第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

①経営成績の状況

 当社グループは、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続的な世界を実現するべく、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、月面開発の事業化に取り組んでいる次世代の民間宇宙企業です。

 当中間連結会計期間における世界経済は、引き続き地政学リスクへの警戒が高まる中、物価の高騰によるインフレーション、また不安定な為替の変動等、見通しが不透明な状況が続いております。

 当社グループが属する宇宙資源開発の分野では、アメリカ航空宇宙局(the National Aeronautics and Space Administration、以下「NASA」という。)が推進する有人月探査計画であるアルテミス計画において、月面における平和的・友好的かつ透明性ある活動のガイドラインとなる「Artemis Accords(アルテミス協定)」に、前四半期から4か国 (ドミニカ共和国、エストニア、キプロス共和国、チリ)が新たに合意し、日本と米国を含む全47の国及び地域が調印(2024年10月末時点)するなど、引き続き活発な進捗が見られております。

 日本政府においても、過去対比で大規模な宇宙関連予算が確保され、宇宙分野の民間企業等を後押しする動きが加速しております。2023年11月、民間企業・大学等による複数年度にわたる宇宙分野の先端技術開発や技術実証、商業化を支援するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に10年間の「宇宙戦略基金」を設置し、総額1兆円規模の支援を行うことを目指すことが閣議決定されました。中でも当基金の第1期となる2024年度については合計で3,000億円の予算のもと、宇宙輸送・衛星等・探査等・分野共通で、計22件の技術開発テーマが設定されています。その後、2024年7月からは順次テーマの公募が開始され、2024年10月からは「宇宙輸送機の革新的な軽量・高性能化及びコスト低減技術」に関する2つの公募をはじめとし、順次採択結果が公表されております。

 このような状況の中、当社においては、ミッション2における月面着陸船「RESILIENCEランダー」の最終環境試験を順調に進めておりますが、打上業者であるSpaceX社との協議の結果を受け、打上げ時期を最速2025年1月に更新いたしました。同ミッションで使用予定の、当社欧州子会社により開発された小型月面探査車の搭載も完了するなど、当社としての打上げに向けた準備は順調に進んでおり、「RESILIENCEランダー」は今月中にも打上げ場となる米国フロリダへ向けて輸送予定です。ミッション2において、当社は民間企業3社、大学1校及びアートプロジェクト1件より、総額1,600万米ドルのペイロード輸送を受注しておりますが、来春以降のミッション完了に向けて、引き続き、本契約に基づく売上を計上する予定です。また、当社グループの活動をコンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマーク露出、データ利用権等をパッケージとして販売し技術面や商品開発面での協業を行うパートナーシップ事業においては、ミッション2までを対象とする「HAKUTO-R」のオフィシャルパートナーに、新たに株式会社三井住友銀行が、コーポレートパートナーに栗田工業株式会社及び株式会社ジンズが参画し、総勢22社のパートナーとともにミッション2成功を目指します。

 また、当社米国子会社では、当社のミッション3となる2026年の打上げを目指し、「APEX1.0ランダー」の開発が順調に進捗中です。当社米国子会社は、NASAの「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services, 以下CLPS)プログラム」の下、NASAとの契約主体であるチャールズ・スターク・ドレイパー研究所を中心とするチームの一員として、タスクオーダー・CP-12を受注しております。当ミッション3おける最大の売上が当NASAからの間接的な売上であり、当中間連結会計期間においても継続的に本売上を計上しております。またコロラド州デンバーの米国子会社本社には、今回新たに米国におけるミッションの管制室を開設したり、第75回国際宇宙会議にてミッション3で使用予定の「APEX1.0ランダー」の実物大モックアップを初公開するなど、米国子会社による連続的な商業ミッションの実施に向けた準備も整ってきております。

 以上の結果、当中間連結会計期間における売上高は1,342,166千円(前年同期比0.9%増)、営業損失は3,734,268千円(前年同期は2,041,072千円の営業損失)、経常損失は5,790,602千円(前年同期は2,257,547千円の経常損失)、親会社株主に帰属する中間純損失は6,391,573千円(前年同期は1,537,906千円の親会社株主に帰属する中間純利益)となりました。

 なお、当社グループの事業は月面開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

②財政状態の状況

(流動資産)

 当中間連結会計期間末における流動資産の残高は22,527,038千円で、前連結会計年度末に比べて742,163千円増加しております。これは主に、前渡金が1,393,291千円増加したことによるものであります。

(固定資産)

 当中間連結会計期間末における固定資産の残高は6,018,772千円で、前連結会計年度末に比べて770,202千円増加しております。これは主に、建設仮勘定が892,755千円増加したことによるものであります。

(流動負債)

 当中間連結会計期間末における流動負債の残高は9,081,239千円で、前連結会計年度末に比べて1,422,097千円減少しております。これは主に、短期借入金が1,726,789千円減少、契約負債が568,393千円増加したことによるものであります。

(固定負債)

 当中間連結会計期間末における固定負債の残高は14,081,520千円で、前連結会計年度末に比べて7,296,668千円増加しております。これは主に、長期借入金が7,292,425千円増加したことによるものであります。

(純資産)

 当中間連結会計期間末における純資産の残高は5,383,051千円で、前連結会計年度末に比べて4,362,205千円減少しております。これは主に、利益剰余金が6,391,573千円減少したことによるものであります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ820,171千円減少し、当中間連結会計期間末には16,012,721千円となりました。

 当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により使用した資金は5,325,428千円となりました。これは主に、税金等調整前中間純損失6,388,327千円の計上及び長期前渡金の増加額569,127千円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は1,053,725千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得887,098千円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は5,267,767千円となりました。これは主に、長期借入による収入11,675,000千円によるものです。

 

(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の重要な会計方針及び見積りについて重要な変更はありません。

 

(4)経営方針・経営戦略等

 当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(6)研究開発活動

 当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費活動の金額は2,203,046千円であります。

 なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(7)経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「1事業等のリスク」に記載しております。

 

(8)資本の財源及び資金の流動性について

 当社グループは、中長期的に持続的な成長を図るため、研究開発にかかる費用、人件費及び広告宣伝費等の販売費及び一般管理費等の営業費用への資金需要があります。

 当社グループの運転資金及び設備資金等の財源については、自己資金及び金融機関からの借入により賄っております。当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物は、16,012,721千円であり、必要な流動性を確保しております。

 

(8)継続企業の前提に関する重要な事象を解消するための対応策

 当社グループの属する宇宙関連ビジネスはグローバル・ベースで、継続的かつ加速度的に拡大していくものと見込まれており、この産業の潮流に対応するために必要な技術確立が急がれる状況です。多額の先行研究開発投資と長期の開発期間を要する宇宙関連機器の開発に従事していることから、当社は現在のところすべての開発投資を補うための収益は生じておらず、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上していることから、当中間連結会計期間末時点において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。当該事象又は状況を解消し、安定的な事業収益が創出されるまでの間、下記を重要な課題として取り組んでおります。

 ただし、当該重要事象等を解決するための対応策を実施していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

①研究開発の推進

 R&Dミッションであるミッション2、米国での初の打上げとなるミッション3及び日本で商業用の新たなモデルを使用するミッション6に向けて、打上事業者による打上機会を確保すると同時に、開発スケジュール、開発コスト及び開発クオリティを厳格に管理することで、ランダー及びローバーの開発を着実に進めてまいります。

 

②顧客の開拓

 当社が事業収益を獲得するために必要なランダー及びローバーは開発途上にあります。また当社が事業収益を見込む市場は、現在グローバルでも草創期に当たります。当社では現在ミッション2からミッション4までの顧客からの潜在的受注を確認していますが、事業収益の安定化に向けて引き続き中長期的に持続可能な顧客市場を開拓してまいります。

 

③人材の確保

 当社はランダー及びローバーの研究開発を遂行するために、継続して多様な開発領域について高度な専門性と能力を備えた人材を国内外から雇用しております。

 また、急速に従業員数が拡大する組織の中において、各人材がその能力を最大限に発揮することが可能な環境を整えるための取り組みを引き続き行ってまいります。

 

④成長に対応した内部統制の構築と適切な運用

 当社グループが今後も継続的に事業を拡大していくため、必要な業務プロセス、財務・経理上の体制、労務管理、子会社管理、セキュリティ管理等を整備する等、当社の成長に対応した内部統制の構築および運用の実施を引き続き行ってまいります。

 

 

⑤中長期的な成長資金の確保

 当社にとって、安定的な事業収益化を目指す上で将来的に継続的なミッションの実現が必要であり、そのための必要資金を着実に確保することが重要です。当社ではこれまで、無担保転換社債型新株予約権付社債の発行、第三者割当増資、金融機関からの借入、クラウドファンディング、公募増資等によって資金調達をしてまいりましたが、今後も、ミッション推進のために機動的な資金調達の可能性を適時検討してまいります。

 また、当社はミッション1に関して三井住友海上火災保険株式会社との間で損害保険契約を締結しミッション1において保険金を受領しております。当社は保険によるリスク低減も財務安全性確保のための一つの手段として認識しており、ミッション2以降も保険の利用を検討しております。

 金融機関からの借入については、2022年7月に株式会社三井住友銀行をアレンジャー、株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社商工組合中央金庫をコアレンジャー、株式会社静岡銀行を参加金融機関とする、総額50億円のシンジケートローン契約を締結しております。2024年3月期には複数行より総額75億円の融資契約を締結しており、2024年4月には株式会社三井住友銀行より借換も含めた総額70億円の融資契約を締結しております。さらに、2024年7月には株式会社三井住友銀行をアレンジャー、株式会社みずほ銀行をコアレンジャー、株式会社商工組合中央金庫、三井住友信託銀行株式会社、株式会社SBI新生銀行、株式会社あおぞら銀行、株式会社りそな銀行を参加金融機関とする借換含め総額100億円のシンジケートローン契約を締結しております。

 加えて、第三者割当増資について、第4 経理の状況 (重要な後発事象)に記載のとおり、2024年10月にはCVI Investments, Inc.との間でのEquity・Program・Agreementを締結し第三者割当による新株式及び新株予約権を発行しております。

 

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、新たに契約した重要な契約は次のとおりであります。

 

 当社は、2024年7月12日開催の取締役会において、総額10,000百万円の当社のペイロードサービスにおいて使用するランダー(月着陸船)並びにローバー(月面探査車)の開発及び運用等(含むその他関連費用)に係る運転資金の借入について決議し、以下のシンジケートローン契約を締結し実行しております。

(1) アレンジャー兼エージェント  株式会社三井住友銀行

(2) 借入金額           10,000百万円

(3) 借入金利           基準金利+スプレッド

(4) 借入実行日          2024年7月31日

(5) 返済期限           2027年10月29日

(6) 担保等の有無         無担保・無保証

(7) 財務制限条項

  ①各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を正の値に維持すること。

  ②各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される現預金の合計金額を30億円以上に維持すること。