当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当社グループは著作物を公正利用のもと、出来るだけ広く頒布し著作者に収益を還元するという「著作物の健全なる創造サイクルの実現」をミッション、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」をビジョンに掲げ、日本における文化の発展及び豊かな社会づくりに貢献するため、積極的な業容の拡大と企業価値の向上に取り組んでおります。
日本国著作権法第一章 総則の第一条に謳われる『著作物は文化の発展に寄与』、『著作物の利用と保護の調和』を第一義に、デジタル化された数多くの著作物をより多くの人に届け、その利用における適正な対価を著作者に還元し、また新たな著作物が創造されるよう“著作物の健全なる創造サイクル”の一翼を担うことを目的に事業を行っております。
① 経営成績
当中間連結会計期間における当社グループの連結業績は、2024年2月に獲得した新規商流の業績寄与並びに既存商流の売上成長により電子書籍流通事業の売上高が好調に推移したことに加え、主にIP・ソリューション事業において利益改善が進んだ戦略投資事業での営業赤字が縮小したことにより、増収増益となりました。他方、出版子会社のジャイブが電子書籍の制作販売事業に注力するべく紙書籍事業から撤退したことに伴う事業整理損等を特別損失として計上しました。
その結果、当中間連結会計期間の売上高は51,057百万円(前年同期比10.0%増)、営業利益は1,096百万円(前年同期比10.4%増)、経常利益は1,034百万円(前年同期比10.3%増)、親会社株主に帰属する中間純利益は521百万円(前年同期比2.2%増)となりました。
当中間連結会計期間のセグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(電子書籍流通事業)
電子書籍流通事業については、引き続き「コミックシーモア」「Amazon Kindle」等の電子書店への電子書籍の取次や電子書籍配信ソリューションの提供を行いました。2024年2月末時点で、取引先としての出版社は2,200社以上、電子書店は150店以上、取扱コンテンツ数は210万点以上、出版社や電子書店とのキャンペーン管理数は年間1.7万件以上にのぼっており、当社グループは国内最大の電子書籍取次事業者として出版業界の発展に貢献しております。近年、電子書籍市場の拡大に加え、話単位での配信等、多様な配信形態が浸透したことで、出版社と電子書店が取り扱うコンテンツ数とキャンペーン数は増大し続けており、電子書籍の流通にかかる運用コストが年々増加していることから、電子書籍取次の重要性が高まっております。当社は基幹システムの連携や時流に合わせた新規のシステム開発を行うほか、取次に関して蓄積されたノウハウに基づくきめ細やかなサポートを通じて、電子書籍の円滑な流通及び出版社と電子書店の業務の効率化、配信事故率の低減に引き続き貢献することで、電子書籍市場そのものの拡大と、当社流通シェアの拡大を目指しております。
当中間連結会計期間においては、2024年2月に獲得した新規商流及び既存商流の売上高が好調に推移する等、再び成長基調に回帰しております。一方、セグメント利益についてはエンジニア人件費の資産振替額が減少した影響等により微増に留まりました。
その結果、売上高は47,130百万円(前年同期比10.1%増)、セグメント利益は2,514百万円(前年同期比0.1%増)となりました。
(戦略投資事業)
戦略投資事業は、FanTop事業、インプリント事業、IP・ソリューション事業、国際事業の4事業で構成されております。
FanTop事業については、紙書籍に資産性のあるNFTデジタルコンテンツを付帯し、自社開発・運営を行っているNFTマーケットプレイス上にNFTデジタルコンテンツを流通させることで、出版業界及びコンテンツ業界の活性化を目指しております。引き続き発行部数の多い雑誌へのアプローチを強化した結果、2024年8月末時点の累計発行部数は254万部を突破したほか、2024年8月にはイベントチケット(DCT:デジタルコンテンツチケット)として特別動画コンテンツをデジタルチケットとする世界初の試みを行うなど、非出版物向けの取組みも進捗しております。
インプリント事業については、出版社の日本文芸社での魅力ある作品づくりのほか、小説投稿サイトのエブリスタで発掘した作品のノベライズやコミカライズ、これらのマルチメディア化を推進することで、コンテンツ市場のさらなる拡大に貢献することを目指しております。特に日本文芸社においては、電子書籍のキャンペーン強化による注力コンテンツの売り伸ばしが貢献したほか、紙書籍の出版においては納品部数の適正化を通じた収益構造の改善の取組みが進み、業績は第1四半期に底打ちし第2四半期から改善基調となっております。来期以降の通期黒字化を目指し、引き続き各種取組みを推進してまいります。
IP・ソリューション事業については、出版社から消費者まで幅広く電子書籍に関するサービスを展開することで、主に国内出版市場の拡大を図り、相乗的な収益機会の獲得を目指しております。書籍の要約サービスを提供するフライヤーは、SaaS型のビジネスモデルを展開しており、累計の法人契約数は1,000社を超える等、着実に顧客基盤を拡大した結果、2024年7月度、8月度においては単月黒字を達成しました。そのほか、㈱NTTドコモとの海外向け電子コミック配信サービス開始に向けた業務受託売上、オーディオブック事業におけるAudible提供作品の複数ヒットによる売上増、縦スクロールコミック事業でのオリジナル作品制作からの撤退による一時的な効果などもあった結果、営業赤字が縮小しました。
国際事業については、米国の5大出版社を含む欧米の出版社に対して、DXサービスをSaaS型のビジネスモデルで提供しており、欧米の出版社とのネットワークを構築するほか、海外の出版DXのノウハウを将来的に日本の出版社にも展開することを目指しております。既存顧客のサービス解約率が0~3%と低く、法人契約数の積み上がりとともに売上高が増加しております。北米においてはマンガをはじめとした日本コンテンツ需要の高まりを背景に国内出版社・電子書店の海外進出ニーズが拡大しており、当社のネットワークとノウハウを活用したコンテンツの海外展開支援を引き続き積極的に行い、収益成長を目指します。
以上のとおり、当中間連結会計期間の戦略投資事業においては、IP・ソリューション事業をはじめ、FanTop事業、国際事業が赤字幅縮小に貢献しました。また、日本文芸社においても企業体質の改善が着実に進んでいるものの、その本格的な効果は下期以降に期待できるものであることから、インプリント事業については前年同期比で減益となりました。
その結果、戦略投資事業全体としては、売上高は3,861百万円(前年同期比7.7%増)、セグメント損失は583百万円(前年同期はセグメント損失737百万円)となりました。
② 財政状態
当中間連結会計期間末における資産合計は、現金及び預金が1,232百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が913百万円それぞれ増加した一方、流動資産「その他」が664百万円減少したこと等により、前期末と比べ1,349百万円増加し、52,961百万円となりました。
負債合計は、支払手形及び買掛金が1,723百万円増加した一方、短期借入金が828百万円減少したこと等により、前期末と比べ844百万円増加し、36,247百万円となりました。
純資産合計は、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額が271百万円、利益剰余金が188百万円増加したこと等により、前期末と比べ504百万円増加し、16,713百万円となりました。
③ キャッシュ・フロー
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、12,237百万円となりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,498百万円(前年同期比34.5%増)となりました。
これは、税金等調整前中間純利益984百万円、減価償却費320百万円、のれん償却額329百万円、仕入債務の増加額1,712百万円、未収消費税等の減少額495百万円等が資金の増加要因となった一方、売上債権の増加額864百万円、法人税等の支払額697百万円等が減少要因となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は336百万円(前年同期は363百万円の支出)となりました。
これは、有形固定資産の取得による支出70百万円、無形固定資産の取得による支出248百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は995百万円(前年同期は1,021百万円の支出)となりました。
これは、長期借入れによる収入798百万円等が資金の増加要因となった一方、短期借入金の純減額829百万円、長期借入金の返済による支出693百万円、配当金の支払額332百万円が減少要因となったことによるものであります。
(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当中間連結会計期間において、当社グループの経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
また、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更又は新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
当中間連結会計期間における研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。