第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「クレステックは企業として、社会に通用する企業を目指す。(情報の創造と提供により安心して暮らせる社会に貢献する)」、「クレステックの社員は、社会人として通用する人間を目指す。(グローバル社会から尊敬される人間を目指す)」を経営理念に掲げ、「情報創造企業」として、世界の人とヒト、人とモノを繋ぐコミュニケーションを創造することで、伝えたい情報にカタチを与え、世界中の人々の心に感動と喜びを創出し、楽しく安心して暮らせる社会の構築を目指します。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、テクニカルドキュメンテーションを事業の中核として、マニュアル制作・ローカリゼーション、印刷・パッケージ製造など幅広い事業を展開し、成長を実現してまいりました。そして現在、この中核事業をベースに、マーケット・リサーチをはじめとした川上の事業領域からアフターマーケットのユーザーサポートである川下の事業領域まで、ドキュメントソリューションサービスとして事業領域をグローバルに展開しております。しかしながら、次なる10年に向けた持続的な成長を目指すには、更なる変革が急務となっております。そこで、41期からスタートしました新経営体制のもと、次なる10年に向けた新領域への挑戦に取り組むことで、更なる事業の拡大を長期的に図ってまいります。今回の新中期経営計画「CR Challenge 27」では、引き続き、前中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の企業基盤の確立と安定化を図りつつも、“Challenge”をテーマに、当社の強みであるグローバルネットワークを最大限に活用し、サービス力、グループの連携力で、グローバル/外資系企業との取引拡大や既存企業との取引拡充などを図りながら、ドキュメント業界で世界に誇れる日本企業を目指してまいります。

 前中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の企業基盤の確立と安定化を継続的に図りつつも、新経営体制のもと、“新たな挑戦”として、以下の経営重点戦略に取り組んでまいります。

 ① 事業強化戦略

  1)グローバル/外資系企業との取引拡大

  2)既存企業との取引拡充

  3)新規企業との連携やM&Aの推進

 ② 体制強化戦略

  1)事業強化に沿った人事戦略

  2)既存事業領域の再構築

  3)認知度向上への取り組み

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 2027年6月期を最終年度とする中期経営計画「CR Challenge 27」においては、「グローバル化に向けた新たな挑戦」を基本方針とし、2027年6月期において、連結売上高200.0億円、連結営業利益14.0億円、連結営業利益率7.0%の経営数値目標の達成を設定しております。

 

(4)経営環境

 当社グループを取り巻くビジネス環境は、リーマンショックから大きく変化してきました。まず、世界景気の減退から始まり、スマートフォンの登場によるデジタル化(製品)への商品集約、更にペーパーレス化も加速し、常に当社グループの取引に大きな影響を及ぼしてきました。また、近年では、新型コロナウイルス感染症により世界経済に大きな影響を及ぼしましたが、その感染症も収束し、経済活動は回復傾向にあります。その一方で、世界的なインフレによる購買力の低迷が続いており、企業の生産活動は不安定な状況となっています。加えて、ロシアによるウクライナ侵略やパレスチナ・イスラエル戦争などの紛争継続や米中の対立により世界経済の回復は不透明な状態であり、引き続き先行きの見えない状況が続いております。

 このような厳しい環境の中、当社グループでは、中期経営計画「CR Vision 20⁺(Plus)」の最終期として過去2期において成し得なかった”事業強化”と”体制強化”の施策を中心に、次の中期に向けての更なる地盤固め(企業基盤の強化)の推進に取り組んでまいりました。事業強化では、プロモーション関連などの販促事業や会話型AIを活用した「C’s-navi」によるアフターマーケット支援など、新領域へのサービス強化を推進しております。また、既存事業の深化として新しいメディアを活用したマニュアル制作の開発や環境に配慮した梱包材の開発設計にも取り組んでおります。一方、体制強化では、フィリピンの経営改革による収益改善や中国蘇州の新工場移転による生産体制の盤石化に注力するとともに、更なる企業価値向上の施策として、SDGs推進プロジェクト“みらい for earth”を立上げ、身近な農業体験から循環型社会の構築を目指す取り組みにも挑戦してまいりました。

 今後は、新経営体制(代表取締役の異動及び執行役員制度の変更)のもと、新たな事業への「挑戦」をテーマに世界で認められる唯一無二の企業を目指し、引き続き以下に掲げる対処すべき課題に全力で取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① グローバルネットワークを活用した取引拡大とサポート体制の強化

 当社グループは、日系メーカーを中心にマニュアルの原稿作成やデータ作成を日本国内で行い、印刷・製造工程を顧客の海外拠点の近くで行うことで、マニュアルの制作から印刷・製造までの全ての工程を当社グループのネットワークにて一気通貫で対応できるサポート体制を構築し、日系メーカーとの信用を獲得してきました。

 近年では、多様化したユーザーのニーズに迅速な対応が求められている顧客をサポートすべく、サプライチェーンとして、市場調査や販促プロモーションなどの「川上」業務から製品販売後のユーザーサポートなどの「川下」業務まで「ONE STOP GLOBAL SOLUTION」をスローガンに、グローバルで全領域の業務をサポートできる体制の強化を進めてまいりました。今後は、このグローバルネットワークを更に活用し、日系メーカーだけでなく、外資系メーカー(グローバル企業)との取引拡大や医薬品・ヘルスケア製品・生活用品等のメーカー等、幅広い事業分野の取引拡大にも積極的に挑戦していくことで、持続的成長が可能な事業のポートフォリオを確立してまいります。

 

② 専門的な技術の確立と人材の育成

 当社グループの強みは、マニュアルの原稿作成から翻訳・データ作成、更に多品種小ロットの印刷・製造に対応できるグローバルサポート体制であるため、それを支える技術の確立と人材の継続的な育成は経営の最重要課題のひとつと考えております。

 現在、自動車から家電など各製品分野に対応できるテクニカルライターや世界各国語に展開できる翻訳ディレクターなど専門的な技術の確立のために、製品やサービスの仕様説明を扱う専門の団体(一般財団法人)テクニカルコミュニケーター協会(JTCA)、産業翻訳の業界団体(一般社団法人)日本翻訳連盟、多言語翻訳の標準的な規格を策定するGALA標準規格イニシアチブ(※)に加盟し、各業界に対応できる人材の育成に努めています。更に、コミュニケーション能力向上のための英語教育、海外各拠点との交流による現地各市場の把握、次世代に通じるマニュアルの開発に向けた大学との共同研究、JTCA主催のジャパンマニュアルアワード、日本包装協会主催の日本パッケージングコンテストへの応募など様々な取り組みを実施することで、グローバル社会で活躍できる人材や次世代を担う人材を育成し、「ONE STOP GLOBAL SOLUTION」で対応できるサポート体制をより一層強化してまいります。

 

※ GALA(Globalization and Localization Association)標準規格イニシアチブ:多言語翻訳の標準規格を策定し、普及を促進するための公的な試み

 

③ 国内での新規ビジネス展開

 近年、日本を始め世界的な動きとして製品のデジタル化やデータの集約が加速し、今までの業務形態であるマニュアル制作の市場規模は縮小傾向にあります。今後もこのような傾向が継続するものと予想されるため、チャットボットやインタラクティブ動画など新しいメディアとの複合的活用や各種情報の融合を図った次世代に通じるマニュアルの作成、更に海外進出支援サービスである国際規格対応サポート、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用したソリューション提供、新たな体験と感動を創出するxR(※)技術、デジタルサイネージ用プレイヤーなどを駆使した新空間提供など、既存事業で培ったノウハウや人的資産を活用し、「川上」業務であるコンサルティングや販促プロモーション、業務支援マニュアルなどへの事業領域の拡大を図りつつ、トータルサービス体制の実現に向け、他社との業務提携やM&Aを積極的に推進してまいります。

 

※ xR(Extended Reality):拡張現実(AR)、複合現実(MR)、仮想現実(VR)などの画像技術の総称で、現実世界と仮想世界を融合させ、これまでにない新たな現実を創出させる技術のこと

 

④ 株主との対話・株主還元

 当社グループでは、株主の皆様との対話を通じた企業価値向上を目指すため、株主の皆様に有益な企業情報の発信やIR活動を積極的に推進していく方針です。しかしながら、近年の新型コロナウイルス感染症により、対話形式による情報発信が十分ではない状況が続きましたが、現在では、SNSを活用した企業情報の配信やオンラインによる企業説明会を通して株主の皆様との対話の機会を増やすよう努めております。

 今後もこうした方針を前提に、株主還元の内容や趣旨説明についても経営の最重要課題のひとつとして認識しており、将来の事業展開と経営基盤の強化のために必要な内部留保は残しつつ、充実した株主還元を行うことが重要であると考えております。詳しくは「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

⑤ サステナブルな社会の構築

 当社グループは、「GLOBAL COMMUNICATIONS」“世界を繋ぐ人に優しいコミュニケーションの創造へ”をテーマに、「情報創造企業」として、世界の人とヒト、人とモノを繋ぐコミュニケーションを創造することで、伝えたい情報にカタチを与え、世界の人々の心に感動と喜びを創出し、楽しく安心して暮らせる社会の構築を目指し、グローバルに事業を展開しています。そして、この事業活動を通して、年齢・性別・人種・宗教・言語・経済的地位などに関係なく、世界のすべての人に平等に必要な情報を提供できる環境づくり、つまり、言葉の障壁を越えて、世界の人々が不自由なく相互にコミュニケーションができる社会の構築を目指し、新たなツール開発やサービス、ソリューションの提供に努め、誰にでも分かりやすい情報を創造することで、サステナブルな社会づくりに貢献できるよう、取り組んでいます。その一例としては、SDGs推進プロジェクト“みらい for earth”を立上げ、身近な農業体験から循環型社会の構築を目指す取り組みに挑戦しております。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社では、「サステナブルな社会を目指して!」をスローガンに、全ての事業活動を通じ、グローバルな視点で人の健康の維持と、地球環境の保全に積極的に寄与し、持続可能な社会の実現に向け最善を尽くすよう取り組んでおります。その一例としては、代表取締役社長執行役員がリーダーを務めるSDGs推進プロジェクト“みらい for earth”を立ち上げ、身近な農業体験から循環型社会の構築を目指す取り組みに挑戦しております。

当社のサステナビリティに関するガバナンスへの対応としては、代表取締役社長執行役員を委員長とした「リスクマネジメント委員会」においても、各分科委員長(情報セキュリティ分科委員長、コンプライアンス分科委員長、BCM分科委員長、環境分科委員長)から行動指針及び各分科委員会の基本指針に基づく活動報告を受けるとともに、様々なサステナビリティに関する課題についてもモニタリングを実施しております。なお、リスクマネジメント委員会の議事録については、社外取締役を含めた全取締役に配信し、情報の共有を図るとともに、持続的な成長と企業価値の向上に資するよう、実効性も含めて取締役会にて審議しております。

また、人的資本・知的財産への投資等をはじめとする経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略の実行にあたっても、経営戦略や経営計画等を策定し、持続的な成長と企業価値の向上に資するよう、実効性を含めて取締役会にて審議をしております。

なお、当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(2)戦略

当社のサステナビリティに関する課題への対応については、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しており、とりわけ環境への配慮については、「環境行動指針」を定め、『エコアクション21』に関する環境負荷の低減等に取り組んでおります。また、環境分科委員会を設置し、「環境行動指針」に沿った年度計画を策定するとともに、CSRに関する活動やSDGs活動の推進にも積極的に取り組んでおります。

 人材の育成については、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保に取り組むため、特に、性別、年齢、国籍等による制限は設けておらず、中途採用者や女性が活躍できる社内環境の整備に取り組んでおります。また、中長期的な企業価値向上を目指した人材育成方針や社内環境整備方針については、前中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の「経営重点戦略」のひとつである体制強化戦略の一環として、横断的なプロジェクトチーム「REBORN20+(プラス)」を組織し、教育体制の強化と社内環境の改善に取り組んでおります。

 

(3)リスク管理

当社のサステナビリティに関するリスク管理については、「リスクマネジメント方針」を定めるとともに、代表取締役社長を委員長とした「リスクマネジメント委員会」において、各分科委員長(情報セキュリティ分科委員長、コンプライアンス分科委員長、BCM分科委員長、環境分科委員長)から行動指針及び各分科委員会の基本指針に基づく活動報告を受けるとともに、様々なサステナビリティに関する課題への対応についてモニタリングを実施しております。

 なお、当社が認識する事業等のリスクに関する詳細は、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

   当社は、事業の特性上、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示は行っていませんが、上記「(2)戦略)」において記載した環境への配慮から気候変動問題に関する様々な課題解決に向け、再生可能エネルギーの活用やFSC認証の原材料の積極的な提案など、温室効果ガス排出量の削減に向け、引き続き取り組んでまいります。

  また、女性活躍推進法にもとづく社内環境整備については、具体的な目標は設定しておりませんが、上記「(2)戦略)」において記載した積極的な女性・外国人・中途採用者の管理職への登用やワークライフバランスを意識した在宅勤務や時差出勤の導入など、「第1 企業の概況 5従業員の状況(4)管理職に占める女性労働者の割合、男女労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」の比率向上や改善に向け、引き続き取り組んでまいります。なお、当社においては、関連する指標のデータ管理が行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、これらの指標は、提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 本報告書に記載した事業の概況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 また、当社グループとして、必ずしも事業遂行上のリスクとは考えていない事項につきましても、投資家の投資判断上重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から開示をしております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)景気変動によるリスク

 BtoB(企業間の商取引)をメインビジネスとした当社グループの業績は、景気の影響を受けやすい傾向にあります。このような景気悪化に伴い、顧客が生産活動や事業の縮小・製造拠点の撤廃・統廃合などの事業再編、製品開発の縮小や先送り・遅れなどで、当社グループが提供するサービスの利用が縮小された場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、景気の影響を受けにくい医薬・生活用品など新しい事業分野の拡大や、新領域の事業を含めたサービス内容の多様化、日系メーカーのみならず外資系メーカーも含めた取引顧客の多様化、サービス提供地域の事業拡大等を図り、リスクを最小限に抑えられるよう事業構造の形成に努めております。

 

(2)主要顧客である日系メーカーのグローバルな製造拠点の移転リスク

 当社グループの売上高は、国内のみならず海外においても日系メーカーの比率が高く、当社グループの海外現地法人の主要顧客となっております。今後、主要顧客である日系メーカーがグローバルな生産活動の再編や各国の法改正・政策変更に伴い、製造拠点を移転した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、リスク軽減に向け、取引顧客との連携を更に強化しサプライチェーンの要として取引の継続に務めるとともに、サポート拠点の拡大や日系メーカーへの依存度低減に向け外資系メーカーとの取引拡大にも努めております。

 

(3)ペーパーレス化の影響

 近年、コンシューマー向けデジタル製品を中心に取扱説明書(マニュアル)のペーパーレス化が進み、また、デジタル製品そのものの市場が縮小したことを受け、同製品向けの販売が大きく減少しておりました。現在は複合機やプリンターなどオフィス向け製品の情報機器メーカーとの取引も多いことから、今後、オフィスでのDX化に伴いペーパーレス化が更に進み、複合機及びプリンターそのものの市場が縮小した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、グローバルネットワークの活用などにより、新たな業種としてペーパーレス化の影響を相対的に受けにくい医薬・生活用品メーカーに特化した販売活動に注力するとともに、梱包設計のノウハウを活かしたパッケージ製品(化粧箱、梱包材、緩衝材等)の取引拡大にも努めております。

 

(4)仕入価格変動リスク

 当社グループは、海外では主に紙製品(取扱説明書、パッケージ製品、ラベル等)を取り扱っており、その原材料である紙の価格変動により、仕入価格が影響を受けております。今後、この仕入価格が上昇し、直ちに製品への価格転嫁ができなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、新たな購買先の開拓により購入ルートの選択肢を広げるとともに、市場動向に合わせた迅速な購入により充分な原材料在庫を確保することでリスク低減に努めております。

 

(5)為替変動リスク

 当社グループの当連結会計年度の全売上高のうち、海外での売上高が約72%を占めているため、為替レートの変動による為替換算後の金額に影響を受けております。更に外貨取引も多いため、外貨取引により生じた資産・負債についても為替の変動リスクに晒されております。今後、円高もしくは円安に進行した場合、これらは当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、外貨建て債権債務においては、外貨建ての銀行借入等の残高の調整を行うことにより、ネットしたポジションをほぼ均衡させることでリスク低減に努めております。

 

(6)有利子負債残高に関するリスク

 当社グループの当連結会計年度末の有利子負債残高(社債、借入金、リース債務の合計額)は6,913百万円と総資産の約35%を占めております。当社グループは、原則、変動金利で借入を行っているため、今後、市場金利の上昇に伴い金融費用が増加した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、一部について固定金利で借入を行うことにより、金利変動リスクの低減を図っております。

 

(7)カントリーリスク

 当社グループの当連結会計年度の全売上高のうち、中国及び東南アジア/南アジアでの売上高が約60%を占めております。今後、これらの国で法改正・政策変更や人件費高騰、外交問題などの要因により、顧客の撤退や生産縮小などが生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、各国の政治・経済情勢の把握や取引顧客との連携強化を図る一方で、その影響を分散すべく多くの国に進出し、リスク軽減に向けた事業構造の構築に努めております。

 

(8)製品の品質にかかるリスク

 当社グループは、デジタル製品や家電、輸送機器などの取扱説明書の制作・編集・印刷や、パッケージ製品などを供給しております。これら制作・製造工程において、企画・編集・制作時のミスや印刷時のミスプリント、乱丁などによる不具合の製品が市場に流出した場合、顧客に損害を与える可能性もあります。これら当社の瑕疵により発生した損害金額の規模や頻度、事後対応、更には当社グループの信用が失墜した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、従業員への教育研修によりスキル向上を継続的に図るとともに、グループ全体を統括する社長直轄の品質保証室のもと、各拠点にも品質担当者を配置することで、継続的に品質の向上・改善を進め、顧客のニーズに適時適切な対応を図る体制を構築しております。

 

(9)主要顧客の生産動向によるリスク

 当社グループの当連結会計年度の売上高のうち、最大顧客の売上高でも約16%であるため、特定の顧客による影響はある程度、分散されております。しかしながら、主要顧客の生産動向の変化により特定の地域セグメントの損益が悪化した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、常に新規顧客の開拓や既存顧客の拡充を推進し、バランスの取れた取引により特定の顧客への依存度低減に努めております。

 

(10)競合によるリスク

 国内では、主に電機メーカーなどの事業再編により、マニュアル制作業界は縮小傾向にあると言われておりますが、今後、国内メーカーの事業再編が更に進み、既存の同業メーカー間で更に競争が激しくなった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 海外でも同様に、日系メーカーの事業再編が進む一方で、同業のローカルメーカーも台頭し、以前に比べ競争は激しくなっております。今後、この優位性を維持・継続できなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、国内事業においては特殊分野の制作能力(テクニカルライティング・翻訳等)を更に追求し、他社では対応できない独自性を高めております。海外事業においては他社に負けないQCDを更に追求するとともに、提案型のサービス展開にて顧客との強固な関係構築を進めており、グループ全体としては、グローバルでサプライチェーンの川上から川下まで一気通貫でサービス提供できる“One Stop Global Solution”の体制を強化し、競合に対しての優位性を図っております。

 

(11)情報漏洩によるリスク

 当社グループは、顧客の未公表の新製品及びリニューアル品に関する開発情報に接しております。また、限定的ではあるものの、業務上で顧客に関する個人情報にも接しております。今後、情報漏洩による顧客からの損害賠償請求や信用の低下、取引停止などが生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、情報セキュリティをリスクマネジメントの最重要項目のひとつとして捉え、情報セキュリティ分科委員会を設置するとともに、情報セキュリティに関する諸規程の整備や役員・従業員への啓蒙活動、管理体制の体系化及びシステム・運用の強化、更には外部によるネットワーク脆弱性診断にも取り組んでおります。

 

(12)優秀な人材の確保

 当社グループが持続的な成長を実現していくには、優秀な人材を確保・育成していくことが最重要項目のひとつとして捉えております。しかしながら、当社グループが求める人材を計画通り確保・育成できなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、様々な採用手法を活用し優秀な人材を確保するよう努めるとともに、当社グループが求める人材として活躍できる組織体制及び職場環境の整備やエンゲージメント向上を目指した教育体制の強化に取り組んでおります。

 

 

(13)大規模災害や感染症発生等のリスク

 当社グループは、国内外に多くの拠点があるため、局地的な水害や地震などの自然災害や火災、暴動、テロなどの人災等の大規模災害や新型コロナウイルス感染症等の世界的蔓延(パンデミック)が発生した場合、事業拠点の損壊や従業員の被災や罹患により生産活動の停止又は、遅延などの可能性があります。また、顧客における操業停止や販売活動の停滞などにより当社グループの事業活動や業績に影響を与える可能性もあります。

 当社グループでは、グループ全体の事業継続をリスクマネジメントの最重要項目のひとつとして捉え、BCM分科委員会を設置し、緊急時の事業継続のためのバックアップ体制を構築しております。なお、近年の新型コロナウイルス感染症やその他パンデミックへの対応としては、テレワーク勤務や時差出勤を導入するとともに、オフィス・工場内の感染予防対策なども徹底し、リスクの最小化に取り組んでおります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、継続的な円安にともなう物価高や人手不足などによる企業経営の悪化が懸念される中、その一方で円安にともなうインバウンドの増加による経済効果などもあり、概ね回復傾向にありました。しかしながら、引き続き中国経済の停滞や世界的な景気の不透明感、加えて多くの製造企業での在庫調整などもあり、先行きの見えない状況が続きました。

 一方、世界経済においても、各国におけるインフレ抑制政策の効果は現れてきたものの、全体的には不透明な状況でした。米国では、インフレ状態ではあるものの経済状況は引き続き好調でした。欧州では、継続的な高インフレ状態により景気回復は不透明な状況でした。中国では、米国との経済対立や不動産市況の悪化による影響で景気停滞の状態が続き不透明な状況となっています。東南アジア/南アジアでは、生産活動は概ね回復傾向にありましたが、一部の顧客では、在庫過多による生産調整が続きました。

 こうした経済状況のもと、当社グループの主要顧客である日系メーカーでは、各国の経済活動への規制緩和により景気回復は進んだものの、未だ在庫調整の顧客も多く、生産活動の低調や新製品の投入遅延、開発案件の停滞などによる影響が、当社グループへの取引においても及びました。

 このような中、当社グループでは、中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の最終期として過去2期において成し得なかった”事業強化”と”体制強化”の施策を中心に、次の中期に向けての更なる地盤固め(企業基盤の強化)の推進に取り組んでまいりました。事業強化では、プロモーション関連などの販促事業や会話型AIを活用した「C's-navi」によるアフターマーケット支援など、新領域へのサービス強化を推進いたしました。また、既存事業の深化として新しいメディアを活用したマニュアル制作の開発や環境に配慮した梱包材の開発設計にも取り組みました。一方、体制強化では、フィリピンの経営改革による収益改善や中国蘇州の新工場移転による生産体制の盤石化に注力するとともに、更なる企業価値向上の施策として、SDGs推進プロジェクト“みらい for earth”を立上げ、身近な農業体験から循環型社会の構築を目指す取り組みにも挑戦してまいりました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度より1,313,443千円増加し、19,768,571千円(前連結会計年度比7.1%増)となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度より175,795千円減少し、10,540,412千円(前連結会計年度比1.6%減)となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度より1,489,239千円増加し、9,228,159千円(前連結会計年度比19.2%増)となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高は19,066,764千円(前連結会計年度比10.4%減)、営業利益は1,180,952千円(前連結会計年度比26.9%減)、経常利益は1,290,699千円(前連結会計年度比20.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は910,732千円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。

 

 セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。

 日本は、外部顧客への売上高は5,289,524千円(前連結会計年度比6.4%減)、セグメント利益は133,509千円(前連結会計年度比54.8%減)となりました。

 中国地域は、外部顧客への売上高は4,440,329千円(前連結会計年度比7.0%減)、セグメント利益は278,535千円(前連結会計年度比8.7%減)となりました。

 東南アジア/南アジア地域は、外部顧客への売上高は7,044,514千円(前連結会計年度比20.7%減)、セグメント利益は579,520千円(前連結会計年度比27.3%減)となりました。

 欧米地域は、外部顧客への売上高は2,292,396千円(前連結会計年度比16.9%増)、セグメント利益は187,954千円(前連結会計年度比12.8%減)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ785,445千円増加し、当連結会計年度末には5,571,574千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、2,485,838千円の収入(前連結会計年度は1,720,531千円の収入)となりました。これは主として、法人税等の支払額388,083千円があったものの、税金等調整前当期純利益1,286,296千円、減価償却費847,942千円、売上債権の減少505,856千円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、693,447千円の支出(前連結会計年度は1,555,326千円の支出)となりました。これは主として、定期預金の払戻による収入327,709千円があったものの、有形固定資産の取得による支出836,806千円、定期預金の預入による支出177,405千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1,376,520千円の支出(前連結会計年度は236,394千円の支出)となりました。これは主として、社債の発行による収入394,874千円があったものの、長期借入金の返済による支出975,679千円、短期借入金の純減額511,487千円、リース債務の返済による支出308,334千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

生産高(千円)

前連結会計年度比

(%)

生産高(千円)

前連結会計年度比

(%)

日本

5,400,891

98.7

4,943,231

91.5

中国地域

4,185,753

94.1

3,603,428

86.1

東南アジア/南アジア地域

7,849,911

121.4

6,023,636

76.7

欧米地域

2,152,744

123.4

2,451,964

113.9

合計

19,589,301

108.1

17,022,261

86.9

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

 当社グループの主要な事業であるドキュメント事業では、提供するサービスの性格上、受注から売上までの期間が短いことから、受注実績の記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

販売高(千円)

前連結会計年度比

(%)

販売高(千円)

前連結会計年度比

(%)

日本

5,649,486

101.7

5,289,524

93.6

中国地域

4,774,390

111.4

4,440,329

93.0

東南アジア/南アジア地域

8,886,020

123.0

7,044,514

79.3

欧米地域

1,960,176

127.2

2,292,396

116.9

合計

21,270,074

114.3

19,066,764

89.6

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年7月1日

至  2023年6月30日)

当連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エプソングループ

4,204,186

19.8

2,966,136

15.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、この作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 また、当社の連結財務諸表作成において、損益及び資産の状況に影響を与える見積り及び判断については、過去の実績や当該取引の状況に照らして合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 見積り及び判断に影響を及ぼす重要な会計方針としては次のものがあると考えております。

 

a.退職給付債務及び退職給付費用

 退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定されており、これらの前提条件には、割引率や年金資産の期待運用収益率等が含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。

b.貸倒引当金

 債権の貸倒れによる損失に備えるため回収不能見込額を見積り、引当金を計上しておりますが、将来、債務者の財政状態が著しく悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。

c.繰延税金資産

 連結財務諸表と税務上の一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、税務計画を考慮し見積っておりますが、予測不可能な前提条件の変更等により見直しが必要となった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

d.棚卸資産

 当社グループは、棚卸資産の評価を行うに当たっては、製品及び商品については正味売却価額、原材料については再調達原価に基づき、収益性の低下を検討しております。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産についても簿価を切り下げており、状況に変化が生じた場合には、棚卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。

 

 

e.固定資産の減損処理

 当社グループは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象(減損の兆候)が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。そのため、将来の市況悪化等が見込まれることとなった場合、減損損失の計上が発生するなど当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

f.のれん及び顧客関連資産の評価

 当社グループは、のれん及び顧客関連資産に関して効果の発現する期間を見積り、その期間で定額法により償却しておりますが、その資産性の評価について検討した結果、当初想定したキャッシュ・フローが見込めなくなった場合に、評価の切り下げを行う可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1) 財政状態

(資産合計)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度より1,313,443千円増加し、19,768,571千円(前連結会計年度比7.1%増)となりました。これは主として、売掛金が163,191千円、商品及び製品が142,743千円減少しましたが、有形固定資産が1,073,492千円、現金及び預金が641,334千円増加したことによるものであります。

(負債合計)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度より175,795千円減少し、10,540,412千円(前連結会計年度比1.6%減)となりました。これは主として、未払金が291,933千円、社債が280,000千円、リース債務が193,853千円増加しましたが、長期借入金が518,305千円、短期借入金が450,941千円減少したことによるものであります。

(純資産合計)

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度より1,489,239千円増加し、9,228,159千円(前連結会計年度比19.2%増)となりました。これは主として、利益剰余金が614,838千円、為替換算調整勘定が685,191千円、非支配株主持分が171,403千円増加したことによるものであります。

 

2) 経営成績

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は19,066,764千円(前連結会計年度比10.4%減)となりました。

 国内では、取引先における在庫調整による生産活動の低調や新製品の投入遅延などによる影響もあり売上高が減少いたしました。海外では、国内同様に取引先における生産活動の低調やフィリピンの事業再編の影響もあり売上高が減少しております。

(売上総利益)

 売上総利益は5,506,144千円(前連結会計年度比11.0%減)となりました。これは、売上高の減少によるものです。尚、前連結会計年度と比較し原価率に大きな変動はありません。

(営業利益)

 営業利益は1,180,952千円(前連結会計年度比26.9%減)となりました。これは、貸倒引当金繰入額の減少がありましたが、売上総利益の減少によるものです。

(経常利益)

 経常利益は1,290,699千円(前連結会計年度比20.2%減)となりました。これは、為替差益の増加がありましたが営業利益の減少によるものです。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は910,732千円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。1株当たり当期純利益金額は、当連結会計年度は295.48円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。

 

3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社の事業では、国内ではそのほとんどが役務提供型の業務であるため、多額の設備投資が必要となる事業ではありません。一方、海外では工場型拠点と商社型拠点があり、商社型拠点では多額の設備投資は発生しませんが、工場型拠点では新規投資や現状設備維持の投資が必要になります。

 運転資金につきましては、当社グループの製品は受注から納品・検収・回収までのサイトが比較的短く、多額に先行で費用が発生することはありません。現在は、事業資金の効率的かつ安定的な調達を図るため、取引金融機関数行との間で複数のコミットメントライン契約を締結しております。また、既存設備維持の投資に関しては営業活動によるキャッシュ・フローより行うこととしておりますが、新たな追加の投資が必要な場合には、リース契約、社債及び長期借入金でまかなっております。

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、第40期(2024年6月期)を最終年度とする中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の実現に向けて、本計画の基本方針に基づく各施策を進めてまいりました。最終年度となる第40期の数値目標に対する第40期の実績につきましては、各国の経済活動への規制緩和により景気回復は進んだものの、当社グループの主要顧客である日系メーカーの取引では、未だ在庫調整の顧客も多く、生産活動の低調や新製品の投入遅延、開発案件の停滞などによる影響も起因し、売上高は数値目標の185億円に対して190億円(達成率103.1%)、営業利益は数値目標の12億円に対して11億円(達成率98.4%)、営業利益率は数値目標の6.5%に対して6.2%(達成率95.5%)となりました。

 「CR Vision 20+(Plus)」は前述のとおり2024年6月期が最終年度であるため、2025年6月期を初年度とする新たな中期経営計画「CR Challenge 27」を策定しております。

 詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 

中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の最終年度である2024年6月期の数値目標及び2024年6月期の実績

指標

第40期目標

(2024年6月期)

第40期実績

(2024年6月期)

達成率

売上高

185億円

190億円

103.1%

営業利益

12億円

11億円

98.4%

営業利益率

6.5%

6.2%

95.5%

 

 

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(日本)

 取引先における新製品の投入遅延や開発案件の停滞などによる影響で、全体的に大きく取引は減少しました。また、巣ごもり需要で好調だった一部の顧客の取引や自治体向けコンサルティング業務においても、生産調整や法改正の減少により低調でした。その一方で一部の情報機器関連の顧客における新規案件やプロモーション関連の業務は回復傾向となりました。

 このような状況のもとで、日本では、外部顧客への売上高は5,289,524千円(前年同期比6.4%減)、セグメント利益は133,509千円(前年同期比54.8%減)となりました。

 

(中国地域)

 華東地区では、欧米メーカーを含めた医薬品関連の取引は引き続き堅調に推移しましたが、その一方で日系メーカーの取引は低調でした。また、中国の景気悪化から中国国内市場向けプロモーション関連の取引は大きく減少しました。華南地区では、一部の顧客の生産活動に回復は見られるものの、中国から他国への断続的な生産移管もあり全体的に取引は減少となりましたが、完全商社化により収益は改善しました。

 このような状況のもとで、中国では、外部顧客への売上高は4,440,329千円(前年同期比7.0%減)、セグメント利益は278,535千円(前年同期比8.7%減)となりました。

 

(東南アジア/南アジア地域)

 フィリピンでは、体制変更や不採算商品の撤退などによる事業の見直しを推し進めている影響で、取引は減少したものの、税引後の収益性は改善しました。インドネシアでは、引き続き医薬品関連の新規取引や生活用品・ヘルスケア用品などの新事業分野の顧客との取引は順調に推移しております。その一方で一部の顧客では、引き続き在庫過多による生産調整などの影響で、取引は軟調でした。タイでも、顧客全般に在庫過多による生産調整が続いており、取引は低調でした。ベトナムでは医療機器関連を中心に生産活動は徐々に回復傾向ではありますが、全般的に取引は引き続き横ばいでした。インドでは生産活動は回復傾向となり、取引も微増となりました。

 このような状況のもとで、東南アジア/南アジアでは、外部顧客への売上高は7,044,514千円(前年同期比

20.7%減)、セグメント利益は579,520千円(前年同期比27.3%減)となりました。

 

(欧米地域)

 米国では、一部の顧客で取引は減少しているものの、主要顧客である輸送機器メーカーの取引が順調に推移していることに加え、大統領予備選による新規取引もあり、全体的には堅調でした。欧州では、玩具系電器メーカーとの取引が安定的に継続していることに加え、主要顧客である輸送機器メーカーの新規モデルの投入案件もあり取引は拡大し、増収増益となりました。

 このような状況のもとで、欧米では、外部顧客への売上高は2,292,396千円(前年同期比16.9%増)、セグメント利益は187,954千円(前年同期比12.8%減)となりました。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、多様化する顧客ニーズを的確に把握し、そのニーズに沿った新しい商品(マニュアル)及びサービスやシステム、印刷技術の提供を目的に研究開発活動を行っております。

 マニュアル作成では、商品の仕様や端末の普及により様々に変化する取扱情報の提供方法に対応するため、社長直下の各部門を超えた横断的プロジェクトチームを構成し、市場動向の調査から新メディア対応の研究開発を進めております。また、製品コスト低下に伴うマニュアル制作費のコストダウンにも対応するため、顧客へ販売するためのマニュアル作成ツール開発や作業効率化ツールの開発部門を設置し推進しています。

 パッケージ製造では、開発・設計を国内で、生産を海外で行う顧客に対し、国内と海外の両方でサポートできる体制を構築するため、国内に梱包設計部門を設置しております。これにより、海外現地で原材料を入手し生産した場合と同じ仕様でのサンプルを国内で作成したり、海外生産の設備的メリット、デメリットを顧客に提案したりと、顧客のニーズに応える体制を取ることが可能となっております。

 最近2連結会計年度における研究開発活動に要した費用は、下表のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

 至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

 至 2024年6月30日)

 当社(日本)における研究開発費

53,819千円

62,317千円

53,819千円

62,317千円