第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)業績の状況

当社は、2023年1月よりmRNA医薬開発候補に関する知的財産(IP)を創製し、製薬企業等に導出し収益を得るという事業モデル(IPGモデル)を推進してまいりました。

花王株式会社との共同研究開発プロジェクトではアレルギー疾患分野における免疫寛容ワクチンについて複数のプロジェクトを立ち上げ、うち1つは開発候補品を選定する段階に既にステージアップしております。さらに、花王株式会社とは、2024年10月に皮膚領域に関する新しい取り組みを開始することについて合意し、新規事業の可能性について検討を開始しました。

組織再生領域では、2024年8月、千寿製薬株式会社と眼科領域でのmRNA医薬開発の治療標的分子および疾患の選定に至り、共同研究を開始しました。また、自社研究から皮膚のアンチエイジングに関するmRNAの開発候補の同定に至り、候補品の最適化を開始しました。

一方で、事業推進の新たなエンジンとして、顧客からのニーズに応える形で、mRNA医薬品の創製に関する受託研究型ビジネスを立ち上げ、顧客が保有するmRNA医薬品候補の研究開発支援を開始し、既に1件の受注に成功しています。

今後、医師主導治験が順調に進捗しているTUG1 ASO(アンチセンスオリゴ核酸)、治験開始準備が進んでいるRUNX1を中心に導出活動を進めるとともに、パイプラインの拡充を進めてまいります。

 

(mRNA医薬パイプライン)

mRNAはCOVID-19ワクチン上市により、新たなモダリティ(創薬技術)として認知され、感染症予防ワクチン、がん治療ワクチン、遺伝性希少疾患治療などの分野での開発競争が激化しています。当社はmRNA医薬の中では比較的ニッチな領域である組織再生、免疫寛容ワクチンなどの領域で自社開発を進め、最もホットな感染症予防ワクチンなどについては国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)プロジェクトおよび受託試験で取り組んでおり、合計7パイプラインの研究開発を行っております。

 

<組織再生>

変形性膝関節症に対するRUNX1 mRNAは、国内初のmRNA治療薬であり、医師主導治験の準備を進めています。これに続くパイプラインとして、皮膚のアンチエイジング及び千寿製薬株式会社との共同で眼科疾患に対するmRNA治療薬の研究開発を進めております。

 

RUNX1 mRNA:

アクセリード株式会社と共同で設立した株式会社PrimRNAにおいて、変形性膝関節症患者を対象とした医師主導第Ⅰ相臨床試験の2024年度末までの開始を目指し、規制当局相談などの準備を進めております。

本件は、軟骨の増殖・分化に関わる転写因子RUNX1のmRNAをミセル製剤化し膝関節内に直接投与する変形性膝関節症の進行抑制及び疼痛の軽減を実現する革新的な疾患修飾型治療薬候補です。本プロジェクトは、AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に採択されております。

皮膚領域

独自に皮膚の老化をターゲットとして、AIを活用して複数の候補たんぱく質のmRNAをデザインし、ヒト皮膚細胞を用いたスクリーニングを行った結果、皮膚のアンチエイジングに有用なたんぱく質の発現を誘導する1種類のmRNA医薬候補を見出しました。今後、本候補についてさらなる最適化に取り組み、開発品としてブラッシュアップを進めるとともに、他の開発候補創出に向けた mRNAのデザインとスクリーニングを継続しており、引き続きラインアップ強化を図ります。

眼科領域

千寿製薬株式会社と進めてまいりましたmRNAを用いる眼科疾患治療薬創製についての基礎的な検討の結果、治療標的分子及び疾患の選定に至り、2024年8月に共同研究を開始しました。

 

<ワクチン>

免疫寛容ワクチンの研究は、花王株式会社との包括共同研究契約下に進めており、最初のプロジェクトは既に開発候補選定段階にステージアップしました。これに続くプロジェクトを両社合意に基づき開始するとともに、継続的な新たなプロジェクトの創出にも協力して取り組んでおります。なお、感染症予防ワクチンについては、AMED先進的研究開発戦略センター(SCARDA)事業に採択されたCrafton Biotechnology株式会社を代表機関とするワクチン開発に分担機関として参画するとともに、受託研究型ビジネスとしても取り組んでおります。

免疫寛容ワクチン:

花王株式会社が独自開発した免疫制御技術を用いたmRNA医薬の創製に向けた包括共同研究契約の下、免疫寛容ワクチンに関する共同プロジェクトを進めております。最初のプロジェクトは、既に開発候補選定ステージに進んでおり、Axcelead Drug Discovery Partners株式会社(ADDP)との協業を活用して候補選定を行っております。後続のプロジェクトについても、花王株式会社との合意に基づき開始しており、両社は新たなプロジェクトの創出に向けた検討を継続しております。

 

(mRNA医薬以外のパイプライン)

mRNA医薬以外にも当社独自のオリゴ核酸DDS技術であるYBCポリマーを用いた抗がん剤パイプラインの開発を進めております。

 

TUG1 ASO:

2024年2月に開始した、最も悪性度が高い脳腫瘍である膠芽腫を対象とする医師主導第Ⅰ相臨床試験は順調に進捗し、既に予定されている4段階の用量の第3段階に到達しております。

TUG1 ASOは、長鎖非翻訳RNA TUG1を標的とするDDS製剤であり、AMEDの革新的がん医療実用化研究事業に2期連続で採択されると共に、今年度から新たに臨床研究・治験推進研究事業にも採択されております。当社は、分担研究機関として治験実施CROの管理、薬物動態解析、治療薬の供給などを行っています。

2023年8月に本課題の基盤となる2件の特許について、再実施許諾権(サブライセンス権)付独占ライセンス権を獲得し、導出活動を開始しております。

NC-6100:

転写因子PRDM14に対するsiRNAのDDS製剤に関する慶應義塾大学等との共同開発プロジェクトです。公益財団法人がん研究会有明病院において、医師主導第Ⅰ相臨床試験が実施され、第28回日本がん分子治療標的学会で同院の高橋俊二医師から、急性輸注反応が見られず、安全性・忍容性に優れ、その薬物動態は動物試験結果よりも良好な傾向が見られたことが報告されました。本成績は、当社のYBCポリマーのヒトでの安全性及び有用性を示すものです。なお、本治験は既に患者の登録を終了しております。

 

(販売事業の状況)

株式会社アルビオンが販売する美容液エクラフチュール及び薬用美白美容液エクシア ブライトニング イマキュレート セラム用の当社技術を応用した原材料を供給しております。

コムレクス®耳科用液1.5%(開発コードENT103)は、2023年6月からセオリアファーマ株式会社により販売されております。

 

以上の結果、当中間連結会計期間において売上高は7,700千円(前年同期比91.5%減)、営業損失は373,995千円(前年同期営業損失518,624千円)、経常損失は382,431千円(前年同期経常損失471,447千円)、親会社株主に帰属する中間純損失は518,353千円(前年同期親会社株主に帰属する中間純損失477,360千円)となりました。

なお、当中間連結会計期間におきまして、外国為替相場の変動による為替差損25,455千円を営業外費用に計上しております。これは主に、当社の保有する外貨建預金の評価替えにより発生したものであります。また、当中間連結会計期間におきまして、投資有価証券評価損134,000千円を特別損失に計上しております。これは、当社の保有する投資有価証券の時価の著しい下落に伴う減損処理により発生したものであります。

 

財政状態につきましては、以下のとおりとなりました。

当中間連結会計期間末における資産は、有価証券の減少と現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べ331,316千円減少し、4,739,962千円となりました。負債は、流動負債の「その他」に含まれる前受金の増加等により、前連結会計年度末に比べ32,843千円増加し、1,682,734千円となりました。純資産は、親会社株主に帰属する中間純損失の計上による利益剰余金の減少等により、前連結会計年度末に比べ364,160千円減少し、3,057,228千円となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ1,308,318千円増加し2,883,581千円となりました。また、当中間連結会計期間のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、研究開発の推進に伴う研究開発費の支出等による税金等調整前中間純損失517,215千円に、投資有価証券評価損134,000千円、前受金の増加57,200千円等の調整がされた結果、268,192千円の支出(前年同期は330,332千円の支出)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、1,601,710千円の収入(前年同期は406,537千円の収入)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入502,372千円、有価証券の取得による支出2,400,000千円、有価証券の償還による収入3,400,000千円、敷金及び保証金の回収による収入100,000千円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、0千円の支出(前年同期は3,728千円の収入)となりました。これは、自己株式の取得による支出0千円によるものです。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(4)研究開発活動

当中間連結会計期間における研究開発費の総額は172,392千円であります。

なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

当社グループは研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。また当社は、受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。なお、当中間連結会計期間における当社の販売実績は、7,700千円であります。

 

(6)主要な設備

新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当中間連結会計期間に著しい変動があったものはありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。