第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第1四半期連結累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 業績の状況及び財政状態

 当社グループは、事業の中核である鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先に、サービスの一層の充実、社員の業務遂行能力の向上、設備の強化に取り組みました。そのうえで、コロナ禍で加速した働き方の変化、労働力人口の減少等、当社を取り巻く環境が大きく変化していることを踏まえ、ICT等の最新の技術を活用して効率的な業務執行体制を構築する「業務改革」と新しい発想による「収益の拡大」の2つを柱とした経営体力の再強化に取り組みました。

 東海道新幹線については、「のぞみ12本ダイヤ」を活用して、需要にあわせた弾力的な列車設定を行いました。また、引き続き大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を推進するとともに、新型車両N700Sの追加投入及び既存のN700Aタイプに対してN700Sの一部機能を追加する改造工事を進めました。

 在来線については、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせ弾力的に増結や増発を行いました。また、名古屋車両区検修庫の建替や高架橋柱の耐震化等の地震対策、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。

 営業施策については、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービスである「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくため、乗車日当日まで新幹線を変更可能な旅行商品である「EX旅パック」、新幹線の予約内容に基づき観光プランやホテル等のおすすめ情報の提供を行い、EXサービスサイト内で予約・決済を完結できる「EX旅先予約」等の本年秋のサービス開始に向けた準備を進めました。また、ご利用拡大に向けた取組みとして、東海道新幹線を号車単位で貸し切り、車内でオリジナルイベント等を実施できる「貸切車両パッケージ」のほか、ご自身の「推し」に会いに行く「推し旅」を各種事業者と協力し、新しい内容にアップデートして提案するキャンペーン「推し旅アップデート」を展開するなど、魅力ある旅行商品等を販売しました。さらに、本年で開始から30周年を迎える「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンや、奈良にスポットをあてた「いざいざ奈良」キャンペーン、ビジネスユーザーの出張利用を促す「会いにいこう」キャンペーン等を引き続き展開しました。加えて、新幹線中間駅における二次交通確保及びCO排出量削減による地球環境負荷の低減を目的とした、ENEOS株式会社との豊橋駅前駐車場における法人企業向け電気自動車カーシェアサービスの共同実証事業の開始に向けた準備を進めました。

 超電導磁気浮上式鉄道(以下「超電導リニア」という。)による中央新幹線については、工事実施計画の認可を受けた品川・名古屋間について、用地取得等を進めるとともに、工事については、大深度地下をシールドマシンで掘削する第一首都圏トンネル北品川工区、梶ヶ谷工区及び東百合丘工区で、安全・安心の取組みを実地で確認する調査掘進を進めるなど、沿線各地で着実に工事を進めました。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視し、コストを十分に精査しつつ、各種工事を精力的に進めます。

 なお、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県等の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いています。こうした中、大井川の水資源への影響について、国土交通省の「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が取りまとめた「大井川水資源問題に関する中間報告」を踏まえて、地域へのわかりやすい説明、リスク対応とモニタリングの具体化、工事の一定期間、例外的に県外へ流出するトンネル湧水量と同量を大井川に戻す方策の実現等に取り組んでいます。このうち、発電のための取水を抑制し、大井川に還元する方策について、6月に発電事業者との協議を開始しました。また、南アルプスの環境保全については、有識者会議において議論が進められています。引き続き、地域の理解と協力を得られるよう、双方向のコミュニケーションを大切にしながら、真摯に対応していきます。

 一方、超電導リニア技術については、高温超電導磁石の営業車両への投入を前提に、山梨リニア実験線における走行試験と小牧研究施設における検証を実施したほか、ICT等の最新の技術を活用した効率的な運営体制の実現に向けた開発・実証等を進めるなど、一層のコストダウンとブラッシュアップに取り組みました。

 海外における高速鉄道プロジェクトへの取組みについては、米国における高速鉄道プロジェクトについて引き続き着実に取り組んだほか、台湾高速鉄道において技術コンサルティングを進めました。また、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを推進しました。

 鉄道以外の事業については、JRセントラルタワーズとJRゲートタワーを一体的に運営し、収益の拡大を図りました。また、「アスティ静岡」等の駅商業施設のリニューアルに向けた準備や高架下開発を行うなど、競争力、販売力の強化に努めました。さらに、当社グループの駅商業施設で利用できる共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」の10月の開始に向けて、計画的に準備を進めました。

 上記の結果、当第1四半期連結累計期間における全体の輸送実績(輸送人キロ)は、前年同期比28.7%増の143億3千5百万人キロとなりました。また、営業収益は前年同期比27.7%増の3,950億円、経常利益は前年同期比93.5%増の1,293億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比92.7%増の905億円となりました。

 

 これをセグメントごとに示すと次のとおりです。

 

運輸業

 東海道新幹線については、「のぞみ12本ダイヤ」を活用して、需要にあわせた弾力的な列車設定を行いました。また、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、不断のコストダウンを重ねながら大規模改修工事を着実に進めるとともに、地震対策については、脱線防止ガードの敷設を進めるなど、東海道新幹線全線を対象にした脱線・逸脱防止対策に取り組んだほか、鉄道設備の浸水対策について、ハザードマップ等を踏まえて進めました。さらに、引き続き新型車両N700Sの追加投入や既存のN700Aタイプに対してN700Sの一部機能を追加する改造工事を進めたほか、「特大荷物コーナーつき座席」のサービスを開始するなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。

 在来線については、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせ弾力的に増結や増発を行いました。また、名古屋車両区検修庫の建替や高架橋柱の耐震化等の地震対策を引き続き進めるとともに、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。さらに、新形式の通勤型電車315系とハイブリッド方式を採用した新型特急車両HC85系の追加投入を進めました。加えて、6月から車側カメラを設置した車両を営業列車に投入し、画像認識技術の確立に向けた検証を開始しました。また、刈谷駅において下りホームの拡幅工事を実施したほか、名古屋駅において東海道本線下りホームへの可動柵の設置工事を進めるなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。

 新幹線・在来線共通の取組みとしては、自然災害や不測の事態等の異常時に想定される様々な状況に対応すべく実践的な訓練等を実施しました。また、地震対策として、駅の吊り天井の脱落防止対策を進めるとともに、駅のプラットホーム上家の耐震補強工事を実施しました。

 営業施策については、「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくため、「EX旅パック」や「EX旅先予約」等の本年秋のサービス開始に向けた準備を進めました。また、今後のご利用拡大に向けては、「貸切車両パッケージ」について販売を進め、企業の報奨旅行等、様々な形でご利用いただいたほか、「推し旅アップデート」について特設サイトやTwitterアカウントにて発信するとともに、沿線自治体や各種事業者と連携しながら、魅力ある旅行商品等を販売しました。さらに、京都、奈良、東京、飛騨等の観光資源を活用した各種キャンペーンの展開を行いました。加えて、お客様のパーソナルスペースがより広くなり、より快適に仕事をしていただける「S WorkPシート」の導入に向けた準備や、一時的な打ち合わせやWeb会議等にご利用いただける個室タイプの「ビジネスブース」の本格導入に向けた準備といった、車内のビジネス環境の整備に取り組むとともに、ビジネスユーザーの出張利用を促す取組みとして「会いにいこう」キャンペーンを展開しました。

 当第1四半期連結累計期間における輸送実績(輸送人キロ)は、東海道新幹線は前年同期比33.0%増の122億5千6百万人キロ、在来線は前年同期比7.9%増の20億7千9百万人キロとなりました。

 バス事業においては、安全の確保を最優先として顧客ニーズを捉えた商品設定を行い、収益の確保に努めました。

 上記の結果、当第1四半期連結累計期間における営業収益は前年同期比29.5%増の3,250億円、営業利益は前年同期比75.0%増の1,354億円となりました。

 また、運輸業の大部分を占める当社の鉄道事業の営業成績は次のとおりです。

区分

単位

前第1四半期累計期間

(自 令和4年4月1日

 至 令和4年6月30日)

当第1四半期累計期間

(自 令和5年4月1日

 至 令和5年6月30日)

新幹線

在来線

合計

新幹線

在来線

合計

営業日数

91

91

91

91

91

91

営業キロ

キロ

552.6

1,418.2

1,970.8

552.6

1,418.2

1,970.8

定期

千人

2,868

60,141

62,523

3,086

61,973

64,540

定期外

千人

26,496

27,688

52,369

33,725

30,929

62,339

千人

29,364

87,829

114,892

36,811

92,902

126,879

旅客輸送人キロ

百万人キロ

9,212

1,926

11,138

12,256

2,079

14,335

定期

百万円

3,298

7,716

11,014

3,566

7,954

11,520

定期外

百万円

212,389

12,461

224,851

283,118

15,249

298,368

百万円

215,687

20,177

235,865

286,684

23,204

309,888

小荷物運賃・

料金

百万円

0

0

0

0

合計

百万円

215,687

20,178

235,865

286,684

23,204

309,889

(注) 旅客運輸収入の新幹線及び在来線区分は、旅客輸送計数により区分しています。また、旅客輸送人員の合計については、新幹線、在来線の重複人員を除いて計上しています。

 

流通業

 流通業においては、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」においてラグジュアリーゾーンの大規模リニューアルを進め一部店舗を開業したほか、「タカシマヤ ゲートタワーモール」において顧客ニーズを捉えた営業施策を展開するなど、収益力の強化に努めました。また、駅やホテルの人気商品やオリジナル鉄道グッズ等を取り揃えた多彩なオンラインショップが集うショッピングサイト「JR東海MARKET」では、引退した新幹線車両のアルミニウムを再利用した「東海道新幹線再生アルミ」を用いた商品を引き続き販売するなど、商品力の強化に取り組みました。

 上記の結果、当第1四半期連結累計期間における営業収益は前年同期比20.2%増の377億円、営業利益は前年同期比94.5%増の26億円となりました。

 

不動産業

 不動産業においては、「アスティ静岡」等の駅商業施設のリニューアルに向けた準備を進めるとともに高架下開発を行うなど、競争力、販売力の強化に取り組みました。また、社宅跡地等の開発において、春日井市内の宅地分譲「セントラルガーデン・ステージ春日井出川町」の販売を開始しました。さらに、駅構内や駅直結ビル等におけるワークスペース事業「EXPRESS WORK」のさらなる拡充に向けた準備を進めました。

 上記の結果、当第1四半期連結累計期間における営業収益は前年同期比7.3%増の196億円、営業利益は前年同期比16.7%増の58億円となりました。

 

その他

 ホテル業においては、高品質なサービスの提供に努めたほか、名古屋マリオットアソシアホテルのスイートルームの全面改装に着手するなど、需要の喚起に向けた取組みを進めました。

 旅行業においては、京都、奈良、東京、飛騨等の各方面へ向けた魅力ある旅行商品に加えて、「貸切車両パッケージ」や「推し旅アップデート」等の新たなニーズを捉えた旅行商品を販売しました。

 鉄道車両等製造業においては、鉄道車両や建設機械等の受注・製造に努めました。

 上記の結果、当第1四半期連結累計期間における営業収益は前年同期比6.3%増の535億円、営業利益は23億円となりました。

 

 また、当第1四半期連結会計期間末の資産残高は、前連結会計年度末から400億円減少し9兆4,743億円、負債残高は、前連結会計年度末から1,347億円減少し5兆5,725億円、純資産残高は、前連結会計年度末から946億円増加し3兆9,018億円となりました。なお、長期債務残高は、前連結会計年度末から14億円減少し4兆9,483億円となりました。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第1四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。

    (3) 研究開発活動

 当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は50億円となりました。

 運輸業では、山梨リニア実験線において、改良型試験車と既存のL0系車両を組み合わせた編成で、引き続き走行試験を実施しました。

 運輸業以外のセグメントでは、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

 当第1四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。