(はじめに)
当社は、2000年1月31日にインターネットを利用したマーケティングリサーチ会社として設立された株式会社マクロミル・ドット・コム(2001年12月に商号を株式会社マクロミル(以下、「(旧)マクロミル①」という。)に変更)を前身としています。一連のリサーチをWEB上で簡易に行うことを可能とした自動インターネット・リサーチ・システム(Automatic Internet Research system、以下、「AIRs」という。)を独自開発し、安価でスピーディなマーケティングリサーチの提供を行うことで、マーケティングリサーチに対する潜在的な需要を喚起し、マーケティングリサーチの中でも特に日本におけるオンラインリサーチ市場のリーディングカンパニーとして業績を伸ばしてきました。
そうした中、(旧)マクロミル①は、2004年1月に東京証券取引所マザーズ市場に株式上場し、2005年4月には同取引所市場第一部に指定されました。その後もAIRsの機能強化や、業務提携・M&A等の実施も通じて業容を拡大してきました。
一方で、国内マーケティングリサーチ市場の拡大に伴い、海外勢の進出なども含め新規参入者が増え、結果として価格競争が激化する等の外部環境の変化が起こる中、(旧)マクロミル①としても短期的な業績変動を覚悟の上で、自社の市場ポジショニングや競争優位性を抜本的に強化・改善することを目指した、大型のM&Aや積極的な投資等を行う必要が高まってきました。このことから、そうしたM&Aや投資等に伴う一時的損失を一般株主に転嫁することを避けるべく、2014年4月に同証券取引所市場第一部の上場を廃止することにしました。上場廃止後には、主に今後の成長分野であるデジタルリサーチの領域や海外におけるM&Aや投資等を実施すると共に、企業グループ体制の再編を行い、現在の当社グループを形成するに至っていますが、その詳細は以下のとおりです。
上述のとおり国内マーケティングリサーチ市場の拡大に伴い、競争が激化するなか、大型のM&Aや積極的な投資等を進めるべく経営戦略を検討していましたが、2013年10月に同様の考えを有していたBain Capital Partners, LLC(現Bain Capital Private Equity, LP)及びそのグループ(以下、「ベインキャピタルグループ」という。)から株式の公開買付け及び非公開化に関する申し入れを受け、協議を開始しました。
その後、株式会社BCJ-12(Bain Capital Private Equity, LPが投資助言を行うファンドが間接的にその株式を保有する株式会社)により2013年12月11日に(旧)マクロミル①株式の公開買付けが公表されました。(旧)マクロミル①としても、ベインキャピタルグループの有する経営ノウハウを生かし、同社の完全子会社となることで短期的な業績変動に左右されずに統一的な経営方針を貫徹できる態勢を構築することが最善の選択肢であると判断し、株式会社BCJ-12による公開買付けに賛同しました。公開買付けの終了後、(旧)マクロミル①は2014年4月25日に非公開化し、2014年5月1日に株式会社BCJ-12の完全子会社となりました。
ベインキャピタルグループは、2013年11月25日に株式会社BCJ-11(形式上の存続会社。Bain Capital Private Equity, LPが投資助言を行うファンドが間接的にその株式を保有する株式会社であり、株式会社BCJ-12の株式を100%保有する会社)及びその100%子会社である株式会社BCJ-12を設立し、この株式会社BCJ-12を通じて(旧)マクロミル①に対する上記の公開買付けを実施しました。株式会社BCJ-12は、当該公開買付けの実施に先立って銀行団より買収ローンによる資金調達を行っていたため、事業からのキャッシュ・フローの創出主体である(旧)マクロミル①を、借入資金の返済主体である自社と同一化する目的で2014年7月1日に吸収合併の方法により合併し、その事業を承継すると共に商号を株式会社マクロミル(以下、「(旧)マクロミル②」という。)に変更しました。
株式会社BCJ-11(形式上の存続会社)は、株式会社BCJ-12による(旧)マクロミル①の吸収合併によって、吸収合併後の(旧)マクロミル②の直接の親会社(議決権比率100%)となりました。その結果、(旧)マクロミル②の持株会社としての位置づけが明確になったことから、2015年8月20日に株式会社BCJ-11は株式会社マクロミルホールディングスに商号変更しました。
その後、株式会社マクロミルホールディングスは、事業会社としての株式上場を目指す方針を固め、上場に向けたプロセスの一環として、2016年6月30日に傘下にある事業運営会社としての(旧)マクロミル②を吸収合併し、同日に株式会社マクロミルに商号変更しました(現在の当社)。
上述の(1)(2)(3)に関し、非公開化時点から現時点までの会社の推移を図示すると、以下のとおりです。

(注) 1.上記指標は、国際会計基準(以下、「IFRS」という。)により作成しています。
2.売上収益には、消費税等は含まれていません。
3.第7期の株価収益率については、親会社の所有者に帰属する当期損失のため、記載していません。
4.臨時雇用者数は、パートタイマーの従業員のみであり、派遣社員は除いています。
5.2023年6月に当社が保有するSiebold Intermediate B.V.の全株式を売却することを決定したため、2023年6月期において、同社及び同社の子会社の事業を非継続事業に分類しています。これに伴い、第9期の売上収益、営業利益及び税引前利益について、非継続事業を除いた継続事業の金額に組替えています。非継続事業に分類された売上収益及び税引前利益の金額については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記10.非継続事業」をご参照ください。
(注) 1.売上高には、消費税等は含まれていません。
2.第7期及び第10期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、当期純損失のため記載していません。
3.第7期及び第10期の自己資本利益率については、当期純損失のため記載していません。
4.第7期及び第10期の株価収益率については、当期純損失のため記載していません。
5.臨時雇用者数は、パートタイマーの従業員のみであり、派遣社員は除いています。
6.第7期及び第10期の配当性向については当期純損失のため記載していません。
7.最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所の市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所のプライム市場におけるものであります。
(はじめに)に記載のとおり、当社(実質的な事業運営主体)は2000年1月31日にインターネットを利用したマーケティングリサーチ会社として設立された株式会社マクロミル・ドット・コム((旧)マクロミル①)を前身とし、2013年11月に設立された株式会社BCJ-11(形式上の存続会社)が、2016年6月30日に(旧)マクロミル①を前身とする(旧)マクロミル②を吸収合併する形で、その事業を承継しています。そこで、以下では(旧)マクロミル①の設立から、現在に至る当社の沿革を記載しています。
当社グループは、当社、連結子会社21社及び関連会社4社により構成されております。
当社グループは2023年6月期第3四半期まで、企業集団を基礎とした地域別のセグメントから構成された「日本及び韓国事業」セグメントと、「その他の海外事業」セグメントの2つを報告セグメントとしてきましたが、「その他の海外事業」セグメントを構成するMetrixLabグループを売却したことに伴い、2023年6月期第4四半期連結会計期間より当該事業は非継続事業として分類しています。
また、当該事業の除外により、韓国事業の当社グループ内における重要性が相対的に上昇したため、当連結会計年度より、報告セグメントを「日本事業」と「韓国事業」に変更しています。
①「その他の海外事業」セグメントの売却について
当社グループが主な事業を営むマーケティングリサーチの市場は、従来の「リサーチ業界」から、業界の垣根を越えた融合が進み、デジタルデータの収集・分析を行う企業や、コンサルティング・レポート提供を行う企業など、関連するその周辺業界の売上を含む「インサイト産業」へと大きな転換期を迎えています。
こうした状況下、当社グループにおいても事業モデルの変革を推進しており、その変革は日本及びアジア市場を中心に進めてきました。一方、技術変化が早い欧米を中心としたグローバル市場において事業展開し、「その他の海外事業」セグメントを構成していたMetrixLabグループにおいても、同様の変革が必要不可欠だと考えていました。こうした中、グローバルなリサーチパネル及び先進的なリサーチプラットフォーム提供事業者であるToluna社と、MetrixLabグループとの経営統合を行うことが、インサイト産業へと変革を遂げる市場環境の変化にいち早く対応することができ、より競争優位性及び成長力に繋がると判断しました。
このため、「その他の海外事業」セグメントを構成するMetrixLabグループの株式を保有する当社の子会社Siebold Intermediate B.V.社の全株式を、Toluna社に譲渡しました。この取引の結果、2023年6月期第4四半期連結会計期間より、当社グループから「その他の海外事業」セグメントが除外されることとなりました。
②「日本事業」セグメントについて
日本においては当社並びに広告代理店との合弁事業である株式会社電通マクロミルインサイト及び株式会社H.M.マーケティングリサーチ等の子会社で構成され、主に当社が独自開発した自動インターネットリサーチシステムを利用したオンラインリサーチ、デジタルリサーチ(注1)、オフラインリサーチ、データベースサービスを提供しています。
マーケティングリサーチとは、企業や公共機関が、消費者が本当に望んでいるもの、本当に魅力を感じるものを作るための情報(消費者インサイト)を科学的に集め、分析し、商品企画や販売戦略等に反映させる手法です。
マーケティングリサーチ市場における一般的な市場調査は、郵送・電話・座談会等で消費者の意見を聴取する手法(オフラインリサーチ)と、インターネットを活用してパネル(注2)と質問・回答のやりとりを行う手法(オンラインリサーチ)に大別されますが、当社は日本において他社に先駆けてオンラインリサーチ事業を開始し、日本のオンラインリサーチ市場においてNo.1の市場シェア(注3)を有しています。
また、「インサイト産業」へと業界変化が加速する中で、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、データ利活用支援事業(データコンサルティング)の拡大や、プラットフォーム型のソリューション開発を強化し、「マーケティングリサーチ企業」から、「総合マーケティング支援企業」への事業モデルの変革を推進しています。
③「韓国事業」セグメントについて
韓国においては、Macromill Embrain Co.,Ltd.とその子会社で構成されており、日本同様に、オンラインリサーチ、オフラインリサーチを主なサービスとして提供しています。
また、韓国の大手リサーチ会社の中で唯一保有する自社パネル基盤を活かし、日本で既に実施している購買データ提供等に係る新規事業を推進するなど、自社の構造的な強みを活かしたサービス展開を図り、日本で先行して進めている事業モデルの変革を韓国においても追求しています。
当社グループは、「Build your Data Culture ~ 私たちは、データネイティブな発想でお客様のマーケティング課題を解決し、ビジネスに成功をもたらすData Culture構築の原動力となることを目指します。」というグループビジョンを掲げ、このビジョンの下で、引き続き「総合マーケティング支援企業」へと事業モデルの変革を推進していきます。今後も、当社が保有する消費者パネルから得られる様々なデータを活用した革新的なサービスを提供し、マーケティングビジネス領域全体にイノベーションを拡げることを目指す方針です。

(注)
1.デジタルリサーチ
デジタルデータやデジタル施策を使ったマーケティング活動の総称であり、広告のプリテスト、様々なメディア媒体における広告効果測定、ソーシャルメディア分析等を通じて国内外における顧客企業のデジタル広告支出の最適化に資するデータを提供することを中心とした事業領域を意味します。
2.パネル
質問票に対する回答者予備群として会員登録されている様々な属性の調査対象者のこと。個々のリサーチの目的に応じ、パネルの中から、年齢、性別、購買履歴、その他から属性別に回答者を抽出し、本調査の対象者として回答を依頼します。当社ではその属性を詳細に把握し、必要に応じてタイムリーに直接コンタクトが可能な3,600万人を超える良質な自社パネルをグローバルに保有しております。
3.No.1の市場シェア
オンラインリサーチ市場シェア=当社日本事業 注力事業及び株式会社電通マクロミルインサイトにおけるオンラインリサーチ、株式会社H.M.マーケティングリサーチのオンラインリサーチに係る売上高(2024年6月期)÷一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)によって推計された日本のMR業界市場規模アドホック調査のうちインターネット調査分(2023年分)(出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)2024年6月 第49回経営業務実態調査)。
[オンラインリサーチの流れ]
オンラインリサーチは、顧客企業のリサーチニーズを反映した調査票をインターネット上で再現した後に、パネルへアンケートを依頼して回答を収集します。インターネットを活用することで、タイムリーかつ低価格なサービスの提供が可能となっています。また、さらに深いインサイトを把握したい顧客に対しては、別途集計グラフ、調査レポートを作成して納品しています。また、オンラインリサーチ以外にも多彩な調査サービスを提供しており、顧客の意思決定に貢献する様々なソリューションの提供を実現しています。パネルには、アンケート回答の謝礼としてポイントを付与しています。
これら一連のソリューションを、データ納品のみを行う最も短い案件では24時間、標準的には実査の開始から1週間程度で提供しています。

[リサーチパネル及び取得可能なデータ]
当社グループは、日本において自社パネル約130万人、国内アンケート回答パネル約3,600万人(2024年6月末現在)を有しています。マーケティングリサーチ企業のソリューション力を決定づける要素の一つが、取得可能なデータです。パネルから得られた回答結果に、取得・保有する独自のデータ群を組み合わせ、分析することで、消費者インサイトを把握・抽出し、それを踏まえたソリューションを提供しています。
当社グループが取得可能なデータは、パネルのアンケート回答から得られる購入理由や満足度といった「意識データ」、当社独自のデータとして蓄積・保有しているTV視聴ログ、パソコン、モバイル及びスマートフォンにおけるインターネット上のWEB閲覧ログ、EC購買ログ等の「行動データ」、人口統計データや心理特性データを含む「属性データ」から構成されています。自社パネルから取得可能なデータに加えて、グローバルなパネルネットワークを活用することで、当社グループの主要な顧客に対して、世界中の消費者インサイトを提供することが可能となっています。
一般的な事業会社におけるマーケティングプロセスは、下表のように4つに分類され、当社グループでは、それぞれのプロセスにおける目的や課題に応じたリサーチサービスを提供しています。

[事業系統図]
当社グループの事業の系統図は次のとおりであります。

2024年6月30日現在
(注) 1.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。
2.売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く)の連結売上収益に占める割合が10%を超えています。2024年6月期に作成されたIFRSに基づく財務諸表における主要な損益情報等は以下の通りです。
3.議決権の所有割合の( )内は間接所有割合を内数で示し、[ ]内は緊密な者又は同意している者の所有割合を外数で示しています。
4.特定子会社に該当しています。なお、その他の連結子会社17社のうち、Macromill UK Holdings Ltd. は特定子会社に該当しています。
5.議決権の所有割合は100分の50以下ですが、他の株主と株主総会において当社の議決権行使に同意する旨の株主間契約を締結しており、当社がMacromill Embrain Co.,Ltd.への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー又は権利を有し、かつ投資先に対するパワーにより当該リターンに影響を及ぼす能力を有している状況にあると判断し、子会社としています。
6.株式会社H.M.マーケティングリサーチは、2024年7月1日にQO株式会社に社名変更しています。
2024年6月30日現在
(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しています。
2.臨時雇用者数は、パートタイマーの従業員のみであり、派遣社員は除いています。
2024年6月30日現在
(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数を( )外数で記載しています。
2.臨時雇用者数は、パートタイマーの従業員のみであり、派遣社員は除いています。
3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
4. 提出会社の従業員及び臨時従業員は、全て日本事業のセグメントに属しております。
① 提出会社
2024年6月30日現在
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.女性管理職比率は、2025年度期初(2024年7月1日)時点では、25.3%となっております。
② 常時雇用する労働者数が101人以上300人未満である連結子会社
2024年6月30日現在
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.女性管理職比率は、2025年度期初(2024年7月1日)時点では、株式会社電通マクロミルインサイトでは24.1%となっており、株式会社H.M.マーケティングリサーチ(現QO株式会社)では、31.0%となっております。
(4) 労働組合の状況
当社グループの一部の子会社においては、労働組合が組織されています。なお、労使関係は円満に推移しています。