第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、持株会社である当社と国内外の連結子会社により構成されるグループ経営を展開しており、証券ビジネスをコアとする資産運用サービスの提供を通じて持続的な企業価値の向上に努めてまいります

 

(2) 経営戦略等

当社は2023年4月に創業100周年という大きな節目を迎え、次の100年も持続的な成長を実現するための経営基盤の確立に向けて、2023年4月から2028年3月までの5年間を対象期間とした中期経営計画において、「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を基本方針に据え、企業価値の向上に努めております。

計画初年度となった当連結会計年度は、グループ中核企業である岡三証券においてソリューション営業を推進したほか、取引所FX事業を同業2社から譲り受ける契約を締結し、営業基盤の拡充を図りました。また、ビジネスモデルの変革を進める中、BaaS(Banking as a Service)を活用した銀行代理業や、ファンドラップサービスの提供に向けた取り組みも開始しました。お客さまの資産全体を捉えたトータルコンサルティングを行うことで、お客さまにとってメインの金融機関となり、コア資産を含む預り資産残高及びストック型収益の拡大を図ります。

加えて、グループ内外のリソースを活用し証券ビジネス機能を強化するとともに、アライアンスやM&A等の活用により多様な営業チャネルに証券サービスを提供するプラットフォーム戦略の拡大を進めております。独自のネットワークを活かした共存共栄により、リテール金融ビジネスのポテンシャルを広く取り込んでまいります。

当社グループでは引き続き、金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生」に貢献する証券グループへとさらなる発展を目指してまいります。

 

 

岡三証券グループ 中期経営計画

 

<Purpose(存在意義)>

金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生」に貢献する

 

<Vision(目指す姿)>

真心のこもったサービスでお客さま一人ひとりのニーズに応えつづけるベスト・パートナー

 

●基本方針

(ゴール)

 ビジネスモデルを変革し、次の100年も成長しつづける経営基盤を確立する

 

(成長戦略)

・One to One マーケティングの強化

・プラットフォームの高度化

・コーポレートブランディングの進化

~成長戦略の実現性を高めるために、全領域で“デジタル化”を推進する~

 

●対象期間

  2023年4月から2028年3月までの5年間

 

●主な経営指標目標

預り資産 10兆円

ROE 8%

総還元性向 50%

(中期経営計画の対象期間中、PBR 1.0 倍を超えるまで、年間10億円以上の自己株式取得を実施)

 

 

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

ウクライナ、中東情勢や米中冷戦構造等、時代の逆回転を想起させる事象が、世界秩序を揺るがしており、不確実性が増大しています。わが国の証券業界においても、環境変化に応じて、異業種を含めた合従連衡の動きが顕在化しており、迅速かつ適切な経営判断を行うことが求められています。

一方、中長期的な証券業界の成長ポテンシャルは大きいと捉えています。平成の金融危機以降の長年にわたる企業や消費者のノルム(社会通念)が変わり、わが国ではデフレ環境からの脱却が想定されます。政策支援の効果もあり、投資に前向きな意識が醸成され、緩やかながらもリスク資産への資金シフトや投資家の裾野拡大が期待される状況です。そのような中、証券会社に求められる役割や提供すべき付加価値の変化を踏まえ、証券業界の成長性を着実に取り込むことが重要だと考えています。

現中期経営計画の下、中核のリテールビジネスでは、お客さま一人ひとりの資産全体を俯瞰的に捉え、さまざまな金融商品、ソリューションの中から最適なものをお届けする「One to Oneマーケティング」を強化しております。多様なニーズに応えるために新サービスの拡充を進め、さらに2022年に岡三証券と統合した「岡三オンライン証券」で培ったスキルやノウハウを対面営業へ融合させることにより、CX(お客さま体験価値)のさらなる向上を図る方針です。

また、当社グループは、多様な証券会社との「共存共栄」の経営を志向しており、グループ内外に対する「証券as a Service」の展開を加速させ、より多くのお客さまに高度なサービスを届けたいと考えています。

当社グループは、金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生に貢献する」ことを存在意義に掲げており、次の100年もお客さまから信頼され、成長し続ける企業となれるよう努めてまいります。社会や地域のサステナビリティへの貢献も当社グループの使命と捉えており、ステークホルダーとともに、いわば森のような多様な生態系を育てていくことを目指してまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に取り組み、特に重要な経営指標として、連結ROE(株主資本利益率)8%の達成を目標として掲げております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは、「金融・資本市場とお客さまの繋ぎ手として、資本の供給と循環を促すことによって、社会と地域の健全かつ持続的な発展に尽くす」というサステナビリティ基本方針のもと取り組みを実施しております。

<ガバナンス>

サステナビリティの重要な議案、個別施策に関する議案についてはサステナビリティ推進室あるいは担当部門から報告を受けた経営会議にて討議・決議をおこない、取締役会は適宜、報告を受け、審議・監督する体制を執っております。

 

<リスク管理>

全社的なリスク管理は「3 事業等のリスク」のとおり実施しておりますが、サステナビリティに係るリスクに関しても、既存のリスク管理の枠組みによる体制の構築に努めております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

当社グループの重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

・気候変動対応

・人的資本対応

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

①気候変動対応

<ガバナンス>

気候変動に関する重要な事項や取り組みは、サステナビリティ推進室から経営会議に報告し、討議・決議した上で、取締役会は適宜、審議・監督する体制を執っています。

 

<戦略>

a.マテリアリティとの関係

当社グループは2021年10月にマテリアリティ(重要課題)を策定・公表しました。ビジネス領域のひとつとして“社会づくり”(気候変動への対応を含むサステナブルな社会の実現)を掲げており、サステナブルファイナンスやESGファンドの取扱い、サステナブル投資に関する情報発信等を通じて社会課題の解決と地域貢献を推進しています。

 

b.シナリオ分析

以上のような課題認識のもと、気候変動関連のリスクと機会を把握するためシナリオ分析を実施しています。気候変動に係る幅広い将来像に備えるため「4℃シナリオ」(気候変動の対策が進まない)と、「1.5/2℃シナリオ」(脱炭素に向けた変革が進展する)の2つのパターンを想定し、それぞれのパターンにおいて考慮すべきリスクや機会を設定し、事業インパクトを算出しています。

選択したシナリオにおける気候変動のインパクトの考え方は以下のとおりです。

1.5/2℃シナリオ:気候変動の抑制に向けた市場の変化、規制強化の中で、移行リスクの影響が比較的大きい

4℃シナリオ:洪水等自然災害による物理的リスクの影響が比較的大きい

 

シナリオ分析においては、国際エネルギー機関(IEA)のシナリオや気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)のシナリオを活用しています。

 

 

(i)リスク・機会に係る定性分析

上記のシナリオにおける定性分析として、それぞれのパターンにおいて発生が想定される気候変動による移行リスク及び物理的リスクを設定し、当社グループの戦略・ビジネスにとっての重要度が比較的高いと考えられるリスクを特定し、それぞれ想定される影響やその発生時期、ビジネスへの影響度を分析いたしました。

 

表1 想定される当社グループへの影響

リスク

想定される影響

時間軸

影響度

1.5℃/2℃

4℃

移行
リスク

政策・法規制

法律・規制変化に伴う既存ビジネスの減少又は資本負荷の増大などによるコスト増加

中期~長期

市場

気候変動に伴う顧客ニーズの変化による既存ファンド等商品の陳腐化、新規商品開発における競争優位性の低下

中期~長期

低炭素社会への移行過程で、産業構造の変化などにより重大な影響を受ける企業などとのビジネスの減少

中期~長期

保有する資産の価値低下や売却機会の減少

中期~長期

評判

環境負荷の高い事業への投資に伴う評判低下リスク・気候変動リスクへの配慮のない企業や商品に対するブランドイメージの毀損

短期~長期

物理的
リスク

急性

台風・津波・洪水等による当社グループ施設・事業インフラの業務停止、復旧コスト、運転コスト等の増加、従業員の支援コスト等の発生

短期~長期

台風・津波・洪水等による顧客の機能停止に伴う運転コストの増加によるホールセールビジネスの減少

短期~長期

気候変動による異常気象や災害の激甚化と経済状況の悪化による個人資産の減少を通したリテールビジネスの減速

短期~長期

 

※発生時期は短期:現在~3年、中期:3~10年、長期:10~30年を想定

 

当社グループにおける影響の大きな事象として、移行リスクでは、低炭素社会への移行に伴い重大な影響を受けるお客さまとのビジネス機会減少、気候変動リスクへの対応が不十分とみなされた場合の評判悪化による調達コスト増加・ビジネス機会減少などを想定しています。物理的リスクでは、自然災害による当社グループ施設や事業インフラの損壊による各種コストの発生、お客さまが自然災害により重大な影響を受けることによる当社グループのビジネス減少などを想定しています。

なお、物理的リスクへの対応として、自然災害の発生等に備えて、「業務継続計画(BCP)の策定」及び「危機対策本部の設置」によるリスク管理体制を構築しています。

 

一方、当社グループにとっての事業機会として、表2を想定しています。

 

  表2 当社グループにとっての事業機会

機会

グリーンファイナンス、トランジション・ファイナンスやソリューションビジネスなど適応に関するビジネス機会の増加

ESG関連商品の信頼度向上と個人投資家の意識の高まりによる市場の拡大

持続可能性や環境に特化したサステナブルボンドやグリーンボンドなどの取扱い機会の増加

 

 

 今後、当社グループでは、これらの機会を捉えるための対応として多様な金融サービスの提供を強化していきます。

 

()リスク・機会に係る定量分析

定性分析に加え、上記のシナリオに基づく定量分析を実施し、2030年における財務インパクトを試算しました。

移行リスクについては、炭素税導入に係るコスト増や評判低下による調達コストへの影響のほか、当社グループの証券ビジネスの委託手数料への影響等を分析しています。物理的リスクについては、急性リスクである営業拠点の洪水被害による営業停止や当社施設の損傷や市場イベント等の影響を分析しています。なお、洪水被害は主要な拠点である国内拠点を想定したものとしています。

移行リスクでは、脱炭素・サステナブルファイナンスへの取り組みを継続することで、関連ビジネスを拡大し気候変動対策に対する当社グループのレピュテーションを保つことが重要であること、物理的リスクでは、異常気象による洪水等の直接的な影響に加え、市場を介した間接的な影響もあるため、気候災害の市場イベント時にも耐えうるリスク管理の必要性が認識されました。

試算の結果、いずれのシナリオでも気候変動関連のリスクと機会に対して適切な対策ができない場合は収益が圧迫される一方で、適切な対応をとることや機会を享受することができれば、当社グループの財務に与える影響は限定的となることが分かりました。

 

c.脱炭素社会実現に向けたロードマップ

当社グループでは、気候変動はグローバルで重要な社会課題との認識のもと、「a.マテリアリティとの関係」のとおり経営の重要課題(マテリアリティ)と位置づけ、事業を通じた取り組みを進めております。パリ協定や日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言に賛同し、脱炭素社会への移行と実現に向け、「2030年までに自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)ネットゼロの達成」及び「事業活動を通じた脱炭素社会への移行の支援」を含む「温室効果ガス排出量ネットゼロ宣言」を策定し取り組みを進めております。今後の具体的な取り組みは以下のとおりです。

(i)2030年までに自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)ネットゼロの達成

自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)の削減については、省エネ活動の継続及び再エネ電力の導入等を進めていきます。前者については、各施設におけるエネルギー利用の効率化などを行っていきます。また、後者については、EVや電動バイク等の導入に加え自社・他社物件における再エネ電力の導入等を推進していきます。

 

()事業活動を通じた脱炭素社会への移行の支援

気候変動問題を含む社会課題解決に向けて、グリーンボンドを始めとしたSDGs債の引受・販売や、投資家や発行体向けのセミナー開催・レポート発行の情報発信等に取り組んでおり、今後もサステナブルファイナンスの普及・拡大に貢献していきます。

 

<リスク管理>

気候変動に関するリスクは自然災害・環境、経済環境やファイナンスなどの経営環境にも影響を及ぼすと考えています。既存のリスクに複雑に影響することから、当社グループの保有するリスクの特性に応じたリスクコントロールを行うべきと考え、既存のリスク管理カテゴリーである「経営環境リスク」の中で気候変動のリスクを管理し、全社的な枠組みで管理しております。

 

 <指標及び目標>

(i)GHG排出量

当社グループは、自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)の2030年ネットゼロを目標に掲げており、GHGプロトコルと整合した環境省・経済産業省の基本ガイドラインに従って排出量の把握と削減に向け取り組みを進めております。事業活動を通じたエネルギー消費と温室効果ガス排出削減に向け、引き続き対策を講じていきます。

 

 

   GHG排出量(単位:t-CO2)

 

  実績

目標

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2030年度

Scope1

855

993

984

689

ネットゼロ

Scope2

3,016

2,952

2,827

2,058

 

 対象範囲:株式会社岡三証券グループ、岡三証券株式会社

 

()SDGs債の引受状況

当社グループの中核企業である岡三証券では、2020年に「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」に登録しており、グリーンボンドを始めとしたSDGs債の引受・販売を通じて気候変動問題を始めとする社会課題の解決に取り組んでおります。

SDGs債引受状況

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

引受額(億円)

141.0

 162.0

321.0

458.3

引受件数

6

12

19

34

 

 

当社グループは、気候変動関連のリスク・機会を経営の重要課題のひとつと捉え、今後も、TCFD提言に基づく情報開示のさらなる充実を図り、自社の脱炭素化に加えサステナブルな社会の実現に貢献するための取り組みを進めていきます。

 

②人的資本対応

<戦略>

当社グループでは、国籍・人種・性別・年齢・障がいの有無・性自認・性指向・信条・宗教・社会的身分等を問わず多様性を受容することで、あらゆる人材が個性と能力を発揮でき、個人が有する属性によって不平等が生じないよう、人材の採用や評価・処遇等の諸制度を適切に運用してまいります。今後も会社の持続的な成長を促進するため、これまでのキャリアで培われたさまざまなバックグラウンドを礎とした多様性を尊重しながら優秀な人材を獲得し、当社グループの中核を担う人材として積極的に指導的立場へ登用する施策を進めてまいります。

このような考え方のもと、男女ともに活躍できる環境・組織風土の醸成を目的として、各種人事制度・研修制度の拡充や新たな施策推進に向け取り組んでおります。当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

(人材育成方針)

当社グループの社員がお客さまに高い付加価値を提供し続けるためには、証券のプロフェッショナルとしての高度な知識と専門性、高い倫理観が不可欠という考え方のもと、「多様な個性が輝き、躍動する」人材の育成に取り組んでおります。従業員一人ひとりの能力を向上させるため、中核子会社である岡三証券を中心に多彩な教育・研修プログラムを導入し、人材育成に力を入れております。

 

(i)階層別研修プログラム

・新入社員や第二新卒採用社員に対しては、証券ビジネスプロフェッショナルとしての基礎を築くため、集合研修及び営業店での営業研修を実施しております。

・店部長、管理職、主任等、各階層に必要な知識・役割認識・マネジメント力向上を目的とした集合研修を定期的に実施しております。

 

(ⅱ)マネージャー層へのマネジメント力向上施策

・各マネージャーに自身の行動を振り返る機会を与え、職場の部下や同僚からのフィードバックを通じてマネジメント行動を向上・改善することを目的とした「マネージャー行動診断」を毎年役職層別に実施しております。

 

(ⅲ)自律的な成長を促す育成支援施策

・金融プロフェッショナル育成のための社内研修制度「岡三・キャリア・アカデミー」において、金融専門知識だけでなく、社会的使命・役割を意識した主体的かつ能動的な思考・行動のとれる人材の育成を進めております。

・社員が時間を有効活用しながら自律的に学習する仕組みとして「岡三Web ラーニング・ライブラリ」(研修用ポータルサイト)を導入し、金融・マネジメント・ダイバーシティ・コミュニケーション・ハラスメント・マインド・資格取得・マナー等、100種類以上の講座から選択が可能な学習環境を提供しております。

・AIを活用したOJTシステムを導入し、社員が時間や場所に捉われることなくモバイル端末等を通じ自律的に実践的なロールプレイングを繰り返すことで、接遇応対や商品説明等の基礎的なスキルの習得と定着を図る機会を提供しております。AIによる即時のフィードバックやコミュニティ内での相互コミュニケーション形成により学習モチベーションが継続するとともに、現場でのOJTにおいては応用力に主眼をおいた育成を可能とする環境を整備しております。

 

(社内環境整備方針)

当社グループで働く社員が高いモチベーションを持ちパフォーマンスを最大限に発揮し続け、多様なキャリアパスや働き方の実現ができるよう、さらなる環境整備を進めております。当社のマテリアリティ(重要課題)「人材」(人材育成、労働環境整備)における取組方針「社員が輝く職場づくりのために」を全社的に推進する体制の確立を目的として「ダイバーシティ推進プロジェクトグループ」を設置し、多様性確保・働き方改革の実現に向け必要な取り組み・課題解決を推進し、KPIの達成と多様な社員が活躍する社内環境のさらなる整備を図る体制を構築いたしました。また、多様な人材が活力と成長を生むとの考えのもと、社員それぞれの能力や適性に応じて強みを発揮できるような施策や、柔軟な働き方を可能とする勤務体系の導入などを実施しております。

なお、具体的には以下の環境を整備しております。

 

(i)多様な社員の活躍・育成支援を推進する施策

・女性活躍推進

女性のライフステージとキャリアパターンに合わせた多様な働き方を推進するため、小学校就学前の子を持つ支店営業社員を対象として、仕事と育児を両立し、安心して働き続けることができる職務を限定した「WLB(Work Life Balance)育児コース」を導入しております。また、育児支援制度のさらなる充実を目的として、小学校6年生までの子を養育する社員まで育児短時間勤務制度等の対象を拡充する等、各種制度の充実に取り組んでおります。

・高齢者雇用の取り組み

定年退職者の豊かな経験や能力を積極的に活用するため、定年後も継続して勤務可能とする「継続雇用制度」を導入しております。

 

(ⅱ)自律的な自己成長・キャリア形成を促す施策

・社内人材公募制度

社員自らの意思で希望する業務にチャレンジできる機会を提供するために、社内人材公募制度(Okasan Career Challenge)を導入しております。

・総合職転換制度

入社後、一定期間を経たのち、転勤を伴わないエリア総合職から総合職へ転換できる制度を導入し、キャリアの幅を広げる機会を提供しております。

・再入社支援制度

学業や新たなフィールドへのチャレンジ等のキャリアアップや、結婚・育児・介護・配偶者の転勤といったライフステージの変化等を理由に退職された方に対して、これまで培ってきた知識・スキル・多様な経験を活かし、改めてチャレンジしたい方を対象とした再入社支援制度(Okasan Seagull Club)を導入しております。

 

 

()社員の健康保持・増進を実現するための支援施策

当社グループでは、従業員の健康の保持・増進を目的として、常駐の保健師による健康管理体制を構築しております。全社員の健康診断の結果をもとに保健師が健康管理者・産業医と連携し、月に一度フォローが必要な社員の洗い出しを行い、専門的見地からのアドバイス、受診後のアフターフォローに力を入れております。

 

(ⅳ)従業員の経済的な安定を支援する取り組み

当社グループでは、従業員の経済的な安定を支援する取り組みについても推進しており、中長期的な資産形成に資するよう、確定拠出年金制度及びマッチング拠出、各種積立投資並びに貯蓄制度等を整備しております。

 

<指標及び目標>

当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績

管理職に占める女性労働者の割合

2030年まで30

7.6

男性労働者の育児休業取得率

2030年まで100

102.0

年次有給休暇取得率

2030年まで70

54.7

 

(注)1.中核子会社である岡三証券の数値であります。

      2.管理職に占める女性労働者の割合は、2024年4月1日時点を基準日として算出したものであります。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

証券業界を取り巻く環境は目まぐるしく変化していくなか、当社グループは環境の変化に対応するための戦略を実行する必要があります。そのため、リスク管理の果たす役割はますます重要となってきております。

このような環境下、当社ではリスクアペタイトフレームワークの枠組みを構築し、当社が直面している経営環境及び経営方針に従った事業計画を実行する上で生じるリスクを識別、管理することが重要であると考えています。

そのため、グループの事業特性を考慮し、管理すべきリスクとしてリスクカテゴリを定めています。その上で、リスクカテゴリ内の各リスクを識別し、リスクを定量化した上で、事業計画達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量をリスクアペタイトとして表現し、定量化されたリスクがリスクアペタイトの範囲に収まるように管理を実施しております。なお、管理すべきリスクの種類及び管理方針は毎年見直しを行い、経営環境、事業戦略等の変化に応じて見直しを実施しています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであることから、実際の結果と異なる可能性があります。また、当該記載事項については、必ずしもリスク要因に該当しない場合もありますが、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性等を考慮し記載しております。

 

(1) 経営環境リスク

政治、経済環境、業界構造、競合企業、法規制、資本調達、株主構成、気候変動、テクノロジーの革新等の外部経営環境の変化によって当社グループが損失を被る可能性があります。

① 金融商品取引業の収益変動

当社グループの主要事業であります金融商品取引業は、日本国内のみならず世界各地の市況動向や経済動向により投資需要が変化し、顧客からの受入手数料、トレーディング損益等が大幅に変動しやすいという特性があり、これら国内外の金融商品市況の動向や金融商品取引所における取引の繁閑が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合企業

当社グループは対面営業を主力とする専業証券として、長年に亘り地域密着した営業活動により競争優位を築いてまいりましたが、近年の証券業界においては、同業他社に加えて銀行等の競合、異業種やフィンテック系スタートアップからの参入、及び業界再編などにより、今後も激しい競争環境が続くことが予想されます。このような状況下、当社グループの競争力の優位性が維持できない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法規制

当社グループは、その業務の種類に応じて、法令・諸規則の規制を受けております。岡三証券株式会社を始め国内で金融商品取引業を営む証券子会社等は、金融商品取引法の規制を受けるほか、各金融商品取引所、日本証券業協会等の自主規制機関による諸規則等の規制を受けます。また、海外の子会社については、現地法上の規制を受けます。

当社グループが受ける法令・諸規則の規制から引き起こされるリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

しかし、将来において、法的規制の強化や、現在予期し得ない法的規制等が設けられる可能性があり、関連法令を遵守できなかった場合、規制、命令により業務改善や業務停止の処分を受けるなど、事業活動が制限され当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 気候変動

当社グループは気候変動を重要なリスクと認識しております。気温・海面上昇等や異常気象の増加により人的被害や財産上の損害が生じるリスク(物理的リスク)や、脱炭素社会に向けた移行に伴う政策・法規制、技術、市場の変化による財務上及び評判上のリスク(移行リスク)が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 経営戦略リスク

当社は、2023年3月に新中期経営計画を発表し、「金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生」に貢献する」ことを存在意義として掲げ、「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を基本方針に据えました。また、成長戦略の実現性を高めるために、全領域で“デジタル化”を推進しています。

将来これらの施策が計画通りに進行しない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事務リスク

事務処理のプロセスが正常に機能しないこと、役職員の行動が不適切であること、又は災害・犯罪等の外部的事象の発生により、当社グループに対する損害賠償請求や信用力の低下等のリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っています。

しかし全ての事象に対応することは不可能であるため当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 資金流動性リスク

当社グループの主要な事業であります金融商品取引業においては、事業の特性上、業務執行に必要となる大量の資金を機動的かつ安定的に調達する必要があります。財政状態の悪化、資産の流動性悪化、信用格付低下等の要因により短期金融市場・資本市場等からの資金調達が困難となる、あるいは資金調達コストが上昇するなど流動性リスクの顕在化に迅速に対応するため、ストレステストを実施することで、相場急変時の影響をモニタリングしております。

しかし、予想を超えた量の資金流出や急激な信用格付低下といった当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) システムリスク

当社グループの業務執行に際しては、コンピュータ・システムの利用は不可欠なものとなっております。そのため、インターネット取引や当社グループが業務上使用しているコンピュータ・システムや回線が品質不良、外部からの不正アクセス、災害や停電等の諸要因によって引き起こされるリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

 

(6) 情報セキュリティリスク

コンピュータ・システムの不正利用等による顧客及び役職員の個人情報、経営情報等の機密情報の漏洩等、引き起こすリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

顧客情報の流出や個人情報の漏洩等が生じた場合、損害賠償の請求や、監督官庁から行政処分を受ける可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され顧客の流出につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 風評リスク

当社グループに対する噂、悪評、信用不安情報や誤解、誤認、誇大解釈等が、マスコミ、その他社会一般等に広がることにより、当社の評価、評判が低下し、当社グループの業績に悪影響が生じる等の損失を被る可能性があります。
 

(8) 災害リスク

自然災害の発生や病原性感染症の拡大等に備えて、「業務継続計画(BCP)の策定」及び「危機対策本部の設置」によるリスク管理体制を構築しておりますが、当社グループの想定を超える不測の事態が発生する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 労務リスク

従業員の「就業規則」等の諸規則違反、職場の安全衛生環境の問題及び労務慣行の問題に起因して当社グループが損失を被る可能性並びに役職員の不法行為により使用者責任を問われ、当社が損失を被る可能性があります。

 

(10) 経営法務リスク

法令等や各種取引上の契約等において、法令遵守違反や契約違反その他これらに伴う罰則の適用や損害賠償等の発生により、当社グループが損失を被る可能性があります。これらの経営法務リスクについては当社グループが個別に管理しており、リスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

当連結会計年度末現在において当社グループの事業に重要な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来、重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 市場リスク

当社グループでは、自己の計算において株式・債券・為替等及びそれらの派生商品などの金融資産を保有しておりますが、急激な市況変動・金利変動等によりこれらの金融資産の価値が変動した場合、取引先が決済を含む債務不履行に陥り保有する有価証券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合、加えて、市場の混乱等により市場において取引が出来ないことや、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより当社グループが損失を被る場合等、元本の毀損や利払いの遅延等による損失に対応するため、リスク相当額の限度額を定め、日々モニタリングしています。

しかし、予想を超えた急激な市況変動・金利変動といった当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進む中、緩やかな回復を辿っていたものの、年度後半にかけては減速の動きがみられました。個人消費は実質賃金がマイナスで推移したことにより力強さを欠く状況となりましたが、2023年のインバウンド消費は訪日外客数の回復や円安が追い風となり、過去最高を記録しました。生産活動は、半導体市況の底打ちなどを背景に持ち直しの動きがみられたものの、1月以降は一部自動車メーカーにおける生産・出荷停止の影響からやや低下しました。

こうした環境のなか、4月に28,200円台で始まった日経平均株価は、堅調な国内企業決算や景気回復、そして東証による上場企業への資本効率改善要請に対する期待感などから海外投資家の資金が流入し、上昇を続けました。8月以降は中国大手不動産会社の経営不安の高まりや米国での金融引き締めの長期化懸念を嫌気したほか、中東情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが広がったことなどから、10月頃にかけて一時軟調な動きがみられました。その後は米国株が騰勢を強めた流れを受けて上昇基調を強め、円安の進行や半導体関連企業の良好な決算を受けて、先行きの業績拡大への期待が高まり、日経平均株価は34年ぶりに史上最高値を更新しました。3月には40,000円の大台を突破し、40,369円44銭で当年度の取引を終えました。

債券市場では、4月初めに0.3%台だった長期金利は、日銀金融政策決定会合でのイールドカーブ・コントロール柔軟化の決定を受けて上昇し、10月から11月にかけて一時0.9%を上回りました。その後は米国の金利低下を受けて国内金利も低下し、3月には日銀がマイナス金利政策の解除を決定したものの、当面は緩和的な金融環境の継続が公表されたこと等を受けて、国内長期金利は0.725%で当年度の取引を終えました。一方、4月に1ドル=130円台前半だった為替市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀の金融緩和スタンスの違いから、10月には1ドル=151円台まで円安ドル高が進みました。その後は、年末にかけて一時的に円高ドル安に振れたものの、堅調な米国景気を受けてFRBの早期利下げ期待が後退したことなどを背景に円安ドル高が進み、1ドル=151円台で当年度の取引を終えました。

このような状況のもと当社グループでは、当年度から始動した5ヵ年の中期経営計画に基づき、持続的な成長を実現するための経営基盤の確立に取り組みました。中核子会社の岡三証券株式会社では、岡三証券グループ創業100周年を記念した大規模のセミナーやお客さま向けキャンペーン等を実施したほか、成長戦略の一つとして「One to One マーケティング」を強化するなか、相続トータルサポートサービスを導入するなどソリューション営業の推進を継続しました。また、営業基盤拡充の取り組みとして取引所FX事業を同業2社から譲り受ける契約を締結したほか、ストック型ビジネスの拡大を進める方針に基づき、BaaS(Banking as a Service)を活用した銀行代理業や、ファンドラップサービス提供に向けての取り組みを開始しました。その他当社においては、セキュリティトークン(ST)事業における協業の初号案件として、国内の個人向け公募ST債として過去最大規模の発行額の「岡三証券グループ創業100周年記念ST債」の公募発行を行いました。

また、サステナブルな社会の実現に向けて、自社の温室効果ガス排出量ネットゼロへの取り組みを含む気候変動への対応、人権・ダイバーシティ推進のほか、ファイナンスを通じた社会課題解決への貢献や金融教育の推進など、証券ビジネスを通じたサステナビリティの取り組みを強化しました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ3,317億22百万円増加1兆2,077億79百万円、負債合計は前連結会計年度末に比べ3,032億4百万円増加9,936億23百万円、純資産合計は前連結会計年度末に比べ285億18百万円増加2,141億56百万円となりました。

 

 

b.経営成績

当連結会計年度における当社グループの営業収益は845億9百万円(前年度比27.0%増)、純営業収益は825億53百万円(同27.2%増)となりました。販売費・一般管理費は664億42百万円(同0.8%増)となり、経常利益は180億61百万円(前年度の42.8倍)、親会社株主に帰属する当期純利益は131億67百万円(前年度の24.9倍)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ62億65百万円減少し、777億71百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、47億61百万円となりました。これは主に、トレーディング商品の増減999億27百万円、預り金の増減221億4百万円による資金の獲得と、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減1,045億26百万円、信用取引資産及び信用取引負債の増減214億78百万円、顧客分別金信託の増減136億70百万円、短期貸付金の増減130億67百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は、23億93百万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入42億11百万円による資金の獲得と、無形固定資産の取得による支出15億54百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、44億14百万円となりました。これは主に、短期借入金の純増減28億58百万円、社債の発行による収入19億80百万円による資金の獲得と、配当金の支払額41億2百万円、長期借入金の返済による支出38億2百万円、自己株式の取得による支出20億1百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1) 財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,317億22百万円増加1兆2,077億79百万円となりました。これは主に、有価証券担保貸付金が1,966億69百万円、トレーディング商品が441億69百万円、約定見返勘定が314億54百万円、投資有価証券が263億32百万円、信用取引資産が197億8百万円増加したことによるものであります。

 

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,032億4百万円増加9,936億23百万円となりました。これは主に、トレーディング商品が1,998億64百万円、有価証券担保借入金が921億42百万円、預り金が235億76百万円、繰延税金負債が73億67百万円増加した一方、約定見返勘定が243億14百万円減少したことによるものであります。

 

 

(純資産合計)

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ285億18百万円増加2,141億56百万円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金が161億28百万円、利益剰余金が90億64百万円増加したことによるものです。

 

(トレーディング業務の概要)

当連結会計年度の年度末日時点のトレーディング商品の残高は以下のとおりであります。

 

 

2023年3月31日現在
(百万円)

2024年3月31日現在
(百万円)

資産の部のトレーディング商品

240,344

284,513

 

商品有価証券等

239,927

284,461

 

 

株式・ワラント

5,945

35,036

 

 

債券

233,842

244,506

 

 

CP及びCD

 

 

その他

139

4,919

 

デリバティブ取引

417

51

 

 

オプション取引

78

10

 

 

先物取引

338

41

負債の部のトレーディング商品

238,809

438,673

 

商品有価証券等

238,786

438,204

 

 

株式・ワラント

2,577

920

 

 

債券

236,203

437,283

 

 

CP及びCD

 

 

その他

4

 

デリバティブ取引

22

469

 

 

オプション取引

5

 

 

先物取引

16

469

 

 

 

2) 経営成績

当連結会計年度における当社グループの営業収益は845億9百万円(前年度比27.0%増)、純営業収益は825億53百万円(同27.2%増)となりました。販売費・一般管理費は664億42百万円(同0.8%増)となり、経常利益は180億61百万円(前年度の42.8倍)、親会社株主に帰属する当期純利益は131億67百万円(前年度の24.9倍)となりました。

 

受入手数料

受入手数料の合計は499億48百万円(前年度比21.5%増)となりました。主な内訳は次のとおりです。

 

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(百万円)

受入手数料

41,119

49,948

 

委託手数料

16,163

24,173

 

引受け・売出し・特定投資家向け
売付け勧誘等の手数料

615

1,459

 

募集・売出し・特定投資家向け
売付け勧誘等の取扱手数料

10,709

14,419

 

その他の受入手数料

13,631

9,896

 

 

委託手数料

当連結会計年度における東証の1日平均売買高(内国普通株式)は21億91百万株(前年度比27.3%増)、売買代金は4兆6,744億円(同33.6%増)となりました。こうしたなか、中核子会社である岡三証券株式会社においては、堅調な株式市況を背景に委託売買代金が前連結会計年度比で増加しました。

これらの結果、株式委託手数料は236億7百万円(同52.0%増)となりました。また、その他の委託手数料は5億66百万円(同10.0%減)となり、委託手数料の合計は241億73百万円(同49.6%増)となりました。

 

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

当連結会計年度における株式の引受けは、大型の株式売出しの引受けがあった前連結会計年度比で引受金額は減少したものの、主幹事案件等により引受手数料は増加しました。また、債券の引受けは、個人投資家向け社債の大口の引受けを複数案件獲得したこと等により、特に事業債の引受金額が増加しました。

これらの結果、株式の手数料は5億円(前年度比65.3%増)、債券の手数料は9億58百万円(同206.9%増)となり、株式・債券を合わせた引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料の合計は14億59百万円(同137.2%増)となりました。

 

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料につきましては、投資信託関連収益がその大半を占めています。

当連結会計年度における公募投資信託の販売額は、前連結会計年度比で増加しました。良好な日本株相場を背景に高い配当利回りに着目した日本株式ファンドが年度を通じて販売を牽引したほか、年度後半には新規に取り扱いを始めた半導体関連企業に投資するファンドや、高成長が期待されるインド地域へ投資するファンドの販売も堅調となりました。

これらの結果、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は144億19百万円(前年度比34.6%増)となりました。また、その他の受入手数料については、主に投資信託の信託報酬等により98億96百万円(同27.4%減)となりました。

 

 

トレーディング損益

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(百万円)

トレーディング損益

21,947

29,139

 

株券等トレーディング損益

13,186

22,808

 

債券等トレーディング損益

8,461

6,496

 

その他のトレーディング損益

299

△164

 

 

株券等トレーディング損益は主に米国株式を中心とした外国株式の国内店頭取引等によるものであり、また、債券等トレーディング損益は国内外債券の顧客向け取扱いやポジション管理等に伴うものであります。

当連結会計年度においては、外国株式は総じて堅調な市況を受け、主に個人のお客さまにおける国内店頭取引の売買が前連結会計年度比で増加しました。一方、外国債券の販売は、法人向け、個人向けともに減少となりました。

これらの結果、株券等トレーディング損益は228億8百万円(前年度比73.0%増)、債券等トレーディング損益は64億96百万円(同23.2%減)となり、その他のトレーディング損益1億64百万円の損失(前年度は2億99百万円の利益)を含めたトレーディング損益の合計は291億39百万円(前年度比32.8%増)となりました。

 

金融収支

金融収益は35億88百万円(前年度比46.2%増)、金融費用は19億55百万円(同18.6%増)となり、差引の金融収支は16億32百万円(同103.0%増)となりました。

 

その他の営業収益

金融商品取引業及び同付随業務に係るもの以外の営業収益は、18億32百万円(前年度比77.8%増)となりました。

 

販売費・一般管理費

販売費・一般管理費は、事務費や人件費の増加等により、664億42百万円(前年度比0.8%増)となりました。

 

営業外損益及び特別損益

営業外収益は24億66百万円、営業外費用は5億15百万円となりました。また、特別利益は投資有価証券売却益の計上等により22億75百万円、特別損失は減損損失の計上等により21億38百万円となりました。

 

3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループのコア事業であります証券ビジネスの営業収益は、株式、債券、金利、為替等の市況環境変動の影響を受けるため、当社グループの経営成績は連結会計年度毎に大きく変動する傾向にあります。

このため、当社といたしましては、グループ企業それぞれの事業の強みを全体で共有・活用し、多様化する資産運用ニーズに迅速かつ的確に対応できる体制の確立を目指すことにより、安定した成長を実現できる経営体質の構築に努めております。

 

4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に取り組み、特に重要な経営指標として、連結ROE(株主資本利益率)8%の達成を目標として掲げております。当連結会計年度におけるROEは、営業収益の増加等により、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度比で増加したことから、7.1%(前年度比6.8ポイント上昇)となりました。

当社グループでは、中長期的な企業価値向上への取り組みを続けてまいります。

 

5) セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、従来「証券ビジネス」「アセットマネジメントビジネス」及び「サポートビジネス」の3つの報告セグメントに区分しておりましたが、当連結会計年度より「投資・金融サービス業」の単一セグメントに変更しております。

 この変更は、2022年11月に岡三アセットマネジメント株式会社(現・SBI岡三アセットマネジメント株式会社)を持分法適用関連会社化したことに伴い、当社グループの事業展開、経営資源の配分及び経営管理体制の実態等の観点から報告セグメントについて再検討した結果、「投資・金融サービス業」の単一セグメントとして管理することが適切と判断いたしました。

 この変更により、前連結会計年度及び当連結会計年度のセグメント情報の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資本の流動性につきましては、次のとおりです。

当社グループのコア事業であります証券ビジネスの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付、トレーディングのロングポジション及び有価証券担保貸付金であり、逆に資金調達の主なものは金融機関借入、コールマネー、信用取引売却代金の顧客からの借入、トレーディングのショートポジション及び有価証券担保借入金であります。これらは、市況環境の変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えることとなります。当連結会計年度においては、岡三証券グループ創業100周年記念ST債(1年債)20億円の発行による資金調達を行っております。なお、岡三証券株式会社では、安定的かつ機動的な財務運営のため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとしたコミットメントラインを総額210億円として更新いたしました。

 

 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。