第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループは、中期的な経営方針、事業環境の予測を策定しており、概要は以下のとおりとなります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営戦略等

①国内販売体制の強化

 医療・高齢者施設市場の強化と介護レンタル市場のシェア拡大

②製品ラインナップ、事業領域の拡大

 ・マットレスなどベッドの周辺機器のラインナップ拡充

 ・医療高齢者施設向けベッド及び周辺機器のラインナップ拡充

③生産体制・コスト競争力の強化

 ・既存商品の継続的なコスト削減と新商品の開発コスト低減

 ・外部環境の変化に対応した生産及び安定供給体制の構築

④海外市場(東アジア)の強化

 海外向けの医療用ベッドの販売体制づくり

⑤環境変化に適応した体制作り

 働き方改革、新たな生活様式への適応

 

(2)経営環境

 当社グループの医療介護用電動ベッド事業の各販売先市場における経営環境のとおりであります。

販売先市場

経営環境

福祉用具流通市場

・介護保険制度の改正に伴う、要介護認定の厳格化及び適正化

・福祉用具の貸与価格の低下が一層進行

・医療、介護機能の再編(医療施設の病床数削減と介護サービス量の拡大)

・新型コロナウイルスの感染拡大による事業活動への影響及び新たなニーズの発生

医療・高齢者施設市場

・高齢化の進展に伴う、要介護度が中度以下(※)の介護認定者の重度化

・高齢者施設数の絶対的な不足とそれに応じた厚生労働省及び国土交通省の施設建設

計画の継続

・医療、介護機能の再編(医療施設の病床数削減と介護サービス量の拡大)

・新型コロナウイルスの感染拡大による事業活動への影響及び新たなニーズの発生

家具流通市場

・一般家具及び普通ベッド市場の需要低迷

・自宅での利用を前提としたデザイン性へのニーズの高まり

海外市場

「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ④ 海外市場(東アジア)の拡大」に記載のとおりであります。

※要介護度が中度以下…要介護度が要介護3以下の要介護認定者

 

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等として、ROE(自己資本利益率)を意識した経営を行っております。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 ① メーカー機能の再強化

 当社グループは、医療介護用電動ベッドの製造販売を主たる業務としており、「高品質・高機能・低価格」を企業の強みとして事業展開しております。

 当社グループでは、持分法適用関連会社のSHENGBANG METAL CO.,LTD.が、当社の主力製品である医療介護用電動ベッド及び周辺機器等の主要な部品であるスチール部品の製造から、品質検査、アッセンブリを行っており、品質検査については、当社の品質管理部門が指導、管理を行っております。

 既存の生産拠点の効率化を図りつつ、外部環境の変化により発生する原材料高や為替相場の変動によるコストアップ、製造停止などのリスクにも対応するため、生産拠点についてベトナムに集中している現状の見直しを行い、強固な供給体制を構築してまいります。

 また、中長期的な観点で技術向上と製品開発を進めることでメーカー機能の再強化を図り、顧客視点の商品・サービスづくりを行ってまいります。

 

 ② 将来を担う人材育成と活躍のサポート

 少子高齢化による労働人口の減少を受けて、当社グループが属する医療介護業界においては人材不足が深刻化しております。

 企業価値の向上を図るには人材の確保とそのスキル向上が不可欠となります。人事評価制度と人材育成プログラムの見直しなど働きやすい職場環境の整備に注力するほか、新規事業などイノベーションを促進する人的資本戦略を策定及び遂行してまいります。

 

 ③ 国内既存市場の維持拡大と新分野へのチャレンジ

 当社グループは、医療介護用電動ベッドの製造・販売を主たる業務としており、福祉用具流通市場における収益がグループ収益の大半を占めております。当社グループは、当該市場の収益を基盤としつつ、医療・高齢者施設市場に注力することで国内既存市場の維持拡大を図ってまいります。

 また、マットレスといった従来からのベッドに関連した製品については、連結子会社であるやまと産業株式会社と連携した製品開発を行うほか、新分野の製品を企画開発していくことで製品ラインナップ及び事業領域を拡大させることにより、ベッド以外の収益源を確保し、安定した収益構造を構築してまいります。

 

 ④ 海外市場(東アジア)の拡大

 世界的な平均寿命の延伸と出生率の低下により、高齢化は日本国内に留まらず、世界規模での社会問題となっております。当社グループでは、中国を中心とした東アジア圏市場の開拓に取り組んでおり、販売の実績を着実に積み上げております。特に中国市場においては、当社製品の拡販と新顧客開拓を図るため、連結子会社の富若慈(上海)貿易有限公司を中心に営業活動を展開しております。また、Haierグループとの合弁事業を推進することで中国市場での展開スピードを加速してまいります。

 今後も各国の介護ニーズにあった商品開発や有力な代理店網の構築等の事業施策を展開するなど販売体制を構築していくことで市場の拡大を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、事業に影響するサステナビリティ関連のリスクや機会を抽出し、対応する取り組みを事業・経営戦略に統合することで、事業活動とサステナビリティを一体化しております。

 事業・経営戦略の進捗管理は、経営戦略会議において行われ、その結果を取締役会に報告し、監督を受けることとしております。

 

(2)戦略

 短期、中期及び長期にわたり当社グループの経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組のうち、重要なものについて該当事項はありません。

 また、少子化による労働力不足が予想される中、人的資本への投資は一層重要な経営課題と認識しております。当社グループでは、優秀な人材の確保と生産性の向上を目的として、従業員が高いモチベーションを持ち、働き甲斐を感じることができるような社内環境の整備に取り組んでまいります。

 

(3)リスク管理

 取締役会、経営戦略会議のほか、内部統制委員会などの各種の専門委員会の合議により、具体的な執行内容の決定と進捗管理が行われ、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。各部門においては、決定された事項、具体的な施策及び効率的な業務の執行と進捗の報告が行われておりリスクに応じた適切な対応を行っております

 

(4)人的資本に関する方針及び戦略

 当社グループにおける、人材の確保及び育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針及び戦略は、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ② 将来を担う人材育成と活躍のサポート」に記載しております。

 

(5)人的資本に関する指標及び目標

 人的資本に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標については、以下のとおりであります。なお、目標及び実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標

目標

実績

有給取得率

58.0%

69.8%

育児休業取得率

100.0%

100.0%

※育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を記載しております。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)介護保険制度について

 当社及び連結子会社の主要取引先であるレンタル卸業者、福祉用具貸与事業者及び高齢者施設においては、「介護保険法」をはじめとする各種関連法令によって規制を受ける公的サービスが事業の中心となっております。また、これらの公的サービスは5年毎の介護保険制度の改正、3年毎の介護報酬の改定が行われることとなっており、上記の主要取引先の収益に影響を与える可能性があります。

 従って、介護保険制度の改正等が行われる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)商品の欠陥について

 当社グループの生産拠点である持分法適用関連会社のSHENGBANG METAL CO.,LTD.及び海外の仕入先においては、JIS(日本工業規格)、連結子会社のやまと産業株式会社においては取引先が求める品質基準に則して各種商品を製造しておりますが、商品について全く欠陥が発生しないという保証はありません。また、当社及びやまと産業株式会社は製造物責任賠償に係る保険に加入しておりますが、この保険によって最終的に当社グループが負担する賠償額すべてをカバーできるとは限りません。

 万一、大規模な無償交換(リコール)につながる商品の欠陥が生じ、当社グループが賠償責任を負う場合、多額のコストが発生することとなり、さらに商品に対する評価と会社の信用を大幅に低下させ、当社グループのブランドの毀損につながります。また、商品の欠陥を原因とした事故の発生等により、その過失や補償を巡って第三者との訴訟に発展する可能性もあります。

 その場合は収益が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)為替変動等について

 当社グループは、部品及び商品の輸出入取引を行っており、それらに係る外貨建金銭債権債務(外貨建予定取引を含む。)について、米ドル、ベトナムドン、ユーロにおける為替相場の変動リスクを有しております。

 そのため当社は、当社グループの業績及び財政状態にもっとも影響を与える米ドルの為替変動によるリスクをヘッジする目的で、米ドルに対して為替予約取引、通貨スワップ取引(クーポンスワップ)、通貨オプション取引(ゼロコストオプション取引)の為替デリバティブ取引を行っております。

 当社は、為替リスク管理規定において、取締役会にて、将来の各期間における想定仕入高に対しての外貨建取引の割合(実需)を想定し、その範囲内で短期(1年以内)、中期(1年超)及び長期(2年超)の為替デリバティブ取引の配分方針を決定する旨を定めております。

 当社グループは部品及び商品を主に海外から調達するとともに生産拠点をベトナムに擁していることから、円安(円高)となった場合、短期的には、円ベースでの売上原価が増加(減少)し、売上総利益率が低下(上昇)する一方、為替差益(差損)の計上により営業外収益(費用)が増加する傾向があります。一方、中長期的に円安傾向となった場合、円ベースでの売上原価が増加し、当社グループの利益が減少する可能性があります。

 ヘッジ会計が適用されない為替デリバティブ取引は、各四半期末及び期末時点での当該取引の残高について期末為替レートを以て時価評価を行い、その評価損益は営業外損益の為替差損益に計上されます。

 従いまして、期中に為替相場が大きく変動した場合、各四半期の経常利益と当期純利益は著しく変動する可能性があります。

 過去において、為替相場の変動が、為替差益、為替差損等として、当社グループの損益に与えた影響の状況は、以下のとおりとなります。

 

連結経営指標等

 

(単位:千円)

回次

第28期

第29期

第30期

第31期

第32期

(当連結会計年度)

会計期間

自2019年7月1日

至2020年6月30日

自2020年7月1日

至2021年6月30日

自2021年7月1日

至2022年6月30日

自2022年7月1日

至2023年6月30日

自2023年7月1日

至2024年6月30日

売上高

6,098,321

7,040,247

6,379,051

6,312,632

6,387,477

売上総利益

(売上総利益率)

2,473,134

(40.6%)

2,858,635

(40.6%)

2,166,922

(34.0%)

1,798,017

(28.5%)

1,896,148

(29.7%)

営業利益又は営業損失

559,182

724,924

100,777

△108,741

37,488

営業外収益

為替差益

 

1,762

 

21,897

 

186,963

 

19,552

 

19,197

営業外費用

為替差損

 

 

 

 

 

経常利益

664,184

873,857

394,036

25,120

187,329

親会社株主に帰属する当期純利益

507,818

305,855

263,597

222,379

65,675

 

(4)特定の仕入先の集中・依存について

 当社は、医療介護用電動ベッドにおける主要部品について開発・設計を行い、海外の仕入先に製造委託しております。現時点では当該仕入先への依存度は高いものの、継続的で良好な取引関係を維持しております。しかしながら、当社及び連結子会社と仕入先との良好な取引関係が、何らかの事情によって取引に支障をきたし、主要部品の調達が困難となった場合は、他の仕入先での代替も可能であると考えておりますが、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5)生産拠点及び仕入先の海外への集中・依存について

 当社グループの生産拠点及び仕入先は、持分法適用関連会社であるSHENGBANG METAL CO.,LTD.を起点にベトナム及び東アジアに集中しており、東アジア各国の政治・経済情勢の不安定さや周辺国同士との関係悪化等に起因するカントリーリスクが存在しております。当該リスクにより主要部品の調達が困難となった場合やインフレに伴い仕入コストの上昇等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)競合について

 今後予測される高齢者人口の増加に伴い、医療介護用電動ベッドのみならず、介護市場全体の拡大が推測され、異業種からの新規参入や同業他社の事業拡大のスピードが加速されるものと考えられます。

 当社グループは、こうした競合との競争に対応するため、あらゆる施策を講じてまいりますが、価格競争の激化等が当社グループの想定を超える場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自然災害及び疫病等によるリスクについて

 地震等の自然災害または大規模火災等により、当社グループの生産拠点や仕入先に重大な損害が発生し、操業中止、生産や出荷の遅延や減少等が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型化コロナウイルスの感染拡大については、収束したものと判断しておりますが、必要に応じてWeb会議システムや在宅勤務などを行うことで接触機会の低減をしつつ、営業活動を維持する体制を構築しております。

(8)情報システムについて

 当社グループの事業は、販売管理システムをベースとした日常業務が行われており、このシステム運用については十分な安全性を確保していると考えております。しかしながら、自然災害、システムハード及びネットワークの不具合、コンピューターウイルス等による予測不可能な事態によりシステム障害が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)海外の事業展開について

 当社グループでは、中国を中心とした東アジア圏市場の開拓に取り組んでおり、現時点では中国及び韓国にて販売の実績を着実に積み上げております。今後は各国の介護ニーズにあった商品開発や有力な代理店網の構築等の事業施策を展開する計画となっております。

 しかしながら、各国の政治的・経済的要因により、輸出入管理・投資規制・収益の本国送金規制・移転価格税制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)知的財産権の侵害について

 現時点において、当社グループの事業活動に影響を与えるような特許権、商標権、意匠権等その他の知的財産権が他社により侵害されているという事実はありません。また同様に、当社グループの申請済みの知的財産権が他社の知的財産権を侵害しているという事実はありません。

 しかしながら、当社グループの事業活動に関連して第三者が知的財産権の侵害を主張して法的手段に訴えた場合、あるいは逆に当社グループが法的手段に訴える場合、訴訟に発展する可能性があります。また、その訴訟の結果によって、当社グループの事業が差し止められ、損害賠償等の金銭的な負担を余儀なくされた場合等において、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)主要原材料等の市況変動について

 当社グループの主要製品である医療介護用電動ベッドの主な原材料である鋼材の価格のほか、樹脂部品やウレタンフォームの原料となる原油価格は、世界規模での需給バランスや各生産地域における経済情勢等により価格が変動しております。

 これらの価格が高騰し、販売価格に転嫁できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)新規事業について

 当社グループは、事業基盤の拡大と収益の安定化を図る目的で、現状保有しているノウハウを活かせる周辺事業領域への展開を推進していく予定です。新規事業を開始するにあたっては慎重な検討を重ねたうえで取り組んでまいりますが、当該事業を取り巻く環境の変化等により、当初の計画通りの成果が得られない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)情報管理について

 当社グループの事業活動において、顧客情報に接することがあり、また営業上・技術上の機密情報を保有しております。これらの各種情報の取り扱い及び機密保持には細心の注意を払っており、不正なアクセス、改ざん、破壊、漏えい及び紛失などから守るために管理体制を構築するとともに、合理的な技術的対策を実施するなど、適切な安全措置を講じております。

 しかしながら、万が一、情報漏えい等の事故が起きた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの収束に伴い景気回復の傾向が見受けられるものの、円安や国際情勢の不安定さを受けた物価高が続いており、景気下押しが懸念される状況となっております。

 また、米国においては、段階的な利上げから利下げ局面へと転換したものの、景気動向は強含みの傾向が見られるほか、物価高も継続しており、引き続き利下げのタイミングを探る状況となっております。

 一方、中国においては、大手不動産会社の経営不振及び米国での破産申請を契機に中国経済の更なる停滞が不安視されております。その他、ロシアのウクライナ侵攻が継続していることに加え、2023年10月にイスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突が発生するなど、地政学的リスクの問題は継続していることから、国際情勢は引き続き不透明な状況が続くと考えられます。

 介護保険制度の状況につきましては、2024年3月時点の要支援及び要介護認定者の総数は、前年比で2.2%増加し734万人、総受給者数は同3.0%増加し561万人となっております。また、福祉用具貸与制度における特殊寝台利用件数については前年比で3.7万件増加し、109.7万件(前年比3.5%増)となっております(出所:厚生労働省HP「介護給付費等実態統計月報」)。

 このような市場環境の中、福祉用具流通市場の当連結会計年度の販売実績は前期比で0.1%減少し、4,424百万円となっております。

 医療・高齢者施設市場におきましては、介護保険制度における施設サービス(特別養護老人ホーム等)、特定施設及び地域密着型サービス(有料老人ホーム等)を提供する事業所数が2024年3月時点で4.2万事業所(前年比0.4%増)となっております(出所:厚生労働省HP「介護給付費等実態統計月報」)。また、国土交通省による「高齢者等居住安定化推進事業」に基づく高齢者住宅(サービス付き高齢者住宅)につきましては、2024年3月時点で8,294棟(同1.1%増)、28.7万戸(同1.7%増)となっております(出所:サービス付き高齢者住宅情報提供システムHP「登録情報の集計結果等」)。

 このような市場環境の中、当連結会計年度の同市場の販売実績は前期比で8.5%増加し、1,794百万円となっております。

 家具流通市場における医療介護用電動ベッドの状況としましては、一般ベッドと同様に減少傾向が続いていることなどから、当連結会計年度の同市場の販売実績は前期比で37.1%減少し、51百万円となっております。

 海外市場におきましては、主力の中国市場の景気低迷などの影響で年明け以降の施設案件が前年比で減少したことなどから、当連結会計年度の同市場の販売実績は前期比で21.4%減少し、117百万円となっております。

 なお、当社及び連結子会社における当連結会計年度の医療介護用電動ベッドの総販売台数は4.1万台(前期比1.3%減)となっております。

 為替の状況に関しましては、当連結会計年度の仕入実績為替レートが1ドル=146円19銭となり、前期と比較して円安傾向となりました。その一方で、2022年10月から実施した値上げの影響で全体の販売単価が向上したほか、製品コスト及び海外物流コストの低減などの影響も重なったことから売上総利益率は29.7%(前期比1.2ポイント増)となっております。

 また、営業外収益として持分法による投資利益133百万円(前期比14.0%増)、為替差益19百万円(前期比1.8%減)を計上しております。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

A.財政状態

 当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ249百万円増加し、6,274百万円となりました。

 当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ199百万円増加し、3,079百万円となりました。

 当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ49百万円増加し、3,194百万円となりました。

 

B.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高6,387百万円(前期比1.2%増)、営業利益37百万円(前期は営業損失108百万円)、経常利益187百万円(前期比645.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、繰延税金資産の一部取り崩し等を法人税等調整額に計上したことから65百万円(同70.5%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ57百万円増加し2,055百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況の分析内容と資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、増加した資金は392百万円となりました。これは主に、持分法による投資損益133百万円、棚卸資産の増加額87百万円、税金等調整前当期純利益187百万円、為替差損120百万円、利息及び配当金の受取額103百万円、法人税等の還付61百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、増加した資金は141百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出26百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出158百万円、貸付金の回収による収入337百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、減少した資金は478百万円となりました。これは主に、セール・アンド・リースバックによる収入14百万円、長期借入金の返済による支出399百万円、配当金の支払額51百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

A.仕入実績

 当連結会計年度の仕入実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

前期増減率

(%)

医療介護用電動ベッド事業(千円)

4,248,295

3.3

 

B.受注実績

 当社グループは需要予測に基づく見込み生産を行っておりますので、該当事項はありません。

 

C.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

前期増減率

(%)

医療介護用電動ベッド事業(千円)

6,387,477

1.2

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで

あります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱日本ケアサプライ

857,028

13.6

878,862

13.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、会計方針の選択・適用、資産・負債、収益・費用の金額等開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りにつきましては、過去の実績を勘案し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

 なお、当社の連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析

イ.経営成績等

A.財政状態

(資産合計)

 流動資産は、前連結会計年度末に比べて262百万円増加し、4,340百万円となりました。これは主に、流動資産のその他は減少したものの、現金及び預金、受取手形及び売掛金、未着品が増加したことによるものです。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べて13百万円減少し、1,934百万円となりました。これは主に、建物及び構築物、機械・運搬具及び工具器具備品、投資有価証券は増加したものの、長期貸付金、繰延税金資産が減少したことによるものです。

 この結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて249百万円増加し、6,274百万円となりました。

(負債合計)

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ208百万円増加し、1,705百万円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金、リース債務は減少したものの、買掛金、未払法人税等、流動負債のその他が増加したことによるものです。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ8百万円減少し、1,373百万円となりました。これは主に、役員退職慰労引当金、繰延税金負債が増加したものの、長期借入金、リース債務が減少したことによるものです。

 この結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて199百万円増加し、3,079百万円となりました。

(純資産合計)

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて49百万円増加し、3,194百万円となりました。これは主に、為替換算調整勘定が増加したことによるものであり、自己資本比率は50.9%となりました。

 

B.経営成績

(売上高及び売上総利益)

 売上高は、前連結会計年度に比べて1.2%増加し、6,387百万円となりました。これは主に、家具流通市場の販売実績が前期比で37.1%、海外市場の販売実績が前期比で21.4%減少したものの、医療・高齢者施設市場の販売実績が前期比で8.5%増加したことなどによります。

 売上総利益は、前連結会計年度に比べて5.5%増加し、1,896百万円となりました。これは主に、当連結会計年度の仕入実績為替レートが1ドル=146円19銭となり、前期と比較して円安傾向となった一方で、2022年10月から実施した値上げの影響で全体の販売単価が向上したほか、製品コスト及び海外物流コストの低減などの影響も重なったことから売上総利益率は29.7%(前期比1.2ポイント増)となっております。

 

(営業利益及び経常利益)

 営業利益は、上述の売上高が前連結会計年度に比べて増加したことに加え、売上総利益率の良化を受け、営業利益37百万円(前期は営業損失108百万円)となりました。

 経常利益は、前連結会計年度に比べて645.7%増加し、187百万円となりました。この結果、売上高経常利益率は、前連結会計年度に比べ2.5ポイント増の2.9%となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べて70.5%減少し、65百万円となりました。この結果、1株当たり当期純利益は18.52円、自己資本当期純利益率は2.1%となりました。

 

C.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容」に記載のとおりであります。

 

ロ.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のある要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおり認識しており、これらのリスクについては発生の回避に、又は発生した場合の対応に万全を期すべくリスク管理に努めてまいります。

 

ハ.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。また、設備投資並びに事業投資等の長期資金需要につきましては、自己資金はもとより、金融機関からの借入等、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討しております。

 

ニ.経営方針、経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、中長期的にROE(自己資本利益率)の向上を目指す価値創造企業を目指しております。当連結会計年度におけるROEは2.1%であり前期比で5.2ポイント減、中期経営計画における当該指標の目標値であった3.8%と比べて1.7ポイント下回りました。「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、既存の生産拠点の効率化と生産拠点の見直しと中長期的な観点からの技術向上と製品開発などにより、当該指標の向上に邁進していく所存でございます。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年4月18日開催の取締役会において、やまと産業株式会社の全株式を取得し、子会社化することを決議し、2024年4月30日付けで株式を取得いたしました。

 詳細は、「第5 経理委の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、医療介護用電動ベッド事業においてのみ研究開発活動を行っております。

 当社は、「医療介護、健康福祉、ベッド業界に対し、高品質・高機能・低価格をテーマにした製品作りに徹し、お客様に満足と喜びを感じてもらうことを最大の目標に恒久的に社会に貢献するものである。」という企業理念のもと研究開発活動を行っております。

 当社では、製品の企画・開発・設計のほか、既存製品の改良・改善を行っております。当連結会計年度の研究開発費は、26百万円となっております。

 当社は、当社に製品試験設備を設置して、日本工業規格(JIS)と当社安全基準に基づいた各種安全性試験を実施しており、製品の品質の維持・向上に努めております。