当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針、経営環境
当社は、2024年1月20日に迎えた創立90周年を機に、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を制定しました。当社は創業以来、先進・独自の技術に基づいた商品やサービスの提供を通じて人々の「笑顔」に寄り添ってきました。来たる100周年、さらにその先も、全事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、世界中の人々に幸せな笑顔が何度も訪れるよう、従業員一人ひとりが「アスピレーション(志)」を持って挑み続けていきます。
当社は、2017年8月に長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定しました。当社の中期経営計画は「SVP2030」の具体的なアクションプランとして位置付けており、2021年4月に発表した中期経営計画「VISION2023」では、事業活動を通じて「新たな価値」を創出することで、社会課題の解決に取り組んできました。「VISION2023」で掲げた売上高・営業利益目標は1年前倒しで達成し、2023年度も「売上高」「営業利益」「税金等調整前当期純利益」「当社株主帰属当期純利益」で過去最高を更新しました。また、「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化等により、成長投資の原資確保と、重点・新規/将来性事業への経営資源の集中投下、及びポートフォリオ内の資源循環の加速・強化を図ることで、事業を通じて「環境」「健康」「生活」「働き方」の課題に取り組み、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする事業基盤の構築」を進めてきました。
2024年4月17日には、新たな中期経営計画「VISION2030」を発表しました。「VISION2030」では、収益性と資本効率を重視した経営により富士フイルムグループの価値を高め、世界TOP Tierの事業の集合体として、世界をひとつずつ変え、様々なステークホルダーの価値(笑顔)を生み出すことで、さらなる強靭な事業基盤の構築を実現していきます。
2024年度は、世界的な雇用情勢の回復、及び人手不足の深刻化を背景とした実質賃金の改善が進むとともに、企業の投資意欲の持続や、IT・半導体関連市況の回復等が、景気の追い風となることが予想されます。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化やイスラエル・ガザ紛争を発端とした中東情勢の緊迫化、中国経済の停滞、インフレを背景とする金融引き締めの持続等により、世界経済が減速するリスクも懸念されています。このような状況下で、当社グループは全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、ヘルスケア・エレクトロニクスの成長加速と、持続的な成長を可能とするさらに強靭な事業基盤の構築をより一層推進し、「稼げる力」を高めていくことで、この難局を乗り越えていきます。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。
|
|
|
|
|
|
(単位:億円) |
|
|
2023年度 |
2024年度 (次期の見通し) |
対前年度 |
|
2026年度 (中期経営計画) |
|
売上高 |
29,609 |
31,000 |
1,391 |
|
34,500 |
|
営業利益 |
2,767 |
3,000 |
233 |
|
3,600 |
|
当社株主帰属当期純利益 |
2,435 |
2,400 |
△35 |
|
2,700 |
|
ROE |
8.2% |
7.8% |
0.4ポイント減 |
|
8.1% |
|
ROIC |
5.6% |
5.4% |
0.2ポイント減 |
|
5.8% |
(2)対処すべき課題
「ヘルスケア部門の成長戦略」
ヘルスケア部門では、高齢化社会におけるQOL(Quality Of Life)向上や新興国における医療環境の整備といった医療分野の社会課題に対し、当社独自のAI技術やバイオ技術等、最先端の技術を駆使した製品やサービスを投入し続けます。これにより、2024年度は、ヘルスケア部門で初となる売上高1兆円超えによる増収・増益を目指します。
メディカルシステム事業では、重点課題として設定している、富士フイルムヘルスケアとのグループシナジー創出と、IT・AI技術の活用による付加価値の向上に引き続き注力していきます。今夏には、メディカルシステム事業に関わる国内グループ会社を機能軸で再編成し、事業戦略立案や研究開発、販売・保守サービスの各機能の体制をさらに強化します。また、当社の強みである幅広い製品ポートフォリオと医療ITを組み合わせた付加価値の高いソリューションの提供により、「モノ」としての医療機器の付加価値を向上させるだけではなく、AIを活用した故障予兆監視、疾患別ソリューション、そして健診センターのようなトータルパッケージの提供等、「モノ+コト売り」による価値提供へのシフトを推し進めます。2024年4月には、医療機関や研究機関における画像診断支援AI技術の開発を支援するサービス「SYNAPSE Creative Space」を発売しました。高度な工学的知識を必要とせず、手元にPCを用意すれば利用できるクラウドサービスであり、希少疾患を始めさまざまな疾病を対象とした画像診断支援AI技術の開発を促進します。本サービスの提供を通じて、医療現場をサポートするAI技術の開発を支援するとともに、AIの社会実装や教育支援にも力を入れていきます。
バイオCDMO事業では、抗体医薬品の旺盛な需要に応えて事業を拡大すべく、2024年度からデンマーク拠点の大型原薬製造設備を稼働させるとともに、米国ノースカロライナ拠点に、追加で新たな大型原薬製造施設の建設を開始します(2028年稼働予定)。また、バイオテック企業への投資環境の冷え込みに起因する細胞・遺伝子治療薬の開発停滞、及び臨床試験開始件数の減少により、英国や米国拠点の中小型製造設備における受託ビジネスが低調となる中、特に需要停滞の長期化が見込まれる遺伝子治療薬については、原薬生産設備を抗体医薬品用途へ転用する等、生産体制の最適化を進め、ビジネスの拡大を図ります。
ライフサイエンス事業では、創薬支援材料分野においてiPS細胞・培地・試薬を組み合わせたソリューション販売と、特徴ある製品開発によって顧客提案力を向上させ、製薬企業・バイオテック企業・アカデミアのニーズにきめ細かく対応できるカスタマーサポート体制で継続的な事業拡大を図っていきます。また、iPS細胞技術・ノウハウを生かした細胞治療薬の開発製造受託ビジネスも拡大していきます。
医薬品事業では、コロナ禍後の感染症流行により需要の高まる抗菌剤の安定供給を進めます。
コンシューマーヘルスケア事業では、2023年度に発売した「アスタリフト アドバンスドシリーズ」や、機能性表示食品の「ヒザテクト」といった新製品を拡販するとともに、独自性の高い化粧品・サプリメント新製品を逐次投入して、事業を継続的に拡大していきます。
CRO事業では、当社独自のAI技術や化合物ライブラリ、iPS細胞等を駆使した特徴のあるサービスを、主に基礎研究から非臨床試験までの創薬初期段階の顧客に広めていきます。
「エレクトロニクス部門の成長戦略」(旧マテリアルズ部門)
エレクトロニクス部門では、「高機能材料戦略本部」の下、中長期視点での新規事業開発と、同領域の顧客アプリケーション軸での事業ポートフォリオの構築・戦略マネジメントにより事業拡大を進めていきます。
半導体市場では、AI、IoT、5Gの普及やDXの加速等により需要が拡大し、半導体の高性能化に必要な微細化・高集積化がさらに進むとみられています。半導体材料事業(旧電子材料事業)ではこうした市場ニーズに応えるために、高性能化を支える材料開発や安定供給を目的とする積極的な設備投資をタイムリーかつ継続的に実施していきます。また、2023年度のプロセスケミカル事業買収により、当社の製品ラインアップが拡充し、半導体製造プロセスのより多様な工程に当社製品を提供できるようになりました。今後、新製品開発によりさらなる製品ラインアップの拡充を進めるとともに、CMPスラリーとポストCMPクリーナーといった補完し合う材料を有する強みを生かし、単一材料では解決できない複雑な顧客課題を解決していく等、「ワンストップソリューション」を提供することで、事業成長を加速させます。
ディスプレイ材料事業では、車載ディスプレイやAR/VRスマートグラス向け等に薄膜・積層塗布や光コントロール等、当社が蓄積してきた技術を活用した新規用途向け部材の開発・導入を推進し、次世代エレクトロニクスデバイスの普及に積極的に貢献していくことで、事業を拡大していきます。また、液晶パネル向けTAC製品の強いマーケットポジションの維持、及び有機EL向け材料のシェア向上も推進していきます。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」や、データセンターで使用されるデータテープ、半導体やディスプレイ等デバイス製造工程に使用される圧力測定フィルム「プレスケール」、メンブレンろ過フィルター等、当社独自技術を活用した高機能製品の販売拡大を継続するとともに、爆発的に増加する「通信」と「エネルギー」インフラに向けた新規ビジネスの開拓を行い、積極的に事業を拡大していきます。
ファインケミカル事業では、「フロー合成」「高純度化」等の当社が有する技術により半導体材料等のエレクトロニクス分野向けに差別化製品を供給拡大していきます。また、「エレクトロニクス」「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」3分野を重点領域と位置づけ、高純度化技術や高度な品質保証機能を活かした差別化製品を創出し、事業領域を拡大していきます。
「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」
ビジネスイノベーション部門では、グラフィックコミュニケーション事業をビジネスイノベーションへ統合し、「プリンティング&ソリューション」事業として、オフィスから商業印刷(アナログ・デジタル)・産業印刷まで全領域をカバーする業界で唯一の「ソリューションパートナー」として事業展開を進めていきます。加えて、他社との業務提携を通じた、原材料・部材調達やトナー開発・生産供給体制構築により、事業基盤をさらに強化していきます。
ビジネスソリューション事業では、DXのニーズの高まりを背景に、ITインフラ環境の構築・運用を支援する「IT Expert Services」をベースとして、顧客企業のインフラのクラウド化や顧客企業が現在利用しているシステムを最大限生かした業務プロセス変革を支援し、DXを加速するクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」の提供、「Microsoft Dynamics 365」を主力としたERPソリューションの販売・導入支援等を通じて、顧客企業のDXに貢献し、事業成長を図ります。
オフィスソリューション事業では、ハイブリッドワークの浸透により、プリントボリュームが漸減する中で、当社が特に強みをもつA3カラー領域に注力し、環境対応と生産基盤強化を軸に、効率的な販売に転換します。加えて、欧州各国の有力代理店による当社複合機の新規取り扱いを開始し、新規市場での販売拡大を図ります。
グラフィックコミュニケーション事業では、商業印刷・パッケージ印刷市場で、大ロットのアナログ印刷やモノクロ印刷が減少する一方、多品種・小ロット印刷やカラー印刷が増加し、高速フルカラーデジタル印刷・DXのニーズが拡大することを見込んでいます。当社は、成長を期待できる高速・高画質のデジタル印刷・DXへ投資し、国内市場で圧倒的シェア・海外でもトップレベルのシェアをもつ刷版の顧客を中心に販売を拡大し、デジタルシフトを加速していきます。刷版事業では、グローバルでの生産ライン統廃合によるリーンな体制の下、高付加価値な無処理版*の販売拡大に集中し、収益性改善を進めていきます。インクジェットインク・ヘッドについては、生産体制の再編で収益性改善を図るとともに、インク・ヘッドという基幹部材を自社でもつ強みを活かし販売を拡大することに加えて、インク・ヘッドを組み合わせたカスタムシステムをブランドオーナーに提供し、顧客製品の生産ラインへデジタル印刷技術を組み込む等、商業印刷・パッケージ印刷のデジタル市場の成長に応えていきます。
* 現像機が不要であり、コスト・作業時間が削減されることに加え、現像液不使用による廃液レスのため環境性能に優れる。
「イメージング部門の成長戦略」
イメージング部門では、「写真を撮る・写真を楽しむ・共有する」ことを核とした当社独自のエコシステムを発展させ、新しい感動や体験を創造し続けることで持続的成長を実現させます。
コンシューマーイメージング事業では、2024年4月に発売したアナログインスタントカメラの最上位モデル「INSTAX mini 99」をはじめとし、さらなる新製品の発売、イベント・ビジネス需要の取り込みや異業種との協業により新たなユーザー層拡大を図ります。また、富士フイルムビジネスイノベーション製トナー方式フォトプリンター機の展開拡大や異業種パートナーとのアライアンスによる若い世代との新たなタッチポイント創出等により、新規プリント需要の掘り起こしを進めていきます。
プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルカメラ「Xシリーズ」「GFXシリーズ」マルチブランド戦略強化により、スマホでは飽き足らない潜在ニーズを掘り起こし、当社ファン拡大を図ります。また、プロジェクターの拡販、遠望監視カメラの新規用途への展開や最先端の光学技術・画像処理技術・AI駆使によるDXソリューションビジネス等、新規分野の立ち上げも進めていきます。
「SVP2030の下での重点分野と取組み」
当社グループは、「SVP2030」のもと、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」との2つの側面から、4つの重点分野「環境」「健康」「生活」「働き方」と、事業活動の基盤となる「サプライチェーン」「ガバナンス」における各分野で設定した目標達成に向けた取組みを進めています。
「環境」においては、気候変動への対応や水資源を含む生物多様性の保全、資源循環の促進等を重点課題として取り組んでいます。脱炭素化については、パリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合した目標「自社の製品ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)排出を2030年度までに50%削減(2019年度比)」を掲げています。本目標は「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ*1」より、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標として認定されました。本目標の達成に向け、富士フイルムグループ環境戦略「Green Value Climate Strategy」の下、環境負荷の少ない生産活動や、優れた環境性能を持つ製品・サービスの創出・普及を推進していきます。2023年度は、自社エネルギー起因(Scope1+2)のGHG排出削減目標11%削減(2019年度比)を達成する見込みです。さらに前年度導入したインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)を用いて低炭素投資を促進することで、脱炭素社会の実現に貢献しています。このような活動が評価され、当社は国際的な非営利団体CDPが実施する企業調査において「気候変動」で最高評価である「Aリスト企業」に認定されました。「気候変動」分野での「Aリスト企業」認定は、前年に続いて2年連続です。
「健康」においては、2023年度に100ヶ国まで拡大した医療AI技術を活用した製品・サービスの導入国を、2030年度には世界196の全ての国に導入することを目標にしています。内視鏡システム、超音波診断装置、デジタルマンモグラフィ、CT、MRIといった診断用の医療機器・サービスを提供することで、疾病の早期発見に取り組む医師をサポートし、人々の健康維持増進に貢献しています。また、従業員の健康に対する意識向上やがん対策等が評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に4年連続で選ばれました。また、経済産業省と日本健康会議より、優良な健康経営®*2を実践している法人として「健康経営優良法人ホワイト500」に8年連続で認定されました。今後もヘルスケア事業を通じた社会課題の解決に取り組み、健康長寿社会の実現に貢献していきます。
「働き方」においては、ビジネスに革新をもたらす当社のソリューション・サービスの利用を通じて、働く人の生産性向上と創造性発揮を支援する働き方を2030年度まで累計5,000万人に提供していきます。また、厚生労働省が後援する日本の人事部「HRアワード2023(主催:「HRアワード」運営委員会)の企業人事部門で、最高位となる最優秀賞を受賞しました。本受賞は、当社グループ独自の自己成長支援プログラム「+STORY(プラストーリー)」の取組みが高く評価されたものです。
「ガバナンス」においては、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、その強化に取り組んでいます。取締役会議長をCEOと分離し、業務執行の「監督」と「執行」の役割を明確化しました。また、取締役に対し、「譲渡制限付株式報酬」、及び「中期業績連動型株式報酬」の導入、取締役会の多様性確保(女性取締役の増員、スキル・マトリックスの再検証)を行ってきました。当社は誠実かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指していきます。
*1 CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)による国際的な共同イニシアチブ。科学的根拠に基づいてGHG排出削減目標の検証や削減施策のベストプラクティスを推進している。
*2 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
「2024年度グループ基本方針」
当社グループの2024年度の経営方針は「アスピレーション(志)を持って卓越した価値を届けよう!」です。グループパーパスを実現するためには、①事業の持続的成長につながる新製品開発や設備投資、②環境・人権・サプライチェーンマネジメント等のESG課題への取組み、③人材育成や労働環境の向上、賃金引き上げ等、従業員の働きがいや能力発揮につながる取組みを実現させることが必要です。当社グループは、これらの活動の原資となる利益を生み出すために「稼げる力」をさらに高め、経済的価値と社会的価値の両方を追求しながら、「稼げる会社」に進化させていきます。そして、獲得した利益を上記①②③に再投資することで、永続的な好循環を実現させます。地球上の人々に何度も幸せな笑顔が訪れるよう、多様な「人・知恵・技術」を結集させ、独創的な発想のもと、様々なステークホルダーとイノベーションを起こし、アスピレーション(志)を持って、卓越した価値を世の中に届けていきます。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりであります。
(1) 気候変動への対応
当社グループは、脱炭素社会の実現に向け、2021年12月に新たなCO2排出削減目標を設定しました。エネルギー利用効率の最大化と再生可能エネルギーの導入を両輪で進めることで、2040年度までに自社が使用するエネルギー起因※1のCO2排出を実質的にゼロとすることを目指すとともに、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの自社製品のライフサイクル全体において、2030年度までにCO2排出量を50%削減(2019年度比)します。当社グループの目標は「Science Based Targets (以下、「SBT」と記載します。)イニシアチブ」より、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標として認定※2を受けています。
本削減目標の達成に向け、当社グループ環境戦略「Green Value Climate Strategy※3」を策定しました。電力のみならず合成メタンや水素等のCO2排出を実質伴わない燃料の導入と実装による環境負荷の少ない生産活動や、優れた環境性能を持つ製品・サービスの創出・普及を推進していきます。また、インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)制度の運用を2022年度に導入し、低炭素化に向けた施策の遂行を加速させています。
※1 自社からの直接排出(Scope1)と他社から供給された電気・蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)。
※2 当社グループの2030年度温室効果ガス排出削減目標が「SBTイニシアチブ」の「1.5℃目標」に認定(https://holdings.fujifilm.com/ja/news/list/1642)
※3 Green Value Climate Strategyについては下記をご覧ください。
「2022年4月13日 環境戦略説明会」
(https://ir.fujifilm.com/ja/investors/ir-materials/presentations/session/main/0118/teaserItems1/0/tableContents/019/multiFileUpload2_1/link/ff_presentation_20220413_002j.pdf)
① ガバナンス
当社グループの気候変動に対する活動は、社長を委員長として定期的に開催されるESG委員会で審議・決定され、取締役会に報告されます。取締役会はESG委員会からの報告に対し指示・助言を行い、そのプロセスの有効性を担保します。気候変動対応に関する目標や施策は、重点課題としてESG委員会で審議されます。これまで、CO2排出削減目標や再生可能エネルギー導入目標設定のほか、TCFD提言への賛同、RE100加盟やSBT認定取得等の気候変動に関するイニシアチブへの参加の意思決定、インターナルカーボンプライシング制度の導入、脱炭素目標達成率の中期業績連動役員報酬への反映、北米エリアにおけるグループ全拠点のバーチャルPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)による再生可能エネルギーの導入の審議がなされてきました。
2023年度には、全社の方針、戦略及びESG委員会での決議事項を各事業部門及び事業場の活動に実効性をもって反映させるため、新たに同委員会の下にGX委員会を設置しました。GX委員会は全事業部長及び生産・調達・研究開発の統括責任者で構成されますが、議題に応じて必要な出席者が追加招集されることがあります。
<GX委員会のタスク>
・各事業部門、事業場における環境パフォーマンス改善の進捗管理、対策方針の検討
・全社施策のESG委員会への提案と報告
・ESG委員会での決議事項の各事業部門、事業場の具体的な活動への落とし込み
② リスク管理
当社グループでは、気候変動に関連するパフォーマンスをグローバルで監視するシステムを導入しています。本システムにより、CO2排出量・フロン類等の温室効果ガスの排出量や、使用エネルギー量等を各国・地域の拠点毎に監視し、リスクの抽出に活用しています。これらリスクはエネルギー戦略推進委員会で要因分析を行い、重要なリスクについてはESG委員会に報告がなされ適切な対応が決定されます。気候変動に対するリスク評価のために、インターナルカーボンプライシングを活用し、想定される影響と今後の対応を検討しています。また、TCFD提言に準拠したシナリオ分析を行うことで、自社の環境パフォーマンスに起因するリスクに加え、サプライチェーンや事業場の所在地域で発生するリスクも特定し、必要事項について対策がなされます。
TCFDシナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書の中で示された代表濃度経路(Representative Concentration Pathways:RCP)2.6~8.5をもとに、脱炭素社会に向けた厳しい対策がなされ2100年までの気温上昇が産業革命時期比で1.5℃に抑えられる「1.5℃シナリオ」と、現状を上回る対策が講じられず産業革命時期比で3.2~5℃上昇する「4℃シナリオ」を設定し、評価しました。
③ 戦略
<シナリオ分析結果>
「4℃シナリオ」
現状を上回る対策が講じられず、2100年までに平均気温が産業革命時期比で3.2~5℃上昇する
・事業リスク(物理リスク)
4℃シナリオでは異常気象による生産設備への影響や原材料の供給停止、停電による工場停止等のリスクがあることが分かりました。これらリスクに対しBCP※4の策定による生産拠点や原材料調達先の分散化、安定電源の確保等の対策を進めています。特に近年、異常気象に起因する台風や豪雨により、重要なライフラインである送電網の寸断による被害が各地で発生しています。当社グループは安定的な電源確保のために、1960年代から主要生産拠点に自家発電設備を順次導入することで、停電による操業停止リスクを回避しています。
その他気温や降水パターンの変化により動植物の生息地域の変化、個体数の減少や死滅が発生するリスクがあります。これらの影響により、植物由来原料の不安定化・価格高騰が発生するほか、化石燃料の枯渇により石油由来原料の供給不安定化や価格高騰も想定されます。当社グループでは使用後溶剤の再資源化(蒸留精製リサイクル等)、複合機の部品や使用後カートリッジ(トナー・ドラム・トナー回収ボトル)の回収とリサイクル、梱包材の削減と薄手化等により、原材料供給不足リスクの低減を図っています。
※4 Business Continuity Planning(事業継続計画)。自然災害やテロ、大規模なシステム障害等の危機的状況が生じた場合に、重要な業務を継続し早期復旧できるように計画しておくこと。
・事業機会
気温の上昇に伴い極端な高温、海洋熱波、大雨、干ばつ、熱帯性低気圧の発生頻度や強度が増します。このような異常気象や、異常気象に伴う生態系や健康への影響に対して、社会が適応するための製品・サービスの需要が高まると予測しています。
『社会インフラの強靭化』
異常気象が頻発する状況において、社会インフラの強靭化は重要な課題の一つです。当社グループは、レンズの高精度加工製造技術を活用し、夜間や荒天時でも河川や海面を監視できる高感度カメラの提供や、高精度画像解析・AI技術を用いた橋梁、堤防等の劣化診断技術により、気候変動への適応に貢献できると考えています。また、災害発生時における自治体の罹災対応プロセスのデジタル化により、自治体業務と住民の早期生活再建支援に貢献するソリューションはその必要性が高まると予測しています。
『医療従事者の負担軽減及び医療アクセスの向上』
気温上昇は人々の健康にも大きな影響を与えます。感染症等想定外の疾病拡大による医療従事者の負担増加や、台風や集中豪雨、熱波の発生頻度の増加により患者や医療従事者の往来が困難になり、医療従事者が少ない国地域において医療崩壊につながる可能性があります。当社グループは、医療IT技術や医用画像診断・AI技術をグローバルで展開することで、医療従事者の負担軽減や遠隔診断等の医療アクセス向上に貢献していきます。
「1.5℃シナリオ」
脱炭素社会に向けた厳しい対策が講じられ、2100年までの気温上昇が産業革命時期比で1.5℃に抑えられる
・事業リスク(移行リスク)
1.5℃シナリオでは、脱炭素社会へ移行する過程で、化石燃料の使用を制限し技術革新を促す政策としての炭素税や、各国・地域の炭素税額格差による産業移転を抑制するための炭素国境調整措置の導入による財務リスクがあります。2022年度に当社グループが直接及び間接排出したCO2は980千トンでした。炭素税価格を2023年度下期に設定した社内炭素価格13,000円/トン-CO2とした場合、2022年度製造段階で排出したCO2は980千トン-CO2であり、約127億円(≒980千トン-CO2×13,000円/トン-CO2)の財務リスクとなります。
当社グループは2021年12月に、CSR計画「SVP2030」の気候変動対応目標を引き上げ、2040年度に自社で使用するエネルギーによるCO2排出量ゼロを目標とし、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの導入を両輪で推進しています。2022年度に自社で直接排出するCO2排出量については、省エネや再生可能エネルギーの導入により、本目標の基準年である2019年度に対し、10%削減しました。
・事業機会
人為的に排出されるCO2は主にエネルギー起因であるため、エネルギー利用効率を究極的に高め、CO2排出を伴わない自然エネルギー(風力・太陽光・水力等)を主に利用する社会に移行することが予想されます。
『省エネルギー』
社会全体のエネルギー利用効率を高めるためには、まず製品やサービスにおいてエネルギー効率の高い方式が優先して採用されます。当社グループは、データ保存時のCO2排出を削減する大容量磁気テープによるデータアーカイブストレージシステムや、省電力性能を高めた複合機を提供することで、お客様使用先でのCO2削減に貢献しています。
『創エネルギー』
自然エネルギーを利用するために様々なインフラ整備が進みます。そのうち海上も含め世界的に設置拡大が予想される風力発電設備は、高所や遠隔地等点検が困難な環境に設置されるため、設備の劣化診断や点検に対する技術向上が必要となります。当社グループは、撮像技術や精密成型技術を活用した高性能防振・超望遠カメラと、高精度画像解析・AI技術の組み合わせにより、風の強い海岸や洋上等の過酷な環境下でも、風力タービンのブレード欠陥を稼働中に点検診断可能な技術開発を風力エネルギー供給会社と協働で進めており、風力発電設備の普及・安定稼働に貢献していきます。
『蓄エネルギー』
自然エネルギーを利用する場合、電力の供給量が天候・時間・季節により変動するため、電力の安定供給のために蓄エネルギー技術が必須となります。当社グループの分散・塗布技術や素材技術を活かし、従来の液体リチウムイオンバッテリーに対して低コスト・高容量化が期待できる準固体電池の開発を他社と連携して進めることで、電気自動車や定置用蓄電池での実用化に貢献できるものと考えています。
『CO2の回収・固定化』
脱炭素社会に移行する過程では、CO2を排出する化石燃料の使用が避けられない産業においてCO2捕捉や大気中のCO2固定化が必要になります。この領域ではバイオエンジニアリング技術によるCO2を原料とした有用物質のバイオ生産が貢献できると考えています。
『分散型社会に適応したソリューション・サービス』
自然エネルギーとの親和性を高めるためには、大都市への集中型社会から地方への分散型社会へ移行することが求められ、分散型社会での生活や事業活動を支えるソリューションが普及すると考えています。
当社グループが提供している業務プロセスのデジタル化・自動化、ペーパーレス化を促進するソリューション・サービスは、リモートワークやハイブリッドワークといったビジネス面での分散型社会への対応と、省移動・省時間・省スペースによるCO2排出削減の両面で必要となり、今後さらに需要は高まるものと思われます。
また、生活を支える医療の側面では、4℃シナリオと同様、「医療IT、医療画像診断・AI技術活用による医療従事者支援や医療アクセス向上に貢献するソリューション」が地域毎に必要不可欠であり、大きな事業機会になると考えています。メディカルシステム事業(2026年度売上目標7,100億円)を通じて、分散型社会に対応した地域医療への貢献を行っていきます。
当社グループは、今後もコア技術を磨き、レジリエントなエネルギー社会の実現に必要となる様々な製品・サービスの開発を進めていきます。
④ 指標と目標
当社グループは、SVP2030にて気候変動に対する下記目標を設定し、省エネルギーと再生可能エネルギーの導入を推進するほか、環境負荷低減に優れた製品・サービスを社内認定する「Green Value Products」制度を運用し、社会でのCO2排出削減貢献を今後も進めていきます。
ⅰ)製品ライフサイクル全体でのCO2排出削減目標と進捗
目標:2030年度末までにCO2排出量50%削減(2019年度比)
進捗:2022年度末時点で9%削減(2019年度比)
ⅱ)自社が使用するエネルギー起因CO2排出削減目標と進捗
目標:2030年度末までにCO2排出量50%削減(2019年度比)
進捗:2022年度末時点で10%削減(2019年度比)
|
単位:千トン-CO2 |
2019年度 (実績) |
2020年度 (実績) |
2021年度 (実績) |
2022年度 (実績) |
2023年度 (見込値) |
|
Scope1 |
|
|
|
|
|
|
Scope2 (マーケットベース) |
|
|
|
|
|
|
合計 |
|
|
|
|
|
|
削減率 |
- |
7% |
3% |
10% |
15% |
|
目標達成率 |
- |
13% |
6% |
19% |
30% |
(注)
最新の確定値については、
ⅲ)再生可能エネルギーの導入目標
目標:2030年度までに購入電力の50%を再生可能エネルギー由来の電力に転換
進捗:2022年度末時点で、購入電力の12%を再生可能エネルギー由来の電力に転換
ⅳ)製品・サービスを通じた社会でのCO2排出削減貢献の目標
目標:2030年度までに社会でのCO2排出削減累積量90百万トンに貢献
進捗:2022年度末時点で、累積11.3百万トンの排出削減に貢献
(2) 人的資本
当社グループでは、イノベーションの源泉は従業員の力と位置づけ、経営戦略と連動した人材戦略を進めています。長期CSR計画(SVP2030※1)、中期経営計画の実現に向け、人材戦略の3つの柱と企業文化の継承・進化の4つの考え方を描いております。
人材戦略の3つの柱としては、
・事業戦略の実現に向け、4つのセグメントにおける人材のポートフォリオの最適化
・一人ひとりの従業員がしっかりと成長する、意欲高く働く、挑戦する環境の構築
・多様な人材の採用
の実現を目指しております。
その柱を支えるのが企業文化であり、ⅰ 人材開発、ⅱ 健康経営®※2、ⅲ 多様性、ⅳ 組織開発の4つの領域で、企業文化の継承・進化に取り組んでおります。
「人材開発」
仕事の基盤となる課題形成力を強化するための「See-Think-Plan-Do(STPD)※3」の浸透と、従業員の自己成長の基盤となる「+STORY(プラストーリー)※4」の展開、さらに、多種多様な教育プログラムによる人材育成を行っており、特にDX人材を強化しています。
「健康経営®」
従業員が心身ともにいきいきと働ける健康増進は経営の重要な課題です。健康推進施策の展開を通じて、5つの重点領域のKPIの実現に向け7つの健康行動を実践し、ワークエンゲージメントの向上に繋げます。
「多様性」
多様な従業員一人ひとりが個性や能力を最大限発揮することが変化を作り出す企業のイノベーションの源泉です。管理職に占める女性比率の向上や外国籍従業員の基幹ポストへの登用等、目標値を設定し推進しています。
「組織開発」
各グループ会社をエンゲージメントの高い状態にするため、エンゲージメントサーベイを活用し、継続的に組織開発を進めます。
※1 2017年8月発表の長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」
※2 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※3 富士フイルム独自のマネジメントサイクル「S(See:情報収集)-T(Think:分析)-P(Plan:計画)-D(Do:実行)」
※4 自己成長の基盤を身に付けるための支援プログラム
(ⅰ)人材開発
~変化を成長のチャンスと捉えて、挑戦し、主体的に成長する意欲の高い従業員の育成~
「オープン、フェア、クリア」な企業風土のもと、従業員の成長と組織の成長がスパイラルアップし、従業員エンゲージメントが向上することを目指しています。そのために仕事の基盤と自己成長の基盤をしっかり身に付けていることを重視しています。
「実践」と「学び」をスパイラルで身に付けながら、変化に適応できるコアコンピタンシー(軸・拠り所)を持った従業員を育成します。
①仕事の基盤となる課題形成力を強化する「See-Think-Plan-Do(STPD)」の浸透
当社グループでは、すべての事業、機能において仕事をしていくうえで大事にする共通の基盤をFFメソッドと定め、展開しています。具体的には事実情報を大切にして(SEE)、深く考えて本質を見抜き(THINK)、課題を設定し(PLAN)、実行する(DO)というSTPDという業務サイクルです。新入社員から海外現法の社員までFFメソッドを身に付ける教育を行い浸透させています。
②従業員の自己成長の基盤となる+STORY(プラストーリー)展開
当社グループでは、従業員一人ひとりが「変化を成長のチャンス」と捉えて挑戦し、主体的に成長する意欲を高めることを目的に、挑戦サイクルを浸透させる自己成長支援プログラム「+STORY」を展開しています。本プログラムのひとつである「+STORY対話」では、すべての経験を自分の糧としながら自分のストーリーを積み重ねることを大切にするために、一年に一度、上長との対話を通じて経験を振り返ります。上長はこの対話を通じて価値観や考えを理解した上で、部下の+STORYをサポートし挑戦意欲を引き出します。また、従業員が自身の+STORYを紹介する社内WEBセミナー「+STORY LIVE」や「+STORYアカデミー」によって、従業員が主体的に学ぶ環境をつくっています。100人いれば100通りの+STORYが紡がれ、従業員の多様な+STORYが当社グループの成長の原動力になると考えています。
③DX人材育成強化
当社グループでは、基幹人材育成プログラムやグローバル人材育成プログラム等、多種多様な教育プログラムによる人材育成に力を入れています。
DX人材の育成は重要視しており、2023年度も引き続き注力して取り組んでおります。
当社がDXに取り組む必要性を理解し、知識武装やスキル習得を通して、成果を創出するという段階を踏むことで、一人ひとりが自らの仕事にDXを取り込むことを目指しています。基盤領域の施策としては、セルフBI初級講座を約40,000人の従業員が受講し、さらに実務適用を目的とした上級コースを250名が終了しました。また全従業員を対象にITパスポートの資格取得を奨励し、約5,000人が合格しています。
専門人材育成としては、新規ビジネスを立案する「ビジネスプランナー」や「アーキテクト」の育成のため、3か月間実課題に集中的に取り組み、学びと実践のサイクルを回すブートキャンプを実施しています。DXの実践を担うコア人材として活躍を促し、変革のスピードアップにつなげていきます。また部門全体の課題を解決するために、意欲が高い人材がIT部門に兼務することで、事業とITを行き来して活躍するハイブリッド人材の育成を進めています。
(ⅱ)富士フイルムグループならではの健康経営を推進
従業員が心身ともにいきいきと働ける健康づくりを目指し、当社グループでは、2019年に健康経営宣言を制定し、社長を「健康経営最高責任者」、人事部長を「健康経営責任者」とする推進体制を構築して、健康経営を推進しています。健康増進の取組みは、多岐にわたっています。例えば、グループ全社の従業員を対象とした健康づくりのために、生活習慣病、喫煙、がん、メンタルヘルス、長時間労働の5つの重点領域を設け、KPIを設定しています。その実現のため、健康増進の具体的な活動を推進しています。また、健康な生活習慣を身につけるために日々取り組むべき行動として富士フイルムグループ「7つの健康行動」を設定し、従業員一人ひとりに実践を促しています。
2022年4月には富士フイルムグループ健康保険組合が、従業員向けの健康診断を実施するための施設として、神奈川県横浜市のみなとみらい地区に「富士フイルムメディテラスよこはま」を開設しました。2023年6月から人間ドックサービスを、2024年1月からCT検査を開始しています。当社グループの最新の内視鏡やマンモグラフィ、CT等の医療機器、AI技術を活用した医療ITシステムを導入して従業員に高品質な健康診断サービスを提供しています。これらの健康増進の取組みが評価されて、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に認定される等、当社の健康経営は社外からも高く評価いただいています。
富士フイルムグループ 健康課題におけるKPI、中期目標と実績
|
重点領域 |
KPI |
中期目標
|
実績 |
|
|
2022年度 |
2023年度 |
|||
|
生活習慣病対策 |
|
|
26.8% |
|
|
|
|
7.9% |
|
|
|
喫煙対策 |
|
|
18.3% |
|
|
がん対策 |
|
|
99.3% |
|
|
|
|
80.0% |
|
|
|
|
|
64.1% |
|
|
|
|
|
89.6% |
|
|
|
|
|
80.1% |
|
|
|
|
|
67.2% |
|
|
※対象:富士フイルムグループ国内従業員(胃・大腸がん検診受診率は40歳以上)
(ⅲ)多様性
~多様な従業員が活躍できるための仕組み・職場づくり~
当社グループは、2023年10月に、DE&I推進委員会を立ち上げ、「多様なストーリーを認め合う」をDE&Iのビジョンとして掲げました。一人ひとりの個性、価値観、経験を大切にし、お互いの多様性を認め合い、高め合う事で、安心して働く環境で挑戦する風土を作り、グループパーパスを実現することを目指していきます。女性社員の活躍推進、仕事と育児・介護の両立支援・男性の育児参画推進を目的として、育休明けの従業員とその上長を対象にした「仕事と育児の両立セミナー」や、従業員同士の交流の場「+STORY子育てサロン」等の施策を展開し、従業員のDE&Iへの理解を深め、多様性推進の風土醸成を目指します。
2023年度のグループ全体の基幹ポストにおける外国籍従業員比率は28.6%です。また、グループ全体で管理職に占める女性比率は17.1%です。国籍や性別を問わない登用の機会を設けることを推進し、2030年度までに基幹ポストにおける外国人比率を35%、管理職に占める女性比率をグローバルで25%まで増やす目標を設定しています。
(ⅳ)組織開発
当社グループは、従業員が会社の理念やビジョンに共感し、主体的に行動しているエンゲージメントの高い組織を維持していくことが、企業の成長に繋がると考えています。2022年より、グループ全体でのエンゲージメント状況を測るため、富士フイルムグループ全体の従業員を対象に「従業員エンゲージメント調査」を開始しました。
2023年は11月に第2回エンゲージメントサーベイを実施しました。調査の回答率は91%と高い水準であり、エンゲージメントスコア※5も80%で、「全体として良好である」という結果が得られました。
今後も調査を毎年実施し、グループ全体の課題を継続的に把握するとともに、調査結果をもとに、自組織の強みや改善課題について職場でディスカッションすることで、グループ全体の従業員エンゲージメントの向上と、従業員と組織の双方の成長の実現に繋げていきます。
※5 各設問の選択肢のうち「肯定的回答(5段階の上位2つ)」を選んだ割合。この数値が高いほど、従業員の
主体性や貢献意欲が高いことを示す。
|
|
年度 |
回答率 |
回答数 |
エンゲージメントスコア |
|
富士フイルムグループ全体 (日本含むグローバルの結果) |
2023年度 |
91% |
70,862 |
80% |
|
2022年度 |
90% |
68,485 |
80% |
当社グループは、グループ全体のリスクマネジメントの基本方針及びリスクマネジメント体制を定めた「リスクマネジメント規程」に基づき、事業を取り巻く様々なリスクに対し、未然防止のための課題抽出とクライシス事案発生時の適切な対応を実施しており、特に重要項目については当社の社長を委員長とするESG委員会を設置し、審議及び対応方針を決定しております。
ESG委員会の活動は定期的に取締役会に報告され、取締役会により、グループ全体のリスクマネジメント活動の有効性を担保しております。また、監査役会にて内部統制の仕組みが適切に機能しているかを監査しております。
当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経済情勢・為替変動による業績への影響に係るリスク
当社グループは、世界の様々なマーケットにおいて製品及びサービスを提供しており、連結ベースでの海外売上高比率は当連結会計年度において約65%です。当社の連結財務諸表は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成していることから、世界各地の経済情勢、とりわけ為替レートの変動は業績に大きく影響を及ぼすリスクがあります。
為替レートの変動が連結営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円変動した場合は年間約10億円、ユーロに対して円が1円変動した場合は年間約8億円と試算しております。
当社グループでは、為替変動による業績への影響を軽減するため、米ドル、ユーロにおいて先物予約を中心としたヘッジを行う等で対策を行っておりますが、為替の変動の程度によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、設備投資に関わる建築資材や人件費及びエネルギー関連の費用等、経済情勢によって左右される費用の変動も、程度によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)ヘルスケア領域における環境変化・競合に係るリスク
ヘルスケア領域においては、がんや希少疾患、新たな感染症等に対する治療・予防手段として、バイオ医薬品の需要が拡大しており、生産プロセスの開発や製造を受託するCDMO事業の市場規模は年率15%(当社推定)で成長していく一方で、医療制度改革による予測できない大規模な医療行政の方針変更や医療機器における法規制の強化、創薬難易度が高まる中での製薬企業における新薬開発の延期・中止や経営環境の変化、技術革新によるバイオ医薬品のプロセス開発・製造受託市場の競争激化等を主なリスクと考えております。その環境変化に対応できない場合や、事業活動に必要な各国の許認可を適時に取得することができない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、高度な画像処理技術・AI技術、化合物合成・設計力やナノテクノロジー、一定条件製造技術や品質管理技術を保有しているという競争優位性を活かして、今後も技術に裏付けされた新たな製品・サービスの研究開発と、これをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)マテリアルズ領域における環境変化・競合に係るリスク
マテリアルズ領域においては、5Gや自動運転、生成AIの普及等による半導体市場の拡大や、車載用途等TV・モニター以外での液晶や有機EL向けディスプレイ材料の需要が拡大している一方で、資源価格高騰に伴う原材料費の高騰や、新技術の開発・実用化による代替素材との競争激化等を主なリスクとして考えております。
当社グループでは、機能性分子技術や高度な製膜・塗布技術等の先進・独自の技術を保有しているという競争優位性を活かして、今後も技術に裏付けされた新たな製品・サービスの研究開発とこれをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)ビジネスイノベーション領域における環境変化・競合に係るリスク
ビジネスイノベーション領域においては、サイバー攻撃の脅威やリモートワークの普及等を背景にした、セキュリティ・ネットワーク等を強化したオフィス・ITインフラ環境の構築・運用支援ニーズが拡大し、オフィス業務のDX・生産性向上を実現するAIやクラウドを活用した業務ソリューション・サービス市場も拡大している一方で、ペーパーレス化の流れやリモートワークの普及によるオフィスでのプリントボリュームの長期的な減少傾向を主なリスクとして考えております。
当社グループでは、日本及びアジア・オセアニア地域における強固な直販体制を強みに構築した優良な顧客基盤、お客様の複雑化・多様化する経営課題の解決を支援できる強力な営業力、課題解決のためのソリューション・サービスのラインアップと、それを支えるドキュメント関連の独自技術、大手市場からSMB(Small to Medium Size Business)市場までの幅広いお客様との強固な信頼関係という競争優位性を活かしてまいりますが、こうした市場動向に対応した製品やサービスを提供できない場合、売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)イメージング領域における環境変化・競合に係るリスク
イメージング領域においては、イベントや旅行等の需要が回復し、インスタントフォトシステムを始めとするプリントビジネスやデジタルカメラの需要拡大、IoT化や映像の4K/8K化によるレンズ需要の増加や、監視カメラシステム市場の成長により事業機会が拡大している一方で、ハイエンドミラーレスデジタルカメラ市場の競争環境の激化、スマートフォンのカメラ性能向上によるデジタルカメラ需要の減少や、環境関連の法規制強化、地政学的リスク等によるサプライチェーンの混乱等をリスクとして考えております。
当社グループでは、入力(撮影)から出力(プリント)までのサービスを提供できる総合力や、高度な光学技術・精密加工・組立技術等を保有しているという競争優位性を活かして、ユーザーのニーズをとらえたイノベーティブな新たな製品・サービス等を提供してまいりますが、その成否によっては、製品販売単価の下落、代替製品の出現等による売上の減少、製品ライフサイクルの短縮化による研究開発コストの増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)生産活動に係るリスク
当社グループでの生産に必要な原材料・部品等について、急激な価格高騰や、自然災害又は人災、サプライヤーの不測な事態による製造中止等をリスクとして考えております。
当社グループでは、急激な原材料価格高騰時には適切な売価への反映を検討するとともに、製品開発及び量産化検討時において、代替材料の探索や可能な限り複数調達先の検討を行うことでリスク分散化の対策を行っておりますが、想定を上回る市況の変化や不測の事態が発生した場合には、収益性の低下や販売機会の消失等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)製品品質・製造物責任に係るリスク
当社グループは、厳しい品質管理基準に従い各種製品を生産しておりますが、将来にわたり製品に欠陥が発生する可能性がないとは言えず、重大な製品事故や製品に対する安全性や環境問題において懸念が発生するリスクがあります。
当社グループでは、新製品開発にあたっては、品質の到達度だけでなく、法規制を遵守し、環境・安全に配慮した製品開発を行うとともに、製品安全情報のお客様への周知や製品安全に関する従業員への教育を徹底する等の対策を図り、万一、製品事故等が発生した場合の体制構築等を整えておりますが、実際にこうした事態が発生した場合には、その対応費用が発生するだけでなく、企業ブランドや製品ブランドが毀損され当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)医薬品事業・再生医療事業に係るリスク
当社グループにおける一部のグループ会社では、医薬品及び再生医療等製品の研究開発及び製造販売を行っております。新規の医薬品及び再生医療等製品の開発・薬効追加等には多額の研究開発投資を行う必要があり、承認・販売までには長期間を要するとともに、研究開発が計画通りに進行せず、開発の遅延や中止等のリスクがあります。また、販売後に予期せぬ重大な副作用その他の安全性に関する問題が発生する可能性もあります。
当社グループでは、開発の不確実性のリスクに対しては、複数のパイプラインを保有することによりリスクの分散化を図っております。また、医薬品は開発段階において必要な安全性の試験を実施し、監督官庁の審査を経て承認されておりますが、万一、販売後に予期せぬ重大な副作用等が見つかった場合には、損害賠償の負担や社会的信頼の失墜等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)物流に係るリスク
当社グループの事業活動において、原油価格の高騰等を原因とする運賃の高騰は、当社グループの物流コストの増加をもたらす可能性があります。また、地震・津波・洪水等の大規模災害の発生、ロシア・ウクライナ情勢緊迫化や国際的な政治・経済の状況等により、人的・物的被害や物流機能の麻痺、インフラ機能断絶等が生じ、当社グループの生産・販売活動に支障が生じるリスクがあります。
当社グループでは、生産拠点を複数の地域に分散化する等の対策を図り、不測の事態により一部の地域で生産・販売活動が停止した場合でも影響を軽減できるような体制をとっておりますが、完全に影響をゼロにすることはできず、こうした事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)特許及びその他の知的財産権に係るリスク
当社グループは、様々な特許、ノウハウ等の知的財産権を保有し、競争上の優位性を確保していますが、将来、特許の権利存続期間の満了や代替技術等の出現に伴って、優位性の確保が困難となることが起こり得ます。
当社グループが関連する幅広い事業分野においては、多数の企業が高度かつ複雑な技術を保有しており、また、かかる技術は著しい勢いで進歩しています。事業を展開する上で、他社の保有する特許やノウハウ等の知的財産権の使用が必要となるケースがありますが、このような知的財産権の使用に関する交渉が成立しないことのリスクがあります。
当社グループでは、他社の知的財産権の調査を行い、他社の権利を侵害することがないよう常に注意を払って事業展開をしておりますが、訴訟に巻き込まれるリスクを完全に回避することは困難であります。このような場合、係争費用や敗訴した場合の賠償金等の負担により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)企業買収・業務提携等に係るリスク
当社グループは、持続的な成長のため、これまでに複数の企業買収を実施しており、今後も実施する可能性があります。また、業務提携、合弁事業、戦略的投資といった様々な形態で、他社との関係を構築しております。これらの活動は、当社グループの成長のための施策として重要なものであります。
当社グループでは、企業買収にあたって慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ企業買収を実行するとともに、重要な投資案件に対しては業績が当初計画から大きく乖離していないかを確認し、必要に応じて業績改善のための対策を講じておりますが、景気動向の悪化や政情不安、法令や規則の変更、対象会社もしくはパートナーの業績不振、業務統合に想定以上の時間を要する等により、期待していた買収効果や利益を実現することができなくなる可能性があります。また、当社グループは、企業買収に伴う営業権及びその他の無形固定資産を貸借対照表に計上しておりますが、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、投資に対する回収可能性が低下した場合には減損損失を認識することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材の確保に係るリスク
当社グループの将来の経営成績は、有能な人材の継続的な会社への貢献に拠るところが大きく、それらの人材を採用・育成し、良好な関係を維持していくことが重要になります。一方、当社グループの事業領域での労働市場における人材獲得競争は、近年ますます激しさを増してきており、研究開発、製造、マーケティング及び販売、ICT、マネジメント分野等に関する高度な専門性を持った人材を確保していく必要がありますが、そのような人材には高い需要があり、必要な人材を確保できない可能性があります。
当社グループでは、人材を企業価値の源泉の一つと位置付け、社会の変化に対応し、自らイノベーションを起こすことのできるグローバル人材や基幹人材の育成に長期的な視点で注力するとともに、多様な人材が能力を発揮できる環境作りに努めておりますが、そうした人材が育成できなかった場合や社外に流出してしまった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)内部統制に係るリスク
当社グループは、財務報告の適正性と信頼性並びに業務の有効性と効率性を確保するため、内部統制体制を構築・整備し、運用するとともに、継続的な改善を図っています。また、「人権の尊重」を企業が果たすべき概念と認識し、自社及びビジネス・パートナーに対して、人権への悪影響の防止、軽減に努めております。しかしながら、想定外の問題が発生して内部統制が有効に機能しなかった場合、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動等、様々な要因により内部統制システムが適切に機能しない可能性があります。
当社グループでは、富士フイルムグループ企業行動憲章・行動規範を定め、法令及び社会倫理に則った活動、行動の徹底を図るとともに、当社グループ内外にコンプライアンスに関連した相談・連絡・通報を受ける窓口を設置して、違反行為の早期発見に努めております。また、内部監査体制を整え、自ら問題の早期発見を行っておりますが、このような対策が適切に機能しなかった場合、法令違反や当社グループの財務報告に関する投資家の信頼低下による当社株価の下落、当社グループの社会的信用の失墜により事業に悪影響が生じる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)情報システムに係るリスク
当社グループは、様々な情報システムを使用して業務を遂行しており、適切なシステム管理体制の構築やICT人材の確保、セキュリティ対策等を行っておりますが、サイバー攻撃等による不正アクセス、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動や、停電、災害等の要因により、データの改ざん、破壊、個人情報の漏洩、情報システムの障害、事業活動に支障をきたす等の事態が起こる可能性があります。
当社グループでは、ソフトウェアや機器によるセキュリティ対策の実施や、定期的に従業員への教育及び訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないよう努めておりますが、万一、こうした事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)公的規制に係るリスク
当社グループが事業を展開している地域においては、事業・投資等の許認可、輸出入、通商、公正取引、知的財産、消費者保護、租税、為替管理、環境、薬事等の法規制の適用も受けており、万一、規制に抵触した場合、制裁金等が課される可能性があります。
当社グループでは、国内外の法的規制に関する情報収集を行うとともに、事業活動に係る法規制の遵守を徹底すべく各種ガイドライン・マニュアル等を制定し、定期的な従業員への教育等を通じてコンプライアンス徹底を図っておりますが、今後規制が強化・大幅な変更等なされた場合、当社グループの活動の制限や、規制遵守のため、あるいは規制内容の改廃に対応するためのコストが発生する等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)環境規制に係るリスク
当社グループは、気候変動対策、製品リサイクルを含む資源保全、有害物質の使用制限、土壌・地下水・大気汚染防止及び廃棄物処理等に関する様々な環境関連法令の適用を受けており、これらの規制により法的又は社会的責任の観点から、環境に関する費用負担や賠償責任が発生するリスクがあります。
当社グループでは、製品の企画・開発の段階から環境負荷の低減を考慮し、生産、物流、使用、リサイクル又は廃棄に至るライフサイクル全体を対象とし、CO2の排出削減、資源循環の促進、製品・化学物質の安全確保等に取り組んでおります。さらには、各事業場において環境マネジメントシステムを活用し、所在国・地域の法規制遵守、環境汚染の防止、化学物質の適正使用、生物多様性の保持を徹底しております。しかし、将来、環境に関する規制の厳格化や義務の拡大等の変化が生じた場合、あるいは社会的な環境意識の高まりに伴い当社グループが環境問題への取組みをより一層推進する場合には、かかる取組みへの支出の増加や、当社グループの事業活動への制限等を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)気候変動に係るリスク
気候変動に伴う移行リスクとして、今後各国・地域における脱炭素社会に向けた政策の強化、炭素排出に関連する法令等の改定・新規制定が想定外の短期間で実施された場合に、かかる取組みへの支出の増加や、当社グループの事業活動への制限等を受ける可能性があります。
当社グループは、パリ協定に代表される脱炭素社会への動き等、気候変動への対応に対して世界的に関心が高まるなか、いち早くその重要性を受け止め、1990年代から生産プロセスでエネルギー利用効率を高める活動を開始しました。現在も、「2030年度までに当社が使用するエネルギーによるCO2排出を50%削減(2019年度比)、2040年度までに当社が使用するエネルギーによるCO2排出実質ゼロ」を目標に掲げ、エネルギー利用効率の最大化及び再生可能エネルギーの導入・活用によるCO2排出削減を進めております。なお、2030年度の温室効果ガス(GHG)排出削減目標は、「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」より、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標として認定されています。
さらに、当社グループは、2018年12月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明し同提言に則った情報開示を進めており、2019年4月には事業活動での100%再生可能なエネルギー利用を目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しております。
また、当社グループでは、気候変動が顕在化した場合の物理リスクへの対応として、調達・生産拠点の分散、BCP(事業継続計画)の策定等の対策を行っているものの、異常気象による原材料・部品の供給停止・価格高騰や、工場操業停止、サプライチェーンの寸断による製品サービスの中止等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(18)大規模災害・感染症等に係るリスク
当社グループは、世界各地で生産・販売等の事業活動を行っております。このため、地震、津波、洪水等の大規模な自然災害に見舞われた場合や、火災、テロ、戦争、感染症の蔓延といった要因により、事業活動に支障をきたすリスクがあります。
当社グループでは、自然災害が発生した際にいち早く従業員の安否を確認できるよう安否確認システムを導入するとともに、定期的に地震・火災に備えた訓練を実施しております。また、実際に災害が発生した際には早急に被災地の被害状況を把握した上で対策を講じられるように事業継続への影響を軽減できる体制を整えておりますが、事業活動の復旧までに長期の時間を要した場合や施設等の改修に多額の費用が発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における連結売上高は、ヘルスケア部門のメディカルシステム、イメージング部門等を中心に売上を伸ばし、2,960,916百万円(前年度比3.6%増)となりました。営業利益は、276,725百万円(前年度比1.3%増)となりました。税金等調整前当期純利益は317,288百万円(前年度比12.4%増)、当社株主帰属当期純利益は243,509百万円(前年度比11.0%増)となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
(事業セグメント別の連結売上高)
|
セグメント |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
|
ヘルスケア |
928,875 |
975,081 |
46,206 |
5.0 |
|
マテリアルズ |
681,793 |
690,041 |
8,248 |
1.2 |
|
ビジネスイノベーション |
838,080 |
826,136 |
△11,944 |
△1.4 |
|
イメージング |
410,293 |
469,658 |
59,365 |
14.5 |
|
連結合計 |
2,859,041 |
2,960,916 |
101,875 |
3.6 |
ヘルスケア部門の連結売上高は、前年度の928,875百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより46,206百万円増加し、975,081百万円となりました。マテリアルズ部門の連結売上高は、前年度の681,793百万円に対し、電子材料事業、ディスプレイ材料事業等で売上を伸ばしたことにより8,248百万円増加し、690,041百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の連結売上高は、前年度の838,080百万円に対し、欧米向け輸出が減少したこと等により11,944百万円減少し、826,136百万円となりました。イメージング部門の連結売上高は、前年度の410,293百万円に対し、コンシューマーイメージング事業、プロフェッショナルイメージング事業で売上を伸ばしたことにより59,365百万円増加し、469,658百万円となりました。
(事業セグメント別の営業利益)
|
セグメント |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
|
ヘルスケア |
102,770 |
97,378 |
△5,392 |
△5.2 |
|
マテリアルズ |
65,466 |
42,897 |
△22,569 |
△34.5 |
|
ビジネスイノベーション |
69,491 |
70,750 |
1,259 |
1.8 |
|
イメージング |
72,876 |
101,947 |
29,071 |
39.9 |
|
全社費用及び セグメント間取引消去 |
△37,524 |
△36,247 |
1,277 |
- |
|
連結合計 |
273,079 |
276,725 |
3,646 |
1.3 |
ヘルスケア部門の営業利益は、前年度の102,770百万円に対し、棚卸資産評価減等により5,392百万円減少し、97,378百万円となりました。マテリアルズ部門の営業利益は、前年度の65,466百万円に対し、M&A関連費用やインクジェット生産体制再編の一時費用増加等により22,569百万円減少し、42,897百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の営業利益は、前年度の69,491百万円に対し、価格改定の効果等により1,259百万円増加し、70,750百万円となりました。イメージング部門の営業利益は、前年度の72,876百万円に対し、コンシューマーイメージング事業、プロフェッショナルイメージング事業で売上を伸ばしたことにより29,071百万円増加し、101,947百万円となりました。
当連結会計年度末では、総資産は有形固定資産の増加等により649,149百万円増加し、4,783,460百万円(前年度末比15.7%増)となりました。負債は社債及び短期借入金の増加等により263,694百万円増加し、1,610,145百万円(前年度末比19.6%増)となりました。純資産は当社株主帰属当期純利益の計上等により385,455百万円増加し、3,173,315百万円(前年度末比13.8%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末より88,893百万円減少し、当連結会計年度末において179,715百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により得られた資金は407,941百万円となり、前連結会計年度と比較して197,489百万円増加(前年度比93.8%増)しておりますが、これは棚卸資産が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に使用した資金は527,416百万円となり、前連結会計年度と比較して204,191百万円増加(前年度比63.2%増)しておりますが、これは有形固定資産の購入額が増加したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に使用した資金は462百万円となり、前連結会計年度と比較して123,233百万円減少(前年度比99.6%減)しておりますが、これは満期日が3ヶ月以内の短期債務が増加したこと等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。
販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(連結キャッシュ・フロー指標)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
|
株主資本比率(%) |
66.8 |
66.3 |
|
時価ベースの株主資本比率(%) |
65.0 |
84.8 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.8 |
1.2 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
42.0 |
48.1 |
|
(注)株主資本比率 |
:株主資本/総資産 |
|
時価ベースの株主資本比率 |
:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産 *自己株式を除く |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息) |
ⅱ)財務政策
当社グループの資金需要には、運転資金需要及び投資を目的とした資金需要、株主還元のための資金需要が含まれます。
運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費、研究開発費等の営業費用によるものであり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収を含む投融資等によるものであります。また、株主還元の方針は次のとおりであります。
(株主還元方針)
配当につきましては、連結業績を反映させるとともに、成長事業のさらなる拡大に向けたM&A、設備投資、研究開発投資等、将来にわたって企業価値を向上させていくために必要となる資金の水準等も考慮した上で決定いたします。また、その時々のキャッシュ・フローを勘案し、株価推移に応じて自己株式の取得も機動的に実施していきます。株主還元方針については、配当を重視し、配当性向30%を目安としております。
これらの資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じ金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。
なお、当連結会計年度末における短期の社債及び借入金の残高は317,103百万円、長期の社債及び借入金の残高は185,716百万円であります。
② 経営成績
ⅰ)売上高、営業費用及び営業利益
当連結会計年度の売上高は、前年度の2,859,041百万円に対し、101,875百万円増加し、2,960,916百万円(前年度比3.6%増)となりました。国内売上高は1,049,550百万円(前年度比2.3%増)、海外売上高は1,911,366百万円(前年度比4.3%増)となりました。実績為替レートは145円/米ドル(前年度比9円安)、157円/ユーロ(前年度比16円安)となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度の710,702百万円に対し、41,725百万円増加し、752,427百万円(前年度比5.9%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は25.5%となりました。
研究開発費は、前年度の154,147百万円に対し、2,961百万円増加し、157,108百万円(前年度比1.9%増)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は5.3%となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
「ヘルスケア部門」
本部門の連結売上高は、975,081百万円(前年度比5.0%増)となりました。営業利益は、97,378百万円(前年度比5.2%減)となりました。
メディカルシステム事業では、内視鏡、CT・MRI等の分野で販売が好調に推移したことにより、売上が増加しました。X線画像診断分野では、中南米や米国を中心にデジタルマンモグラフィ撮影装置「Amulet Innovality」の販売が伸長したことに加え、日本・欧州を中心とした保守サービス事業の拡大により、売上が増加しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」や3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を中心としたシステム・サービス販売が日本・米国・欧州等の主要市場を中心に好調に推移し、売上が増加しました。超音波診断分野では、中国での販売が低調となったものの、据置型超音波診断装置の新製品DeepInsightシリーズの販売が日本を中心に堅調に推移し、前年度並みの売上となりました。内視鏡分野では、粘膜の僅かな色の違いを強調し、内視鏡観察をサポートするLCI(Linked Color Imaging)をはじめとする画像強調機能を搭載した「7000システム」等の販売が日本・米国・欧州・中国を中心に伸長し、売上が大幅に増加しました。体外診断(IVD)分野では、COVID-19関連の検査試薬の需要低下による影響を受けるも、血液生化学検査「富士ドライケム」機器・スライドの販売伸長により、売上が増加しました。CT・MRI画像診断分野では、中南米や中東、インドでの販売が伸長したこと等により売上が増加しました。
バイオCDMO事業では、抗体医薬品の製造受託が堅調に推移したことに加え、デンマーク拠点での生産性向上等が寄与し、売上が増加しました。2024年3月には、Johnson & Johnson グループの Janssen Supply Group, LLCとの間で、米国ノースカロライナ拠点で建設中の大型設備(2025年稼働予定)で、長期にわたりバイオ医薬品製造を受託する契約を締結しました。当社は、高い成長を続けるバイオ医薬品市場に対して、生産プロセスの開発受託に加え、小規模生産から大規模生産、原薬から製剤・包装の受託等、顧客のニーズに応え、事業の成長を一段と加速していきます。
ライフサイエンス事業では、抗体医薬品製造向け培地製品の販売が回復したことに加え、創薬支援用iPS細胞の販売が堅調に推移しました。また、大手製薬企業Bayer AGの子会社であるBlueRock Therapeutics LPに、iPS細胞を用いた網膜疾患治療法の開発・商業化に関するライセンスを供与したことに伴い、一時的なライセンス収入を計上したことで売上が増加しました。
医薬品事業では、コロナ禍後の抗菌剤の需要回復や、COVID-19に対する国産ワクチンの治験薬受託製造が寄与し、売上が増加しました。
コンシューマーヘルスケア事業では、化粧品の新製品の販売が伸長しましたが、既存化粧品及び主力サプリメントの販売減少等により、事業全体では売上が減少しました。
CRO事業では、2023年4月に創薬CROビジネスに本格参入後、特徴あるiPS細胞技術やAI技術を活用し、新たな医薬品のシーズ探索や有効性・安全性評価等のサービスを提供しました。今後も当社は、製薬企業をはじめとする顧客の創薬研究を強力にサポートしていきます。
「マテリアルズ部門」
本部門の連結売上高は、690,041百万円(前年度比1.2%増)となりました。営業利益は、42,897百万円(前年度比34.5%減)となりました。
電子材料事業では、半導体市場の市況軟化の影響を受けたものの、2023年10月に米国Entegris社からの買収を完了した半導体用プロセスケミカル事業が寄与し、売上が増加しました。今後、製品ラインアップ拡充による顧客提案力強化を通じて、新規ビジネスのさらなる拡大を図っていきます。また、今後の半導体市場拡大を見据えて、2023年4月には欧州における半導体材料工場の生産設備増強、2023年5月には台湾における最先端半導体材料工場の新設を発表し、さらに2024年1月には熊本拠点でのCMPスラリーの生産設備を本格稼働させるとともに、イメージセンサー用カラーフィルター材料の生産設備導入を発表しました。当社は、積極的な設備投資を継続し、高品質材料の安定生産や強固なグローバル供給体制を構築していきます。
ディスプレイ材料事業では、サプライチェーン全体での生産調整期にあった前年度に対して、売上が増加しました。
産業機材事業では、大手IT企業によるデータセンター建設への投資抑制等を受けたデータアーカイブ用のテープ需要停滞や、業務用PCの需要低迷の影響を受けたタッチパネル用センサーフィルム「エクスクリア」の販売減少等により、売上が減少しました。
ファインケミカル事業では、重合材料の欧州での需要低迷等の影響を受け、化成品販売が減少したことにより、売上が減少しました。
グラフィックコミュニケーション事業では、刷版材料分野は、欧米を中心とした印刷物需要減の影響等により売上が減少しました。デジタル印刷分野は、2023年4月から米国・英国・フランス・カナダにおいてプロダクションプリンターの販売を開始し、欧米向けの販売が伸長したこと等により売上が増加しました。インクジェット分野は、中国での不動産市況の低迷や欧州での金融引き締めによる需要停滞の影響を受けて、セラミック市場向けインクジェットヘッドの販売が減少したこと等により、売上が減少しました。
「ビジネスイノベーション部門」
本部門の連結売上高は、826,136百万円(前年度比1.4%減)となりました。営業利益は、70,750百万円(前年度比1.8%増)となりました。
オフィスソリューション事業では、OEM供給の拡大やワールドワイドでの販売価格改定効果等があったものの、欧米向け輸出が減少したこと等により、売上が減少しました。
ビジネスソリューション事業では、DX関連ソリューションの販売が増加したこと等により、売上が増加しました。2024年2月に、富士フイルムビジネスイノベーション㈱と、㈱サーバーワークスは、クラウドサービスの導入支援・運用保守を行う合弁会社「富士フイルムクラウド㈱」の設立に合意し、4月より営業を開始しました。富士フイルムビジネスイノベーション㈱の全国販売網、及びITインフラ管理の実績と、㈱サーバーワークスが有する、IaaS*の提供をはじめとするクラウドビジネスへの知見と高い技術力を組み合わせ、クラウドサービスの導入支援から運用保守までワンストップで提供していきます。
* Infrastructure as a Service。Microsoft Azure、AWS(Amazon Web Services)等のサーバー・CPU・ストレージを指す。
「イメージング部門」
本部門の連結売上高は、469,658百万円(前年度比14.5%増)となりました。営業利益は、101,947百万円(前年度比39.9%増)となりました。
コンシューマーイメージング事業では、インスタントフォトシステムINSTAXの販売が好調に推移し、売上が増加しました。従来の製品ラインアップに加え、「INSTAX mini Evo」や2023年10月に発売した“手のひらサイズカメラ”「INSTAX Pal」を中心に付加価値の高い製品の販売が好調に推移しました。
プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルカメラの販売が好調に推移し、売上が増加しました。2024年3月には、高級コンパクトデジタルカメラ「X100シリーズ」の最新モデルとなる「FUJIFILM X100VI」を発売しました。約4020万画素センサーと最新プロセッサーを採用するとともに、シリーズ初のボディ内手振れ補正機能も搭載し、さらなる高画質・高性能を追求しています。
ⅱ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益
営業外収益及び費用は、前年度9,145百万円の営業外収益に対し31,418百万円増加し、40,563百万円の営業外収益となりました。
税金等調整前当期純利益は、前年度の282,224百万円に対し35,064百万円増加し、317,288百万円となりました。
ⅲ)法人税等
法人税等は、前年度の65,206百万円に対し12,896百万円増加し、78,102百万円となりました。
ⅳ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益
持分法による投資損益は、前年度4,656百万円の利益に対し545百万円減少し、4,111百万円の利益となりました。
非支配持分帰属損益は、前年度の2,252百万円の利益に比べ2,464百万円減少し、212百万円の損失となりました。
ⅴ)当社株主帰属当期純利益
当社株主帰属当期純利益は、前年度の219,422百万円に対し24,087百万円増加し、243,509百万円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の182.40円に対し、202.29円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の182.14円に対し、202.05円となりました。
なお、当社は、2024年4月1日付で普通株式を1株につき3株の割合で株式分割を行っております。1株当たり当社株主帰属当期純利益の各金額は、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定しております。
③ 次期の見通し
|
|
|
|
(単位:億円) |
|
|
2024年度 (次期の見通し) |
2023年度 (実績) |
増減率・増減額 |
|
売上高 |
31,000 |
29,609 |
4.7% |
|
営業利益 |
3,000 |
2,767 |
8.4% |
|
税金等調整前当期純利益 |
3,100 |
3,173 |
△2.3% |
|
当社株主帰属当期純利益 |
2,400 |
2,435 |
△1.4% |
|
ROE(%) |
7.8 |
8.2 |
0.4ポイント減 |
|
ROIC(%) |
5.4 |
5.6 |
0.2ポイント減 |
|
為替レート(円/米ドル) |
140円 |
145円 |
△5円 |
|
為替レート(円/ユーロ) |
150円 |
157円 |
△7円 |
2024年度業績は、連結売上高は3兆1,000億円(前年度比4.7%増)、営業利益は3,000億円(前年度比8.4%増)、税金等調整前当期純利益は3,100億円(前年度比2.3%減)、当社株主帰属当期純利益は2,400億円(前年度比1.4%減)を予想しております。
通期での対米ドル円為替レートを140円、対ユーロ円為替レートを150円で想定しております。
④ 重要な会計上の見積り
当社の連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす見積り及び仮定を行う必要があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。
ⅰ)企業結合
企業結合は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての資産及び引き受けた全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
企業結合の処理における公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化に伴い公正価値が修正され、取得した資産の将来における減損損失の計上、引き受けた負債の増加につながる可能性があります。
なお、当事業年度に実施した事業買収については、連結財務諸表注記「23 事業買収及び事業売却」に記載しております。
ⅱ)営業権の減損
営業権は償却せず、毎年1月1日時点で減損の有無を検討しております。営業権の減損テストは、当社の報告単位毎に見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値に基づいて行われており、使用される割引率は、報告単位のWACC(加重平均資本コスト)に基づいて算出しております。また、客観的事実や状況の変化により当該資産の公正価値が帳簿価額を下回る可能性がある場合には、その都度減損の有無を検討しております。
見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値の算定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
営業権の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において営業権の減損損失を認識することになる可能性があります。
なお、事業セグメント毎の営業権の残高については、連結財務諸表注記「8 営業権及びその他の無形固定資産」に記載しております。
ⅲ)長期性資産の減損
営業権及び耐用年数を確定できないその他の無形固定資産を除く、保有及び使用予定の長期性資産について、客観的事実や状況の変化により当該資産の帳簿価額の回収可能性に疑いのある場合には、減損の有無を検討しております。減損の兆候があると判断されるときは、その資産に関連する見積割引前将来キャッシュ・フローとその資産の帳簿価額を比較し、帳簿価額の減額が必要かどうかを検討しております。この結果、帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを超過すると判断される場合は、当該資産の帳簿価額を見積公正価値へ減額処理しております。公正価値を決定するにあたり、当社は市場取引価格又はその他の評価方法を使用しております。市場取引価格を利用できない場合には、主に資産の使用や最終的な処分から生じる見積将来キャッシュ・フローに基づく割引現在価値法、ロイヤルティ免除法又は超過収益法を使用しております。
これらの手法は、将来見積利益又はキャッシュ・フローの予測及び割引率等の、重要な見積りを伴います。
長期性資産の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において長期性資産の減損損失を認識することになる可能性があります。
ⅳ)退職給付引当金及び退職給付費用
当社の一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しており、当該制度に係る退職給付引当金及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待収益率、予想再評価率、退職率、死亡率等が含まれております。
数理計算上の仮定は、最善の見積りにより決定しておりますが、見直しが必要となった場合には、退職給付引当金及び退職給付費用が増加する可能性があります。
なお、数理計算上の仮定については連結財務諸表注記「10 退職給付制度」に記載しております。
ⅴ)信用損失引当金
金融資産の信用損失引当金は、残存期間において将来的に発生すると予測される全ての信用損失を見積っています。
信用損失引当金の計上において、当社は、信用の質を一括評価債権及び個別評価債権として管理しており、債務者の財政状態や支払の延滞状況等、過去の信用損失実績及び合理的かつ裏付け可能な予測に基づき、金融資産について一括評価及び個別評価を行っています。
なお、信用損失引当金の残高については、連結財務諸表注記「21 金融資産の信用の質及び信用損失引当金」に記載しております。
ⅵ)繰延税金資産
資産及び負債の財務会計上の金額と税務上の金額の差異に基づいて繰延税金資産及び負債を認識しており、その算出にあたっては差異が解消される年度に適用される税率及び税法を適用しております。また、繰延税金資産のうち回収されない可能性が高い部分については、評価性引当金を計上しております。
回収可能性の検討にあたっては、評価時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っておりますが、見積りの前提とした仮定や条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。
なお、繰延税金資産の残高については、連結財務諸表注記「11 法人税等」に記載しております。
ⅶ)棚卸資産
棚卸資産については、原則として移動平均法による低価法により評価しております。また、当社は定期的に陳腐化、滞留、又は過剰在庫の有無を検討し、該当する場合には正味実現可能価額まで評価減しております。
評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績や評価時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、市場環境が予測より悪化して正味実現可能価額が下落する場合には、追加の評価損計上が必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を一段と加速させるため、バイオ医薬品CDMOの中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の北米拠点に約1,800億円の大規模投資を行います。今回、当社は、現在増強中の生産能力を上回る、抗体医薬品の旺盛な製造委託ニーズを受け、現在8基のタンクを建設中のノースカロライナ新拠点に、新たに20,000リットルの動物細胞培養タンク8基を導入し、抗体医薬品の原薬の生産能力を大幅に増強させます。ノースカロライナ新拠点は、原薬製造から製剤化・包装までを一貫して受託できる拠点とするために、現在設備の導入を進めており、原薬の大量製造に限らず幅広い顧客ニーズに応えていきます。また、ノースカロライナ新拠点で使用する全てのエネルギーを、再生可能天然ガスや敷地内の太陽光発電の利用、バーチャルPPA導入による12.5万MWh/年の再エネ電力証書の購入で相殺し、実質的にCO2排出ゼロを実現していきます。当社CSR計画「Sustainable Value Plan2030」で定めた目標の下で、水使用量・廃棄物の削減に対する取組みを推進していきます。
また、米国の半導体材料メーカーEntegris, Inc.の半導体用プロセスケミカル事業を買収しました。これにより、幅広い半導体用プロセスケミカルを獲得しました。今後、半導体製造プロセスを広くカバーする製品ラインアップで総合提案力を高め、顧客の製造プロセスの課題解決を図っていきます。本買収によって、欧米で製造拠点を拡充したほか、当社の電子材料分野では初めてとなる東南アジアでの製造拠点を取得しました。2024年から稼働する熊本拠点、韓国拠点を加えた計20拠点からなる、より強固でグローバルな製造体制で、サプライチェーンの強靭化に貢献していきます。当社が持つ、幅広い半導体材料を開発・製造できる高度な研究開発力・品質保証力と今回獲得した高い精製技術等を組み合わせて、より高純度化した半導体用プロセスケミカル等最先端ニーズに対応した半導体材料を開発・提供することで、半導体のさらなる高性能化に寄与していきます。
当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。
(1)ヘルスケア セグメント
メディカルシステム事業では、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能な「SYNAPSE Creative Space」の提供を2024年4月より開始しました。MRI画像から神経膠腫(グリオーマ)の疑いのある領域を精密に抽出するAI技術を国立がん研究センターと共同で開発しました。本技術により、希少がんである神経膠腫の治療前の画像評価の精度向上が期待できます。また、富士フイルム㈱と国立大学法人神戸大学は、AI技術を活用して腹部の非造影CT画像※1から膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を開発しました。これにより、両者が開発した、膵臓がんの検出を支援する技術の適用対象を、造影CT画像※2から非造影CT画像へ拡大します。今後、一般的な検診や人間ドックで撮影される非造影CT画像からより多くの潜在的膵臓がん患者を拾い上げ、早期治療につながることが期待できます。そのほか、富士フイルム㈱と公立大学法人名古屋市立大学は、MRI画像から脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI技術を共同で開発しました。本技術により、「治療で改善できる認知症」と言われ早期発見が重要なハキム病(特発性正常圧水頭症:iNPH)※3の診断精度向上が期待できます。
バイオCDMO事業では、FDB拠点にて500L培養タンクを用いた連続生産システムの開発を進めており、抗体薬の培養工程で連続40日間の高密度細胞培養を達成致しました。また、遺伝子治療薬でボトルネックとなっている大量生産技術の確立に向け、抗体薬で培った連続生産技術を展開することにより、新たな高生産プロセスである連続エレクトロポレーション技術※4を開発致しました。今後、これら技術を用いた受託サービスを通じて顧客をサポートし、アンメットメディカルニーズへの対応等の社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。
ライフサイエンス事業では、米国子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)とOpsis Therapeutics,LLC(以下、「オプシス社」と記載します。)が、大手製薬企業Bayer(バイエル) AGの子会社であるBlueRock Therapeutics LP(以下、「ブルーロック社」と記載します。)に、iPS細胞を用いた網膜疾患治療法の開発・商業化に関するライセンスを供与することに合意しました。本ライセンスの供与は、2021年にFCDI・オプシス社・ブルーロック社で行った、iPS細胞を用いた眼疾患治療法の研究開発における戦略的提携にて取り決めたオプション権をブルーロック社が行使したことに基づくものです。今後も、FCDIは、効果的なパートナーシップを継続し、iPS細胞技術の可能性を最大限に生かすことで、眼疾患を対象としたベスト・イン・クラスの細胞治療法の創出を目指します。
コンシューマーヘルスケア事業では、皮膚への浸透性と保水効果を高めた「ナノ化ワセリン」を開発しました。「ナノ化ワセリン」は、独自のナノ分散技術を活用し、保湿剤として広く使われているワセリンの粒子をナノサイズに微細化したものです。当社は、「ナノ化ワセリン」の皮膚への浸透性向上と、高い保水効果を確認し、「ナノ化ワセリン」により、角層の厚みが増すことを実証しました。また、スギ花粉に含まれる抗原タンパク質「Cryj2(クリジェイツー)」が、皮膚バリア機能低下とシミ・くすみ等の肌トラブルを引き起こす一因であることを解明し、消炎作用をもつ生薬成分として知られる「マグワ根皮エキス」に、「Cryj2」による肌への悪影響を改善する効果を発見しました。今後、これらの研究成果を化粧品の開発に応用していきます。このほか、紫外線や熱で酸化した皮脂である過酸化脂質が、皮膚のバリア機能※5を低下させる一因を解明しました。当社は、今回の研究成果を、皮膚のバリア機能低下を予防する成分の処方設計に応用する等、化粧品の開発に生かしていきます。
本部門の研究開発費は、
※1 造影剤を使用せずに撮影したCT画像。
※2 臓器や血管にコントラストをつけて、画像を見やすくするために造影剤を使用したCT画像。
※3 ハキム病(特発性正常圧水頭症:iNPH):歩行障害や認知障害、切迫性尿失禁等をもたらす疾患で、くも膜下出
血や髄膜炎等に続発する二次性正常圧水頭症と異なり、先行する原因疾患はなく、緩徐に発症して徐々に進行す
る。iNPHはidiopathic Normal Pressure Hydrocephalusの略。
※4 細胞液を送液しながら連続で電圧を付与し、高効率に目的遺伝子を挿入する技術。
※5 肌の水分の蒸散、外部因子(細菌やアレルギー物質、花粉、大気汚染物質)の侵入等を防ぐ機能。
(2)マテリアルズ セグメント
産業機材事業では、富士フイルム㈱とIBM Corporation(以下、「IBM」と記載します。)が、世界最大の記録容量※6となる50TB(非圧縮時)のテープ・ストレージ・システムを開発しました。本システムは、「微粒子ハイブリッド磁性体」を採用した富士フイルム㈱開発の磁気テープ「IBM 3592 JFテープ・カートリッジ」と、IBMの最新世代の「TS1170ドライブ」を組み合わせたエンタープライズ向けのテープ・ストレージ・システムです。
グラフィックコミュニケーション事業のデジタル印刷分野では、世界初※7となる接着機能を持つ「圧着トナー」を発売しました。プロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」に特殊トナーとして搭載し、用紙への印字と糊付けをワンパスで完結します。インクジェット分野では、ワイドフォーマットインクジェットプリンター向けに、水性顔料インクジェットインク中に光硬化性樹脂※8を安定的に分散させる独自技術「AQUAFUZE(アクアフューズ)技術」を新たに開発しました。「AQUAFUZE技術」は、当社グループが有する、水性インク技術とUV硬化性インク技術の融合により開発したものです。本技術を用いた新インクジェットインクとなるUV硬化性水性インクは、これまで水性インク・溶剤インク・UV硬化性インクといった単一インクでは難しかった、印刷時に生じるインクの臭気等を抑える安全性に加え、高い耐擦性や延伸性を実現する膜質を有するため、多彩な印刷基材に対応します。
本部門の研究開発費は、
※6 2023年8月30日発表時点。「Linear Tape Open (LTO)」最新世代LTO-9に対応する磁気テープ の記録容量最大
18TB(非圧縮時)と、IBM 「エンタープライズ」現行品「IBM 3592 JE テープ・カートリッジ」に対応する磁気
テープの記録容量最大20TB(非圧縮時)との比較において。「LTO」は、記録容量等の仕様が統一された規格。
「エンタープライズ」は、IBMが独自に仕様を定めた規格。
※7 2023年4月25日発表時点。接着機能を持つ実用化されたトナー及びその技術は世界初。当社調べ。
※8 UV光の照射によって硬化反応が起こる樹脂。
(3)ビジネスイノベーション セグメント
オフィスソリューション事業では、デジタル複合機・プリンター「Apeos」シリーズが、一般社団法人日本セキュリティ格付機構(略称:JaSRO)が付与する米国国立標準技術研究所(NIST)のセキュリティ基準「NIST SP800-171」及び「NIST SP800-172」への準拠性を示す情報セキュリティ格付けで、最高評価となる「AAAis」を2年連続で取得しました。
ビジネスソリューション事業では、企業のDX活動を通じて、お客様の成功体験の具現化を目指すCHX(カストマー・ハッピー・エクスペリエンス)を実現するソリューション・サービスの第1弾として、IT資産の可視化や運用/管理から環境改善支援まで、お客様のニーズに合わせてワンストップで提供するITサポートサービス「IT Expert Services」の提供を2023年6月より開始しました。また、CHXを実現するソリューション・サービスの第2弾として、お客様が現在利用しているシステムを最大限生かした業務プロセス変革を支援し、DXを加速する新たなクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」の提供を2023年11月より日本及びアジアパシフィック地域で開始しました。
本部門の研究開発費は、
(4)イメージング セグメント
コンシューマーイメージング事業では、スクエアフォーマットに対応した「INSTAX SQUARE SQ40」を2023年6月に、いつでもどこでも気軽に撮影できる“手のひらサイズカメラ”「INSTAX Pal」を2023年9月に発売しました。また、カメラ内部にLEDを搭載し、ダイヤルの設定値に応じて異なる色の光をフィルムに直接照射することで6種類の色表現ができる「カラーエフェクトコントロール」や、周辺光量を抑え中心部をフォーカスする「ビネットモード」等、アナログ技術でプリント表現の幅をさらに広げる新機能を搭載した「INSTAX mini 99」を2024年4月に発売しました。
プロフェッショナルイメージング事業では、小型軽量ボディに大容量バッテリー・高性能 AF・動画撮影機能を搭載したオールインワンモデル「FUJIFILM X-S20」を2023年6月に、「GFX シリーズ」の最新モデルとして、シリーズ最高の高速連写・AF・動画性能を実現したフラッグシップモデル「FUJIFILM GFX100 II」を2023年9月に発売しました。また、高級コンパクトデジタルカメラ「X100 シリーズ」の最新モデルとなる「FUJIFILM X100VI」を2024年3月に発売しました。約4020万画素センサーと最新プロセッサーを採用するとともに、シリーズ初のボディ内手振れ補正機能も搭載し、さらなる高画質・高性能を追求しています。このほか、最先端の光学技術・画像処理技術・AIによってトンネル点検業務の効率化を実現する「トンネル点検 DXソリューション」の提供を2023年10月に開始しました。本ソリューションは、トンネル撮像システムの貸与から画像データの保管・活用までワンストップで提供し、トンネル点検業務を刷新します。画像データをもとに高精細なトンネルの画像展開図を生成できるため、従来トンネル内で行っていたひび割れの進行度合い等の点検作業をオフィスにいながら実施可能とします。
本部門の研究開発費は、