第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループ(当社及び連結子会社)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、医療を中心としたヘルスケア全般をITで支援し、それに関わる「国民の安心・安全な生活」や「社会や事業者が抱える課題解決」に寄与することで、企業価値の向上を目指しております。

 

(2) 経営戦略等

当社は2023年11月27日に発表いたしました「中期経営計画 2026」で設定した以下の3つの成長戦略を着実に推進してまいります。

 成長戦略1:既存事業の収益拡大

 成長戦略2:既存事業の強みを生かした新たなサービスビジネスの創出

 成長戦略3:既存事業に次ぐ、成長事業の創出

 

(3) 経営環境

当社グループが事業を展開しております医療業界は、「経済財政運営と改革の基本方針2024」、いわゆる「骨太方針2024」(2024年6月21日)において、日本の高齢者人口の更なる増加と人口減少に対応するため、質の高い効率的な医療・介護サービスの提供体制を確保するとともに、政府を挙げて医療・介護DXを推進し、「全国医療情報プラットフォーム」を構築するほか、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHR[1]の整備・普及を強力に進めることとされております。

また、デジタル庁が策定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2024年6月21日アップデート)におい

て、「健康・医療・介護」分野の国による関与(予算措置等)が、他の民間分野への波及効果が大きい準公共分野として引き続き指定されており、無駄・不便を除去し、利便性を実感できる具体的な成果が重要であり、「デジタル化」が「当たり前」であると受け止められることを目指しています。このことから、その中核を担う電子カルテシステムを含む医療情報システムは今後も普及拡大していくものと考えております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上の課題

当社グループは、医療を中心としたヘルスケア全般をITで支援し、それに関わる「国民の安全・安心な生活」や「社会や事業者が抱える課題解決」に寄与することを企業理念としております。この理念を実現し企業価値を最大化していくためには、グループ規模や事業領域を拡大するとともに、コンプライアンスや企業の社会的責任への取り組みを推進していくことが必要であり、以下に示す課題に対処してまいります。

 

課題1 既存事業の収益拡大

当社グループの主力製品は、医療機関向けの電子カルテシステム「MI・RA・Isシリーズ」であり、当社グループは、医療に関わるすべての人々のために、さらなる利便性や診療の効率化の追求、未来を見据えた柔軟性・発展性を念頭においた製品づくりを行い、院内から他施設、そして患者やその家族へつながる連携力のあるシステムを提供しております。

物価上昇や人件費上昇などコスト増加による顧客の経営状況に影響がある中で、当社の既存事業の収益をいかに拡大していくかを課題と認識しております。

従来のオンプレミス型の電子カルテシステムの提供に加え、クラウドサービスを拡充し、保守サービスを含めたストックビジネスの拡大を進めてまいります。また、営業力を強化し、導入作業効率化や仕入れ品の集中購買等により原価低減を図っております。これに加え、働き方改革や社員エンゲージメント向上への取り組みを強化し、生産性向上を実現することにより収益拡大を図ってまいります。

 

 

課題2 既存事業の強みを生かした新たなサービスビジネスの創出

当社は売上の変動幅が大きいモノ売りからサービスビジネスの割合を高め、安定的に収益を獲得していくことを課題と認識しております。

当社グループのコア・コンピタンスは、医療をはじめとするヘルスケア領域全般における現場のニーズを理解し、中長期にわたり価値を提供しつづけることができる製品と人材を保有していることであります。このコア・コンピタンスを生かし、既存の顧客基盤や経営資源を活用・発展させ、新たな価値を継続的に提供し続ける高収益なサービスビジネスを創出してまいります。

一例として、2024年から医療機関と患者の情報共有サービス「ドクターコネクト」を提供開始しておりますが、当該サービスは基本機能を無償とすることで広く普及を目指し、受診予約機能や電子カルテシステム端末との連携など、実運用に必要な機能については、医療機関の規模ごとに各料金を設定し、患者利便性向上と院内業務効率化に寄与するサービスの展開を加速してまいります。

 

課題3 既存事業に次ぐ、成長事業の創出

 当社は、電子カルテシステムなどの事業が当社グループの全体収益に占める割合が大きいため、新たな成

長事業の創出を課題と認識しております。

 新会社設立・出資・M&Aにより、ヘルスケアを中心に事業領域を拡大しており、引き続き成長性が見込

まれる事業の発掘と立ち上げを進めてまいります。

 M&Aについては積極的な展開が必要と考えており、将来的なM&A資金を確保するため、2023年10月に

新株予約権 約15億円分を発行しております(行使期間:2025年10月10日まで)。

 

課題4 医薬品・医療機器等の臨床開発支援及びデジタルマーケティング支援の業績回復

 医薬品・医療機器等の臨床開発支援及びデジタルマーケティング支援は、売上の低迷等により、2024年9月

期に固定資産に係る特別損失を計上いたしました。2025年9月期の業績のⅤ字回復が最大の課題と認識してお

ります。

 現在、今後の施策(2024年7月29日通期業績予想の修正に関する補足説明資料で公表)に基づいた取組みを

継続しておりますが、更に経営陣の強化により、V字回復を必達します。

 

課題5 内部管理体制の強化について

 企業が社会的責任を誠実に果たすことは、安定した経営を継続するための必須条件です。

 当社グループは、法令、定款、社会規範を順守するため、経営理念・経営方針に基づき、企業行動憲章、

企業行動規範、コンプライアンス規程、リスク管理基本規程を制定し、グループ各社への周知を徹底すると

ともに、内部統制システムの構築・維持・向上に取り組んでおります。

 また、監査等委員会設置会社として、取締役会の議決権を持つ監査等委員である取締役の監査により、コ

ーポレート・ガバナンスの充実、取締役会の監査・監督機能の強化、経営の公正性・効率性の向上を図って

おります。

 その他、情報セキュリティの管理を徹底し、当社グループに関わる情報資産を様々な脅威から守るととも

に、製品やサービスを中心とした事業全般の品質管理についても、適切な運用・管理・維持・改善に取り組

んでまいりたいと考えております。

 

   [1]PHR:Personal Health Record

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2025年9月期に、売上高15,000百万円、営業利益1,500百万円(営業利益率10.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益820百万円の達成を目標としています。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 人々の健康の維持・増進は持続可能な社会を築く上で根源的なものであり、また日本の財政や社会保障制度を持続可能なものとするためには、増大する国民医療費をどのように抑制していくのかも重要な課題です。当社グループは医療情報システムの提供や医薬品・医療機器の臨床開発支援等を通じて引き続きこれらに貢献してまいります。加えて、人権・環境等のサステナビリティ課題についても重要な経営課題として取り組んでまいります。

 SDGsに関しては、当社グループが目指している世界を実現するための取組みが、SDGsのいくつかの目標と完全に合致すると考えております。当社グループは、新生児から高齢者まで、そして日本だけでなく世界の人々に健康と福祉を届けるため事業を推進してまいります。また、日本では医療従事者の働き方改革が求められておりますが、医療現場の生産性を上げ、働きがいのある職場とするためには、情報技術やデータを活用した「仕組み」が必要であり、この「仕組み」が次世代の新たな基盤となり、多くの国々で利用されるよう取り組んでまいります。詳細については当社ホームページの「SDGsの取り組みについて」をご参照願います。

 

(1)ガバナンス

 当社は、子会社及び当社の業務執行を行う各部門責任者から、代表取締役社長並びに情報取扱責任者(管掌取締役)に適時報告がなされ、各取締役が発生事実を把握・対処やリスク及び機会の確認をおこなっております。

 また、月1回開催される定時取締役会及び必要に応じ随時開催される臨時取締役会において、発生事実に対して協議などを行った上で、適宜対処しております。

 

(2)戦略

① 気候変動

 気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、気候変動問題による当社事業への重大な影響はなく、当社グループにおいて、同問題に重大な影響を与える事業も行っておりません。

 一方、当社グループは社内で電力使用などによる排出量を毎年把握し、削減の取組みを行っております。気候変動問題への対応は世界中の人々の持続的な生活、社会、経済活動において重要な取組みであるととらえており、当社は省エネやDX化等を加速し、企業活動による消費エネルギーの最適化を進め持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

② 人的資本

 当社グループの経営理念は、「人は心に活き心に動く、人こそ企業なり」の言葉で始まり、人材こそが社会に役立つ企業づくりの柱と考えています。この考えに基づき、働き方改革、従業員のエンゲージメント向上に取り組んでおります。また、スキルアップを目的とした研修や、1on1ミーティングによる個別指導の実施など人材育成にも力を入れております。しかしながら、人材の多様性としての課題認識があり、今後、女性の採用や管理職登用など、積極的に進めていく方針であります。

 

(3)リスク管理

 当社は「リスク管理基本規程」をはじめとした各種規程の整備と内部牽制体制の充実を図るとともに、定期的な内部監査を実施することにより、サステナビリティを含めた、リスク顕在化を未然に防止するよう努めております。

 また、万一リスクが生じた場合、当社はその解決に向けて迅速に情報収集・分析を行い、リスク管理統轄機関を中心としたリスク管理体制のもと、的確な対応を行うこととし、法律上の判断が必要な場合は顧問弁護士と適宜連携できる体制を整備しております。

 

 

(4)指標及び目標

① 気候変動

 当社グループは気候変動問題に重大な影響を与える事業を行っていないため、評価指標や目標は特に設定しておりません。一方、グループ全体での電力使用量や出張、通勤などに関わるCO2の排出量の定期的な把握も進めており、節電等、排出量の削減を引き続き、推進してまいります。

② 人的資本

 働き方改革や、従業員のエンゲージメント向上については、多様の働き方を実現するため、在宅勤務を含め、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)を導入し、人材育成と合わせ生産性の向上に取り組んでおります。人材の多様性については、女性管理職比率が4割程度となっている子会社がある一方、グループ全体の女性管理職比率は1割強にとどまっております。グループ全体としての目標は、各社毎の事情の違いから定めておりませんが、各社の人事データの実績は把握しており、今後、各社ごとの数値改善に活かしてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク区分

想定されるリスク

リスクに対する取組み

製品・サービスの品質

(システム障害)

・自社製品の電子カルテシステムに他社から仕入れた複数の部門システム(医事会計システム等)を組み合わせて医療機関に提供しているため、自社・他社製品を問わず、品質に問題が生じた場合、対応コストが発生する。また、システムの品質低下や機能強化の遅滞により、競争力が低下する。

・医薬品や医療機器等の臨床開発支援において、当社グループの責任下で、安全性に影響する情報の不適切な取り扱い、治験薬の不適切な管理、実施計画書や手順書の不遵守等が発生した場合、信用に影響し、将来の営業活動に影響を及ぼす。

・品質の維持向上についての教育を継続的に実施する。また、品質の保証・管理に関する体制を維持・強化する。

・各事業・製品において、その内容に応じた認証を取得し、又はガイドラインに適合し、品質の保全に努める。

人材の確保・育成

・人材確保や戦力化が計画通りに進まず、市場の成長に当社グループの人員体制が追いつかない。

・ICT技術の進歩への対応や顧客・業界の専門知識習得に遅れが生じた場合、相対的にスキルが低下し、競争力も低下する。

・全国から積極的かつ継続的に優秀な人材を採用し、魅力的な職場環境の提供に努める。

・進化する開発技術や顧客・業界の専門知識習得のための教育を継続的に行う。

情報セキュリティ

(コンピューターウイルスなど)

 

・コンピューターウイルスの侵入や役職員の過誤、自然災害、急激なネットワークアクセスの集中等により、重要データの漏洩、コンピュータープログラムの不正改ざん等の損害が発生する。

・昨今、医療機関を狙ったランサムウェアなどサイバー攻撃による被害が増加しており、当社作業に起因し感染した場合は、賠償責任を負う。

・情報セキュリティ教育を実施するとともに、事故防止の体制を構築する。

・また、各子会社において、その事業内容に応じて認証を取得し、その規格に則り適正な運用を行う。

・医療機関のシステムにアクセスするネットワークの安全性を高める。

・顧客医療機関に対し、万一感染した場合に備えた対応(バックアップの取得・復元等)について提案し、被害を最小限にとどめる。

法規制等

(政府の施策)

・電子カルテシステムや医薬品・医療機器の臨床開発に、新たな仕様・規格等についての法規制・ガイドライン・業界基準等が課せられた場合、それを満たすためのシステムや手順の改変、体制整備等の対応コストが発生する。

・行政機関や業界団体から情報収集し、適宜必要な手当を検討し、効率的で早めの対応を行う。

知的財産権

・第三者が当社グループの知的財産権を侵害し、当社グループに機会損失が生じる。

・第三者が当社グループによる知的財産権の侵害を主張し、訴訟等を提起する。

・知的財産に関する教育を行うとともに、当社グループの事業から生み出された知的財産権の特許取得や商標登録を行い、対抗要件を備える。

顧客の動向

(経営環境)

・当社グループの主要顧客である国内の医療機関や製薬企業の経営環境に大きな変化(診療報酬や薬価の大幅な減額、感染症の流行等)が生じ、当社グループとの取引額や件数が減少する。

・事業・顧客・地域(国内・国外も含め)の分散を図る。

取引先・競合先との関係

・競合先との競争激化により、売上高や利益率が低下する。

・新たな製品・サービスや販路を持った新規参入者が現れ、市場を奪われる。

・当社グループ役職員が、談合、カルテル、贈収賄、営業秘密の不正取得、優越的な地位の濫用等の法令違反行為に関与することにより、取引停止処分や信用失墜を招き、受注が減少する。また罰金により損失が発生する。

・原価構成要素を分析し、低減を図ることにより、競争がさらに激化しても利益を維持・向上できる体質を構築する。

・競合と同等以上のスピードや品質で、新たな製品・サービスを投入する。

・コンプライアンス教育を実施し、グループ規程も制定の上、組織全体に浸透を図る。

新規事業

・「既存事業の強みを生かした新たなサービスビジネスの創出」及び「既存事業に次ぐ、成長事業の創出」を、成長戦略の施策として掲げているが、これらの規模・時期・採算が計画より悪化した場合、売上や利益が減少し、中期経営計画が達成できない可能性がある。

・市場調査、開発・投資計画、販売戦略など、様々な観点から検討を重ねて新規事業に取り組む。

・新規事業の進捗を管理し、状況が悪化しそうなものを早期に把握し対応策を講じる。また、撤退ルールを定め、回復の見込みが立たないものについては早期に撤退し、損失を最小限に抑える。

業務提携、M&A

・業務提携やM&Aを通じて、積極的に事業や事業領域拡大を図り、グループ全体の企業価値向上を目指しているが、進捗に遅れが生じる。

・関係会社や投資先において、事業の収益性が著しく低下した場合や、財政状態が著しく悪化した場合、のれんの減損損失や株式の評価損等が発生する。

・事業企画機能の拡充により、情報収集・企画立案・業務遂行能力を上げ、事業や事業領域の拡大スピードを向上させる。

・関係会社については、経営状況をモニタリングし、必要に応じた経営支援を行う。

・投資先については、投資リターンや時価を分析し、売却等を含む対策を講じる。

・関係会社や投資先の事業の収益性の著しい低下や、財政状態の著しい悪化の兆候がみられる場合、当社からの経営の関与を強め、経営体制の強化を図る。

取引先の破産

・当社グループの取引先において、破産手続開始申立等の事実が発生し、債権を回収できなくなる。

・新規取引先の与信調査を厳重に行うとともに、既存取引先の財務状況に関しても毎年調査を実施する。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当期における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループが事業を展開しております医療業界は、「経済財政運営と改革の基本方針2024」、いわゆる「骨太方針2024」(2024年6月21日)において、日本の高齢者人口の更なる増加と人口減少に対応するため、質の高い効率的な医療・介護サービスの提供体制を確保するとともに、政府を挙げて医療・介護DXを推進し、「全国医療情報プラットフォーム」を構築するほか、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHR[1]の整備・普及を強力に進めることとされております。

また、デジタル庁が策定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2024年6月21日アップデート)におい

て、「健康・医療・介護」分野の国による関与(予算措置等)が、他の民間分野への波及効果が大きい準公共分野として引き続き指定されており、無駄・不便を除去し、利便性を実感できる具体的な成果が重要であり、「デジタル化」が「当たり前」であると受け止められることを目指しています。このことから、その中核を担う電子カルテシステムを含む医療情報システムは今後も普及拡大していくものと考えております。

このような状況の中、当社グループの連結売上高は、医薬品・医療機器等の臨床開発支援やデジタルマーケティング支援等が減少したものの、主力製品である電子カルテシステムの販売が大型案件の導入・更新などにより順調に推移したことから、前期比で増加しました。利益面におきましては、電子カルテシステムの売上増加に伴う利益増加があった一方、医薬品・医療機器等の臨床開発支援の売上減少による影響が大きく、営業利益及び経常利益はそれぞれ過去最高であった前期に次ぐ結果となりました。なお、株式会社サンカクカンパニー(以下、「サンカクカンパニー」という。)の業績が当初計画を下回り、想定されていた収益獲得が見込めないことから、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号)に基づき、のれんの未償却残高を一括償却し、のれん償却額として184百万円を特別損失に計上しました。また、株式会社マイクロン(以下、「マイクロン」という。)及びサンカクカンパニーに係る固定資産についても収益性の低下がみられるため、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、マイクロンに係るのれんを含め、減損損失265百万円を特別損失に計上しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、上記の要因に加え、法人税等調整額が増加したことなどにより、前期比で大幅に減少しました。

その結果、当期の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

[1]PHR:Personal Health Record

 

a. 財政状態

当期末の資産合計は、前期末に比べ7百万円増加し、11,251百万円となりました。

当期末の負債合計は、前期末に比べ9百万円減少し、4,651百万円となりました。

当期末の純資産合計は、前期末に比べ16百万円増加し、6,599百万円となりました。

 

b. 経営成績

当期の経営成績は、売上高14,554百万円(前期比6.8%増)、売上総利益3,365百万円(前期比8.8%減)、営業利益1,148百万円(前期比8.5%減)、経常利益1,154百万円(前期比8.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益123百万円(前期比82.0%減)となり、売上高は過去最高となりました。

また、受注状況につきましても、受注高14,071百万円(前期比3.2%増)、受注残高は5,716百万円(前期末比5.8%増)となり、それぞれ過去最高となりました。

 

 

セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。

 

〔ヘルスケアソリューション事業〕

電子カルテシステムは、医療機関向けの自社パッケージ製品である「MI・RA・Isシリーズ」を中心に、他社の医事会計システム等の部門システムや、ハードウエア等を組み合わせ、主に中小病院向けに販売しております。また、電子カルテシステム「MI・RA・Isシリーズ」の新製品として、「MI・RA・Is V(ファイブ)」[2]を2024年1月に販売開始し、ユーザー数も順調に伸びております。加えて、医療情報システムの受託開発・運用管理、医薬品・医療機器等の臨床開発支援、医療機関向け料金後払いシステムの開発、企業や健保組合からの健康相談窓口や特定保健指導の受託、人材事業等を行っている他、企業向けオンライン相談サービス「もこすく相談所」等、にも取り組んでおります。また、患者が自分の疾患を管理し担当医師との情報共有を促進するスマートフォン向けサービス「ドクターコネクト」[3]は2024年2月にサービスを開始し、受診予約機能や電子カルテシステムとの連携機能により医療現場の働き方改革への貢献を目指すなど、新たなサービス展開をすすめております。

当期におきましては、電子カルテシステムの売上増加に伴う利益増加はあったものの、医薬品・医療機器等の臨床開発支援の売上減少の影響が大きく、セグメント利益は前期比で減少しました。

当社グループの大半を占めるヘルスケアソリューション事業の経営成績につきましては、前記の状況により、受注高13,644百万円(前期比3.3%増)、受注残高5,614百万円(前期末比5.9%増)、売上高14,143百万円(前期比7.4%増)、セグメント利益1,246百万円(前期比10.7%減)となりました。

 

[2]MI・RA・Is V(ファイブ) 2024年1月より販売を開始した、電子カルテシステム「MI・RA・Isシリーズ」の最新バージョン。医療機関で発生したデータを活かして、医療安全の向上に寄与し、医療従事者の方々の仕事効率向上を図り、医療機関の経営を支援することを目標に、「医療安全」「仕事効率の向上」「経営支援」をコンセプトとして開発。

 

[3]ドクターコネクト 2024年2月よりサービスを開始した医療と患者をより良い形で「つなげる」ことをコンセプトに生まれたサービス。患者と医療機関との情報共有や、受診フローのデジタル化によって医療現場や患者の課題を解決することを目的とする。

 

〔マーケティングソリューション事業〕

デジタルマーケティング[4]支援は、企業や組織向けのWebサイト再構築(リブランディング)やWebプロモーション支援(Web広告の企画・制作・運用。SNSを含む。)、並びにデジタルマーケティング人材の育成等を行い、デジタルサイネージは、公共・商業施設向けの販売等を行っております。

デジタルマーケティング支援においては、新規案件の受注が減少したことなどにより、売上高は前期比で減少しました。

マーケティングソリューション事業の経営成績につきましては、受注高427百万円(前期比0.3%増)、受注残高101百万円(前期末比3.1%増)、売上高410百万円(前期比11.5%減)、セグメント損失54百万円(前期セグメント損失15百万円)となりました。

 

[4]デジタルマーケティング 検索エンジンやWebサイト、SNS、メール、モバイルアプリなどデジタル技術を活用したマーケティングのことを指す。

 

② キャッシュ・フローの状況

当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、無形固定資産の取得による支出等の要因により一部相殺されたものの、税金等調整前当期純利益、有形固定資産減価償却費、無形固定資産減価償却費の計上などにより、前期末から688百万円増加し、当期末には3,826百万円となりました。

当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は752百万円(前期は795百万円の獲得)となりました。これは主に、法人税等の支払額491百万円があったものの、税金等調整前当期純利益718百万円、有形固定資産減価償却費111百万円、無形固定資産減価償却費362百万円があったことによるものであります。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は630百万円(前期は861百万円の使用)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出586百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は566百万円(前期は754百万円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の減少額200百万円、長期借入金の返済による支出860百万円、配当金の支払額208百万円があったものの、長期借入れによる収入1,800百万円があったことによるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

 当期の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当期

(自  2023年10月1日

至  2024年9月30日)

前期比(%)

ヘルスケアソリューション事業(千円)

11,139,605

112.2

マーケティングソリューション事業(千円)

240,769

97.6

合計(千円)

11,380,375

111.9

(注) 1  生産実績は当期製造費用で表示しております。

  2  セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b. 受注実績

 当期の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当期

(自  2023年10月1日

至  2024年9月30日)

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期末比(%)

ヘルスケアソリューション事業

13,644,026

103.3

5,614,724

105.9

マーケティングソリューション事業

427,106

100.3

101,934

103.1

合計

14,071,133

103.2

5,716,659

105.8

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c. 販売実績

 当期の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当期

(自  2023年10月1日

至  2024年9月30日)

前期比(%)

ヘルスケアソリューション事業(千円)

14,143,666

107.4

マーケティングソリューション事業(千円)

410,495

88.5

合計(千円)

14,554,161

106.8

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

  2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、前期及び当期において、総販売実績の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態

(資産合計)

当期末の総資産は11,251百万円となり、前期末に比べ7百万円増加いたしました。

流動資産は7,467百万円となり、前期末に比べ411百万円増加いたしました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産が186百万円減少したものの、現金及び預金が688百万円増加したことによるものであります。

固定資産は3,783百万円となり、前期末に比べ404百万円減少いたしました。これは主に有形固定資産が167百万円、無形固定資産が180百万円減少したことによるものであります。

 

(負債合計)

当期末の負債合計は4,651百万円となり、前期末に比べ9百万円減少いたしました。

流動負債は2,837百万円となり、前期末に比べ782百万円減少いたしました。これは主に買掛金が346百万円、短期借入金が200百万円、未払金が126百万円減少したことによるものであります。

固定負債は1,813百万円となり、前期末に比べ773百万円増加いたしました。これは主に長期借入金が769百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産合計)

当期末の純資産合計は6,599百万円となり、前期末に比べ16百万円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益123百万円の計上及び剰余金の配当209百万円により利益剰余金が85百万円減少したものの、新株予約権の行使及び譲渡制限付株式報酬に係る新株の発行により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ51百万円増加したことによるものであります。

 

b. 経営成績

当期の経営成績は、売上高は過去最高となり、また営業利及び経常利益は、過去最高であった前期に次ぐ結果となりました。

(売上高)

当期の連結売上高は、医薬品・医療機器等の臨床開発支援やデジタルマーケティング支援等が減少したものの、主力製品である電子カルテシステムの販売が大型案件の導入・更新などにより順調に推移したことから、14,554百万円(前期比6.8%増)となりました。

 

(営業利益)

当期の営業利益は、電子カルテシステムの売上増加に伴う利益増加があった一方、医薬品・医療機器等の臨床開発支援の売上減少による影響が大きく、1,148百万円(前期比8.5%減)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当期の親会社株主に帰属する当期純利益は、のれん償却額や減損損失を特別損失に計上したことに加え、法人税等調整額が増加したことなどにより、123百万円(前期比82.0%減)となりました。

 

c. 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

当社は2025年9月期に、売上高15,000百万円、営業利益1,500百万円(営業利益率10.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益820百万円を目指します。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当社グループの当期におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性について

(財務戦略の基本的考え方)

当社グループの資金需要は、主として事業活動に必要な外部仕入、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等の運転資金と事業伸長・生産性向上及び新規事業の創出を目的とした投資資金の二つに大別されます。

短期運転資金は営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入れで賄っており、M&A・設備投資や長期運転資金は金融機関からの長期借入れによる調達を基本としながら、必要に応じて新株予約権の発行を行うなど、資金調達の多様化を図っております。

なお、当期において、長期運転資金として金融機関からの長期借入れにより1,800百万円の調達を行いました。また、将来的なM&A資金の確保を目的として発行した第4回新株予約権の一部が行使され、66百万円の調達を行いました。

 

(経営資源の配分に関する考え方)

当社グループの経営資源の配分に関しましては、上記の基本的な考え方を基に、新規事業の創出に向けた備えと事業開発費用及び設備投資等に、経営資源を重点的に配分してまいります。また、当社グループでは株主還元についても経営における重要課題のひとつと考えており、株主の皆様に対する利益還元を一層強化することを目的として、2024年11月8日開催の取締役会において新たな株主還元方針を決議いたしました。当方針にしたがい、2024年9月30日を基準日とする1株当たり配当金を前期14円から18円に増額しました。なお、当社の株主還元方針については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りにつきましては、過去の実績・現状・将来計画に基づく合理的な判断を基礎として行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは医療に関わる様々なニーズに応えるべく、ヘルスケアソリューション事業において、主力である電子カルテシステムの製品価値向上に向けた最新技術の導入や新規システムの開発に取り組んでおります。

 現在の研究開発体制は、複数の連結子会社が中心となり、新製品の開発及び既存製品の改良に取り組んでおります。

 当期の研究開発費の総額は15百万円であります。