(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは当社及び連結子会社3社(株式会社アイキューブドベンチャーズ、アイキューブド1号投資事業有限責任組合、10KN COMPANY LIMITED)の計4社で構成されております。パーパスを「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」、提供価値を「デザインとエンジニアリングの力で、挑戦を支える」と定義した上で、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの主軸事業である、CLOMO事業の導入法人数(CLOMOを導入している企業や、学校や官公庁などの公的機関の組織数)、ライセンス継続率を経営指標としております。
(3) 経営環境と経営戦略
当社グループの主軸事業であるCLOMO事業は、MDM市場(モバイル端末管理市場)に属しております。MDM市場全体の市場規模は、2023年においては178億円(前年比10.4%増)、2027年までに250億円まで成長する見通し(注1)であることから、CLOMO事業に関しても継続的な成長を見込んでおります。
マーケットの状況としては、3G停波(注2)に伴うフィーチャーフォン(従来型携帯電話)の生産終了、PHSのサービス終了等により、企業や医療機関においてスマートフォンの導入が加速しております。
また、スマートフォン以外では、DXの促進に伴って業務専用端末の管理需要が増加しており、MDMの管理対象となる端末の種類は拡大しております。さらに、PC資産管理ソフトウェアについては従来のオンプレミス型からSaaS型への移行が進み、モバイル端末とPCの統合管理の需要が増加しております。このように、CLOMO事業は業務専用端末管理市場やPC資産管理市場にも成長領域を拡大しており、充分な開拓余地が残されていると考えております。
当社グループとしては、そのような状況からより多くの顧客を獲得するため、製品開発活動では、生産性の向上による原価の低減と、管理対象端末の種類増加に対応するための機能開発及び他社製品との連携による付加価値の向上に引き続き注力してまいります。また、営業活動では、全国7箇所の営業拠点網を通じて地方の販売パートナーとの連携を強めます。さらに、CLOMO MDMとしての販売に加えて、OEM提供先サービスの拡大による顧客基盤の拡大を図り、引き続き売上成長スピードの加速に取り組んでまいります。
2025年6月期においては、NEXT GIGA(注3)による小中学校におけるMDM需要の増加が見込まれております。この需要に応えるため、文教市場に強みを持つ販売パートナーとの協業を通じて、さらなる市場シェアの拡大を図ってまいります。さらに、ISMAPに登録された信頼性の高いサービスであるという強みを活かし、政府や行政機関を含む幅広いお客様に対して、CLOMOサービスの導入を積極的に促進してまいります。
(注)1.出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所「ハイブリッドワークの最適解をもたらす コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望 2023年度版(https://mic-r.co.jp/mr/02880/)」2023年度市場規模・2027年度市場規模予測。
2.携帯キャリア各社が第3世代移動通信方式(3G)のサービス提供を順次終了する予定となっております。当社の主要な販売パートナーであるNTTドコモグループは、第3世代移動通信方式の「FOMA」及び携帯電話からインターネットやメールを利用できるサービス「iモード」の提供を2026年3月に終了予定です。
3.GIGAスクール構想(児童生徒向けに1人1台の端末や、高速通信環境を一体的に整備することで、学習活動の一層充実や主体的・対話的で深い学びの視点から授業改善の実現を目指す、文部科学省による構想。)の次なるフェーズ及び取り組みを指します。2020年から2021年頃に導入された学習用タブレット端末が2024年以降に更新時期を迎え、端末の入れ替えに伴ってMDMの再選定が行われると見込まれており、文教市場におけるMDM需要の増加が期待されます。
① MDM市場におけるシェアの拡大
CLOMO事業が属するMDM市場は、スマートフォンのビジネス利用の増加に加えて、モバイルPCや業務専用端末など、新たなMDMの活用シーンの拡大によって成長を遂げており、当社グループも導入法人数、ライセンス数の増加により収益基盤が拡大しております。一方で、近年では海外製品の国内参入などを背景に、市場における競争優位性の確保に対する重要性が高まっております。
このような中で、CLOMO事業のMDM市場におけるシェアを拡大させるためには、当社グループの技術開発力をベースにした高機能化、周辺機能の追加、複数種類の端末の管理機能拡充などにより、アップセルとクロスセルを高め、顧客単位の売上増加・コスト減少に取り組んでいく必要があると考えております。加えて顧客の信頼を厚くするためのサポート体制の充実による高い継続率の維持に取り組んでまいります。
また、クラウドを利用したSaaSサービスであるため、顧客の予期せぬ急増や、一度に多量のライセンスを受注した場合においても、当社グループは新規で物理的なサーバー機器を調達、構築する必要がないことから円滑に対応でき、当社グループに大きな負担はありません。導入までのサポートを大きな負荷無く短期間で済ませることで、成長の一層の加速に取り組んでまいります。
② 開発体制の強化
さらに、M&Aを通じた開発人員の増強や、海外におけるオフショア開発先の開拓など、外部リソースを活用した抜本的な開発体制の強化に取り組んでまいります。当連結会計年度においては、ベトナムに拠点を置くソフトウェア開発会社を子会社化し、中長期的な開発リソースの確保・強化が進んでおります。
③ 品質保証体制の強化
一方で、CLOMO事業の顧客数の順調な拡大に伴って問い合わせの件数は年々増加しております。これに対して、顧客数の増加に比例して人員増強を進めるのではなく、従来のカスタマーサクセス活動の品質を保ち、高い継続率を維持しつつも、業務効率化によってカスタマーサクセス活動に係る人員数を一定程度に抑制することが課題と考えております。そのために、製品の操作マニュアルや操作レクチャー動画の拡充を進めており、顧客自身で製品操作に対する疑問を解消しやすい環境を整えることで、顧客の利便性向上及び業務の効率化を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに掲げており、様々な挑戦を楽しみながら取り組み、また同時に、挑戦を楽しむ人や組織を支えることで、笑顔あふれる社会の実現に貢献いたします。サステナビリティに関する取り組みについても、この挑戦の一つと捉えております。当社グループを取り巻く事業環境や経営状況を踏まえ、適切な時期に、ステークホルダーの皆さまと連携しながら、持続可能な社会への貢献に取り組んでまいります。

当社グループは、持続可能な社会の実現及び企業価値の向上に向け、2023年6月にサステナビリティ方針を策定しております。当社グループのサステナビリティに関する取り組みについて経営会議等で協議された内容の報告を取締役会が受け、当該施策について、取締役会において審議・監督を行っております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。
① 人材の多様性
当社グループは、多様性を踏まえた人材の活用が当社グループの持続的成長のために必要不可欠であると考えております。性別・国籍・年齢・個々の価値観・ライフスタイル等の多様なバックグラウンドや個性を持つ人材を採用し、多様かつ挑戦的なカルチャーを醸成しながら、全ての従業員が尊重され、個々が能力を発揮して活躍することにより、組織力を最大化し、当社グループの成長につなげてまいります。
これに伴い、当社グループにおいては、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するため、「D&Iミーティング」を定期的に開催しております。
② 人材の育成
当社グループの競争力の源泉は人材であるという認識のもと、様々な人材育成施策に取り組んでおります。具体的には、従業員一人ひとりのキャリア形成を支援することを目的に、新卒社員向け研修、階層別研修、マネージャー育成プログラム、所属部門によるOJT等を実施しております。さらに、自律的なキャリア形成をサポートするため、eラーニングを導入し、従業員自ら積極的に学べる環境を提供しております。
また、当社グループのエンジニアが専門的な知識を幅広く習得し、かつ、能力向上の動機づけに繋げることを目的として、国内外の技術カンファレンスに積極的に参加できる機会を提供しております。
③ 社内環境整備
当社グループにおいては、従業員一人ひとりが働きがいを持ち、安心して働き続けることができる職場環境を整備しております。具体的には、フルフレックスタイム制や状況に応じたテレワークの活用など、従業員一人ひとりの生活スタイルに応じたワークライフバランスを実現させることができるよう、さまざまな仕組みづくりに努めております。
また、直近3期においては、産前産後休業・育児休業の対象となった社員の100%が産前産後休業・育児休業を取得しており、男性社員も育児休業を取得するなど、性別に関係なく制度を活用できる環境を整えております。
当社グループにおける全社的なリスク管理は、事業活動に伴い発生する可能性がある経営上のリスクについて、リスクを可視化し、当社グループに発生するあらゆるリスクを統合的・包括的・戦略的に把握・評価・最適化し、価値最大化を図るリスクマネジメント手法で行っており、リスク管理担当部門より四半期ごとに取締役会へ報告しております。サステナビリティに関するリスクについても、その他のリスクと同様に、当該手法で管理しております。
当社グループでは、上記(2)戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する実績は、次のとおりであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
ただし、当該事業は、国内外の経済情勢や、顧客企業動向に左右されるうえ、技術進化が著しく、顧客ニーズも多様化していくことから、それらへの対応が遅れた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
主軸事業であるCLOMO事業の販売チャネルとしては、携帯電話販売会社や携帯電話販売代理店を通じての取引が多く、販売先の上位グループ会社による売上が売上高の50.2%(2024年6月期実績)を占めております。当該販売パートナーとは良好な関係を築いておりますが、販売パートナーの予期せぬ販売方針の変更や当社グループが原因となる重大な不具合の発生等により、良好な関係を毀損する事態となった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはCLOMO事業及び投資事業を展開しておりますが、投資事業については提出日現在において売上高が計上されておらず、当連結会計年度の売上高はすべてCLOMO事業によるものです。そのため、CLOMO事業が属するMDM市場の成長が想定通り進まない場合、又は当社グループが事業環境の変化に適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、(4)に記載の通り、当社グループは収益源の多様化のため、新規事業を展開する方針であり、代替となる収益基盤の構築を進めてまいります。
当社グループはCLOMO事業を主軸事業としておりますが、収益源の多様化のため、リスクを慎重に検討しつつ、新規事業を展開する方針です。新規事業の開発あるいは収益化が計画通りに進まない場合、減損損失の計上が必要になる等、投資を回収できなくなる可能性があります。また、新規事業の内容によっては、事業固有のリスクが加わる場合があります。これらの新規事業の内容あるいは進捗状況によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
主軸事業であるCLOMO事業においては、携帯電話販売会社や携帯電話販売代理店によるモバイル端末販売と合わせて、顧客企業であるエンドユーザーと契約を行うため、エンドユーザーと携帯電話販売会社や携帯電話販売代理店の関係悪化等の要因により、エンドユーザーが他社の販売するモバイル端末に切り替える場合に、当社グループによる関与が及ばない状態で、契約を解約される可能性があります。予算及び経営計画において、将来の解約を見込んでおりますが、想定を超える解約が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当該リスクの対応策として、顧客の問い合わせを迅速に解決する手厚いサポート体制を構築しております。さらに、顧客との関係性強化に向けた定期的な面談や、CLOMO MDMの活用について学べるステップアップセミナーを実施しており、これらのサポート活動及びカスタマーサクセス活動を通じて、モバイル端末を切り替えた場合においても、継続して製品を利用していただけるよう取り組んでおります。
CLOMO事業の属するMDM市場において、新規参入や他社との競合により、価格競争が激化し、想定した単価で契約ができない場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはApple Inc.やGoogle LLC、Microsoft Corporation等といった、いわゆるプラットフォーマーの提供するOSやインフラを利用して、CLOMOサービスを提供しております。これらのプラットフォーマーは自社でもMDMサービスを提供しておりますが、当社グループに対する料金体系や利用上の制約を変更した場合、あるいは当社グループに対するサービス提供を停止した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、業務に関連して多数の顧客企業の情報資産を取り扱っております。当社グループは、情報システム管理規程を策定し、役員及び従業員に対して情報セキュリティに関する教育研修を実施するなど、情報管理の徹底に努めております。また、統合脅威管理機能を持つシステムも利用し、さらに社外専門家からのチェックを受ける等の施策を実施することにより、情報セキュリティ体制の強化を行っております。
しかしながら、外部からのサイバー攻撃、従業員の過失による重要データの消去や従業員による不正取得の可能性のほか、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、第三者との間で将来の業績に影響を及ぼすような重大な訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。しかしながら、事業活動を展開する中で、知的財産権、環境、労務等、様々な訴訟の対象となるリスクがあり、将来の業績に大きな影響を及ぼすことが危惧される重大な訴訟が提起された場合や訴訟の結果によっては当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、事業活動の遂行に際し、内部統制の充実やコンプライアンスの強化に努めております。
また、当社グループでは、事業展開にあたり知的財産権に関する訴訟を未然に防ぐため、特許事務所を通した知的財産権の特許調査を実施しており、当社グループの技術等が他社の知的財産権に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループの業務に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識せず他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、知的財産権侵害として損害賠償請求等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、Apple Inc.やGoogle LLC、Microsoft Corporation等のクラウドサービスを利用してインターネット上でサービスを提供しております。したがって、自然災害や事故によるインターネット通信網の損傷や予期せぬアクセス急増に伴うサーバーダウンに起因して、当社グループのサービス提供に支障が生じる場合があります。そのような事態となった場合、エンドユーザーへの補償等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、分散バックアップデータを元に、早急に障害等から復旧する体制の強化を行ってまいります。
当社グループは、業務の適正性、財務諸表の信頼性確保のため、内部統制システムの適切な運用を行っております。また、内部監査室を設置し、コンプライアンスに関する規程を整備・充実するとともに、従業員への研修など啓蒙活動を継続的に実施し、法令遵守に取り組んでおります。しかしながら、故意あるいは想定し得ない重大なコンプライアンス違反や法令違反があった場合、当社グループの社会的信用が低下し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、従業員が157名(当連結会計年度末現在)と小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。今後の事業拡大に応じて従業員の育成、人員の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、急激な社員増加に対応しきれない場合や、退職が続出するような場合には、事業計画が想定通り進捗せず、長期的な競争力の低下あるいは機会損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの創業者であり、代表取締役執行役員社長 CEOである佐々木勉は、当社設立以来、経営方針や戦略の立案・実行、システム開発を推進し、当社グループを強いリーダーシップで牽引してきました。当社グループの保有する知的財産権のほとんどは同氏が手がけたものです。当社グループは各部門のリーダーに権限委譲し、安定的な経営体制を構築しておりますが、同氏に不測の事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 人材確保について
当社グループは、業容拡大に伴う適切な人材確保が必要であると考えており、主にソフトウェア開発等に高度な技術スキルを有する人材の確保を必要としております。しかしながら、人材の確保が順調に進まない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末現在におけるこれらの新株予約権による潜在株式数は93,740株であり、発行済株式総数5,303,750株の1.76%に相当しております。
(15) ベンチャーキャピタル等の株式所有割合について
当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)の当社株式の所有割合は、当連結会計年度末現在5.17%であります。当社株式の株価推移によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性が考えられ、その場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、一般の株主の方向けの決算説明会と機関投資家との継続的な面談など、健全な株価形成のためのIR活動と、中長期的な視点での株主作りを行ってまいります。
当社グループは受託開発ではなく、自社で開発した技術をライセンス提供するというビジネスモデルを展開しており、その根幹を支える研究開発に多くの予算を投入していく予定であります。研究開発は、調査やレポートをもとに、利用者のニーズや競合他社の動向等を予測の上、方針を決定しておりますが、予測が大きく外れた場合や、研究開発に係る方針を転換しなければならない場合には、投下した資金を回収できず、また事業の展開が遅延することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 投資事業について
当社グループは新たな収益源の創出のため、当社グループの事業領域と親和性の高い企業、社会課題解決型企業、当社グループが本社を置く九州の地場で活動している企業を対象に投資を実施しております。投資先の事業の状況によっては、保有有価証券の評価損が発生し、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、投資対象の株式等について取得原価を上回る価額で売却できる保証はなく、期待されたキャピタルゲインが実現しない可能性や投資資金を回収できない可能性があります。
(18) 海外子会社について
当社グループは、ベトナムに拠点を置くソフトウェア開発会社を海外子会社として有しており、現地で受託開発事業を営むほか、親会社の開発業務を一部委託しております。したがって、ベトナムの政治・経済・法規制等の変化、戦争・テロ等の社会的混乱や予期し得ない労働環境の急激な変化などが生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該子会社は当連結会計年度より連結子会社となりましたが、みなし取得日を2024年4月1日としているため、当連結会計年度は貸借対照表のみ連結しております。
(19) 為替の変動について
当社グループの主軸事業であるCLOMO事業は、クラウドを利用してSaaSの形態で企業向けにMDMサービスを提供しており、売上原価にはクラウドサービスの利用料が含まれております。これらの利用料は主に米ドル建てで支払っているため、急激に円安が進行した場合には売上原価が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはベトナムに拠点を置く海外子会社を有しており、当該子会社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の経済環境は、日経平均株価が史上最高値を記録するなど景気回復に向けた動きが見られた一方で、ウクライナ情勢及びイスラエル情勢の長期化、日米の金融政策の動向などに対する懸念が存在し、先行き不透明な状態が続きました。
このような市場環境の中、当社グループは、パーパスを「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」、提供価値を「デザインとエンジニアリングの力で、挑戦を支える」と定義した上で、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに掲げ、挑戦的な文化を醸成し、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指しております。
当社グループは、企業、教育、医療の現場で活用されるモバイル端末の一元管理・運用を行うSaaS(Software as a Service)を提供する「CLOMO事業」を主軸に展開しております。また、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)やM&Aを通じた投資活動により、グループの持続的成長とスタートアップ企業の新たな価値創造を支える「投資事業」を運営しております。
また、当社グループは、当連結会計年度において10KN COMPANY LIMITEDの全株式を取得し、子会社化しました。同社は、ベトナム(ハノイ市)に拠点を置く開発会社であり、豊富な経験と高い開発スキルを有する若きエンジニアを数多く揃え、日本企業向けのシステム、WEB、アプリケーション等の受託開発案件も手掛けております。同社を迎えいれることで、当社グループの中長期的な開発リソースを強化するとともに、さらなる事業拡大を目指してまいります。
当連結会計年度の経営成績については、主軸事業であるCLOMO事業において、OEM提供を通じた新規顧客の獲得が進んだ結果、売上高が前年同期比で増加しました。CLOMO事業の売上原価は、前連結会計年度において製品開発力の増強を目的に、新たに開拓した委託先企業と積極的に開発投資を進めたことで、ソフトウェア製品のリリースが増加した結果、減価償却費を中心に前年同期比で増加しました。投資事業の売上原価は、当社グループのCVCを通じた投資先の評価損が発生した結果、前年同期比で増加しました。販売費及び一般管理費は、当連結会計年度においては、企業の持続的成長を目的に新卒人材を中心とした採用計画を進めており、中途採用に係る人材紹介費用等が減少したものの、M&Aに係る諸費用等が発生したことにより前年同期比で増加しました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高2,949,083千円(前期比10.7%増)、営業利益692,162千円(前期比11.9%増)、経常利益668,440千円(前期比9.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益463,463千円(前年同期比5.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① CLOMO事業
CLOMO事業においては、2010年から提供を開始したモバイル端末管理サービス「CLOMO MDM」及びモバイル端末向けアプリサービス「CLOMO SECURED APPs」(以下、CLOMOサービスとする。)を事業の主軸に、クラウドを利用したBtoBのSaaS事業をサブスクリプションの形で提供しており、2023年12月に公表されたMDM市場(自社ブランド)シェアにおいて、2011年度から13年連続でシェアNo.1を達成しました(注1)。
当連結会計年度においては、株式会社NTTドコモが提供するMDMサービスであり当社がOEMを提供する「あんしんマネージャーNEXT(注2)」の拡大に伴い、新規顧客の獲得が進みました。この結果、1年間に増加した導入法人数は、前々連結会計年度が524社増、前連結会計年度が1,014社増であったのに対して、当連結会計年度は1,781社増となりました。導入法人数の増加ペースは、あんしんマネージャーNEXTへのOEM提供開始後2年間で3倍以上に加速しております。
さらに、2024年2月にCLOMOサービスが「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)(注3)」 に登録され、政府が求める高いセキュリティ水準をクリアしたサービスとして認められました。これにより、政府・行政機関はもちろん、その他の顧客にとってもCLOMOサービスの信頼性向上に繋がり、新規顧客の獲得に貢献するものと考えております。
また、ARPU(注4)向上を目指した戦略の一環として、オプションサービスの拡充を進めており、2023年9月よりTeamViewerジャパン株式会社との協業を開始し、同社が提供するリモートアクセスツール「TeamViewer Remote」の提供を開始しました。近年、モバイル端末の活用方法は多様化しており、例えば、店舗等に備え付けられている無人のモバイル端末の管理や、離れたオフィスで発生したITトラブルへの対応など、モバイル端末へのリモート接続が必要となる場面が増加しております。TeamViewer Remoteは高いセキュリティレベルを維持した上で、各種モバイル端末へリモート接続し、遠隔からモバイル端末の操作を可能とするサービスです。2024年6月にはCLOMO MDMとの連携機能をリリースしており、今後もさらなる利便性の向上を図る予定です。
さらに、2023年12月にはCheck Point Software Technologies Ltd.が開発するモバイルセキュリティソリューション「Harmony Mobile」の提供を開始しました。Harmony Mobileは、悪意のあるアプリやネットワーク・OS攻撃からモバイル端末を包括的に保護し、多角的な防御を可能にする、モバイル端末向けセキュリティソリューションです。CLOMO MDMと合わせて使うことで、高度な脅威に対応したモバイル端末管理が可能となり、企業における安心・安全なモバイル端末の活用をサポートします。このように、MDMの周辺サービスをオプションサービスにラインナップすることで、クロスセルによるARPUの向上を図ってまいりました。
製品開発においては、CLOMOサービスのPC資産管理市場でのシェア獲得に必要となるWindows端末向けの機能強化のほか、他社製品との連携、ChromeOSへの対応など、顧客のニーズに応えるための機能改善に引き続き注力しました。
これらの取り組みにより、導入法人数は6,710社(前連結会計年度末に比べ1,781社、36.1%増)に達しました。
この結果、売上高は2,949,083千円(前期比10.7%増)、営業利益は763,328千円(前期比20.3%増)となりました。
なお、サービス別の内訳は次のとおりであります。
② 投資事業
投資事業では、ベンチャーキャピタル子会社である株式会社アイキューブドベンチャーズを通じてアイキューブド1号投資事業有限責任組合を設立し、CVCとして投資活動を推進しております。当連結会計年度においては2社へ投資を行い、投資先社数は7社となりました。
主な投資対象はモバイル、SaaS、セキュリティ等、当社事業領域と親和性の高い企業、社会課題解決型企業及び当社グループが本社を置く九州の地場で活動している企業としております。また、当社グループの新たな市場領域への進出及び収益源の創出を図るべく、M&Aを通じた新事業開発にも積極的に取り組んでおります。
この結果、営業損失は71,165千円(前期は営業損失15,666千円)となりました。
(注)1.出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所「コラボレーション/コンテンツ・モバイル管理パッケージソフトの市場展望(https://mic-r.co.jp/mr/00755/)」2011~2013年度出荷金額、「MDM自社ブランド市場(ミックITリポート12月号: https://mic-r.co.jp/micit/2023/)」2014~2022年度出荷金額・2023年度出荷金額予測。
2.株式会社NTTドコモが提供しているモバイル端末管理サービスです。主に、社員・生徒に貸与したデバイスに対して紛失・盗難時に有効な「ロック/初期化」機能や、「カメラ制御」「利用可能アプリの制限」などのセキュリティ機能、「アプリ配信」などのデバイス管理業務効率化機能を備えております。
3.政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、円滑に導入できることを目的とした制度です。本制度は「政府情報システムにおけるクラウドサービスのセキュリティ評価制度の基本的枠組みについて」(2020年1月30日サイバーセキュリティ戦略本部決定)に基づき、内閣サイバーセキュリティセンター・デジタル庁・総務省・経済産業省が運営しております。
4.Average Revenue Per Userの略称であり、導入法人数当たりの平均月間単価。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態については次のとおりであります。
(資産)
総資産は3,609,238千円となり、前連結会計年度末に比べ209,827千円の増加となりました。これは主に投資有価証券が141,600千円、のれんが133,248千円、繰延税金資産が71,285千円、売掛金が71,136千円、ソフトウエアが36,034千円、その他流動資産が26,990千円、営業投資有価証券が24,802千円増加し、現金及び預金が243,385千円、ソフトウエア仮勘定が70,205千円減少したことによるものです。
(負債)
負債は1,029,673千円となり、前連結会計年度末に比べ203,769千円の増加となりました。これは主に未払法人税等が122,128千円、その他流動負債が81,523千円、契約負債が12,547千円増加し、買掛金が18,078千円減少したことによるものです。
(純資産)
純資産は2,579,565千円となり、前連結会計年度末に比べ6,058千円の増加となりました。これは主に自己株式の取得に伴う減少が298,400千円、剰余金の配当に伴う利益剰余金の減少が158,765千円発生し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加が463,463千円発生したことによるものです。この結果、自己資本比率は71.2%(前連結会計年度末は75.5%)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,811,066千円となり、前連結会計年度末に比べ244,910千円の減少となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は823,344千円(前年同期は得られた資金301,117千円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益668,440千円、減価償却費317,055千円、投資事業組合運用損22,240千円、売上債権の増加額60,413千円、仕入債務の減少額19,027千円、契約負債の増加額12,547千円、営業投資有価証券の増加額24,802千円、営業活動その他の増加額77,797千円、法人税等の支払額177,861千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は616,441千円(前年同期は使用した資金484,467千円)となりました。これは主に、有価証券の取得による支出700,000千円、有価証券の償還による収入700,000千円、有形固定資産の取得による支出18,845千円、無形固定資産の取得による支出275,881千円、投資有価証券の取得による支出164,000千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出156,820千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は452,254千円(前年同期は使用した資金98,082千円)となりました。これは主に、配当金の支払額158,654千円、自己株式の取得による支出298,400千円によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。
② 受注実績
当社グループで行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短く、受注状況には重要性がないため記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては、記載を省略しております。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績の状況」、「(2) 財政状態の状況」、「(3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。事業運営上必要な運転資金の需要のうち主なものは、当社グループサービスを安定的に運営し、また拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、研究開発に係る費用であります。
④ 目標とする経営指標の状況
a CLOMOの導入法人数
当連結会計年度末のCLOMOの導入法人数は6,710社(前連結会計年度末に比べ1,781社、36.1%増加)となりました。
営業拠点を通じた地方の販売パートナーとの連携強化や、OEM提供先サービスの成長によって、導入法人数の増加ペースが加速しており、純増導入法人数は前期比約1.8倍となりました。
b ライセンス継続率
当連結会計年度のライセンス継続率は94.8%となりました。(注)
カスタマーサクセス部門による、ユーザーミーティングの開催や、定期面談、製品活用のためのステップアップセミナーの実施など、エンドユーザーの成功体験を目的とした様々な取り組みの成果が、製品に対する心理的ロイヤルティ向上を後押ししたことで、ライセンス継続率は引き続き高い水準を維持しております。一方で、特定の大口顧客が契約期間満了を迎え、計画的な解約に至ったことで、当連結会計年度末においては一時的にライセンス継続率が低下しております。
(注)継続率は、当連結会計年度に発生した各月の解約数を前年同月末のライセンス数から控除したライセンス数について、前年同月末ライセンス数で除して算出しております。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動として、新たなサービスを開発するための開発調査や、CLOMO事業の顧客基盤の拡大を目的とした、追加機能開発を行うための開発調査を行いました。
当社グループの研究開発における社内体制としては、製品開発運用本部や情報システム戦略部に所属する、クラウドやEMM領域、生産性向上のためのシステム開発等に高い専門性を有するメンバーが活動しております。
これらの研究開発活動により、当連結会計年度における研究開発費は