第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。また、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等

① 経営成績

当中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)の経営成績は、以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

当中間連結会計期間

前中間連結会計期間

増減

増減率(%)

売上収益

213,970

205,533

8,436

4.1

売上収益(ライセンス移管

に伴う利益含む)

213,970

230,542

△16,571

△7.2

営業利益

75,869

98,106

△22,237

△22.7

コア営業利益※1

76,374

105,300

△28,926

△27.5

税引前中間利益

93,833

115,603

△21,769

△18.8

親会社の所有者に

帰属する中間利益

83,133

90,593

△7,459

△8.2

EBITDA※2

86,665

114,174

△27,508

△24.1

 

※1 コア営業利益:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益など)を調整した利益

※2 Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:コア営業利益に減価償却費を加えた利益

 

売上収益(ライセンス移管に伴う利益含む)につきましては2,140億円となりました。国内医療用医薬品は477億円(前年同期比50.5%減)となりましたが、この主な要因としましては、2023年度にADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金250億円が計上されていたことと、感染症薬の売上収益が減少したことによるものです。感染症薬の売上収益減少は、前年度と比較してCOVID-19感染者数の減少が主要因ですが、そのような中でもCOVID-19の治療率向上やゾコーバのシェア拡大により、一定の売上収益を計上することができました。海外子会社および輸出の売上収益は283億円(前年同期比23.5%増)となりました。米国・欧州ともにセフィデロコル(米国の製品名:Fetroja、欧州の製品名: Fetcroja)の販売が継続した成長を見せ、米国における売上収益は112億円(前年同期比37.9%増)、欧州における売上収益は83億円(前年同期比35.7%増)となりました。ロイヤリティー収入につきましては、経口2剤合剤や長時間作用型製剤(Long Acting製剤:LA製剤)の安定的な成長や為替の影響により、1,215億円(前年同期比27.1%増)となりました。これらの結果より、売上収益全体としては前年同期比7.2%の減収となりましたが、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金の受領という一過的な要因を除くと4.1%の増収になりました。

利益面につきましては、2023年度は特別早期退職プログラムの実施による一過的な費用があったためその他の費用は大きく減少しましたが、主要な開発プロジェクトへ集中投資したことや為替の影響により研究開発費が増加したことと、プロダクトミックスの変化による売上原価の増加および売上収益の減収に伴い営業利益は759億円(前年同期比22.7%減)となりました。また、税引前中間利益につきましては938億円(前年同期比18.8%減)、親会社の所有者に帰属する中間利益につきましては831億円(前年同期比8.2%減)と、それぞれ減益となりました。しかし、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金の受領を除けば、営業利益、税引前中間利益、親会社の所有者に帰属する中間利益もそれぞれ対前年同期比で増益となりました。

 

 

② 財政状態

当中間連結会計期間末の資産合計は1兆4,567億29百万円で、前連結会計年度末に比べて398億11百万円の増加となりました。

非流動資産は、無形資産等の増加により6,588億20百万円となり、前連結会計年度末に比べて261億7百万円の増加となりました。流動資産は現金及び現金同等物の減少、3ヶ月超の定期預金等の増加の結果、7,979億9百万円となり、前連結会計年度末に比べて137億3百万円の増加となりました。

資本については1兆3,108億円となり、配当金の支払による減少の一方で、中間利益の計上により、前連結会計年度末に比べて582億37百万円の増加となりました。

負債については1,459億29百万円で、前連結会計年度末に比べて184億26百万円の減少となりました。

非流動負債は330億24百万円で、前連結会計年度末に比べて25億76百万円の増加となりました。流動負債は1,129億4百万円となり、未払金(その他の金融負債に含む)の減少等により前連結会計年度末に比べて210億2百万円の減少となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当中間連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、前中間連結会計期間にADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金があったこと等による税引前中間利益の減少の一方で、営業債権の増加等により、前年同期に比べ332億64百万円多い787億97百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産の取得、定期預金の増減等により、前年同期に比べ402億68百万円多い1,084億79百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、支払配当金の増加の一方で、自己株式の取得による支出が前年同期に比べて減少したことにより、前年同期に比べ173億49百万円少ない259億47百万円の支出となりました。

これらを合わせた当中間連結会計期間の現金及び現金同等物の増減額は546億84百万円の減少となり、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物の中間期末残高は、3,034億5百万円となりました。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。

 

(3) 研究開発活動

当中間連結会計期間において、当社グループはCOVID-19関連プロジェクトや注力プロジェクトを中心に積極的に研究開発活動を推進し、進展させました。

① 研究

3大感染症の1つであるHIVにおいて、超長時間作用型の新規インテグラーゼ阻害剤および異なる作用機序のパートナードラッグの創出に向けた研究に注力しました。ユニバーサルワクチンであるS-567123は、単剤で幅広い変異に対して予防効果を発揮することが期待される次世代型ワクチンです。まずは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むサルベコウイルス亜族に対するユニバーサルワクチンの開発を目指しており、2024年第4四半期の臨床入りに向け、開発抗原の選抜が完了しました。また、COVID-19(JN.1株)ワクチンであるS-268024の前臨床開発を決定しました。認知症の症状改善を目指した創薬の取り組みとして、S-898270の研究が進展しました。S-898270は、神経細胞内のPhosphodiesterase 4Dを選択的に阻害する化合物であり、神経・シナプス機能を亢進し、学習記憶を始めとする認知機能を向上させることが期待されます。2025年度上半期中の第Ⅰ相臨床試験入りを目指し、引き続き研究に注力いたします。

上記の内容以外にも、順調に研究が進捗しました。

 

② 開発

COVID-19の経口治療薬エンシトレルビル(日本での製品名:ゾコーバ)については、グローバル第Ⅲ相臨床試験(SCORPIO-HR試験)の結果を入手しました。本試験では、主要評価項目は達成しませんでしたが、エンシトレルビルの優れた抗ウイルス効果が確認されました。症状改善効果については、アジアで12歳以上の軽症/中等症患者を対象に実施した、第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験 Phase 3 part(SCORPIO-SR試験)と同様に事前規定した副次解析を行った際には、プラセボ投与群と比較して、有意な症状消失までの時間の短縮が認められました。現在、SCORPIO-SR試験およびSCORPIO-HR試験で得られた良好な結果に基づき、欧米およびアジア各国の規制当局と製造販売承認の申請に向けた協議を継続しています。また、グローバルでは濃厚接触者を対象とした発症予防試験(SCORPIO-PEP試験)、入院患者を対象としたSTRIVE試験、国内においては、小児を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施中です。COVID-19の起源株1価予防ワクチンであるコブゴーズについては、初回免疫における国内製造販売承認を取得しました。肥満症を適応とした新規メカニズムの経口治療薬候補であるS-309309については、第Ⅱ相臨床試験の結果を入手しました。S-309309の良好な安全性プロファイルや本作用機序におけるヒトでの体重減少傾向が確認されたものの、単剤開発の可否判断の基準として設定していた、ベースラインからの体重減少率(群平均)5%を超えませんでした。GLP-1受容体作動薬とS-309309の併用や切り替えにより、抗肥満薬治療のアンメットニーズを解消できる可能性は十分に残されていることを踏まえ、食事条件を変更した非臨床試験等の実施を併行しながら、今後の開発方針を再検討しています。うつ病治療薬候補であるズラノロンについては、第Ⅲ相臨床試験において、プラセボ群に対する有意なうつ症状の改善効果や即効性、良好な忍容性を確認しました。この試験結果に基づき、国内での製造販売承認申請を実施しました。中長期の成長を支える新たな開発品として、潜在的に大きなアンメットニーズの存在する4つの疾患領域(睡眠時無呼吸症候群、難聴、免疫・アレルギー(花粉症)、ポンペ病)における有望な化合物の取り組みを加速させました。

上記の内容以外にも、順調に開発が進捗しました。

こうした活動の結果、当中間連結会計期間における当社グループ全体の研究開発費は、568億26百万円となり、売上収益に対する比率は26.6%となりました。

 

(4) 主要な設備

前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設のうち、当中間連結会計期間に完了したものは、次のとおりであります。

 

提出会社

事業所名

所在地

セグメントの名称

設備の内容

完成年月

本社

東京都

渋谷区

医薬品事業

投資不動産

2024.6

 

 

3 【経営上の重要な契約等】

当社は、当中間連結会計期間において、以下の契約を締結いたしました。

 

(1)技術導入

相手先

国名

技術の内容

地域

対価の支払

契約期間

CILCARE DEV SAS

フランス

難聴に対する化合物のオプション権

全世界

一時金

2024年5月13日から最長2029年12月31日(オプション期間中にオプションを行使した場合は、オプションに基づくライセンス契約の締結日)

 

 

(2)出資契約

相手先

国名

内容

締結日

FEROCITY CAPITAL II, L.P.

アメリカ

出資

2024.5.31