文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念とし、その達成のために、ヘルスケア分野の研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献する[ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー]を目指して活動をしてまいります。
これらの活動を通じて、産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力の向上(SDG’s目標9)に貢献していきます。その結果クライアント企業及び自社の製品化・サービス化により、感染症などへの予防・対処や健康増進(SDG’s目標3)に貢献していきたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、当連結会計年度におきましても11期連続での増収となりました。営業利益も対前年比4.4%増となりましたが、中期経営計画の目標に対しては未達となりました。持続的な中長期的成長を果たすために第21期から第23期(2024年6月期から2026年6月期)までの中期経営計画は成長基盤構築をテーマとしており、中長期的な成長を果たすためのイノベーションを創出しつつ、当初の中期経営計画に基づく利益計画を達成し、企業価値の向上を図っていくことがステークホルダーから期待されているものと認識しております。
2026年6月期までの中期経営計画におきましては、当社グループの企業理念の実現に向けた道のりの通過点として、最終年度には以下の経営指標を目標としております。
1)連結売上高 16億円
2)連結営業利益 3億円
(3) 経営環境
当社グループが属するライフサイエンス業界は、少子高齢化といった国内環境にあっても、成長が見込まれる数少ない分野の一つであります。また将来の感染症予防・対策への関心も高く、研究開発投資が高水準で継続しており、今後も同様に推移することが想定されます。
また政府がバイオエコノミー戦略2024を発表し、環境負荷軽減、資源自律経済の実現、食料安定供給などに資する「バイオものづくり」市場の急拡大が見込まれています。バイオエコノミー市場は2030年から2040年には200兆円から400兆円になるという試算もあり*1、バイオエコノミー戦略では2030年に100兆円を目指すこととしております*2。「バイオものづくり」の実用化には、生産性向上によるコスト削減が重要な課題の一つですが、メタボロミクスによる生産性マーカーや律速反応の特定が、この課題の解決に極めて有用であると期待されています。
*1:出所:2023年5月経産省資料「2020 McKinsey Global Institute Analysis」
*2:出所:「2024年6月内閣府バイオエコノミー戦略」
(4) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
当社グループの中期経営戦略は、基盤となる先端研究開発支援事業の持続的収益拡大とヘルスケア・ソリューション事業の早期確立です。
2020年6月期以降、2023年6月期までは会社の経営基盤の構築期間と位置付け、不採算事業の整理や生産性向上を推進し、持続的な事業活動を可能とする財務体質の強化に努めてまいりました。この結果、当社グループ連結では増収増益を継続し、安定した事業基盤・収益基盤を構築することができました。
2024年6月期から2026年6月期までの中期経営計画は、これまでの先端研究開発支援事業において着実な増収増益を図るとともに、ヘルスケア・ソリューション事業の拡大と収益化のための事業基盤構築の時期と位置付けております。
[先端研究開発支援事業]
高感度網羅解析技術を活用した新サービスメニューの拡充や生産性の向上を通じて、さらなるオペレーショナル・エクセレンスを高めてまいります。このような活動を推進することでこれまで同様、持続的な増収増益を目指します。
[ヘルスケア・ソリューション事業]
機能性素材開発包括支援サービスの提供を通じて、機能性素材開発企業の画期的な製品開発を支援することで、成長に向けた事業基盤を構築してまいります。当該セグメントは開発投資が先行しており、セグメント損失を計上してきましたが、中期経営計画では全社共通配賦経費を除いたセグメント利益の計上を目指します。
上述の中期計画達成のために、当社グループが対処すべき課題は以下のとおりです。
①企業分野での売上成長
先端研究開発支援事業、ヘルスケア・ソリューション事業ともに企業分野での売上成長を目指してまいります。
先端研究開発支援事業では、1)革新的な新サービス提供、2)海外事業強化、3)新規事業創造を進めてまいります。
1)革新的な新サービス提供
低分子化合物(いわゆる代謝物質)と高分子化合物(タンパク質など)の中間程度の分子量を有する中分子化合物の網羅解析を可能とする独自技術の開発を進め、中分子メタボロミクスサービスとして提供してまいります。
当社グループの強みであるキャピラリー電気泳動質量分析装置(CE-MS)を応用した独創性の高い分析手法であり、既存のメタボロミクス(低分子化合物の網羅解析技術)やプロテオミクス(タンパク質の網羅解析技術)では解析対象に含まれない中分子領域の物質群を網羅的に解析することが可能です。創薬研究に加え新規のバイオマーカーや機能性物質の探索、作用機序の解明などをさらに進化させていくことができます。製薬企業や医学薬学分野の研究者などが主要な顧客になると考えております。
2)海外事業強化
欧米グローバル企業からの当社サービスに対する評価が高まり、徐々に受注が拡大しております。これを加速するために営業リソースを強化し、特にグローバルファーマ向けの高感度網羅解析サービスの受注を拡大することに加え、新サービスの拡販にも取り組んでまいります。
3)新規事業創造
「バイオものづくり」生産性向上支援サービスの開発に取組みます。政府がバイオエコノミー戦略2024を発表し、環境負荷軽減、資源自律経済の実現、食料安定供給などに資する「バイオものづくり」市場の急拡大が見込まれています。バイオエコノミー市場は2030年から2040年には200兆円から400兆円になるという試算もあり*1、バイオエコノミー戦略では2030年に100兆円を目指すこととしております*2。
「バイオものづくり」の実用化には、生産性向上によるコスト削減が重要な課題の一つですが、メタボロミクスによる生産性マーカーや律速反応の特定が、この課題の解決に極めて有用であると期待されています。これには、よりハイスループットなメタボローム解析技術や高度な代謝シミュレーション技術が求められるため、当社グループはこれまでに培ってきた技術・ノウハウなどを活かし、これら技術の確立を進めており、年度内にもパイロット顧客との取組みを開始する予定です。
*1:出所:2023年5月経産省資料「2020 McKinsey Global Institute Analysis」
*2:出所:「2024年6月内閣府バイオエコノミー戦略」
ヘルスケア・ソリューション事業においては、機能性素材開発包括支援サービスの拡販にさらに注力してまいります。2024年8月には大幅に対象物質を拡充した機能性関与成分探索パッケージの提供を開始いたしました。地域商社などと連携して拡販することにより、地域活性化の取組支援を強化してまいります。山形県の地域商社との取組みは、2024年5月より開始しております。今後は他県への横展開などを進めてまいります。また食品・化粧品の機能性に関する予測が可能となるヘルスクレーム予測パッケージも機能を強化して展開を加速してまいります。これらの機能性素材開発包括支援サービスの提供を通じて、廃棄物や残渣などの未利用資源の利活用および価値向上によるSDGs推進の取組みを支援してまいります。
②生産性の向上による収益性の更なる改善
当社グループの解析業務は鶴岡本社で実施しており、上述売上増に対応するためのキャパシティ改善を効率的に行うことにより、生産性を改善し、収益性を大幅に改善することにつながります。そのための生産管理システムを導入などのデジタル化の推進に加えて、ロボット導入などによる自働化推進、ハイスループット技術手法の開発による単位当たりの解析時間短縮など、多面的な生産性改善を進めてまいります。また解析以外の業務につきましても、デジタル化を推進していくことで、業務の見える化を推進し、効率改善を通じた生産性改善を行ってまいります。
③リスク管理体制の強化
中期経営計画では、新たなサービス・ソリューションの開発・導入が持続的成長のカギとなるため、チャレンジングな取組みを効率よく実行することが求められています。また、当社グループを取り巻く事業環境の変化に対する継続的なリスク対策の検討も必要となっています。
当社グループではリスク管理委員会による全社横断的なリスク評価と対策検討を行うことに加えて、月次開発会議での開発に係る討議を行うことで、機動的なリスク管理を実施しております。また情報セキュリティリスクに関しても、一定の対策を講じ、継続的に対応強化を推進しております。
④従業員の成長
当社グループの付加価値を創造しているのは従業員です。当社グループがヘルスケア・ソリューション・プロバイダーへ成長するためには、従業員が新たな価値を創造し、社会実装につなげるという一連のサイクルを高速に回すことが重要となります。そのためには、従業員のさらなる成長が不可欠であり、新たな取組みにも積極的にチャレンジし、成長できる環境(体制・ツール)の整備などに取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する。」という企業理念のもと、中長期的な企業価値の向上の観点から、「ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー」として、ヘルスケア分野の研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献することを通じてサステナビリティをめぐる様々な社会課題に取組み、「持続可能な社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立を目指しております。
(1)ガバナンス
社会環境の変化に伴い当社グループを取り巻く環境も変化しており、持続的な成長を実現するために必要となる課題も変化しております。サステナビリティに関連した課題については、取締役会の中で適宜、その内容及び課題に対する取組みについて議論し、対応策の検討を行っております。
(2)戦略
当社グループの付加価値を創造しているのは従業員です。高度な専門的知識、技能及び経験を有する多様な人材の確保及び育成、自律的にチャレンジしながら創造・変革を推進する人材の増加が当社グループの持続的成長には不可欠です。そのために人事制度の改訂や研修の拡充など実施してまいりました。具体的には、人事評価における期待する能力要件を再定義し、その評価基準を明確にするとともに、能力向上のための研修時間を大幅に増加いたしました。また仕事のしやすい環境整備のために、ハラスメント研修やグループ討議などを実施して、従業員同士の理解を深めています。当社グループの業績連動賞与も分配基準を明確にしており、従業員の努力が報酬にも結び付く体系となっています。これらにより従業員エンゲージメントスコアも過年度と比較して向上傾向にありますが、引き続き以下を推進してまいります。
① 人材情報基盤の整備
② 専門能力向上のための能力開発・登用
③ 自律・自走成長する組織文化の醸成
上記の点以外に現状重要性の高いサステナビリティ関連リスク及び機会を認識していないため、その他の戦略については記載を省略しております。
(3)リスク管理
当社グループの持続的な成長を実現するためのリスク管理につきましては、リスク管理委員会にてリスク評価・対策検討を行い、経営会議・取締役会で定期的にモニタリングを行っております。重要性の高いリスクに対しては経営会議で検討を行い、実効性の高い対応を実施しております。
事業機会管理につきましては、経営会議で重点テーマを管理しつつ、優先順位を設定し、具体的な展開につなげております。
(4)指標及び目標
当社グループの人的資本に関する指標及び目標は下記の通りであります。
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取組テーマ |
具体的施策 |
指標及び目標 |
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人材情報基盤の整備 |
・従業員の専門能力やスキル、エンゲージメント等の定期モニタリング |
年2回定期モニタリングを実施します。 |
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専門能力向上のための能力開発・登用 |
・リテンション向上施策 ・専門能力向上のための研修強化 ・事業戦略遂行のための多様性のある専門人材の登用促進 |
離職率を削減し、時間当り付加価値労働生産性の向上を目指します。 |
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自律・自走成長する組織文化の醸成 |
・マネジメントスキル向上のための研修継続 ・従業員の発案をより促進する体制整備 |
エンゲージメントスコアの向上を目指します。 |
上記の点以外に現状重要性の高いサステナビリティ関連リスク及び機会を認識していないため、その他の指標及び目標については記載を省略しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のような事項があります。当社グループは、これらのリスクの可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合には当該リスクによる影響が最小限となるよう対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の事業等のリスク及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、以下の記載は当社グループに関連するリスク全てを網羅するものではありませんので、ご留意ください。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 売上高の季節変動に関するリスク
当社グループの主力顧客である大学及び公的研究機関は、公的な補助金を活用し、研究開発活動を進めております。補助金の多くは、6月から7月にかけて徐々に予算の執行が始まります。近年は、早期に予算を執行する傾向にありますが、顧客は年度末までに予算を執行すればよいことや、測定試料の準備が遅延する場合もあり、依然下期に測定試料の到着が集中しております。その結果、当社グループの売上高は第3四半期(1月~3月)に集中する傾向があります。測定試料の受領が遅れた場合には年度内の解析が困難になり、受注がキャンセルされるリスクや、解析量が当社の能力を超え、機会損失が発生するリスクがあります。
当社グループはこのような季節変動による影響を抑えるため、民間企業や年度末の時期が異なる海外からの受注拡大を図ってまいります。
(2) 国内外での競合リスク
当社収益の中心となっているメタボロミクス受託サービスは国内外の競合が増加傾向にあり、価格競争も一部でみられるようになってきています。価格競争に巻き込まれると当社グループの収益性が損なわれる可能性があります。またメタボロミクス以外の解析受託サービスの拡大に関しても市場は拡大していますが、既存競合との競争は避けられず、当社グループがこれらの解析受託市場において一定のシェアを確保できるかどうかは当社グループの技術開発力、営業提案力次第となります。
メタボロミクス受託サービスについては生産性の改善を通じて、原価の引き下げを図り、価格競争力のある収益構造を構築すべく対応を進めております。メタボロミクス以外の解析受託サービスに関しては、当社グループの独自開発による解析サービスを中心に拡大を図り、またワンストップでの解析サービスの提供などにより、競争優位性を維持強化することで対応を進めてまいります。
(3) 事業化及び商品開発の遅延リスク
当社グループの成長は主に新規開発によるイノベーションによってもたらされます。新規性の高い開発には失敗がつきものであるため、開発が困難な障害によりとん挫すること、期待する成果を得るために克服すべき障害が想定より多く発生し、成果に至るまでの期間が長引く可能性があります。これらは当社グループの成長戦略に影響を与えることになります。
こうした開発遅延によるリスクを最小化するために、当社グループでは開発プロジェクトの優先度を精査し、毎月経営者による確認・意思決定を迅速に行うこととしております。また研究者・技術者による新規開発を促進するために、業務時間の一定割合を新規開発に費やすこと、新規アイデア創出に必要な費用を予算化するなどにより、イノベーション創出を促進してまいります。
(4) 学校法人慶應義塾から供与を受けているメタボローム解析ソフト「KEIO Master Hands」について
当社グループは、慶應義塾大学先端生命科学研究所が開発したメタボローム解析ソフト「KEIO Master Hands」の利用について学校法人慶應義塾よりライセンスを受けております。同解析ソフトは、メタボローム解析において基盤となる重要な解析ソフトウエアであることから、当社グループは複数年のライセンス契約を担保するため、別途学校法人慶應義塾と「「KEIO Master Handsソフトウエア」使用の更新に関する合意書」を締結しておりますが、今後何らかの理由により契約が終了した場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 災害によるリスク
現在の収益の中心である解析受託サービスはその大半が鶴岡本社にて実施されております。鶴岡本社が自然災害その他の事故などにより大きな被害を受けた場合には、その復旧に係る費用並びに一定期間営業が停止することによる機会損失など当社グループの経営に大きな影響を与える可能性があります。また当該期間中に顧客が競合に移管してしまう可能性なども考えられます。
当社グループではこうしたリスクに対応するために、復旧に要する費用については保険を付保し、また軽度の災害・事故による影響については、その影響が短期的な業績に影響を与えないような対策(停電対策など)を順次講じていますが、当社グループの規模では分析設備の分散などは業務生産性を大きく損なうため、とりうる対策としては限界があります。
(6) 小規模組織のリスク
当社グループの役職員数は、当連結会計年度末現在、役員5名及び従業員58名と小規模組織であり、個々の役職員の果たす役割が大きく、一定数の人材が流出した場合に当該分野での事業が一定期間滞る可能性があります。
当社グループでは、こうした人材流出を抑制するために透明性の高い社風を構築し、従業員と会社のおかれている環境・成果などを共有し、一体感の醸成に取り組んでおります。また業績連動賞与を導入することで会社の利益と個々の役職員の利益の連動性を持たせ、利益配分が公正に行われる体系としております。
(7) 情報漏洩リスク
当社グループは顧客の研究開発支援としての解析受託サービスなどを行っているため、顧客の営業秘密にかかわる情報を扱う場合がございます。特に今後成長牽引を期待して展開・拡大を進めていくヘルスケア・ソリューション事業においては顧客からの秘密情報が多く含まれることが想定されるため、当社グループの重過失又はサイバーセキュリティ被害などによる情報漏洩は、顧客に多大なる損害を与える可能性があると同時に、当社グループ自身もその損害賠償リスク並びにレピテーションリスクにさらされる可能性があります。
当社グループではこうしたリスクに対応していくために、社内情報管理体制の強化並びにサイバーセキュリティ対策を強化してまいります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことを背景に、個人消費が堅調に推移するとともにインバウンド需要も増加し、景気は緩やかな回復基調となりました。しかしながら円安進行による国内への影響や、中国経済の減速、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢に伴う原材料・エネルギー価格の高止まりなど、経済環境に与える影響が引き続き懸念される状況です。
当社グループが属するライフサイエンス業界においては、新型コロナウイルス感染症を発端とした感染症対策に加え、免疫力向上等の感染症予防を促進するための機能性表示食品開発等、健康管理へのニーズの高まりを受けた研究開発の増加傾向が継続しています。
このような状況の中、当社グループでは高感度網羅解析サービスを中心とする先端研究開発支援事業及び機能性素材開発包括支援サービスを中心とするヘルスケア・ソリューション事業の受注拡大を図りました。先端研究開発支援事業では、海外の製薬分野での売上が増加したものの、主に国内のアカデミアと製薬分野での売上が減少したことで対前年売上比較では減収となりました。一方、ヘルスケア・ソリューション事業においては、機能性素材開発包括支援サービスの拡販を推進し、大型の有償共同開発案件を受注したことなどにより売上が大きく増加いたしました。研究開発においては、高感度網羅解析の新サービス開発、機能性素材開発包括支援サービスの追加開発などを推進しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は、1,345,671千円(前年同期比3.6%増)と増収となりました。提携サービスの販売に伴う仕入原価の増加、設備増強にかかる減価償却費の増加などもありましたが、営業利益は220,168千円(前年同期比4.4%増)、経常利益は241,441千円(前年同期比3.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、243,248千円(前年同期比14.9%減)となりました。これは前連結会計年度に繰延税金資産の回収可能性の区分変更により増加した法人税等調整額の変動によるものです。
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2023年6月期 |
2024年6月期 |
増減率 |
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売上高 |
1,299,225千円 |
1,345,671千円 |
3.6% |
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営業利益 |
210,982千円 |
220,168千円 |
4.4% |
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経常利益 |
232,611千円 |
241,441千円 |
3.8% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
285,758千円 |
243,248千円 |
△14.9% |
セグメント別の状況は、次のとおりであります。
<先端研究開発支援事業>
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2023年6月期 |
2024年6月期 |
増減率 |
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売上高 |
1,251,738千円 |
1,186,852千円 |
△5.2% |
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(内国内売上高) |
1,032,767千円 |
888,452千円 |
△14.0% |
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(内海外売上高) |
218,970千円 |
298,399千円 |
36.3% |
|
セグメント利益 |
353,609千円 |
310,700千円 |
△12.1% |
国内においては主にアカデミア分野、製薬分野において売上が減少いたしました。アカデミア分野ではコロナ禍での補正予算による特需がなくなったこと、製薬分野では大型案件の終了などが主要因と考えております。海外においてはグローバルファーマからの受注により製薬分野がけん引し、大幅な売上増となりましたが、国内売上が減少した結果、セグメント全体では減収となりました。研究開発においては、高感度網羅解析の新サービス開発を推進いたしました。
この結果、売上高は、1,186,852千円(前年同期比5.2%減)となりました。全社費用配賦後セグメント利益は310,700千円(前年同期比12.1%減)となりました。
<ヘルスケア・ソリューション事業>
|
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2023年6月期 |
2024年6月期 |
増減率 |
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売上高 |
47,487千円 |
158,818千円 |
234.4% |
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(内国内売上高) |
47,487千円 |
158,818千円 |
234.4% |
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(内海外売上高) |
-千円 |
-千円 |
- |
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セグメント損失(△) |
△142,627千円 |
△90,532千円 |
- |
機能性素材開発包括支援サービスの拡販に加え、機能性素材に関連する大型の有償共同開発案件を受注したことなどにより売上が大きく増加しました。皮膚ガス測定売上等も堅調に推移した結果、セグメント全体では大幅増収となりました。研究開発においては、機能性素材開発包括支援サービス等の追加開発などに取組みました。
この結果、売上高は158,818千円(前年同期比234.4%増)、全社費用配賦後のセグメント損失は90,532千円(前連結会計年度は142,627千円のセグメント損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ131,717千円増加し、1,788,506千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは236,795千円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益261,903千円の計上、減価償却費86,315千円の計上及び売上債権96,096千円増加等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは32,441千円の支出となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出32,479千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは73,153千円の支出となりました。これは配当金の支払いによる支出58,696千円及びリース債務の返済による支出14,456千円等によるものであります。
③ 財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は2,095,627千円となり、前連結会計年度末に比べ247,296千円増加しました。これは、営業キャッシュ・フローの改善により現金及び預金が131,717千円増加したこと、期末売上による売掛金が102,868千円増加したこと等によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は507,773千円となり、前連結会計年度末に比べ65,046千円増加しました。これは最新の測定機器の導入に伴い建設仮勘定を含む工具、器具及び備品が110,662千円増加、リース資産の購入によりリース資産が39,472千円減少、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産が10,210千円増加したこと等によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は632,757千円となり、前連結会計年度末に比べ139,750千円増加しました。これは固定資産購入における未払金が109,097千円、未払法人税等が17,877千円増加したこと等によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は23,930千円となり、前連結会計年度末に比べ1,793千円減少しました。これは、リース債務が1,816千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,946,713千円となり、前連結会計年度末に比べ174,384千円増加しました。これは親会社株主に帰属する当期純利益243,248千円を計上したこと、配当金59,070千円の支払い等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
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生産高(千円) |
生産高(千円) |
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先端研究開発支援事業 |
1,918 |
1,888 |
|
合計 |
1,918 |
1,888 |
(注)1.上記の金額は、先端研究開発支援事業のうち、試薬キットに係る部分を記載しております。
2.その他研究開発支援事業及びヘルスケア・ソリューション事業については、業務の性質上生産として把握することが困難であるため、記載しておりません。
(2) 仕入実績
仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
仕入高(千円) |
仕入高(千円) |
|
|
先端研究開発支援事業 |
13,175 |
24,397 |
|
合計 |
13,175 |
24,397 |
(注)1.上記の金額は、先端研究開発支援事業のうち、限外ろ過フィルターに係る部分を記載しております。
2.その他研究開発支援事業及びヘルスケア・ソリューション事業については、業務の性質上仕入として把握することが困難であるため、記載しておりません。
(3) 受注実績
受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
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受注高(千円) |
受注残高(千円) |
受注高(千円) |
受注残高(千円) |
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先端研究開発支援事業 |
1,267,152 |
427,910 |
1,255,403 |
527,684 |
|
ヘルスケア・ ソリューション事業 |
49,141 |
5,310 |
236,246 |
82,737 |
|
合計 |
1,316,294 |
433,220 |
1,491,649 |
610,421 |
(4) 販売実績
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
販売高(千円) |
販売高(千円) |
|
|
先端研究開発支援事業 |
1,251,738 |
1,186,852 |
|
ヘルスケア・ ソリューション事業 |
47,487 |
158,818 |
|
合計 |
1,299,225 |
1,345,671 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10に満たないため、記載しておりません。
(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表において、損益又は資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において、過去の実績や判断時点で入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
売上高につきましては、先端研究開発支援事業においては、海外の製薬分野での売上が増加したものの、主に国内のアカデミアと製薬分野での売上が減少したことで対前年売上比較では減収となりました。国内売上の減少が大きいアカデミア分野ではコロナ禍での補正予算による特需がなくなったこと、製薬分野では大型案件の終了などが主要因と考えております。ヘルスケア・ソリューション事業においては、機能性素材開発包括支援サービスの拡販を推進し、大型の有償の共同開発案件を受注したことなどにより売上が大きく増加いたしました。これらの結果、当社グループ全体の売上高は1,345,671千円となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、主にシステム関連費用の増加などにより649,163千円となりました。研究開発においては、高感度網羅解析の新サービス開発や機能性素材開発包括支援サービスの追加開発などに取組みました。これらの結果、営業利益は220,168千円、経常利益は241,441千円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は243,248千円となりました。
当社グループ全体といたしましては、持続的に収益を計上できる企業体質へと転換が進んだと考えております。引き続き中長期的な成長に必要な投資は積極的に実施しつつ、収益の持続的成長に向けた取組みを推進してまいります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」をご参照ください。
④ 資金の財源及び資金の流動性について
当社グループは、新サービス・新事業開発のための研究開発資金や、最先端の測定解析を可能とする設備購入のための資金、需要の繁閑に伴う短期的な運転資金などの資金需要が発生します。これらに対し、保有する現預金などの自己資本で研究開発投資、設備投資並びに運転資金需要に対応することを基本としています。必要に応じて主に新規研究開発事業への投資等に必要な資金は新株発行等により調達し、設備投資や短期的な運転資金については、銀行借入により調達いたします。
(1) 先端研究開発支援事業
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契約 会社名 |
相手先の名称 |
相手先の 所在地 |
契約品目 |
契約 締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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当社 |
国立大学法人弘前大学 |
日本 |
共同研究契約 |
2024年 5月27日 |
2024年5月1日から 2026年4月30日まで |
青森県弘前市で実施している健康診断(岩木健康増進プロジェクト及び弘前市いきいき健診)により収集した健康情報データやメタボロミクスのオミックスデータの解析により心身の健康及び疾患の早期発見に繋がる予測モデルの構築を開発する。 |
(2) ヘルスケア・ソリューション事業
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契約 会社名 |
相手先の名称 |
相手先の 所在地 |
契約品目 |
契約 締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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当社 |
AIREX株式会社 |
日本 |
業務委受託基本契約 |
2022年 5月17日 |
2022年5月17日から 2027年6月30日まで (期間満了の6ヶ月前までに両者のいずれかから書面による申出があった場合を除き、1年ごとに延長される) |
AIREX株式会社が提供するヒト皮膚ガス測定サービスを独占的に提供するものとする。 |
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当社 |
国立大学法人九州大学 |
日本 |
共同研究契約 |
2022年 6月27日 |
2022年7月1日から 2025年6月30日まで |
うつ病バイオマーカー(マルチマーカー)を評価指標とした休職・復職支援システムの開発。 |
(3) 事業全般に関する契約
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契約 会社名 |
相手先の名称 |
相手先の 所在地 |
契約品目 |
契約 締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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当社 |
学校法人慶應義塾 (先端生命科学研究所) |
日本 |
共同研究及び成果の相互利用 |
2007年 8月8日 |
2007年4月1日から 2025年3月31日まで (研究期間満了の30日前までに両者のいずれかから書面による申出があった場合を除き、1年ごとに延長される) |
当社と慶應義塾大学先端生命科学研究所は、メタボローム測定・解析法の改良及び新たな手法の開発のため、共同研究を行う。当社は、2022年4月1日からの6年間の取扱について合意し、毎年400万円を本共同研究遂行のための費用として、慶應義塾大学先端生命科学研究所へ支払う。 本共同研究により得られた発明等は両者共有とし、その持分は両社双方の貢献度によりその都度協議の上決定する。 本契約に基づき両者が所有する測定機器等について、相手方の要請に基づき相互に利用できる。 |
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当社 |
学校法人慶應義塾 |
日本 |
ソフトウエアのライセンス |
2007年 8月8日 |
2007年4月1日から 2025年3月31日まで (研究期間満了の30日前までに両者のいずれかから書面による申出があった場合を除き、1年ごとに延長される) |
当社と学校法人慶應義塾は、前記契約第4条(機器等の相互利用)において規定される「KEIO Master Hands」のライセンス料について、2022年4月1日からの6年間の取扱について合意し、当社は学校法人慶應義塾に対し、ライセンス料として年額300万円を支払う。 |
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当社 |
エムスリー株式会社 |
日本 |
資本及び業務提携契約 |
2016年 5月24日 |
2016年5月24日から 期間の定めなし |
当社の実施する第三者割当増資の引受、並びにうつ病バイオマーカーの実用化を中心とした業務面での協力及び協業体制の構築。 |
(資本業務提携契約の締結)
当社は、2024年9月11日開催の取締役会において、フェルメクテス株式会社(以下フェルメクテスとする)との間で資本業務提携を行うこと及びフェルメクテスが実施する第三者割当による新株式の引受を決議いたしました。
詳細につきましては、連結財務諸表「注記事項(重要な後発事象)」に同一の内容を記載しているため、注記を省略しております。
当連結会計年度においては、機能性素材開発包括支援サービスのための技術開発、メタボローム解析新サービスのための技術開発、並びに新規サービスの開発・研究等を中心に進めてまいりました。当連結会計年度における研究開発費の総額は
セグメント別では、先端研究開発支援事業において、生産と開発の連携強化に取組み、生産技術開発等を推進したこと等により、研究開発費の金額は