第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、経営理念に「時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す」ことを掲げ、同じく「優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する」ことを実現すべく、長年培ってきた電気通信技術・高周波応用技術に関する豊富な知識と経験に基づき、経営重点方針のもと、たゆまぬ技術開発の推進と品質性能の向上を目標とした各施策を行うことにより、企業価値を高め、株主の皆様や顧客各位のご期待に応えることを経営上の最大基本方針と位置づけております。

また、当社グループは、2021年3月に中長期経営戦略を掲げ、2021年11月には企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するための方針、社会及びステークホルダーに対する責任を「サステナビリティ基本方針」として定めた上で、「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」の5つのマテリアリティ(重要課題)を掲げ、当社グループの事業のサステナビリティ(持続可能性)向上を図る企業活動(サステナビリティ経営)に取り組んでおります。

これらを踏まえ、2023年3月期からの3ヵ年計画である中期経営計画(DKK-Plan2025)を2022年5月に策定し、「サステナビリティ経営の推進による企業価値の向上」を基本方針に据え、社会課題の解決を通じた持続的な成長の実現に向けて事業活動を展開してまいりましたが、原材料等の価格高騰や既存顧客の設備投資抑制などの外部環境の変化が業績面に強く影響する状況等を鑑み、外部環境の変化に対応できる体制や基盤を構築し、早期の業績回復を目指すため、2024年3月にDKK-Plan2025のローリングプランを策定いたしました。このローリングプランでは、抜本的な事業構造改革等を実行し、収益創出体制を確立させることで、次期中期経営計画(DKK-Plan2028)における成長の実現・加速につなげる各種取り組みについて掲げております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、中期経営計画(DKK-Plan2025)にて2025年3月期の達成目標として自己資本当期純利益率(ROE)5%を掲げておりましたが、DKK-Plan2025ローリングプランにて、目標の達成年度を2年延期し2027年3月期の達成を目指すことといたしました。ローリングプランでは事業構造改革と財務戦略の推進により収益創出体制を構築することを掲げております。また、2024年3月に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の記載のとおり、収益性の向上と市場評価の向上のための取り組みを進め、2027年3月期を目標に株価純資産倍率(PBR)1.0倍超を目指してまいります。

また、「サステナビリティ経営の推進による企業価値の向上」に向け、マテリアリティ(重要課題)に掲げる「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」の5つの課題に対するそれぞれのKPI達成に向け、その取り組みを進めております。詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

なお、マテリアリティ(重要課題)及びKPIについては、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会において協議の上、定期的に見直しを行ってまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、経営環境の変化に迅速に対応し、事業の継続性と安定した収益の確保を目指すとともに、継続的なコーポレートガバナンスの強化に向けた取り組みを進めることで、企業価値の増大を図ることを基本としています。

当社の中長期的な経営戦略としては、2021年3月に開示いたしました「中長期経営戦略」において、「社会貢献への積極的関与」と「企業価値の向上・成長の実現」により、当社グループのありたい姿である「未来の当たり前をつくる企業(Pioneering the future)」の実現に向け、「新規事業の創出」、「既存事業の更なる拡大」、「経営基盤の強化」の3つの戦略を掲げております。

また、その実現のため、「成長に向けた土台作り」と位置付ける中期経営計画(DKK-Plan2025)及びそのローリングプランにおいて、「経営基盤の強化」「事業ポートフォリオの最適化」「新規事業創出の早期実現」の重点施策のもと、当社グループが永続的に発展・成長するための強固な経営基盤の構築に向け進めてまいります。詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。

 

①新規事業の創出

・関連するサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ:「環境経営の推進」及び「新規事業の創出」

 

「新規事業の創出」においては、ビジネススタイルの変革や顧客層の拡大・差別化の追求により、これまでの事業とは異なる新たな収益の源泉を創出してまいります。具体的には、2024年3月に策定した「DKK-Plan2025」ローリングプランで注力セグメントと位置付けた「ソリューション」においては、AIの実用化及び無線通信技術の高度化への対応に向け取り組みを進めてまいります。また、「高周波関連」においては、「高周波新領域」のセグメントにおける新たに開発した過熱水蒸気設備を軸にした環境ビジネスを早期に確立し、収益改善を目指していく所存です。

 

②既存事業の更なる拡大

・関連するサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ:「社会インフラ整備への貢献」

 

2024年3月に策定した「DKK-Plan2025」ローリングプランでは、「防衛」「ソリューション」「高周波関連」を注力セグメントに設定しましたが、従来携わってきた社会インフラに関わる既存事業の拡大についても重要なテーマとして捉えております。これまで携わってきた移動通信関連、固定無線関連、放送関連、高周波関連を中心にその周辺分野への事業拡大の取り組みを進めておりますが、以降においても、継続的に新たな技術を有した製品を投入し安定的な収益基盤の構築を図っていくことと併せ、設備投資及びM&A投資などを通じて適宜適切に経営資源を投入することで、社会貢献と企業価値増大の寄与に向けた取り組みを推進してまいります。

 

③経営基盤の強化

・関連するサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ:「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」

 

技術革新への対応が求められるなか、これからの時代を見据えた研究開発に加え、保有する経営資源を的確に投入していくことで将来を見据えた取り組みについても進めております。

また、「経営基盤の強化」には、企業統治の観点も不可欠であり、経営の透明性と健全性を確保することにより、企業の社会的信用性を高めながら企業価値の増大を図ることを、コーポレートガバナンスの基本的な考え方としております。取締役会の健全性、実効性及び透明性の確保に向けた取り組みや、コンプライアンス経営に向けたコンプライアンス・プログラムの推進、政策保有株式の縮減などの各種取り組みをコーポレートガバナンスの強化として継続して実施してまいります。なお、政策保有株式の縮減については、保有する上場株式を2027年度末(2028年3月末)までに全て売却することとしております。

 

(4)経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に弱い動きが見られますが緩やかに回復しております。高水準の企業収益を背景に設備投資が底堅く推移しており、供給制約の緩和から生産活動も持ち直しの動きを見せております。一方、海外経済の不透明感に加え、商品市況の高止まりや円安に伴う資材価格の高騰が継続しており、消費が弱い動きとなっているなどリスク要因が複数あることから、先行きについては依然として予断を許さない状況が続いております。

当社グループの関係しております電気通信関連業界におきましては、移動通信関連分野では、顧客の設備投資計画が依然として全般的に抑制されております。固定無線関連分野では、自治体の防災体制の強化等により防災行政無線の需要に回復傾向が見られておりますが、放送関連分野においては放送事業者による設備更新需要の先送りの継続により、依然として停滞しております。高周波応用機器業界におきましては、自動車関連分野における設備投資需要に回復の兆しが見られますが、その基調は未だ緩やかなものとなっております。なお、いずれの事業分野においても、エネルギー及び部品等の価格高騰や、人件費の高騰といった原価上昇要因が、依然として影響を及ぼしております。

 

(5)会社の対処すべき課題

当社グループは、顧客の設備投資動向の影響を受ける事業形態であること、また、原材料価格の高騰や為替相場の大幅な変動をはじめとした事業環境への対応等が課題として挙げられます。当社グループとしては、新規事業への取り組みの早期実現、販売価格の適正化、原価低減、製造体制の再構築等を継続して進めてまいります。

以上のような環境の中、2024年3月に公表した中期経営計画(DKK-Plan2025)のローリングプランに記載のとおり、今後においては、既存事業の着実な取り込みに加え、防衛・ソリューション・高周波の事業領域を注力する分野と定め当社グループの早期の業績回復を目指してまいります。

電気通信関連事業のうち、防衛関連分野においては、防衛費の予算増額を背景とした装備品の安定供給と既存設備の維持・点検整備事業への積極的な提案による受注獲得を図るとともに、ソリューション関連分野においては、映像を主体としたAIソリューションによる社会課題解決に向け、提案力・開発力を増強するとともに、子会社化した株式会社サイバーコアとの協業による受注拡大を進めてまいります。また、高周波関連事業のうち高周波誘導加熱装置分野においては、自動車EV化に伴う受注の獲得や既存設備のメンテナンス需要の掘り起こしを進め、熱処理受託加工分野については、生産調整の解消からの回復傾向にある需要の着実な獲得に取り組み、高周波新領域分野については、事業化の早期実現に向けてスピードを上げて推進してまいります。

既存事業についても、電気通信関連事業のうち移動通信関連分野においては、移動通信基地局用アンテナ製品に加え、開発した無線装置と併せ需要の取り込みを図るとともに、移動通信鉄塔のメンテナンス需要の獲得にも継続して取り組んでまいります。固定無線関連分野については、緊急防災・減災事業債の期限延長の影響を受け、地方自治体向け防災行政無線の需要の回復が見込まれておりその獲得に注力し、また放送関連分野については、放送設備の更新・メンテナンス需要の取り込みを着実に進めてまいります。

 

また、当社グループはサステナビリティ経営を掲げ、「サステナビリティ基本方針」のもと、重要課題として5つのマテリアリティ(「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」)を定めており、引き続き社会課題の解決を通じた持続的な成長の実現に向けて、事業活動を展開いたします。

 

(経営理念)

・優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する。

・時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す。

・絶えず生産性の向上に務め、常に適正な利益を確保する。

・一社一家、グループ一家の和の精神をもって発展成長し、社員の生活向上に務める。

 

(サステナビリティ経営の実現に向けたマテリアリティ(重要課題))

マテリアリティ:「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」

 

(中長期経営戦略のビジョンと戦略)

ビジョン:ありたい姿である「未来の当たり前をつくる企業(Pioneering the future)」の実現

戦略:「新規事業の創出」、「既存事業の更なる拡大」、「経営基盤の強化」

 

(中期経営計画の基本方針と重点施策)

基本方針:「サステナビリティ経営の推進による企業価値の向上」

重点施策:「経営基盤の強化」「事業ポートフォリオの最適化」「新規事業創出の早期実現」

 

(ローリングプランの方針と重点施策)

基本方針:「事業構造改革による収益体制の構築」

重点施策:「収益改善のための構造改革」「中長期的な成長戦略」「適切な資本構成」

 

(次期(2025年3月期)の経営重点方針)

全体目標:「業績改善・利益確保の実現とサステナビリティ経営の発展」

取組方針:「グループ全体で強い意志を持った利益の最大化」、「コストを意識した効率化の追求による業務価値の向上」、「事業化のスピードアップと研究開発の選択と集中」、「職場風土・働き方改革の推進とコンプライアンス、リスクマネジメントの徹底」、「積極的なサステナビリティ経営の実践による社会貢献と発展成長の実現」

 

<決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備について>

2023年6月30日付の内部統制報告書にてお知らせしました決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備については、当連結会計年度において改善活動に注力いたしました。

しかしながら、固定資産の減損については、会計基準及びその適用方法の理解が不十分であり、固定資産の減損処理に関する準備が遅延し、本来実施すべき外部専門家や会計監査人への相談が不足したことから、状況に対応した手順書やワークシートの改善が徹底されておりませんでした。

また、適切な経理・決算業務のための必要かつ十分な専門知識が不足していたため、重要な事象や状況の変化に対する会計基準の適合性に関する検証の精度が不足しておりました。

これらの決算・財務報告プロセスの開示すべき重要な不備により、当連結会計年度においても会計監査人から固定資産の減損処理の誤りの指摘並びに異なる納税主体間での繰延税金資産及び繰延税金負債の誤った相殺処理、満期保有目的の債券に係る流動固定区分の分類誤り、連結キャッシュ・フロー計算書の科目集計の一部誤りによる決算短信の訂正を含む修正事項が発生いたしました。

 

前連結会計年度同様に決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備が検出されておりますが、当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、当社及び連結子会社において下記を含む再発防止策を講じて内部統制の整備・運用を強化し、財務報告の信頼性を確保してまいります。

 

(再発防止策)

①決算・財務報告プロセスにおける検証機能の強化

・重要な会計処理や状況の変化に関する早期の検討実施と外部専門家及び会計監査人との早期のコミュニケーションの実施

・固定資産の減損に関する手順書・ワークシートの更新

・重要な事象や状況の変化に対する会計基準の適合性を踏まえたチェックリストの整備

・経理責任者が会計基準に基づいてチェックを実施できるための体制整備の一環として、十分な経理知識を有した公認会計士等を含むチェック体制の強化

・外部専門家による直接的なチェックを受けられる体制の整備

 

②会計処理を適時適切に実施するための人員補強等

・公認会計士等の十分な経理知識を有する者の新規採用を含む人材の補強

・複数人によるチェック体制を整備し属人的にならない体制の確立

・経理責任者及び実務者の知識向上のための継続的な研修参加機会の確保

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、2030年を見据えた「未来の当たり前をつくる企業(Pioneering the future)」の実現に向けたビジョン及び成長戦略である「中長期経営戦略」を策定いたしました。それをもとにサステナビリティ基本方針を定め、当社グループの課題としてマテリアリティ(重要課題)を掲げ、各種KPI達成に向け取り組み、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上を目指しております。

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みについては、以下のとおりとなります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、社会に貢献し、持続可能な社会の実現に貢献するための方針として、サステナビリティ基本方針を策定し、企業活動に取り組んでおります。また、サステナビリティ経営の推進を図るための組織として、代表取締役社長を委員長とし、社内取締役及び執行役員等で構成されるサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティ課題の特定や多様性や労働環境、人権などの社会問題や、気候変動等に関する環境問題に関する方針・KPIの設定、重点取り組み事項に関する進捗状況について審議・議論を行っております。

 サステナビリティ経営の推進に当たっては、当社グループの事業及びステークホルダーに対して優先的に取り組むべき課題を5つのマテリアリティ(重要課題)として設定し、5つのマテリアリティごとに重点取り組み事項を定めております。

 各マテリアリティに対しては、取締役を含めた部門横断型のワーキンググループ(WG)を設置し、重点取り組み事項及び目標とする指標であるKPIを定め、継続的に取り組みを進めております。

 また、WGの取り組み内容については、サステナビリティ委員会にて協議の上、定期的に取締役会に報告を行っております。

<電気興業グループ サステナビリティ ガバナンス体制>

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(2)戦略

 サステナビリティ経営の推進に向けては、サステナビリティ基本方針に基づき、設定したマテリアリティへの取り組みを継続することにより、持続的な社会の成長への貢献と企業価値の向上を図っております。サステナビリティ経営の推進に向けた当社マテリアリティは、「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」といたしました。

 なお、特定したマテリアリティにおける当社グループの事業や業績に与えるリスク及び機会、並びに重点取り組みについては、下記のとおりとなります。

 

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(気候変動)

 気候変動が当社グループの事業・業績に与える影響について、シナリオ分析を実施いたしました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)・国際エネルギー機関(IEA)に基づき、2℃、4℃シナリオで分析を実施しており、事業への影響度※は大・中・小で評価をしております。評価対象は当社グループ全体としており、分析の時間軸は移行リスクについては2030年、物理的リスクについては2050年を基準としております。

 当社グループでは引き続き、特定したリスクと機会に関して、1.5℃シナリオでの分析や財務インパクトの把握やリスク・機会の対応策の導出を進めてまいります。

 

※影響度は、発生可能性と事業活動への影響の大きさを総合的に勘案し、定性的に判断

 大:発生可能性が中程度以上で、事業に大きな影響を与え、事業計画・体制の変更を余儀なくされる可能性あり

 中:発生可能性が中程度で、事業に影響を与え、事業計画・体制の見直しが必要となる可能性あり

 小:発生可能性が低く、事業への影響は限定的で、事業計画・体制に変更がない可能性あり

 

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セグメント名

主な事業内容

移動通信

携帯電話向け基地局アンテナ・工事・鉄塔、無線設備等

固定無線

官公庁向け防災無線・消防無線、防衛向け通信アンテナ・設備等

放送

テレビ・ラジオ放送向け送信所設備、メンテナンス等

ソリューション

サービスを含めたネットワーク関連事業(画像AIソリューション、ローカル5Gなど)

その他(電気通信)

鉄鋼構造物製造・めっき処理、航空障害灯、LED照明、再生可能エネルギー関連等

誘導加熱装置

自動車部品向け高周波誘導加熱装置の製造、メンテナンス

熱処理受託加工

自動車部品等の熱処理受託加工

高周波新領域

環境関連・食品関連向け高周波応用事業、その他新領域向け事業

※2024年3月に公表した中期経営計画(DKK-Plan2025)のローリングプランにて、2025年3月期より固定無線セグメントから「防衛」セグメントを区分し注力セグメントとして位置付けて取り組んでまいります。

 

 

(人材育成方針/社内環境整備方針)

 当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。

 

① 人材育成方針

 当社グループは、経営理念において「一社一家、グループ一家の和の精神をもって発展成長し、社員の生活向上に務める。」と掲げており、企業成長の源泉は「人財」であり、個人の人格や個性を尊重し、風通しの良い職場環境整備や教育の場を積極的に提供することで、企業の原動力である「チャレンジ精神」「生産性向上」につながるものと考えております。また、人財育成の継続なくしては、将来の発展と成長はないものと考えており、「中長期経営戦略」の達成に向け、下記の人財育成重点取り組みを実行しております。

 

※当社グループでは、「ヒト」を企業の礎を築く最も重要な要素の一つ「宝(タカラ=財)」と考え、“人材”ではなく“人財”とあらわしております。

 

(人財育成重点取り組み)

重点取り組み

実施事項

1.人財育成の推進

①新たなキャリアアップを目指す新人事制度の立案

②社内人財の育成・能力開発の強化

2.多様な人財の雇用と活躍

①ダイバーシティマネジメント研修、人権研修の実施

②キャリアを持った人財の中途採用

 ・新規事業展開、経営基盤強化に即した中途採用

③シニア社員活躍のための「70歳までの雇用制度」の立案

④障がい者雇用

 

② 社内環境整備方針

 当社グループが持続的に発展するためには、従業員全員が安心して、いきいきと働ける職場環境の整備が必要であると考えております。マテリアリティにおいては『職場風土・働き方改革』を掲げ、サステナビリティ活動を推進しており、従業員一人ひとりがお互いを尊重しながら能力を最大限に発揮できる風通しの良い職場環境づくりに注力しております。また、労働安全衛生の維持向上にも注力し、従業員とその家族がより豊かで幸福な生活を維持していけるようにするため、労働災害防止をはじめ、過重労働による健康障害防止にも努めております。

 

(社内環境整備重点取り組み)

重点取り組み

実施事項

1.風通しの良い職場環境づくり

①表彰制度の拡充

②社員全員を対象としたハラスメント教育の実施

③職場環境アンケートの実施

④労使協議会の実施

⑤各職場にて交流会(夏季、冬季)の実施

⑥男性社員を対象とした育児休業取得促進教育の実施

 

 

2.働き方改革

①提案活動の推進

②各種特別休暇の導入

 ・時間単位の有給休暇、バースデイ休暇、ボランティア休暇

③有給休暇取得奨励日の設置

④ノートPC化の推進

⑤女性事務服の廃止

3.労働災害の防止

①安全衛生大会の実施

②安全パトロール活動の推進

4.過重労働の防止

①労働時間勉強会の実施

②ノー残業Day/ライトダウンの実施

③ストレスチェックの実施

 

 

(3)リスク管理

① リスク管理体制

 当社グループは、社会課題や環境課題などサステナビリティに関するリスクの特定にあたり、サステナビリティ委員会が中心となり、外部及び内部環境の変化を踏まえ、社会及び当社事業に与える影響度の高いリスクを識別・評価の上、マテリアリティとして設定いたしました。サステナビリティに関するリスクについては、マテリアリティへの取り組みをサステナビリティ委員会でモニタリングを行い、定期的に取締役会に報告しております。今後も進捗や事業環境に応じて、適宜事業戦略の見直しを図るなど、長期的な視点でリスクへの対応を行ってまいります。

 また、全社的なコーポレートリスクマネジメント体制として、リスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会においては、当社グループのリスク・危機の洗い出し、評価の上、重要なリスクを特定し、モニタリング、運用状況の把握、是正指示を行っております。特定された重要リスクの対応策と進捗状況については、定期的に取締役会に報告をしております。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 サステナビリティに関するリスクとリスク管理委員会におけるコーポレートリスクマネジメントは、グループ横断的に情報の集約と管理の強化を行い、情報連携の上で取締役会にて総合的にリスクの把握・管理・発生頻度や影響の低減を図っております。

 

<リスク管理体制>

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② 人権に関するリスクへの対応(人権デューデリジェンス)

 当社グループは人権の尊重が重要な社会的責任であるとの認識に立ち、「DKKグループ人権方針」を制定しており、人権尊重への責任を果たすよう努めております。

 当社のガバナンス体制の一つであるリスク管理委員会に人権部会を設置し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権課題の特定、防止、軽減、是正の一連のサイクルに集中的に取り組んでおります。また、人権に対してサプライチェーン全体で取り組むため、当社グループの掲げる「サプライチェーンにおけるサステナビリティガイドライン」の中で、人権尊重を明記し、当社グループはもとより、サプライヤーの皆様へ当社グループの取り組みや考え方への理解とご協力を求める活動を実施しております。

 

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、中長期的な観点から5つのマテリアリティを掲げており、その取り組みについて成果を評価する指標(KPI)を下記のとおり設定し、確実に推進を図っていくことで、持続的な社会の成長への貢献と企業価値の維持・向上を目指しております。重点取り組みやKPIについてはサステナビリティ委員会、取締役会において協議の上、見直しを行っております。

 なお、KPI(中長期目標)の実績及び進捗状況については当社ウェブサイトに掲載しております。

 https://denkikogyo.co.jp/sustainability/data/

 

<職場風土・働き方改革>

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※上記「職場風土・働き方改革」に関する具体的な取り組み及び指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みを実施しているものの、連結グループに属する全ての会社では実施されていないため、連結グループにおける記載が困難であります。現在、当社グループにおいては具体的取り組みを展開しており、今後目標指標についても充実を図ってまいります。

 

 

<コーポレートガバナンスの強化>

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<社会インフラ整備への貢献>

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<環境経営の推進>

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<新規事業の創出>

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(気候変動)

 当社グループは、マテリアリティに基づき「環境経営の推進」に取り組んでおり、カーボン・ニュートラルの推進、循環型社会実現の推進、環境製品の拡充についてそれぞれ定量的な目標を掲げ、具体的な施策に取り組んでおります。

 カーボン・ニュートラルの推進においては、今後も継続把握並びに精度向上に努め、当社グループの気候変動に関する戦略策定とも併せて、2030年に2019年度比で30%以上(Scope1,2)、15%以上(Scope3)の温室効果ガス(GHG)削減を目標として、グループ一丸となって取り組んでまいります。

 なお、GHG排出量の実績については当社ウェブサイトに掲載しております。

 https://denkikogyo.co.jp/sustainability/data/

 

 

(人材育成方針/社内環境整備方針)

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、各々指標を用い目標達成年度を定め、取り組んでおります。

 

 各領域の課題に対し、既存従業員には人材育成方針をもととした教育研修を行い、新たな人財獲得では社内環境

整備方針による多様性を重視した採用を展開しております。

 これら二つの方針を通じて、当社グループ従業員一人ひとりが、持続可能な社会の実現に貢献できる一員として、価値ある人財となれるよう、企業としてその育成責任を果たすことを目標としております。

 人材育成方針/社内環境整備方針の実績については、「第1 企業の情報 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みを実施しているものの、連結グループに属する全ての会社では実施されていないため、連結グループにおける記載はしておりません。今後目標・指標についても充実を図ってまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループにおいては、全社的なコーポレートリスクマネジメント体制として、リスク管理委員会を設置し、将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性等に応じて、リスク・危機の洗い出し及び評価の上、重要なリスクを特定し、モニタリング、運用状況の把握、是正指示を行っております。また、特定された重要リスクの対応策と進捗状況については、定期的に取締役会に報告をしております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(リスク管理委員会で特定された重要なリスク)

 

① 大規模自然災害等

 地震や台風等の大規模な自然災害、その他の事象により、製造ラインの稼働停止等の事業遂行に直接的又は間接的な混乱が生じた場合、当社グループの業績と財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、そのような災害等の有事に備え、被害を最小限に抑え、事業の継続を図るべく、事業継続マネジメント(BCM)・事業継続計画(BCP)の整備及びその対応に努めております。

 

② 技術革新による既存技術の陳腐化

 EVの普及、アンテナ一体型無線装置普及によるアンテナ需要の縮小、次世代通信規格等の通信技術革新、高速大容量通信実現のため、より高い周波数への移行により、保有設備の陳腐化や更新対応のためのコスト増や業務の制限などにより事業活動や業績に悪影響が生じ、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、市場における技術動向や技術革新に対応するため関連部門と連携し、迅速な情報共有に努めております。

 

③ 情報セキュリティ

 当社グループにおきましては、事業の遂行に必要な顧客や取引先情報を多数管理しているほか、技術・営業・その他事業に関する秘密情報を保有しており、コンピューターウィルスの感染や外部からの不正アクセス、関係者を騙る標的型詐欺メール、サイバー攻撃、あるいはSNS等を用いた従業員による不適切な情報発信などの不測の事態により、システム障害、秘密情報の漏えい、サイバー詐欺被害、重要な事業情報の滅失等が発生して、当社グループのレピュテーションが悪化するなど業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、定期的な教育や標的型メールを想定した訓練等の情報セキュリティマネジメントを徹底し、これらのリスクの回避・影響の最小化に努めております。

 

④ 方針の不徹底、重要情報の伝達漏れ

 会社方針の周知不足や不徹底、重要情報の伝達漏れなどによって、業務におけるコンプライアンスの確保ができないほか、非効率な業務による高コスト体質となり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、グループウェアを活用し経営者の掲げる経営方針等の情報伝達を行っております。

 

⑤ 人財確保

 特に技術部門において、十分な知識と技術を有する人財を十分確保できなかった場合、あるいは、従業員の会社に対する不信感や処遇不満からモチベーションが低下するなどの事象が生じた場合、競争優位性や企業価値の向上が期待できなくなり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、従業員が離職した場合その理由の分析やモチベーション向上のためのアンケート結果を分析して、人財流出防止とモチベーション向上に努め、必要な人財の確保を図っております。

 

⑥ M&A

 当社グループにおきましては、戦略の一つにM&Aを掲げておりますが、M&A実施後に事業が計画どおりに進捗せず、想定した業績を達成できない、あるいは、投資額に見合うリターンを得られない場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、M&A実施前にデューデリジェンスを適切に行い、投資委員会にて十分審議し投資判断を行うこととしております。

 

(上記リスク以外のリスク)

 

① 海外事業展開に潜在するリスク

 海外での事業展開におきましては、予期せぬ法規制の変更、政治経済情勢の悪化、自然災害、疫病、紛争、テロ、ストライキ等の社会的混乱が生じた場合に、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、当該リスクに対する取り組みとして、進出国の税制、法規制動向、政治経済情勢など、情報収集に努めております。

 また、その子会社の財務諸表上の資産・負債・収益・費用等の現地通貨建ての項目は連結財務諸表を作成する上で、円建てに換算されております。外貨建てによる輸出入取引につきましては、換算時の為替レートにより、円換算後の計上額が影響を受けることとなります。当社グループでは、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めております。

 

② 工事契約及び設備据付工事等における収益認識

 当社グループにおきましては、工事契約及び設備据付工事等の一部について、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転する場合には、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しております。案件ごとに継続的に見積原価総額や予定期間の見直しを実施する等適切な原価管理に取り組んでおりますが、それらの見直しが必要になった場合には、当社グループの業績と財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このリスクに対応するため、原価総額の見積りの精度向上を図り、適宜決算に反映するように努めております。

 

③ 固定資産の減損会計

 「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」を適用しており、有形固定資産・のれんを含む無形固定資産について、時価及び事業環境の変動により減損損失を認識するに至った場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、投資計画時に想定されるリスクと対応策を検討した上で、採算性を分析し、投資判断を行っております。

 

④ 市場動向による株価の影響

 企業価値を向上させるための中長期的な視点に立ち、取引金融機関、関係会社、重要取引先の株式を中心に長期保有目的の有価証券を保有しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振等により、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があり、所有株式について個別銘柄毎に取引状況を検証し、市場動向を常に注視するなど、リスクの最小化に努めております。なお、当社は、政策保有株式の縮減方針に従い、保有する上場株式を2027年度末(2028年3月末)までに全て売却することとしております。

 

⑤ 退職給付債務

 当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されております。従いまして、前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 今後におきましても、退職金制度の変更、金利情勢の変化による割引率の変更、運用利回りの悪化により、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、当該リスクに対する取り組みとして、一部で確定拠出年金を導入することにより追加拠出リスクを低減する他、年金資産の運用において安全性と収益性を考慮した適切な投資配分などを行っております。

 

⑥ 業界の動向について

 適正価格による受注及びコスト低減による利益の確保に努めておりますが、市場の価格競争の激化、技術革新及び原材料となる鋼材等の仕入価格の上昇など、関連する業界の需給環境の動向によっては、所期の売上及び利益目標を達成できず、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、業界他社動向を常に注視しつつ、技術革新にも適時的確に対応していくことに加え、業務の効率化及び原価低減活動による利益の拡大に取り組み、業績向上に努めております。

 

⑦ 製品の欠陥、工事の災害事故

 当社グループにおきましては、品質管理及び安全の徹底を図っております。しかしながら、全ての製品・工事施工について欠陥、事故等が発生しないという保証はなく、各種製品の欠陥及び工事の災害事故等が発生した場合、当社グループの社会的評価ばかりでなく、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、一部の事業所及び子会社を除き、品質管理基準(ISO9001)に基づき、各種製品の製造及び工事の施工を行っております。また、請負工事・製造物の責任保障については損害保険に加入するなどの対策を行っております。

 

⑧ 重要な訴訟事件の発生等

 当連結会計年度において、将来の業績に重大な影響を及ぼす訴訟事案を受けた事実はございませんでしたが、今後、事業展開を進めて行くなかで、製品の不具合、工事施工時の事故、その他様々な事由で当社グループに対し提訴その他の請求が起こされた場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、訴訟リスクに対応するため、品質及び安全確保の徹底、コンプライアンス(法令遵守)の徹底を行っております。

 

⑨ 知的財産権

 当社グループが保有する知的財産権について、訴訟やクレーム等の問題が発生した場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、事業活動に関連する有用な知的財産権の取得並びに保護に努めております。

 

⑩ 法的規制について

 当社グループが事業を行うにあたり、建設業法、製造物責任法など様々な各種法規制の適用を受けております。法令解釈の相違等により、結果的に法令に抵触すると判断された場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、内部統制の徹底、コンプライアンス(法令遵守)の徹底を行っております。

 

⑪ 資金調達環境について

 当社グループは、金融機関からの借入れにより資金調達を行っておりますが、借入金の一部に財務制限条項の付されているものがあります。今後、事業計画どおりに業績改善を図ることができず、期限の利益喪失請求が行われた場合には、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 特定の取引先の依存に係るもの

 電気通信関連事業におきましては移動通信関連事業者及び放送事業者、高周波関連事業におきましては自動車メーカー各社をはじめとした自動車関連業界に対する受注・売上高の依存割合が高く、各事業者の設備投資需要の動向によっては当社グループの業績と財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。仕入に関しても、特定の取引先への過度な依存により起因する問題が発生し、各事業者の要求を満たさなくなった場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、今後もこれまでの取引関係を維持発展させていく一方、事業領域の拡大に向けて、ビジネススタイルの変革や顧客層の拡大、差別化を追求し、これまでの事業とは異なる新たな収益の源泉を創出し、その供給体制についても各取引先の生産状況、材料調達の状況などを把握するとともに、必要に応じて代替の取引先の構築にも努めております。

 

⑬ 不正及び不法行為等によるリスク

 役員や従業員等の不正及び不法行為等の防止に万全を期しているものの、万が一不正及び不法行為等が発生した場合には、その内容や規模の大きさによっては、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。不正及び不法行為等によるリスク回避に向け、当社は、コンプライアンス・プログラムを定め、その充実・強化を図るとともに、監査及びコンプライアンス教育を通じてこれらのリスクの回避及び影響の最小化に努めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1億3百万円増加し552億3千7百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ19億5千8百万円減少し387億3百万円となりました。その主な要因は、棚卸資産が6億5千9百万円増加したものの、現金及び預金が6億9千3百万円、受取手形を含む売掛債権が19億4千8百万円それぞれ減少したこと等が挙げられます。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ20億6千2百万円増加し165億3千4百万円となりました。その主な要因は、有形固定資産が13億4千1百万円減少したものの、無形固定資産が16億8千9百万円、繰延税金資産が2億8千5百万円、退職給付に係る資産が5億9千9百万円、長期預金が10億円それぞれ増加したこと等が挙げられます。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ11億7千万円増加し103億3千8百万円となりました。その主な要因は、支払手形を含む仕入債務が6億9千3百万円、契約負債が5億1千5百万円それぞれ減少したものの、短期借入金が22億円増加したこと等が挙げられます。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ20億1千1百万円増加し61億7千5百万円となりました。その主な要因は、退職給付に係る負債が1億6百万円減少したものの、繰延税金負債が3億3千9百万円、長期前受収益が17億8千1百万円それぞれ増加したこと等が挙げられます。

 純資産は、前連結会計年度末に比べ30億7千8百万円減少し387億2千3百万円となりました。その主な要因は、その他有価証券評価差額金が4億7千9百万円、為替換算調整勘定が3億7千5百万円、自己株式の取得と消却等により自己株式が9億7千8百万円減少し純資産がそれぞれ増加した一方で、利益剰余金が54億4千8百万円減少したこと等が挙げられます。

 

b.経営成績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に弱い動きが見られますが緩やかに回復しております。高水準の企業収益を背景に設備投資が底堅く推移しており、供給制約の緩和から生産活動も持ち直しの動きを見せております。一方、海外経済の不透明感に加え、商品市況の高止まりや円安に伴う資材価格の高騰が継続しており、消費が弱い動きとなっているなどリスク要因が複数あることから、先行きについては依然として予断を許さない状況が続いております。

 当社グループの関係しております電気通信関連業界におきましては、移動通信関連分野では、顧客の設備投資計画が依然として全般的に抑制されております。固定無線関連分野では、自治体の防災体制の強化等により防災行政無線の需要に回復傾向が見られておりますが、放送関連分野においては放送事業者による設備更新需要の先送りの継続により、依然として停滞しております。高周波応用機器業界におきましては、自動車関連分野における設備投資需要に回復の兆しが見られますが、その基調は未だ緩やかなものとなっております。なお、いずれの事業分野においても、エネルギー及び部品等の価格高騰や、人件費の高騰といった原価上昇要因が、依然として影響を及ぼしております。

 その結果、受注高は前年同期比0.3%減の320億6千7百万円となり、売上高は前年同期比9.3%減の288億6千4百万円となりました。

 利益の面では営業損失は17億8千7百万円(前連結会計年度は15億1千万円の営業損失)、経常損失は15億3千7百万円(前連結会計年度は12億1千9百万円の経常損失)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は19億7千7百万円(前連結会計年度は11億8千1百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

 セグメントごとの業績は次のとおりであります。(報告セグメント等の業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しております。)

 

(電気通信関連事業)

 当事業では、移動通信関連分野においては、移動通信事業者による設備投資が依然として全般的に抑制されており、5G設備投資需要についても停滞・先送りとなっております。固定無線関連分野では、各自治体における防災体制強化とデジタル化の動きに伴う防災行政無線の需要が、緊急防災・減災事業債の期限延長の影響等により回復傾向が見られておりますが、入札における価格競争が激化しております。防衛関連の需要については、防衛費予算の増額の影響から増加傾向が見られております。放送関連分野においては、放送事業者によるメンテナンス需要は改善傾向にありますが、デジタル放送設備の更新需要は依然として先送りとなっております。ソリューション関連分野においては、2023年9月29日に子会社化した株式会社サイバーコアが保有する画像AI技術やセンシングAI技術と、当社が培ってきた無線通信技術及び様々なカメラを中心としたセンシング技術をかけ合わせることで、両社の強みを活かしたソリューションビジネスの事業化に向けて効率的且つ精力的に事業活動を推進しております。その他分野としては、屋外建築鉄骨や鋼構造物の表面処理需要の継続的な確保に加え、LED航空障害灯や燃料電池といった環境負荷の低い製品において、積極的に需要開拓を進めております。

 このような事業環境のもと、当事業分野では需要の取り込みと生産性の向上を積極的に図ってまいりましたが、部品等の長納期化による影響や原材料費等の高騰が、依然として続いております。

 その結果、受注高は前年同期比1.0%減の220億7千万円、売上高は前年同期比15.2%減の191億6千7百万円となりました。また、セグメント損失(営業損失)につきましては、5千6百万円(前連結会計年度は5千万円のセグメント利益(営業利益))となりました。

 

(高周波関連事業)

 当事業では、主力であります高周波誘導加熱装置分野においては、自動車関連業界における世界的な半導体不足や部品等の長納期化による影響が解消しており、設備投資需要は回復傾向にあります。熱処理受託加工分野においても、自動車メーカー各社の生産調整の解消から需要は回復傾向にありますが、エネルギーコストの高騰による原価上昇要因は依然として継続しております。高周波新領域関連分野においては、過熱水蒸気装置を用いた食品や廃棄物の処理における需要の創出を進めるため、過熱水蒸気技術の高度化に向けた周辺技術の検証を進めており、当連結会計年度において受注を獲得しております。従来取引のなかった様々な企業と実証実験を積み重ね、課題の検証、データ・ノウハウの蓄積を図り、新たな事業領域の開拓に向けた取り組みを推進しております。

 このような事業環境のもと、当事業分野においても原材料費やエネルギーコスト等の高騰による原価上昇要因が発生しておりますが、生産性の向上や販売価格の見直しによる利益の拡大に取り組んでまいりました。

 その結果、受注高は前年同期比1.2%増の99億9千7百万円、売上高は前年同期比5.4%増の96億2千3百万円となりました。また、セグメント利益(営業利益)につきましては、前年同期比9.7%減の10億2千3百万円となりました。

 

(その他)

 その他事業は、土地・事務所等の子会社等への賃貸を行う設備貸付事業並びに売電事業であります。売上高については前年同期比10.4%減の2億6千5百万円となりました。また、セグメント利益(営業利益)につきましては、前年同期比11.6%減の1億2千3百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ30億7千7百万円増加し、当連結会計年度末には173億3千万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は7億5千4百万円(前年同期は8億7千万円の使用)となりました。これは主に売上債権の増減額20億7千8百万円、減損損失の計上18億6千万円等の増加要因に対し、税金等調整前当期純損失の計上23億6百万円、投資有価証券売却益の計上13億3千1百万円等の減少要因が上回ったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果獲得した資金は38億6千3百万円(前年同期は4億9千7百万円の獲得)となりました。これは主に定期預金の純増による収入27億7千6百万円、投資有価証券の売却による収入20億1千5百万円、有形及び無形固定資産の売却による収入18億2千9百万円等の増加要因に対し、有形及び無形固定資産の取得による支出12億1千5百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出9億5千万円等の減少要因が下回ったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は7億7千万円(前年同期は9億7千6百万円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の純増減額20億5千9百万円、自己株式取得のための預託金の増減額1億1千9百万円等の増加要因に対し、自己株式の取得による支出18億7千3百万円、配当金の支払額6億1千6百万円等の減少要因が上回ったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

電気通信関連事業

9,619

△3.4

高周波関連事業

9,666

12.3

合計

19,285

3.8

(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 電気通信関連事業のうち、工事に係る生産実績を定義することが困難であるため、上記生産実績から除いて表示しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

電気通信関連事業

22,070

△1.0

11,464

34.4

高周波関連事業

9,997

1.2

3,887

10.6

合計

32,067

△0.3

15,352

27.5

 

c.売上実績

 当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

売上高(百万円)

前年同期比(%)

電気通信関連事業

工事

10,079

△22.7

設備・機材売上

9,056

△5.1

小計

19,136

△15.2

高周波関連事業

9,623

5.4

その他

104

△3.0

合計

28,864

△9.3

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 「その他」区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、設備貸付事業並びに売電事業を含んでおります。

3 主な相手先別の売上実績及び当該売上実績の総売上実績に対する割合につきましては、販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の相手先が存在しないため、記載を省略しております。

 

 

 

 なお、参考のため提出会社単独の事業の状況は次のとおりであります。

電気通信関連事業

a.受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

売上

区分

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期繰越高

当期

施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

(%、百万円)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

工事

5,290

11,669

16,959

12,116

4,843

0.7

31

12,073

設備・機材売上

2,771

6,859

9,631

6,991

2,639

58.4

1,540

7,170

8,061

18,529

26,590

19,107

7,482

21.0

1,572

19,244

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

工事

4,843

11,564

16,407

9,245

7,162

0.8

56

9,270

設備・機材売上

2,639

6,696

9,335

5,665

3,670

50.5

1,855

5,979

7,482

18,260

25,743

14,911

10,832

17.6

1,911

15,250

(注)1 前期以前に受注した物件で、契約の更改により受注金額に変更のあるものについては、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高においても増減額が含まれております。

2 次期繰越高のうち、施工高は、支出金により物件毎の進捗度を勘案して手持高中の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は、(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致いたします。

 

b.受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別されております。

期別

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

20.0

80.0

100

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

21.7

78.3

100

(注) 上記%は、請負金額比であります。

 

c.売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

工事

(注)1

6,197

5,918

12,116

設備・機材売上

(注)2

338

6,653

6,991

6,536

12,571

19,107

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

工事

(注)1

4,634

4,610

9,245

設備・機材売上

(注)2

207

5,457

5,665

4,842

10,068

14,911

(注)1 完成工事高

2 製品売上高

3 売上高のうち主なものは次のとおりであります。

前事業年度の売上高のうち主なもの

受注先

工事件名等

㈱NTTドコモ

基地局アンテナ及び無線機納品

KDDI㈱

基地局アンテナ及び無線中継装置納品

㈱ソルコム

長門市光ファイバー網整備事業整備工事

南洋貿易㈱

トンガ中波アンテナ納品・工事

海上保安庁 第十管区海上保安本部

臥蛇島灯台災害復旧工事

 

当事業年度の売上高のうち主なもの

受注先

工事件名等

KDDI㈱

基地局アンテナ及び無線中継装置納品

㈱NTTドコモ

基地局アンテナ及び無線機納品

広島市

防災行政無線通信機器更新整備

防衛省 沖縄防衛局

与那国(3)鉄塔新設建築その他工事

奥出雲町

防災行政無線整備工事

4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合

前事業年度

㈱NTTドコモ

2,307百万円

12.1%

前事業年度

KDDI㈱

2,156百万円

11.3%

当事業年度

KDDI㈱

1,938百万円

13.0%

当事業年度

㈱NTTドコモ

1,501百万円

10.1%

 

 

d.手持高(2024年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

工事

4,146

3,015

7,162

設備・機材売上

411

3,259

3,670

4,558

6,274

10,832

 

 手持高のうち主なものは次のとおりであります。

受注先

工事件名等

完成予定年月

熊本防衛支局

えびの送信所(3)鉄塔支線更新工事

2024年12月

豊田市

豊田市防災行政無線(同報系)更新整備等業務委託

2026年3月

八重山広域市町村圏事務組合

八重山地区ラジオ中継局機能強化事業

2024年6月

熊本防衛支局

えびの送信所(5)鉄塔支線更新工事

2027年2月

熊本防衛支局

えびの送信所(4)鉄塔支線更新工事

2026年3月

 

 

高周波関連事業

a.生産実績

区分

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

高周波焼入受託加工

85

116

高周波誘導加熱装置

5,763

5,380

5,849

5,496

(注) 金額は販売価格で示しております。

 

b.受注実績

区分

前々事業年度

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

受注残高

(百万円)

受注高

(百万円)

受注残高

(百万円)

受注高

(百万円)

受注残高

(百万円)

高周波焼入受託加工

85

116

高周波誘導加熱装置

2,431

5,309

1,976

6,447

3,048

2,431

5,395

1,976

6,563

3,048

(注) 受注品目が多岐にわたり、数量の表示は困難であるため記載しておりません。

 

c.販売実績

区分

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

高周波焼入受託加工

85

1.5

116

2.1

高周波誘導加熱装置

5,765

98.5

5,375

97.9

5,850

100

5,491

100

(注)1 販売品目が多岐にわたり、数量の表示は困難であるため記載しておりません。

2 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合

前事業年度

㈱豊通マシナリー

1,468百万円

25.1%

前事業年度

豊田通商㈱

719百万円

12.3%

当事業年度

㈱豊通マシナリー

1,027百万円

18.7%

3 電気通信関連事業の設備・機材当期売上高に上記販売実績を合算した金額が、提出会社の損益計算書の製品売上高に一致いたします。

 

 

その他の事業

a.売上実績

区分

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

設備貸付事業

195

66.1

168

63.4

売電事業

100

33.9

97

36.6

296

100

265

100

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりであります。

当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は前年同期比9.3%減の288億6千4百万円となり、利益(損失)につきましては、営業損失は17億8千7百万円(前連結会計年度は15億1千万円の営業損失)、経常損失は15億3千7百万円(前連結会計年度は12億1千9百万円の経常損失)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は19億7千7百万円(前連結会計年度は11億8千1百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、外部環境の変化、業界の動向や取引先の動向等によっては、所期の目標を達成できない可能性があります。

 

経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容をセグメント別にみますと、電気通信関連事業のうち、移動通信関連分野においては、移動通信事業者による設備投資が依然として全般的に抑制されており、5G設備投資需要についても停滞・先送りとなっております。固定無線関連分野では、各自治体における防災体制強化とデジタル化の動きに伴う防災行政無線の需要が、緊急防災・減災事業債の期限延長の影響等により回復傾向が見られておりますが、入札における価格競争が激化しております。防衛関連の需要については、防衛費予算の増額の影響から増加傾向が見られております。放送関連分野においては、放送事業者によるメンテナンス需要は改善傾向にありますが、デジタル放送設備の更新需要は依然として先送りとなっております。ソリューション関連分野においては、2023年9月29日に子会社化した株式会社サイバーコアが保有する画像AI技術やセンシングAI技術と、当社が培ってきた無線通信技術及び様々なカメラを中心としたセンシング技術をかけ合わせることで、両社の強みを活かしたソリューションビジネスの事業化に向けて効率的且つ精力的に事業活動を推進しております。その他分野としては、屋外建築鉄骨や鋼構造物の表面処理需要の継続的な確保に加え、LED航空障害灯や燃料電池といった環境負荷の低い製品において、積極的に需要開拓を進めております。このような事業環境のもと、当事業分野では需要の取り込みと生産性の向上を積極的に図ってまいりましたが、部品等の長納期化による影響や原材料費等の高騰が、依然として続いております。

一方、高周波関連事業のうち、主力であります高周波誘導加熱装置分野においては、自動車関連業界における世界的な半導体不足や部品等の長納期化による影響が解消しており、設備投資需要は回復傾向にあります。熱処理受託加工分野においても、自動車メーカー各社の生産調整の解消から需要は回復傾向にありますが、エネルギーコストの高騰による原価上昇要因は依然として継続しております。高周波新領域関連分野においては、過熱水蒸気装置を用いた食品や廃棄物の処理における需要の創出を進めるため、過熱水蒸気技術の高度化に向けた周辺技術の検証を進めており、当連結会計年度において受注を獲得しております。従来取引のなかった様々な企業と実証実験を積み重ね、課題の検証、データ・ノウハウの蓄積を図り、新たな事業領域の開拓に向けた取り組みを推進しております。このような事業環境のもと、当事業分野においても原材料費やエネルギーコスト等の高騰による原価上昇要因が発生しておりますが、生産性の向上や販売価格の見直しによる利益の拡大に取り組んでまいりました。

なお、売上高及び営業利益の詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載しております。

経常利益(損失)につきましては、営業損失が17億8千7百万円(前連結会計年度は15億1千万円の営業損失)となりましたことに加え、前連結会計年度と比べ、営業外費用は減少したものの、受取配当金や為替差益の計上などの営業外収益も減少するなど、経常損失15億3千7百万円(前連結会計年度は12億1千9百万円の経常損失)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益(損失)につきましては、投資有価証券売却益を認識したものの、当社及びグループ会社の一部拠点にて経営環境の悪化による収益性の低下が確認されたことを受け、保有する固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで切り下げるなど減損損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は19億7千7百万円(前連結会計年度は11億8千1百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

そのような状況の中で、当社は、経営環境の変化に迅速に対応し、事業の継続性と安定した収益の確保を目指すとともに企業価値の増大を図ることを基本に事業を推進するよう努めております。当社の経営理念である「優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する」、「時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す」、「絶えず生産性の向上に務め、常に適正な利益を確保する」、「一社一家、グループ一家の和の精神をもって発展成長し、社員の生活向上に務める」並びに「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)会社の経営の基本方針、(2)目標とする経営指標、(3) 中長期的な会社の経営戦略」に記載されている成長戦略のもと、企業価値を高め、株主の皆様や顧客各位のご期待に応えることに向け取り組んでまいります。

今後の見通しにつきましては、国内景気は緩やかに回復傾向にありますが、変化する事業環境や価格競争の激化から、当社グループを取り巻く経営環境につきましては、幾分回復の兆しは見られるものの厳しい状況が続くことが想定されます。

以上のような環境の中、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)会社の対処すべき課題」にも記載したとおり、2024年3月に公表した中期経営計画(DKK-Plan2025)のローリングプランに記載のとおり、今後においては、既存事業の着実な取り込みに加え、防衛・ソリューション・高周波の事業領域を注力分野と定め当社グループの早期の業績回復を目指してまいります。

注力分野につきましては、電気通信関連事業のうち防衛関連分野においては、防衛費の予算増額を背景とした装備品の安定供給と既存設備の維持・点検整備事業への積極的な提案による受注獲得を図るとともに、ソリューション関連分野においては、映像を主体としたAIソリューションによる社会課題解決に向け、提案力・開発力を増強するとともに、子会社化した株式会社サイバーコアとの協業による受注拡大を進めてまいります。また、高周波関連事業のうち高周波誘導加熱装置分野においては、自動車EV化に伴う受注の獲得や既存設備のメンテナンス需要の掘り起こしを進め、熱処理受託加工分野については、生産調整の解消からの回復傾向にある需要の着実な獲得に取り組み、高周波新領域分野については、事業化の早期実現に向けてスピードを上げて推進してまいります。

既存事業についても、電気通信関連事業のうち移動通信関連分野においては、移動通信基地局用アンテナ製品に加え、開発した無線装置と併せ需要の取り込みを図るとともに、移動通信鉄塔のメンテナンス需要の獲得にも継続して取り組んでまいります。固定無線関連分野については、緊急防災・減災事業債の期限延長の影響を受け、地方自治体向け防災行政無線の需要の回復が見込まれておりその獲得に注力し、また放送関連分野については、放送設備の更新・メンテナンス需要の取り込みを着実に進めてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動において7億5千4百万円の使用、投資活動において38億6千3百万円の獲得、財務活動において7億7千万円使用したこと等から、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ30億7千7百万円増加し173億3千万円となりました。また、預入期間が3ヶ月を超える定期預金を含めた現金及び預金の残高につきましては、定期預金の払戻による影響に加え長期預金の計上等もあり、前連結会計年度末に比べ6億9千3百万円減少し190億6千6百万円となりました。

なお、キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループの運転資金需要のうち主なものは製品及び原材料の購入費、外注費のほか、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。これらの資金の源泉は、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。また、生産設備の増強・合理化・更新等を含めた設備投資や長期運転資金の必要性が生じた際は、リースや金融機関からの長期借入を行う場合があります。

なお、当社はキャピタルアロケーションを策定し、レバレッジを活用した資金調達の水準を高めることで、保有する資産の売却及び営業キャッシュ・フローで得た資金と併せ、株主還元、人財投資に加え、成長戦略の実現に向けた投資を行っていくことを掲げております。その取り組みの一環として、2022年9月に、主要取引金融機関と総額110億円のコミットメントライン契約を締結した上で、2024年3月31日時点で44億円のシンジケートローンを組成し、また、日本生命保険相互会社より長期借入金として10億円の調達を実施しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が過去の実績や状況に応じ合理的にその金額を見積ることができる場合には費用又は損失として認識しております。ただし実際の結果は、見積り特有の不確実性を伴うため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(工事契約及び設備据付工事等における収益認識)

工事契約及び設備据付工事等における収益認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(固定資産の減損処理)

固定資産の減損処理に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(退職給付引当金)

当社グループは、従業員の退職給付費用について、各連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき引当計上しております。これらは割引率、昇給率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の重要な見積りを加味して計上しております。

 

(繰延税金資産)

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(のれん)

のれんの算出に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

 当社は、2024年3月22日開催の取締役会において、以下のとおり固定資産の譲渡について決議を行い、2024年3月28日に譲渡契約を締結いたしました。

 

(1)譲渡の理由

 経営資源の有効活用及び財務体質の強化を図るため、以下の資産について譲渡いたしました。

 

(2)譲渡資産の内容

資産の内容及び所在地

現況

 埼玉県ふじみ野市西鶴ケ岡1丁目1940番11

 土地 8,265.26㎡

事務所

(注)譲渡価額及び帳簿価額につきましては、譲渡先との守秘義務により公表を差し控えさせていただきますが、

市場価額を反映した適正な価額での譲渡となります。

 

(3)譲渡先の概要

 譲渡先につきましては、国内の事業法人でありますが、譲渡先との守秘義務により公表を差し控えさせていただきます。

 なお、譲渡先と当社との間には、記載すべき資本関係、人的関係及び取引関係はありません。また、譲渡先は当社の関連当事者には該当しません。

 

(4)譲渡の日程

①取締役会決議日   2024年3月22日

②契約締結日     2024年3月28日

③物件引渡期日    2024年3月28日

④物件明渡日     2026年5月末日(予定)

 

(5)業績に与える影響

 当該固定資産の譲渡により固定資産売却益として約15億円の特別利益が発生する見込みですが、物件の明渡しが2026年5月末日(予定)であり、当該特別利益は、2027年3月期において計上する見込みであることから、2024年3月期の当社連結業績に与える影響はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、創造的なアイデアと技術力で、恒久的成長・発展に寄与することを目的としており、市場ニーズを捉えた競争力のある製品開発、スピード感のある製品開発及び将来の事業拡大の基盤となる研究開発に重点を置き取り組んでまいりました。これらは、中長期的視点から、移動通信関連・固定無線関連・放送関連・高周波関連のコア技術を柱としつつ、各々の周辺分野への拡大を図るものであり、営業・現業・開発部門が連携し、横断的に研究開発を推進しております。

当社グループの研究開発体制は、2022年4月に発足したR&D統括センターにおける、ワイヤレス研究所(2019年8月に本社組織として発足)と未来研究所(2021年10月に本社組織として発足)を中心に、当社並びに連結子会社の開発・設計部門が、各々の関連部門と連携・協力し合って課題に取り組むことを基本としております。また、産学連携等、外部の研究機関との連携の強化により、新技術開発の加速化を図っております。

当連結会計年度で実施したセグメントごとの研究開発活動の内容は、以下のとおりであります。

 

電気通信関連事業では、移動通信関連分野において5Gへの取り組みを拡充しております。既存周波数帯に5Gで使用される周波数帯を追加した多周波共用のアンテナ開発、5GオープンネットワークのためのO-RANインタフェース仕様に準拠した無線機の開発、国内外向け移動通信用アンテナの開発、5G用無線中継器の開発、メタマテリアル技術を用いたアンテナ及び反射板と、それらを用いた通信エリア設計に関する研究開発を実施しております。また、ローカル5G実験試験局による電波伝搬・伝送実験により得られた知見を活かしたシステム開発を継続して取り組み、自社工場に設置したローカル5G商用局を活用したスマートファクトリーに向けたシステム開発の推進により、当社の5Gトータルソリューションを支える研究開発を進めております。放送関連分野では、TV局用アンテナ、FM局用アンテナの更新需要に向けた開発を実施しております。固定無線関連分野では、公共業務無線用アンテナ、衛星通信用パラボラアンテナ、防災行政無線用機器等に関する研究開発を実施しております。製品の開発に当たっては、小型化・高性能化・低価格化に加え、当社独自技術の追求を重視し市場競争力の強化に努め、顧客ニーズをいち早く捉えつつ、製販一体となってタイムリーな技術提案、製品提案を行ってまいりました。また、新事業の開拓についても、LED航空障害灯の開発、サーマルカメラを用いた監視システムや画像AI技術を応用した人流解析システム等のシステムソリューション開発について、各部門が連携し取り組んでまいりました。基礎研究では、今後の技術動向と技術適用領域の拡大を見据え、大学や外部の研究機関と連携し、メタマテリアル技術等の先進技術を応用したアンテナや、Beyond5G及び6G時代に対応するための、テラヘルツ帯等のより高い周波数領域を利用した通信システム用アンテナに関する研究開発、さらにワイヤレス電力伝送の実用化に向けた研究開発に積極的に取り組んでおります。

高周波関連事業では、高周波熱処理設備の高機能化の実現に向けて、新しい技術を積極的に取り込み、高性能化と小スペース化、低コスト化、並びに多様な要求に対応できる設備の開発を行っております。また、広範囲な産業をターゲットにした誘導加熱技術の用途開発や、過熱水蒸気技術を用いたリサイクル処理や食品加工に向けた装置開発の実施により、熱処理領域の拡大に向けた研究開発を積極的に取り組んでおります。

なお、当連結会計年度において支出した研究開発費の総額は1,271百万円であります。

セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。

 

 

(電気通信関連事業)

 当連結会計年度における研究開発費の金額は1,060百万円であります。

・移動通信、放送、固定通信関連

(1)5G装置関連開発及びBeyond5G技術開発

(2)アンテナ新技術の開発

(3)移動通信用アンテナシステムの開発

(4)通信・障害灯・防災・放送機器の開発

(5)防衛事業向けアンテナシステムの開発

・施設関連

(1)VLF空中線の開発

(2)支線碍子安定供給のための開発

(3)燃料電池後継機種の開発他

・新分野

(1)システムソリューションの開発

(2)花粉採取最適期判定システムの開発

(3)空間伝送型WPT技術の開発

(4)スティック型低光度航空障害灯の開発

 

(高周波関連事業)

 当連結会計年度における研究開発費の金額は211百万円であります。

・誘導加熱関連

(1)高周波設備の開発・機能の向上

(2)新規事業に向けた新技術の開発

(3)高周波事業の領域拡大に向けた研究開発