第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営の基本方針

当社グループは、創業当初より独自に構築してきた自社パネルから得られる多種多様なマーケティングデータの提供を通じて、消費者ニーズに合致した製品やサービスの提供ができるように顧客企業の意思決定を支援しています。また、リサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援する「総合マーケティング支援企業」へと、その事業モデルの変革を推進しています。

日本においては、当社グループの主力事業であるオンラインリサーチ及びデジタルリサーチの成長を追求するとともに、マーケティング課題全体の解決を支援するデータコンサルティング事業等の新規事業の拡大、加えて、アジア地域での事業展開を加速させていく方針です。また、業界特性に応じた競争優位を確立するため、合弁事業等を通じた事業基盤の強化にも努めます。

さらに、韓国においても、日本の成長プロセスを追求し、リサーチだけでなくデータ提供事業などの新たな取り組みを推進することで、グループ全体での企業価値を向上させていきたいと考えています。

 

(2) 経営環境及び当社グループの取り組み

当連結会計年度(2023年7月1日~2024年6月30日)における日本及び世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の制限が緩和され、緩やかな持ち直しが続いている一方、円安の継続や物価上昇の影響、及びウクライナ情勢の長期化に伴う資源価格高騰等の影響による世界的なインフレの継続や政策的な金利上昇などにより、依然として先行きは不透明な状況で推移しました。

 

このような状況のもと、当社グループが属するマーケティングリサーチ市場は、業界の垣根を越えた融合が進み、デジタルデータの収集・分析を行う企業や、コンサルティング・レポート提供を行う企業など、関連するその周辺業界の売上を含む「インサイト産業」として再定義されており、日本における2023年度のインサイト市場は4,499億円(前年同期比4.2%増)と試算されています。(注1)

 

こうした経済・市場環境のもとで、当社グループは2023年8月に新たに2026年6月期までの中期経営計画(3ヵ年)を公表し、その達成に向けた戦略を立て、事業規模と利益の拡大を追求しています。

中期経営計画1年目である2024年6月期においては、主力事業であり収益性の高いオンライン及びデジタルリサーチの成長回帰に注力しました。また、将来の売上及び利益を牽引する事業を育成するため、アジア地域での事業拡大及びグローバルリサーチの強化や、データ利活用支援(データコンサルティング)、プラットフォーム型のソリューション開発を推進し、事業モデルの変革を継続しています。

 

なお、2023年5月15日に公表した「当社連結子会社等に対する債権の株式化(デット・エクイティ・スワップ)及び当該子会社の異動(株式譲渡)並びにToluna Holdings Limited社の持分取得(持分法適用会社化)に関するお知らせ」のとおり、当社グループは「その他の海外事業」セグメントを構成していた企業群であるMetrixLabグループの事業をToluna社へ譲渡していることから2023年6月期第4四半期連結会計期間より、「その他の海外事業」を非継続事業に分類しています。これにより、売上収益、営業利益、税引前利益は非継続事業を除いた継続事業の金額を表示し、親会社の所有者に帰属する当期利益は、継続事業のみの金額と、継続事業及び非継続事業の合算をともに表示しています。

 

また、当該事業の除外により、韓国事業の当社グループ内における重要性が相対的に上昇したため、当連結会計年度より、報告セグメントを「日本事業」と「韓国事業」に変更しています。

 

(注)

注1.2024年6月に一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が発表した「第49回 経営業務実態調査」による

 

(3) 中長期的な経営目標

①  中期的な見通し

当社グループでは、2023年8月に2024年6月期~2026年6月期までの新中期経営計画(3ヵ年)を策定し公表しています。財務目標としては、2026年6月期の連結売上高530億円、連結営業利益75億円を目標に、過去最高の利益額の更新を目指します。また、財務レバレッジの目標水準は従来目標を引き継ぎ、既存の信用格付を維持しながら、純有利子負債/EBITDA倍率を2.0倍から2.5倍の範囲でコントロールすることを目指します。中期経営計画の最終年度である2026年6月期までの期間において、株式売却等の一過性損益を除く連結配当性向50%を目標とし、累進配当を実現する形で剰余金の配当を行う方針です。

 


日本事業においては、当社グループの主力事業であり収益性の高いオンライン及びデジタルリサーチの成長回帰に注力します。また、将来の売上及び利益を牽引する事業を育成するため、アジア地域での事業拡大及びグローバルリサーチの強化や、データ利活用支援(データコンサルティング)、プラットフォーム型のソリューション開発を推進し、事業モデルの変革をさらに加速することで、総合マーケティング支援企業としてのプレゼンス向上を図ります。日本事業では、こうした事業活動を通じて2026年の売上収益460億円(3年平均成長率10%)を目指します。

韓国事業においては、日本で既に実施している購買データ提供に係るサービスを開始するなど、自社パネルから取得したデータを主軸としたサービスの本格展開を図る方針であり、2026年の売上収益70億円(3年平均成長率7%)を目指します。

また、売上収益の拡大とともに、付加価値とサービス範囲の再定義及び価格の見直しや、リサーチプロセスの改善及びリサーチ基幹システムの全面刷新等による業務効率化・生産性の向上に取り組み、利益の最大化を図る方針です。

 

このような計画のもと、中期経営計画の1年目にあたる2024年6月期においては、日本事業の売上収益は前期比8.0%成長、韓国事業の売上収益は前期比7.3%成長となり、連結全体の売上収益は前期比8.0%成長となりました。また、事業利益については、日本事業において生産性の改善が進んだことから前期比13.4%増となり二桁増益を実現しました。このため、計画初年度のグループ全体の業績は、中期経営計画通りに進捗しています。

 

② 2025年6月期の見通し

 

連結経営成績

(単位:百万円、別記ある場合を除く)

2024年6月

2025年6月期

増減額

増減率

売上収益

43,861

48,000

+4,138

+9.4%

EBITDA

7,683

8,300

+616

+8.0%

事業利益

5,624

6,200

+575

+10.2%

営業利益

4,470

5,700

+1,229

+27.5%

税引前利益

4,746

5,900

+1,153

+24.3%

親会社の所有者に帰属する当期利益

2,293

3,100

+806

+35.2%

 

 

日本においては、積極的な営業活動をより一層強化し、オンライン及びデジタルリサーチの拡販を目指します。また、グローバルリサーチや、データ利活用支援(データコンサルティング)、ライフサイエンス等の新規事業も引き続き二桁以上の成長を目指します。さらに、開発を進めているサブスクリプションモデルでのデータ提供サービスについては、2025年6月期の期中に開始する見通しです。

費用面では、グローバルリサーチや、データ利活用支援、新規事業等の売上拡大を見込んでいることにより、外注費の増加が見込まれますが、人件費についてはオンラインリサーチの売上を拡大し、その生産性を向上させることで、増加ペースの抑制に努める方針です。また、将来に向けた持続的な売上成長や利益改善のため、リサーチ基幹システムの刷新等に係る投資を継続することから、システム関連費用が増加する見通しですが、売上成長とのバランスを取り投資配分を柔軟にコントロールする方針です。こうした方針を通じ、営業費用全体の増加率を売上伸長率以下に抑える計画です。

 

韓国においては、景況感の悪化による影響が継続する見込みであるものの、購買パネルデータの提供サービス等の本格展開などにより、増収を維持する計画です。費用面では、当該新規事業に係る投資の拡大などにより外注費が増加する見込みではあるものの、当該事業の売上拡大によりその費用増を吸収し、増益とする計画です。

 

以上の結果、2025年6月期の売上収益は、48,000百万円(前期比9.4%増)、事業利益は6,200百万円(前期比10.2%増)営業利益は5,700百万円(前期比27.5%増)、税引前利益は5,900百万円(前期比24.3%増)親会社の所有者に帰属する当期利益は3,100百万円(前期比35.2%増)を見込んでいます。

 

なお、上記業績見通しの前提となる為替レートは1ウォン0.1100円を想定しています。

 

また、当該業績予想は、本資料の作成日現在において入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の「将来」に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ基本方針

当社グループの事業活動のサステナビリティを巡る基本方針は、当社グループの「Mission」「Vision」「Values」そのものだと考えています。

当社グループは、お客様のより良い意思決定を支援するために、お客様が心から満足し感動するサービスを提供することで、持続可能な社会の実現に貢献し、社員一人ひとりが信念を持って経済・社会・環境の調和を重視した企業活動を推進していきます。

なお、サステナビリティに関する取り組みの詳細は当社WEBサイトにおいて開示しております。

https://www.macromill.com/sustainability/

 

(2)マテリアリティ(重要課題)について

当社グループでは、社会と当社グループが持続的成長を実現するための重要課題として、その企業活動の基盤とステークホルダーへのインパクトという視点から検討を行い、経営環境の変化を見据えた機会とリスクも踏まえて、9つのマテリアリティを特定しています。

1. マーケティング課題の解決

データネイティブな発想でお客様のマーケティング課題を解決し、ビジネスに成功をもたらすData Culture構築の原動力となることを目指す。

 

2. データ利活用による新たな価値の創造

マーケティング領域に留まらず、ビジネス全体でのデータ利活用が活発化する中、データ利活用による新たな価値創造を提供する。

 

3. 的確な消費者インサイトの発掘

当社グループの所有するパネルとの強固な関係性を通じて、的確な消費者インサイトを発掘し、消費者を代表する声を世の中に届けることで、顧客企業に加え社会全体にも新たな価値を提供する。

 

4. 安心・安全なデータの取り扱いとその推進

自社パネルとの信頼関係を構築した上でデータを取得し、データ利活用において最優先されるべき「安心・安全」に責任をもち、徹底した情報管理、セキュリティ強化を行う。

 

5. 多様な人材が活躍する環境を実現

様々なマーケティング課題を解決するためには、多様な視点や経験から導かれるソリューションの提供が不可欠であるため、従業員一人ひとりの個性を尊重し、能力を最大限発揮できる環境を創出する。

 

6. 可能性に挑戦できる機会を提供

環境の変化に合わせて柔軟かつ自律的にキャリアを形成、選択できる環境を整備する。

 

7. データネイティブな人材の育成

創業時から長年にわたり培ってきたデータノウハウを継承し、多種多様な顧客企業とのビジネスにおいて高い専門性と先進性をもって価値を提供することができる人材を育成する。

 

8. オープンイノベーション

新しいデジタル技術の活用や高度化するマーケティング課題解決のため、開かれたパートナーシップを構築、社内にないノウハウを外から積極的に取り入れることでイノベーションを加速する。

 

9. ガバナンス

社会が大きく変化していく中で、中長期的に企業価値を高めていくため、健全な組織風土を形成し、ガバナンスを強化する。

 

(3)ガバナンス及びリスク管理

当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、9つのマテリアリティを特定するとともに、マテリアリティに関する取り組みをまとめたサステナビリティレポートを2022年11月に公表しました。

また、サステナビリティ経営の推進を目的に、担当執行役員・部門長を中心メンバーとするサステナビリティ委員会を設置し、委員会メンバーよりサステナビリティに関する外部環境・課題の変化や、当社の目標に対する進捗状況、新たな取組み等を検討・協議しています。

その上で、委員会で話し合われた方針や課題等を、経営会議及び取締役会へ付議または報告し、取締役会はこのプロセスを定期的に監督し、必要に応じて対応の指示を行っています。

 
(4)人的資本に関する「戦略」、「指標と目標」について

①戦略

当社グループでは、顧客への価値提供の向上や企業の社会的責任を果たす上で、多様性を認め、個々の能力を最大限に活かすことが重要であると考えています。

よって、当社では、2015年から「一人ひとりが互いの違いを尊重し、最大限に能力を発揮できる環境の創出」を目指しDiversity & Inclusionを推進してきました。

また、当社の事業活動においては、人材の価値を高めることが企業価値向上に直結すると考え、体系的な教育プログラムと自律的なローテーションの仕組みによって人材育成を促進し、社員が「自分の可能性に挑戦できる機会」を提供しています。

さらに、当社グループは、Visionとして“Build your Data Culture”を掲げ、顧客企業からの高度化するニーズに的確に対応するため、データ・アナリストやデータ・エンジニアの採用と活用を進めています。

 

②指標と目標

当社は2021年以降、特に「女性の活躍推進」に注力してきました。女性管理職比率においては2021年6月末時点の16%から、2024年7月末までに5%から10%の引き上げることを目標としてきましたが、結果としては、25%となり9%の引き上げを達成しました。今後も女性の活躍推進に向けた取り組みを加速し、更なる女性管理職比率の達成を目指します。

 (5)気候変動について

①リスクと機会

当社グループが行う事業活動は、インターネット産業を主とする事業特性を持ちます。

このため、気候変動による直接的な事業への影響は限定的であると認識しています。

しかしながら、気候変動に関する技術革新や市場・サービス・消費者意識の変化が、顧客企業の収益に影響することで、当社の業績に影響を与える可能性があります。特に気候変動に関する顧客企業の技術やサービス、さらに消費者意識の変化は、リサーチ需要に影響します。この点への対策として、気候変動に関する顧客企業の動向をモニタリングし、リスクを定期的に見直すことで、顧客ポートフォリオを分散化させ、継続的なマーケティング需要の取り込みに努める方針です。当社グループは、気候変動がもたらすリスク及び機会について、当社グループの事業の特性も踏まえ、現時点において、以下のとおり認識しています。

 

 

 

リスク

時間軸

対策

2℃未満シナリオ

移行リスク(注1)が顕在化、物理的リスク(注2)は高くない想定

 

 

 

顧客企業の属する産業によってはリスクと機会の双方が高いものもあるため、業界全体の動向に加え、個々の顧客企業や取引先の業績を注視しリスクの分散化を図っていきます

再生可能エネルギーへの転換に伴うエネルギー源への規制強化、施設・機材の入替等によるコスト増

中~長期

現行の関連法規制を遵守し、社内の電力使用量の削減、環境・省エネに取り組むビルへの入居を推進します

気候変動への対策不足によるステークホルダーからの信頼の低下や事業機会の減少

中~長期

気候変動関連問題を含むESGの取り組みの推進と情報開示を通じて、株主・投資家をはじめとするステークホルダーとの対話を推進、また各評価機関のESGスコアリングの向上に継続的に取り組みます

4℃

シナリオ

物理的リスク(注2)が顕在化、移行リスク(注1)は高くない想定

 

4℃シナリオにおいてもリスクの低い産業や機会の大きな産業への事業・サービスの拡大を検討することにより、リスクの分散と機会の拡大を図ります

気温上昇対策のためのコスト増、洪水や災害等による事業拠点の被災、人的被害、ならびにサプライチェーンの混乱

短~長期

BCP見直し、社内訓練の実施を継続的に実施します

自然災害や気温上昇等の影響が中長期にわたり、顧客企業にも影響を及ぼすことで事業機会が減少

中~長期

顧客企業や取引先の業績を注視しリスクの分散化を図る

 

 

 

 

 

機会

時間軸

対策

2℃未満シナリオ

移行リスク(注1)が顕在化、物理的リスク(注2)は高くない想定

 

 

ペーパーレスに伴うオンラインリサーチ需要の増加

中~長期

オンラインリサーチのキャパシティ体制を拡充、効率化を推進することで需要を取り込み売上を向上させる

環境意識の高まりによる消費行動の多様化、新製品やサービスに関わるマーケティング需要の増加

短~長期

消費者行動変化を捉え社会に発信するとともに、顧客企業への提案活動を通じて売上を向上させる

4℃

シナリオ

物理的リスク(注2)が顕在化、移行リスク(注1)は高くない想定

 

 

気候変動に起因する感染症等のリスク増加に伴い、移動や来場を避けるオンラインリサーチ需要の増加

中~長期

オフラインリサーチのオンライン化など、多様なオンラインリサーチソリューションを開発、提供し売上を向上させる
 
 

生活環境の変化による新製品やサービスに関わるマーケティング需要の増加

短~長期

消費者行動変化を捉え社会に発信するとともに、顧客企業への提案活動を通じて売上を向上させる

 

注1. 気候変動を緩和することを目的とした低炭素社会への移行は、政策、法律、技術、市場の変化を伴うため、企業の財務やレピュテーションにさまざまな影響を与える可能性があり、これらのリスクは「移行リスク」と呼ばれます。

2. 気候変動による災害等により顕在化するリスク(大規模降雨、洪水、高潮、干ばつ、山火事等の発生といった直接的な被害と、サプライチェーンの寸断による売上減といった間接的な被害等に加え、気温上昇、雪氷圏の減少、海面上昇といった長期的な気候変動パターンの変化による被害を含む)は「物理的リスク」と呼ばれます。

 

②対策

2℃未満シナリオにおいては、燃料・電力を使用する様々な産業で調達費用の高騰リスクが想定されます。顧客企業の技術やサービス、さらに消費者意識の変化は、リサーチ需要においても中期で影響が顕在化すると同時に、新たな製品・サービス開発が進むため大きな機会も存在すると認識しています。産業によってはリスクと機会の双方が高いものもあるため、業界全体の動向に加え、個々の顧客企業や取引先の業績を注視しリスクの分散化を図っていきます。また、4℃シナリオも現実となる可能性があることから、4℃シナリオにおいてもリスクの低い産業や機会の大きな産業への事業やサービスの拡大を検討することにより、リスクの分散と機会の拡大を図っていきます。

 

 

③指標と目標

短期目標として2030年度までにCO2排出量(スコープ1+2)を実質ゼロ、長期目標として2050年度もCO2排出量(スコープ1+2)の実質ゼロの状態を目指します。(スコープ1:自社施設の燃料の消費に伴う直接排出量、スコープ2:自社施設における電気・熱の使用に伴う間接排出量)

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、事業展開上のリスクになる可能性があると考えられる主な要因として、以下の記載事項を認識しています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避と予防に取り組んでいます。

なお、文中に記載している将来に関する事項は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1) 経済状況等の変動

当社グループは、2024年6月末現在、日本を含む多数の国と地域において、多様な業種の企業・官公庁を顧客として事業を展開しています。そのため、当社グループが行うマーケティングリサーチの需要は、日本国内外の経済状況、各業界の動向、各企業の経営成績やマーケティング予算、広告代理店の広告取扱高の変動等による影響を受ける可能性があります。

特に、当社グループの売上収益の大部分を占める日本では、政府・日本銀行の政策・世界経済の動向等によって、個人消費の減速や企業活動の停滞が発生する可能性があり、当社グループの顧客の商品・サービスの市場規模や活動が縮小し又は停滞する場合には、当社グループのサービスに対する需要が減退する等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 他社との競合

マーケティングリサーチ業界はインサイト産業への再定義が進む中、従来よりも、より多数の競合他社が国内外に存在し、各市場において当社グループと競合している状況にあります。当社グループの競合他社は、知名度、リサーチの信頼性、営業力、提供するサービスの価格やラインアップ、納期までの期間、ノウハウ、利用可能なパネル数、顧客のニーズへの対応力等の点において当社グループより高い競争力を有する可能性があり、また、当社グループに先駆けてより先進的なサービスや完成度の高いサービスの提供を開始する可能性があります。

さらに、スマートフォンの普及やソーシャルメディアの浸透等に伴うインターネット利用者の拡大等により、例えばシステム開発会社や膨大なビッグデータを保有するソーシャルメディアやインターネット検索サービスを提供する企業によるネット履歴データの分析事業への進出等、新たにオンラインリサーチ関連事業に参入する企業が増加しており、また、競合他社が他社との提携や経営統合等を行う場合には、競争が更に激化する可能性もあります。

これらの要因により、当社グループの国内外の市場シェア又は主要顧客ごとのシェアが低下する場合や、業界競争の激化に伴う価格下落圧力等が生じる場合は、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) パネルの維持・拡充

当社グループでは、迅速かつ適切なリサーチを行う上で、多様な属性を有する十分な数のパネルを維持・拡充することが重要であると認識しています。当社グループは、パネルに対して適切なポイント付与を行うこと等により、2024年6月末現在で90ヶ国においておよそ1億3,000万人のパネルを利用可能ですが、今後競合他社による付与ポイント等の魅力の向上、外部パネル提供会社との関係の悪化、提携パネルの利用に係る費用の増加、パネルの獲得方法の変化等によって、当社グループが利用可能なパネルの数や当社グループによる調査へのパネルの参加率が減少し、適切なリサーチを行うために必要なパネルの属性の多様性が失われる場合は、当社グループのサービスの品質が低下する可能性や、顧客の求めるニーズに合ったソリューションを提供できなくなる可能性、また、当社グループが利用可能なパネルを維持・拡充するための費用の増加が生じる可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 広告代理店との関係

日本においては、広告代理店がテレビを中心とする広告市場において重要な役割を果たしており、広告代理店は当社グループを含む外部のマーケティングリサーチ会社に対して広告効果測定等の調査を依頼することが多くあります。当社グループにおいても、広告代理店からの調査及び広告代理店を経由した調査に係る売上収益が連結売上収益の相当程度を占めているため、広告代理店との良好な関係を構築し、維持・継続することは重要な経営上の課題であり、当社グループは国内の主要な広告代理店の一部と合弁会社を運営しています。一方、一部広告代理店の中には、当社グループが提供するサービスと類似のサービスを提供するものもあり、当社グループの事業と競業する場合があります。

したがって、当社グループにおける不祥事等によるブランドイメージや社会的信用の低下、当社グループのサービスの品質低下や競争力の低下、広告代理店の経営方針の転換等により、広告代理店との関係が悪化する場合や合弁が解消される場合、広告代理店がマーケティングリサーチ業務を自社内部で行う比率を高める場合又は広告代理店が顧客に対し当社グループが提供するサービスと類似のサービスを直接提供する場合、広告代理店の広告市場における影響力が弱まる場合、広告代理店の不祥事等により企業から当該広告代理店への発注自体が減少する場合等においては、広告代理店からの当社グループへの発注や紹介が減少することにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) デジタルマーケティング市場の動向

当社グループは、従来のマーケティングリサーチの枠組みを越え、自ら開発したシステムや自社パネル基盤の活用を通じて顧客の広告効果を分析、その有効性をリアルタイムで把握することで、顧客のマーケティング活動の向上を支援するデジタルリサーチ及び広告配信サービスを提供しています。

デジタルマーケティング市場の動向は、オンライン広告市場の動向に大きく左右されるものと考えられますが、経済環境、技術水準、インターネット利用者数又は利用率の変化その他の要因によってオンライン広告市場の拡大が予想通りに進まない可能性があります。また、仮にオンライン広告市場の拡大が進んだ場合であっても、顧客のデジタルマーケティングの需要が予期せず変化する場合や、当社グループが顧客の求める品質のサービスを提供できない場合等においては、デジタルリサーチ及び広告配信サービスの拡大を実現できず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 新規サービス

オンラインリサーチ領域は、技術革新及び顧客のニーズの変化に応じて急速に進化を続けているため、当社グループは、かかる変化に対応してオンラインリサーチ事業の新たなサービス基盤を創出すべく、リサーチ領域における新しいマーケティングサービスの開発・展開を進めることが重要であると認識しています。

しかしながら、当社グループがかかる顧客ニーズの変化等に適切に対応できない場合や、競合他社が当社グループよりも早くかかる変化に対応したり、新しい技術によって当社グループよりもより安価にサービスの提供ができるようになること等によって当社グループの競争力が低下する場合のほか、新しい技術やサービスによって当社グループの既存のサービスの優位性や先進性が失われ、又は新技術に対応するための費用や競合他社の新規サービスに対抗するための費用が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 当社グループが提供する情報の正確性

当社グループのサービスにおいて、顧客に対して提供する情報又は分析の真実性、合理性及び正確性は非常に重要です。

したがって、当社グループが分析のために収集した情報に誤りが含まれていたこと等に起因して顧客に対して不正確な情報を提供する場合や、不正確な情報を提供していると誤認される場合には、当社グループの受注案件数の減少、ブランドイメージや社会的信用の低下、当社グループに対する損害賠償請求、当社グループのサービスに対する対価の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 情報漏洩

当社グループでは、パネルに係る情報など、大量の個人情報を保有しています。また、顧客が計画している新商品・新サービスの情報など、マーケティングリサーチ業務の過程で必要となる顧客の機密情報等も多く保有しています。

これらの情報に対する外部からの不正アクセスや、社内管理体制の瑕疵、当社グループ従業員の故意又は過失、コンピュータウイルス等による情報漏洩が発生した場合、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社に対する損害賠償請求等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、個人情報や機密情報の保護に関する国内外の法令等が改正される場合には、これに対応するためのシステムの改修や業務方法の変更に係る費用等の発生により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。

 

(9) アドホック調査の継続性

当社グループにおけるマーケティングリサーチは、顧客のブランドや商品・サービス等、特定のマーケティング上の課題の解決などに用いられ、データの回収・集計・分析等の調査プロセスが1回限りで完結する、いわゆる「アドホック調査」が中心となっています。実際には、アドホック調査の依頼の大部分が、調査データの継続性等の観点から複数年にわたる継続的な調査の依頼に至るものの、取引の継続性が契約により保証されているわけではないため、当社グループの顧客の多くは、個別の案件ごとに複数のリサーチ業者から発注先のマーケティングリサーチ会社を選択することや、発注先を当社グループ以外の競合他社に切り換えることも可能です。

したがって、当社グループの将来的な売上収益を正確に予想することが困難である場合があるほか、当社グループにおける不祥事等によってブランドイメージや社会的信用が低下し、又は当社グループのサービスの品質が低下する場合に、当社グループのアドホック調査に係る受注が減少し、又は既存の顧客からの継続的な依頼が打ち切られること等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) AIRsを利用したサービスへの依存

当社グループは、提供するサービスの多くにおいて、当社の基幹システムであるAIRsを利用しています。AIRsを利用した自動調査は、オンラインリサーチ工程の大部分を機械的に処理して高い作業効率を維持できることから、現時点において当社グループの売上収益及び利益に大きく貢献しています。

近時においては、クライアントニーズの多様化を受け、海外調査や定性調査等の自動調査以外のサービスに係る売上収益が増加する傾向にあります。この結果、AIRsを利用して行う自動調査に係る売上収益も増加しているにも関わらず、その売上収益が当社グループ全体の売上収益に占める比率は相対的に減少する傾向にあります。しかしながら、当社グループは自動調査以外のサービスにおいてもAIRsを利用することが多いため、AIRsへの依存は今後も比較的高い水準で推移する見込みです。

したがって、システム障害等の発生によりAIRsへの信頼性が低下する場合、AIRsに関するシステムの適時の標準化、最適化、更新、改修等を行えない場合等には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、今後顧客ニーズやインターネット利用者数又は利用率の変化等により自動調査への需要が減少した場合に、当社グループが自動調査以外のサービスで十分な収益を得られない場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) システム開発

当社グループがサービスの品質を更に高め、マーケティングリサーチ業界における競争力を維持・向上させるためには、技術革新や競争環境の変化に応じ、システムに関する投資を積極的かつ継続的に行っていく必要があると認識しています。システム開発の遅延・失敗やトラブル発生等により開発コストの増大や営業機会の逸失が発生する場合、システム開発に想定以上の費用又は時間が必要となった場合、システム開発に必要な技術者等を確保できない場合、開発したシステムによって想定通りの効果や効率化等が図られなかった場合、開発したシステムを適時に更新できない場合、既存システムを新システムに適合させるための追加費用が発生する場合等には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) システム障害

当社グループは、マーケティングリサーチ業務の過程で、情報の収集、分析、保管、加工等のために情報システムやインターネット等を利用しています。

そのため、自然災害、火災や停電等の事故、プログラムやハードの不具合、コンピュータウイルスやハッカー攻撃、外部からの不正アクセス等により、システム障害が発生した場合、当社グループの業務やサービス提供の停止、重要なデータの喪失、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社グループのサービスに対する対価の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 中期経営計画

当社が策定した中期経営計画では、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、データ利活用支援(コンサルティング)事業やマーケティング施策支援(広告配信等)事業などの新規事業を加速させ、「総合マーケティング支援企業」へと事業モデルの変革を進めることと、主力のオンライン及びデジタルリサーチへの再フォーカスを通じた利益率の着実な改善を、その目指す方向として掲げています。

その上で、日本事業においては、注力事業(オンラインリサーチ及びデジタルリサーチ)の高収益性と安定的な成長の追求、戦略投資事業(コンサルティング、グローバルリサーチ、その他の新規事業)の売上二桁成長と将来の利益貢献の実現、基盤強化事業(オフラインリサーチ、データベース、JV含むその他の子会社群)における競争優位性と参入障壁の確立と安定的な売上・利益貢献の継続、韓国事業においては、日本事業の成長プロセスの再現等の各施策を推し進め、更なる成長と収益性の向上を目指すこととしています。

しかし、これらの施策の実施については、マーケティングリサーチ市場が拡大しないリスク、データ利活用支援事業やマーケティング施策支援事業などの新規事業が進展しないリスク、他社との競合等により当社グループが国内外のシェアを拡大できないリスク、優秀な従業員を確保できないリスク、販売戦略やコスト削減策、成長戦略等が奏功しないリスク、技術革新等に対応できない、又は対応に多額の費用等を要するリスク等、多数のリスク要因が内在しているため、実施が困難となる可能性や、当社グループにとって当該施策が有効でなくなる可能性があります。

また、かかる中期経営計画を作成するにあたって前提としている多くの前提が想定通りとならない場合等には、当該計画における目標を達成できない可能性もあります。更に、当社グループが正確に認識又は分析していない要因又は効果により、当該計画の施策がかえって当社グループの競争力を阻害する可能性もあります。これらの結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 固定費

当社グループにおいては、その事業の特性上、人件費、賃借料及びシステム運用管理費など、当社グループの売上収益にかかわらず固定的に発生する費用が当社グループの費用の相当程度を占めています。その結果、当社グループの限界利益率は高く、特段の事象が発生しない限り、損益分岐点を超えた以降は売上収益の成長よりも高い利益成長を享受できる収益構造になっているものと認識しています。他方、当社グループの売上収益が何らかの理由により大幅に減少する場合等には、当該減少に比して費用の減少が生じにくく、当社グループの経営成績に相対的に大きな影響を与える可能性があります。

 

(15) 人材の確保及び育成

当社グループが今後も顧客にとって付加価値、満足度の高いサービスを提供し続け、事業の拡大を図るためには、マーケティングリサーチの高い技能やノウハウ等を有し、顧客の業界にも精通した優秀な人材を継続的に確保し、育成していくことが重要と考えています。

しかしながら、かかる優秀な人材はマーケティングリサーチ業界のみならず多くの業界において需要が高いため、今後人材採用競争の激化等の要因により、期待する資質を有する人材や優秀な人材を確保できない場合や、採用等に係るコストや人件費が増加する場合は、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 知的財産権

当社グループの事業分野における他社の知的財産権の保有や登録等の状況を完全に把握することは困難であり、当社グループが意図せず第三者の特許権等を侵害する可能性や、今後当社グループの事業分野において第三者の特許権等が新たに成立し、当社グループを当事者とする知的財産権の帰属等に関する紛争が生じたり、当社グループが知的財産権の侵害等に関する損害賠償や使用差止等の請求を受けたりする可能性があります。

また、当社グループが第三者と提携や合弁等を行うことにより、当該第三者が締結している契約に基づく知的財産権に係る制約を受けたり、第三者に対する新たな対価支払いを強いられたりする可能性もあります。

これらの結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 海外事業

当社グループの海外事業の展開にあたっては、各国の経済情勢及び政治情勢の悪化、法律・規則、税制、外資規制等の差異及び変更、商慣習や文化の相違、自然災害や感染症の発生等の可能性があり、これらの要因により特定の国での事業の遂行及び推進が困難になる場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 為替相場の変動

当社の連結子会社及び持分法適用会社を含む関連会社は、多数の海外拠点を有し、取引先及び取引地域も世界各地にわたっているため、外貨建てで取引されているサービス等のコスト及び価格のほか、企業買収等の対価が外貨建てとなる場合は、直接的又は間接的に為替の影響を受けます。

また、当社グループの海外子会社及び関連会社では、米ドル、ポンド、ウォン等日本円以外の外国通貨で財務諸表を作成しており、当社の連結財務諸表の作成時において日本円に換算され円建てで連結財務諸表に記載されるため、為替相場の変動により当社グループの海外子会社が所在する国の通貨の日本円に対する価値が著しく変動する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

上記に加えて、当社又はその国内子会社の保有又は負担する外貨建ての金銭債権又は金銭債務は連結財務諸表の作成時において日本円に換算されますが、当社グループでは、これらの影響の一部を最小限におさえるべく、適宜為替予約等によるヘッジを行っています。かかるヘッジにより為替相場の変動に係るリスクを全部又は完全に回避できるわけでないため、為替相場の変動状況によっては、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 企業買収、戦略的提携等

当社グループは、事業拡大の手段の一つとして企業買収や戦略的提携を積極的に推進しています。これらの企業買収や戦略的提携は、システム等の統合上の問題の発生、事業上の問題の発生、買収先企業における人材の流出等により実施又は維持できなくなる可能性や、当初期待した成果をあげられない可能性があるほか、当社グループが実施した買収に伴い発生するのれんについて国際会計基準(IFRS)に従い減損損失を計上する可能性があり、これらによって当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) のれんの減損

当社グループは、2024年6月末現在、連結財政状態計算書にのれんを40,665百万円計上しており、のれんは連結総資産の45.6%を占めています。また、当社グループが今後M&A等を実施した場合に、新たなのれんを計上する可能性もあります。

当社グループの連結財務諸表はIFRSを採用していますので、これらののれんは非償却性資産であり毎期の定期的な償却は発生しませんが、今後いずれかの事業収益性が低下した場合等には減損損失が発生し、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21) 顧客志向の変化

昨今、国内外を問わず、新たなテクノロジーの登場やサービスの進化等により、顧客を取り巻く事業環境が変化し、これを受けて顧客のニーズが変化するといった状況が続いています。これに対応するため、当社グループもまた、サービス内容の素早い進化や変化が求められています。具体的には、単一のサーベイデータに基づく調査よりも、モバイル、ソーシャルメディア、行動データ、ビッグデータなど、複数のデータソースに基づく調査を求められる傾向が強まっていること、単なるデータ提供に留まらずインサイトの抽出・分析等にも重点を置いたサービス提供を求められる傾向が強まっていること、今まで以上にリアルタイムでの効果測定や有効性の把握が求められるようになってきていること等が挙げられます。また、多国籍企業の顧客を中心として、よりグローバルなサービスを提供するリサーチ会社を好む傾向も強まっています。

今後も顧客のニーズは変化し続けることが予想されますが、かかる変化により当社グループが提供するサービスの需要が低下する場合や、ニーズの変化への対応に必要なサービス内容等の変更や新規サービスの開発等が成功せず、顧客の要求水準や要求内容に見合うサービスを提供できない場合、また、当社グループが顧客のニーズの変化を適切に把握できない場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(22) 季節変動

当社グループの顧客では、新商品販売のタイミングが各四半期末に、また、広告宣伝予算の消化が各顧客の主な決算期末である3月(海外の顧客については主に12月)に偏る傾向があり、当社グループの売上収益も当該時期に高くなる傾向があります。

このため、かかる時期において当社グループの経営成績が不調となる場合には、当社グループの通期の経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(23) 多額の借入金、金利の変動及び財務制限条項への抵触

当社グループは、公募社債の発行と、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し、両者を合わせて多額の借入れを行っており、2024年6月期末時点での総資産額に占める有利子負債額は34.2%(注)となっています。当該借入金は、元本が変動金利も含まれるため、市場金利が上昇する場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、かかる契約の約定に基づく既存の借入れがあることから、新たな借入れ又は借換えが制約される可能性や、必要な運転資金等を確保できず景気の下降に脆弱となる可能性、財務的信用力が当社グループよりも強い競合他社と比較して競争力が劣る可能性があります。

さらに、当社グループが締結している借入契約の中には、財務制限条項が付されているものがあります。かかる財務制限条項については、純資産維持及び利益維持に関する数値基準が設けられており、これに抵触する場合、貸付人の請求があれば当該契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の弁済をするための資金の確保が必要となります。万が一何らかの事象によって当該財務制限条項への抵触が生じる場合は、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があるとともに、かかる資金の確保ができない場合は、当社グループの他の借入についても期限の利益を喪失することが予測され、当社グループの存続に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、財務制限条項は、後記の注記「18.社債及び借入金」に記載しています。

 

(注)財務レバレッジ水準を示す本指標の目的を考慮し、2024年6月期より、純有利子負債にリース負債を含め  

   ず、集計対象を借入金と社債のみとしています。

 

(24) 自然災害、事故、感染症の流行等

大規模な地震・風水害・津波・大雪・感染症の大流行等が発生した場合、当社グループの本社建物や設備等が被災し、又は従業員の出勤や業務遂行に支障が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、これらの自然災害等により、当社グループの業務に必要なシステムやインターネット等のネットワーク環境が使用できなくなる場合、当社グループの業務遂行等が極めて困難となる結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

実際、新型コロナウイルス感染症の拡大時においては、世界的な規模で消費行動の停滞や、営業活動の自粛が生じました。この結果、顧客のマーケティング活動のスケジュールや内容が変化し、予定されていたリサーチ案件の延期、規模の縮小、中止等といった影響が出ました。こうした、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は、2024年6月期末現在においてはかなり限定的なものとなっていますが、こうした感染症の流行の拡大や、自然災害等によって当社グループの顧客に被害等が生じる場合や、経済状況等の低迷が発生する場合にも、当社グループの受注案件数の減少等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(25) 訴訟その他の法的手続

当社グループは、その事業の過程で、各種契約違反や労働問題、知的財産権に関する問題、情報漏洩等に関する問題等に関し、顧客、取引先、従業員、競合他社等により提起される訴訟その他の法的手続の当事者となるリスクを有しています。当社グループが訴訟その他の法的手続の当事者となり、当社グループに対する敗訴判決が言い渡される又は当社グループにとって不利な内容の和解がなされる場合、当社グループの事業、経営成績、財政状態、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(26) 財務報告に係る内部統制

当社グループでは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築及び運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでいますが、内部統制報告制度の運用により、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制を構築及び運用できる保証はありません。更に、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しない場合や、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生する場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.業績等の概要

(1) 経営成績に関する説明

当社グループは、2023年6月期第4四半期連結会計期間に「その他の海外事業」セグメントを構成していた企業群であるMetrixLabグループの事業をToluna社へ譲渡していることにより、韓国事業の当社グループ内における重要性が相対的に上昇したため、当連結会計年度より、報告セグメントを「日本事業」と「韓国事業」に変更しています。

 

当社グループの経営成績の概要は以下のとおりです。(注1)

連結経営成績

(単位:百万円、別記ある場合を除く)

2023年6月

2024年6月

増減額

増減率

売上収益

40,616

43,861

+3,244

+8.0%

日本事業 売上収益

34,909

37,719

+2,809

+8.0%

韓国事業 売上収益

5,725

6,142

+417

+7.3%

事業利益(注2)

4,960

5,624

+664

+13.4%

日本事業 事業利益(注2)

4,427

5,422

+994

+22.5%

韓国事業 事業利益

532

202

△330

△61.9%

海外子会社異動(M&A)費用

△461

+461

一部の持分法による投資損益

(△損失)(注3)

-

△1,154

△1,154

営業利益

4,498

4,470

△28

△0.6%

税引前当期利益

3,728

4,746

+1,018

+27.3%

継続事業に係る親会社の所有者に

帰属する当期利益

1,778

2,293

+514

+29.0%

親会社の所有者に帰属する当期利益

7,575

2,293

△5,281

△69.7%

 

 

i. 日本事業セグメント

日本事業においては、注力領域、戦略投資領域、基盤強化領域の各領域において、順調な売上収益の拡大を続けています。

注力領域と定めているオンライン及びデジタルリサーチは、前下半期より取り組んでいる積極的な営業活動が奏功し、顧客企業との関係性が強化できており、その売上収益は14,888百万円(前年同期比5.5%増)となりました。

戦略投資領域と定めているグローバルリサーチ、コンサルティング、新規事業等に係るサービスは、グローバルリサーチ及びコンサルティングが上半期好調であったことに加え、下半期にかけて新規事業の成長が加速したことから、その売上収益は6,787百万円(前年同期比12.9%増)と二桁成長を実現しました。

基盤強化領域と定めているオフライン及びデータ提供、その他広告代理店等の合弁事業を営む子会社群は、2023年7月に実施した株式会社モニタスの子会社化の影響もあり、その売上収益は16,043百万円(前年同期比8.5%増)となりました。

費用面については、前下半期からの増員により社内リソースの生産性改善や業務の内製化を進めた結果、人件費は売上伸長率を上回って増加している一方、外注費は前期を下回る水準まで抑制することができました。また、その他の費用のうちシステム関連費用は、将来に向けた持続的な売上成長や利益改善のため、リサーチ基幹システムの刷新等に係る投資を実施しているため増加しています。他方、2023年6月期第4四半期にMetrixLabグループの事業をTolunaに譲渡した取引に係る費用を461百万円計上していましたが、当期は当該費用が発生していません。このため、その他の費用の額は全体としては増加しているものの、売上伸長率を下回る増加率となりました。また、これらを踏まえて、営業費用全体の増加率も、売上の伸長率を下回る水準に留めることができています。

以上の結果、日本事業の売上収益は37,719百万円(前年同期比8.0%増)となり、Toluna社への持分法損失1,154百万円を除いた事業利益は、売上収益の増加が営業費用全体の増加を吸収するとともに生産性の改善が進んだことから、5,422百万円(前年同期比22.5%増)となり大幅な増益を実現しました。

 

ii. 韓国事業セグメント

韓国事業においては、景況感の悪化による影響を受けて、政府が実施する公共調査の減少や、大手顧客企業のリサーチ予算の縮小が起こるなど、市場環境は厳しい状況が続いています。

他方、当社グループでは、韓国の大手リサーチ会社の中で唯一保有する自社パネル基盤を活かし、日本で既に実施している購買データ提供等に係る新規事業を推進するなど、自社の構造的な強みを活かしたサービス展開を図ることで新たな収益源の創出に努めています。引き続き、日本で先行して進めている事業モデルの変革を韓国においても追求し、同事業セグメントの安定した売上・利益伸長の実現を目指す方針です。

こうした取り組みの一環として、韓国でのマーケティング施策支援事業の展開を開始すべく、第2四半期末には広告宣伝事業を営む企業を子会社化し、同社との協業を進めており、第4四半期はそのシナジー効果も発現したことで、二桁増収を実現しました。

その結果、売上収益は6,142百万円(前年同期比7.3%増)、事業利益については新規事業や新規連結子会社に係る費用の増加により202百万円(前年同期比61.9%減)となりました。

 

また、連結全体の親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE、直近12ヶ月で算定)は5.9%(前年同期比0.7ポイント増)となりました。インタレスト・カバレッジ・レシオ(直近12ヶ月で算定、注4)は21.4倍(前年同期間24.3倍)となりました。

 

なお、韓国事業内のMacromill Embrain Co., Ltd.の収益及び業績についてはウォン建てで管理しており、換算レートは以下のとおりです。

 

算定期間

(12ヶ月)

2023年6月

2024年6月

増減率

JPY/KRW(円)

0.1042

0.1122

+7.7%

 

(注)

(1) 2023年6月期のセグメント数値については、セグメント間取引の相殺消去前の数値を記載し、2024年6月期のセグメント数値についてはてセグメント間取引の相殺消去後の数値を記載している。

(2) その他の海外事業セグメントをToluna社へ譲渡した譲渡対価として当社がToluna社の株式の17.4%等を取得していることから、2023年6月期第4四半期よりToluna社は当社の持分法適用会社となっている。当社グループの事業パフォーマンスを示すため、2024年6月期第1四半期より営業利益からTolunaにかかる持分法投資損益を除いた金額を事業利益として記載している。
2023年6月期については、2023年6月期第4四半期に発生したその他の海外事業セグメントの譲渡に係る費用を除いて算出している

(3) Toluna社への持分法損失

(4) インタレスト・カバレッジ・レシオ =(営業利益+受取利息+受取配当金)/ 支払利息

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7,856百万円減少し、10,398百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は、8,313百万円(前年同期比5,404百万円増加)となりました。

これは主に、継続事業からの税引前利益4,746百万円、減価償却費及び償却費2,027百万円、持分法による投資損益1,152百万円、営業債権及びその他の債権の減少650百万円等があったためです。

なお、営業債権の回転期間は65.1日(前年同期比7.8日短期化)、営業債務及びパネルポイント引当金の回転期間は48.7日(前年同期比3.6日短期化)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、1,952百万円(前年同期比3,282百万円減少)となりました。

これは主に、子会社の取得による収入104百万円がありましたが、有形固定資産の取得による支出307百万円、無形資産の取得による支出1,038百万円、短期投資の純増減484百万円等があったためです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、14,292百万円(前年同期比19,950百万円増加)となりました。

これは主に、長期借入金の返済による支出902百万円、社債償還による支出10,000百万円、リース負債の返済による支出927百万円、配当金の支払額878百万円、非支配持分への配当金の支払額400百万円、子会社株式の追加取得による支出610百万円等があったためです。

 

2.生産、受注及び販売の状況

(1) 生産実績

当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(2) 受注状況

当社グループの事業は受注から納品までの期間が短いため、記載を省略します。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

前年同期比(%)

日本事業

37,719

+8.0

韓国事業

6,142

+7.6

合計

43,861

+8.0

 

(注)

1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社電通グループ及び
その子会社

4,310

10.6

4,343

9.9

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。株式会社電通グループ及びその子会社への売上収益は主に当社の子会社である株式会社電通マクロミルインサイトにおいて計上しております。

 

3.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要性のある会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、決算日における財政状態、報告期間における経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り・予測を必要としております。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積り・予測の評価を実施しております。なお、重要性のある会計方針及び見積りの詳細は後記の連結財務諸表注記「3.重要性のある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

 

(2) 財政状態の分析
① 資産

資産は、89,205百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,948百万円減少しました。これは主に、その他の金融資産の増加1,494百万円、使用権資産の増加1,221百万円、長期貸付金の増加1,184百万円等がありましたが、現金及び現金同等物の減少7,856百万円、持分法で会計処理されている投資818百万円の減少、営業債権及びその他の債権の減少675百万円等の減少要因があったためです。

 

② 負債

負債は、43,406百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,416百万円減少しました。これは主に、リース負債の増加1,197百万円等がありましたが、社債及び借入金の減少10,421万円等の減少要因があったためです。

 

③ 資本

資本は、45,799百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,468百万円増加しました。これは主に、配当金の支払額1,279百万円、子会社に対する所有持分の変動644百万円等の減少要因がありましたが、当期利益2,998百万円、その他の包括利益2,226百万円等の発生等があったためです。

 

(3) 経営成績の分析

経営成績の分析につきましては、前記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.業績等の概要 (1) 経営成績に関する説明」を参照ください。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの営業活動からの堅実なキャッシュ・フロー創出力を原資として、経営環境や業績状況に適した戦略的なキャピタル・アロケーションを実行することを基本方針とし、継続的な成長の実現に向け、成長投資と株主還元の強化、負債返済の3つの資金使途バランスを追求しています。
 これらの3つの資金使途のうち、成長投資を最優先事項としています。ROIやROICなど投資効率を重視し、資本コストを上回る潜在リターンを持つ投資機会を、新規事業への人材・システム投資だけでなく、M&Aも含めて追及します。また、負債の返済については、純有利子負債(Net Debt)(注1)/EBITDA倍率を2.0倍から2.5倍とすることを中期経営計画の目標値として掲げ、レバレッジ水準をコントロールしていきます。なお、株主還元の考え方は、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
 
 当社グループの資金の源泉は、手元現預金及び将来の営業活動で得られる資金を充当することを基本としています。資金需要及び金利動向等の調達環境並びに有利子負債の返済及び社債の償還時期等を考慮の上、調達規模及び調達手段を適宜判断して外部資金調達を実施する場合があります。

 

(注)

1.純有利子負債(Net Debt)=有利子負債(借入金+社債)-現金及び現金同等物

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、前記「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(株主間契約)

 

契約の相手方の

名称

対象会社の名称

契約の目的

契約締結日

契約終了日

株式会社電通グループ

株式会社電通マクロミルインサイト

互いに協力しながら、それぞれが有する経営資源及びノウハウを可能な限り活用及び提供し、株式会社電通マクロミルインサイトの収益及び利益を確保及び増大することを目的としております。

2023年9月28日

株主間契約に定める終了事由等の発生により契約が終了するまで

株式会社博報堂

株式会社H.M.マーケティングリサーチ

互いに協力しながら、それぞれが有する経営資源及びノウハウを可能な限り活用及び提供し、株式会社東京サーベイ・リサーチ(2024年6月30日現在、株式会社H.M.マーケティングリサーチ)の収益及び利益を確保及び増大することを目的としております。

2018年6月25日

株主間契約に定める終了事由等の発生により契約が終了するまで

Verlinvest SA /Eurovestech plc/Bronco Holdco,LLC等

Toluna Holdings Limited

Toluna Holdings Limitedの管理、運営、株式の発行・譲渡、および資金調達について、その方法とそれぞれの株主の権利を規定することを目的としております。

2023年6月1日

株主間契約に定める終了事由等の発生により契約が終了するまで

 

(注) 株式会社H.M.マーケティングリサーチは、2024年7月1日にQO株式会社に名称変更しております。

 

(株式会社みずほ銀行との借入契約の締結)

当社は、2022年3月29日に株式会社みずほ銀行と金銭消費貸借契約を締結しております。これは2017年3月29日に締結した契約の期間満了に伴い切り替えたものであります。

主な契約内容は、以下のとおりであります。

 

1.契約の相手先

契約の相手先は株式会社みずほ銀行となりますが、株式会社みずほ銀行から貸付債権を株式会社三菱UFJ銀行、株式会社新生銀行、株式会社りそな銀行、株式会社三井住友銀行及び農林中央金庫へ譲渡しております。

 

2.借入金額

11,800百万円

 

3.金利

      5,900百万円:変動金利 3ヶ月TIBOR+年率0.30%

      5,900百万円:固定金利年率0.55%

 

4.返済期限

最終2027年3月末

 

5.主な借入人の義務

(ア) 借入人の決算書等を定期的に提出すること

(イ) 財務制限条項を遵守すること(なお、財務制限条項の主な内容は、後記の連結財務諸表注記「18.社債及び借入金」に記載しています。)

(ウ) 事前承諾なく会社法上の組織変更等を実施しないこと

(エ) 事前承諾なく事業等の全部もしくは一部を第三者ヘ譲渡すること

(オ) 事前承諾なく担保提供等を実施しないこと

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、多様化する顧客ニーズへの対応や同業他社に対する比較優位を保つために積極的に新サービスの開発及び既存サービス改良のための活動を行っています。こうした開発及び活動に係る費用は、第一に、ソフトウエア等の無形資産に対する設備投資として資産化され使用期間にわたって償却されるかたちで費用認識されるもの、第二に、単年度における研究開発活動費として費用認識されるもの、第三に、そうした開発及び活動に係る人員の人件費として費用認識されるものの三つで構成されますが、当社グループでは、それらのバランスを取りながら新サービスの開発及び既存サービスの改良を進めています。

このうち、第二の構成要素に当たる当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動費は、0百万円であり、研究開発活動の内容は以下のとおりです。

 

① 研究の目的

多様化する顧客ニーズに対応し、その課題を解決するためのサービス(リサーチ手段、ソリューションパッケージ等)の開発及び改良と新しい価値創造をお客様に提供することを目的とします。

 

② 主要課題

従来から進めているオンラインによる自動調査の業務範囲拡大及び機能強化に加えて、デジタル・マーケティングを加速させる顧客ニーズを踏まえた新たなサービスラインアップの拡充に努めています。

また、AIを活用したマーケティングソリューションや、生体情報等の非意識データを扱うサービス等、先端技術を駆使した付加価値の高いサービス開発を実現すべく研究開発活動を進めています。

 

③ 研究体制

主に日本においては、当社次世代リサーチ技術開発室、Global IT本部、及び統合データ事業本部並びに国内子会社である電通マクロミルインサイトやセンタンにおいて新サービスの開発及び既存サービスの改良を行っています。

また、韓国においては、子会社であるMacromill Embrain Co.,Ltd.において、新サービスの開発及び既存サービスの改良を行っています。

 

④ 研究成果

開発活動の成果として、顧客への訴求力がより高いサービスやソリューションの更改が実現できていると考えていますが、更に今後もオンライン・マーケティング・リサーチとデジタル・マーケティングを軸とした顧客の様々な課題に応じた多様なリサーチ手段、ソリューションパッケージの開発・蓄積を目指していきたいと考えています。また、一部の成果については特許権を取得しています。