けるなど、不良債権の発生防止に努めております。また、定期的に開催する債権審査会議では、一定の条件に該当する取引先について与信限度額の見直しを実施するほか、継続的なモニタリングを行っております。
(13)棚卸資産について
当社グループで扱う建設機械等は、一部の製品を除き需要予測にて見込生産をしております。予期せぬ需要の減少や製品販売価格の下落、在庫期間の長期化等により、棚卸資産の価値が低下し、評価損の計上を余儀なくされた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、需要予測精度を高めるための販売会議及び製造部門と販売部門の会議を開催し、棚卸資産の在庫管理について、短期・長期の需要予測を行い、その適正化に努めております。
(14)製品の不具合等について
当社グループでは、製品の欠陥による大規模リコールや市場対策措置の実施に伴う多額の措置費用、また大型の機械であるが故に製品事故が発生した場合、多額の賠償責任費用を負うリスクがあります。これらは当社グループの信用にも重大な影響を及ぼす可能性があり、また、その損害賠償額等が保険の保証額を超えた場合、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、品質マネージメントシステムを構築し品質を保証する仕組み・体制を整備しております。社内で定めた厳しい基準のもと、安全と品質の維持向上に努めております。また、市場品質情報を収集し、品質の改善に努めております。万が一の事故等に備え、製造物責任保険等で十分な保障額の付保を図ることで、費用や賠償責任の負担による財務状況への影響を最小限に抑えられるよう備えております。
(15)情報セキュリティ・知的財産について
当社グループは、事業活動において業務上必要な顧客情報や個人情報に接することがあり、営業上・技術上の機密情報を保有しております。万が一、サイバー攻撃による不正アクセス、情報漏洩、滅失等の事故が発生し、損害賠償責任を負ったり、当社グループの評判や信用の低下を招くこととなったりした場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの知的財産権が侵害され、製品・技術等の市場価値が低下した場合、または、当社グループが提供する製品・技術等が第三者の知的財産権に抵触し、訴訟が提起された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報の機密保持及び管理システムの安定稼働には細心の注意を払い、外部からの不正アクセスや情報漏洩等を防ぐための適切な管理体制を講じております。
また、知的財産部門を設置し、知的財産権の適切な管理に努めるほか、製品の開発や製造、販売、その他の事業等において第三者の保有する知的財産権を侵害することのないよう、事前の調査や継続的な監視等の措置を講じております。
(16)コンプライアンスリスクについて
当社グループは、役員及び従業員等が、事業活動にあたって各種法令や倫理基準並びに社内行動規範等から逸脱した行為を行うことがないよう、グループ全体への徹底を図っております。しかし、万が一、役員及び従業員等による重大な不正、不祥事等が発生し、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、法令や倫理を遵守した企業活動を行うよう「コンプライアンス規程」を定め、定期的なコンプライアンス教育・研修等を通じてコンプライアンス上の問題発生を未然に防止するよう努めるほか、内部通報制度やコンプライアンスを推進するための内部統制委員会を設置し、コンプライアンス体制の強化を図っております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことにより、社会経済活動正常化が一段と進んだこともあり、景気は緩やかに回復しました。
一方、世界経済は、欧米での金融引締めに伴う景気下振れやウクライナ問題および中東情勢の悪化など地政学リスクの拡大・長期化への懸念に加え、中国経済における不動産市況の低迷が継続する等、依然として不透明な状況が続いております。
このような状況下、当社は2023年3月期を初年度とする中期経営計画のもと基本方針として掲げた「収益性改善・強化」「財務体質の改善」「将来の基盤構築」の各施策を継続的に取り組んでまいりました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高は574億9千8百万円(前年同期比99.9%)と、前期並みの水準で推移いたしましたが、中期経営計画にて掲げた収益性改善・強化の各施策の効果が発現したことに加え、外貨建て売上債権の為替差益もあり、営業利益は16億5千4百万円(前年同期比131.4%)、経常利益は25億7千5百万円(前年同期比138.1%)となり、利益面では大幅な改善が図れました。
また、2023年2月13日公表しました「連結子会社における固定資産の譲渡および特別利益の計上に関するお知らせ」の通り、当社連結子会社であるKATO WORKS(THAILAND)CO.,LTD.の工場売却により14億1千7百万円を特別利益に計上する一方、加藤(中国)工程机械有限公司における生産一時停止を受け、事業構造改善費用1億2千1百万円、工場設備の減損損失7億6千4百万円を特別損失に計上しました。一方、繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、法人税等調整額(△は利益)は△13億8千6百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は42億3千5百万円(前年同期比176.3%)となりました。
国内向け建設用クレーンの売上高は、一部機種の主要部品供給制約の影響等により296億7千3百万円(前年同期比94.1%)と減収となりました。海外向けの売上高は、アジア向けが回復し、44億7千2百万円(前年同期比120.7%)となりました。
国内向け油圧ショベル等の売上高は、競争激化による影響を受け、78億3百万円(前年同期比91.4%)と減収となりました。海外向け油圧ショベル等は、米国向けが堅調に推移し、売上高は82億8千4百万円(前年同期比131.4%)となりました。
よって、日本の売上高は511億9千万円(前年同期比100.4%)、セグメント利益は20億2千2百万円(前年同期比109.6%)となりました。
中国においては、市場の低迷を主因に厳しい販売環境が続き、売上高は22億9千9百万円(前年同期比77.4%)となり、セグメント損失は12億1千万円(前年同期はセグメント損失9億7千2百万円)となりました。
(欧州)
欧州においては、売上高は56億4千6百万円(前年同期比104.4%)と前期並みの水準を維持したものの、原材料高騰の影響を受けセグメント利益は7千1百万円(前年同期比53.7%)となりました。
その他の地域においては、KATO WORKS(THAILAND)CO.,LTD.の操業停止により売上高は発生せず(前年同期は1億6千5百万円)セグメント損失は7千6百万円(前年同期はセグメント損失8千4百万円)となりました。
財政状態については、次のとおりであります。
(資産の状況)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末の987億9千9百万円に比べ65億3千1百万円増加し、1,053億3千万円となりました。これは主として、棚卸資産の増加39億3千8百万円、現金及び預金の増加25億8千9百万円、売掛金の増加17億3千3百万円、繰延税金資産の増加10億9千8百万円と有形固定資産の減少22億9千7百万円によるものであります。
(負債の状況)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末の518億9千3百万円に比べ18億8千6百万円増加し、537億7千9百万円となりました。これは主として、短期借入金の増加24億7千3百万円、支払手形及び買掛金の減少1億2千1百万円と長期借入金の増加15億8百万円、1年内長期借入金の減少7億6千7百万円によるものであります。
(純資産の状況)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末の469億6百万円に比べ46億4千4百万円増加し、515億5千1百万円となりました。これは主として、利益剰余金の増加36億4千9百万円によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は223億6千6百万円となり、前連結会計年度末と比べ23億8千9百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は、6億9千6百万円の減少となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益31億6百万円、減価償却費14億2千4百万円、減損損失7億6千4百万円及び貸倒引当金の増加6億7千8百万円の増加要因と棚卸資産の増加39億5百万円、固定資産売却益14億1千9百万円及び売上債権の増加1億7千8百万円の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は、16億2千7百万円の増加となりました。その主な要因は、有形固定資産の売却による収入25億1千8百万円の増加要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は、14億1百万円の増加となりました。その主な要因は、長期借入による収入86億1千7百万円、長期借入金の返済による支出78億8千1百万円、短期借入金の純増加額20億5千6百万円、社債の償還による支出5億2千4百万円、割賦債務の返済による支出2億8千2百万円の減少要因によるものであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)自己資本比率: 自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率: 株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率: 有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ: 営業キャッシュ・フロー/利払い
※いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を用いております。
※2020年3月期及び2024年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオにつきましては、営業キャッシュ・フロー数値がマイナスのため、表記を省略しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格によっております。
2 当連結会計年度より、従来「その他」に含まれていた「欧州」について量的な重要性が増したため生産実績として記載しております。
当社グループの主要製品の生産方式は、ほとんどが見込生産方式なので、受注実績の記載は省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、従来「その他」に含まれていた「欧州」について量的な重要性が増したため販売実績として記載しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況
1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は574億9千8百万円(前年同期比99.9%)となりました。主要品目別の売上高の状況及び分析は以下のとおりです。
建設用クレーン
国内売上高は296億7千3百万円(前年同期比94.1%)と一部機種の主要部品供給制約の影響等により減収となりました。海外売上高は、アジア向け輸出が回復し、45億6千万円(前年同期比124.3%)となりました。よって、建設用クレーンの売上高は342億3千4百万円(前年同期比97.3%)となりました。
油圧ショベル等
国内売上高は、競争激化による影響を受け、78億3百万円(前年同期比91.4%)と減収となりました。海外売上高は、中国市場の低迷が継続した一方、米国向けが堅調に推移し、145億4百万円(前年同期比112.5%)となりました。よって、油圧ショベル等の売上高は223億8百万円(前年同期比104.1%)となりました。
その他
その他の売上高は9億5千5百万円(前年同期比105.2%)と前期並みの水準で推移しました。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度に比べ14億1千9百万円増加し、105億2千万円(前年同期比115.6%)となりました。期中を通じ建設用クレーンの主要部品供給制約による生産面への影響はあったものの、販売戦略の徹底に加え補用部品の拡販を含めた営業力の強化、更にこれまで取り組んできた製品コストの削減などの施策効果が発現したことにより、結果として売上総利益率は2.5ポイント増加し、18.3%となりました。
(営業損益)
当連結会計年度の営業損益は、販売費及び一般管理費が前連結会計年度と比較し、3億9千5百万円増加しましたが、収益改善策の推進と円安効果もあり営業利益16億5千4百万円(前年同期比131.4%)となりました。
(経常損益)
当連結会計年度の営業外収益は、不動産賃貸収益の増加、為替差益の増加、製品保証引当金戻入額の増加により、5億2千5百万円増加し、17億9千4百万円(前年同期比141.4%)となりました。営業外費用は、2億1千万円増加し、8億7千3百万円(前年同期比131.7%)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経常損益は、前連結会計年度に比べ7億9百万円増加し、経常利益25億7千5百万円(前年同期比138.1%)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度の特別利益は、連結子会社であるKATO WORKS(THAILAND)CO.,LTD.の工場売却により14億1千7百万円を特別利益に計上したことにより前連結会計年度に比べ4億2千4百万円増加し、14億1千7百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度に比べ5億2千9百万円増加し、8億8千6百万円となりました。
一方、繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、法人税等調整額(△は利益)は△13億8千6百万円を計上したことにより、結果として親会社株主に帰属する当期純利益は42億3千5百万円(前年同期比176.3%)となりました。
b.キャッシュ・フローの状況及び、資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資金需要は主に運転資金、設備投資資金、研究開発資金となります。
運転資金のうち主なものは、製品製造のための原材料や販売用部品の仕入費用や労務費及び製造経費をはじめ、販売費及び一般管理費などが該当します。また、部品・半製品を製造する上で相応のリードタイムを有すことから、安定的な生産を行うため部材の先行確保に加え、販売用部品の欠品を防ぐ必要性からも在庫負担が大きいという特徴があります。
設備投資資金は主として、生産活動に必要な工場設備であり、研究開発資金は新製品の開発に係る費用及び開発部門の人件費が該当します。
これらの資金需要のうち、短期資金需要については、手元資金や営業活動により得られたキャッシュ・フロー及びコミットメントライン等の融資枠による金融機関からの短期借入を基本としております。また、長期運転資金及び大規模な設備投資資金については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入や社債を基本としております。
当連結会計年度末における有利子負債の残高は363億5千7百万円、現金及び現金同等物の残高は223億6千6百万円となり、よってネット有利子負債は139億9千万円(前年同期比98.7%)となりました。有利子負債の約定返済進行と今後の増産を考慮し、金融機関からの有利子負債残高増加に伴い、現金及び現金同等物の残高も増加したことによります。
なお、現在のところ、新型工場建設等に係る大型設備投資についての案件はございませんが、コア事業及び将来成長に向けた新製品の開発には積極的かつ集中的に資金を振り向けてまいります。
当社グループは持続的な成長と企業価値の向上を実現するために2023年3月期を初年度とする「中期経営計画 2022-2024『スリムで骨太体質への変革』―次なる飛躍に向けた徹底的な変革の3年―」を策定し、厳しい事業環境下においても、コスト構造を根本から見直し、強靭な利益体質へと生まれ変わるために、その進捗を計る経営指標として、売上高、売上原価率、営業利益、営業利益率、棚卸資産残高を定めております。中期経営計画最終年度の2024年度(2025年3月期)においては、売上高664億円、売上原価率83.2%、営業利益31億円、営業利益率4.7%、棚卸資産残高327億円を数値目標としております。
中期経営計画2年目の2023年度(2024年3月期)においては、売上高644億円、売上原価率83.7%、営業利益25億円、営業利益率3.9%、棚卸資産残高318億円を数値目標としておりましたが、当連結会計年度の実績値は以下となり、建設用クレーンの主要部品供給制約、中国市場低迷により売上高・営業利益・営業利益率・棚卸資産残高は未達となっております。
d.経営成績等に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性がある事項については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
新型コロナウイルス感染症については、国内では5類感染症に移行されるなど収束傾向にありますが、世界各国の地域状況により、再度の感染拡大となる恐れがあります。また、ウクライナ問題や中東情勢の悪化等、地政学リスクは拡大・長期化しており、世界経済の先行きの不透明な状況が継続しています。
また、当社グループの製品においては、多くの部材や外注品、多種の油圧部品や電子・自動車部品を必要とすることから、世界的な部品調達難や物流価格の高騰により、以下の事態が発生した場合は当社の売上高及び利益に影響がでる場合があります。
主としては、
・仕入先企業からの部品や資材の調達難による生産の見合わせ
・国内及び海外工場の生産調整、生産停止による稼働率の低下
・取引先からの受注の減少、キャンセルによる製品販売台数の減少、滞留在庫の増加
・製品の需給バランスが崩れることによる製品販売価格の下落
・取引先の財政状態悪化、信用不安による貸倒リスクの増加
であります。以上のことから、中期経営計画にて掲げた「収益性改善・強化」、「財務体質の改善」「将来の基盤構築」の各施策を継続的に進め、生産・販売・設計のIT環境の充実、組織変更などの事業体制の整備はもとより、品質保証部門や経営企画部門を中心とした管理体制を強化し、常に市場や業界の動向に注視しつつ、そのうえで社会及び顧客のニーズに合った製品開発とサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響がでないようにリスクの低減と業績の安定化に努めております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は主に開発本部において行われており、設計・ソフトウエア開発・試験検証などの部門が緊密に連携して研究開発に取り組んでおります。主な研究開発製品は、建設用クレーン、ショベル、産業車両、クローラキャリアなどであり、国内外の最新排出ガス規制に適合した製品開発の他、カーボンニュートラルに向けた各種電動化や代替燃料の利用、自動運転や遠隔操作などの先進的研究開発活動も積極的に推進しております。当連結会計年度における研究開発費は総額
研究開発活動は主として日本セグメントで行っており、おもな取り組みは次のとおりであります。
海外向けのラフテレーンクレーンでは、最大吊上げ荷重13tの「CR-130RV」を開発し今年度に市場投入いたしました。本機は、欧州の排出ガス規制(StageⅤ)に適合したエンジンを搭載、クレーン操作に電気制御システムによるジョイスティック型レバーを採用しています。従来機の油圧パイロット方式の操作フィーリングを継承しつつ、オペレータの好みに応じて細やかな操作感度調整が可能になっております。
国内向けのラフテレーンクレーンでは、最大吊上げ荷重60tの「SL-600RfⅢ」を開発いたしました。本機は、国内最新の排出ガス規制に適合したエンジンを搭載、各種の走行安全機能を有しています。クレーン装置では3段EJIBの採用により懐の深い作業が可能であります。
カーボンニュートラルへの取り組みとして、「ハイブリッドラフター」の開発を進めており、早期市場投入を目指し取り組んでおります。ハイブリッドラフターは、走行時やクレーン作業時の動力を電動モーターによりアシストするもので、通常型のラフテレーンクレーンと比較して燃料消費量の削減が図れます。
なお、建設用クレーンにつきましては、今後も重点開発製品群としてラインナップ拡充を図るとともに、クレーンの更なる操作性向上やオペレータの負担軽減に向けた研究開発、カーボンニュートラルへの取り組みとしての次世代動力源などの研究開発活動を積極的に進めてまいります。
中大型ショベルでは、欧州の排出ガス規制(StageⅤ)に対応した機種において、最新型エンジンの搭載と従来機で実績のある油圧機器を最適化することで、信頼性を確保しながら作業フィーリングを向上させ、低燃費、低騒音化による環境負荷の軽減を図った製品の開発を進めております。
ミニショベルでは、機体質量0.9tクラスの「HD09V5」を開発し今年度に北米および欧州地域を中心に市場投入いたしました。本機は、クローラ幅可変機構を標準装備しており狭い現場に進入することができます。また、転倒時保護構造の強度試験に合格したロールバ-ROPS キャノピーをオプションとして設定しています。
今後も最新の排出ガス規制に対応した機種の市場投入を順次進めるとともに、カーボンニュートラルへの取り組みとしての電動化開発も進めており、早期市場投入を目指して積極的に取り組んでまいります。
クローラキャリアでは、積載重量7tの全旋回式クローラキャリア「IC70R」を開発し今年度に市場投入いたしました。本機種は、徹底的な低重心化により高い安定性を有しているため、全旋回方向でダンプ操作ができ、上部旋回体を旋回させたまま走行することが可能です。さらに、このコンセプトを継承した大型機シリーズ化の研究開発も進めております。また、積載重量3.7t「IC37-5」を開発し今年度に市場投入いたしました。本機は、クラス初の電子制御コントロールを搭載しているため、スムーズな操作性を有しています。両機種ともに、国内、北米および欧州地域における最新の排出ガス規制に適合したエンジンを搭載しているため、グローバルな展開を進めております。
クローラキャリアにつきましても、重点開発製品群としてラインナップ拡充を図るとともに、カーボンニュートラルへの取り組みとしての電動化や遠隔操作・自動運転化などの研究開発活動を積極的に進めてまいります。
万能吸引車では、大風量の吸引ブロワを搭載した「MV-400SⅡ(大風量型)」を開発いたしました。
路面清掃車では、空港内の滑走路や誘導路の制限区域における清掃作業の安全性や生産性の向上、労働力不足などの課題解決に向け、「HS-400W」を基本車として、自動運転(レベル2相当)での清掃作業の実証実験を行いました。本実証実験の成果を踏まえ、制限区域内での自動運転などの高機能車両の実用化に向けた研究開発活動を積極的に進めてまいります。